打ち合わせで向かいに座っている、
真面目で丁寧な取引先の男性の爪は、
指先に食い込んでいて、白い部分が全くない。
子どもの頃、爪を噛む癖があった同級生が、
そんな手をしていた。
几帳面すぎてストレスを抱えているんだろうか、などと想像してしまう。
*
「製品にカビが」というクレームが入った。
本来、カビる可能性などない商品だ。
製造元に状況を伝えても「カビ」があり得ないせいか、
電話で「ハリ?」などと何度も聞き返された。
最終的に「かびるんるんのカビです!」と言った。
通じた。
*
再雇用の女性(上品系な60代)が言う。
「以前は研修会で、芸能人とかスポーツ選手呼んで、
講演してもらったりしたことあったのよ」
聞けば「おもしろいボクサー」も来たが名前が思い出せないらしい。
ガッツ石松ですか? 違う。
具志堅用高ですか? 違う。
長州力…? 全然違う。
すっとスマホを出し、
「関根勤がモノマネするボクシングの人!
・・・あ!輪島功一!」
と言うので、笑ってしまった。
なんというか、
スマホで音声検索するタイプの人でないと思っていたので。
*
隣の部署から拍手が聞こえてきたので目を向けると、
産休に入る人が花束をもらって送り出されていた。
彼女、つい数か月前に産休明けで復帰したばかりだったのに、
新年度早々またかぁ~なんて言ったら良くないのも分かるし、
自分が産まないのだから言う立場にないし、
おめでたいことだし、当然の権利なんだけど!
人員補充もなく、
その分の仕事をする人は大変だろうと密かに同情する。
*
今年の新人は、見た目が大人びていて、
言動も落ち着いているように見える。
実際、回りからそう言われることが多いようだが、
本人が、
「こういう雰囲気だと、”中身が伴っていない”と
思われないように努力しないといけない」
と言っていて、それもそうかと思った。
逆に、思ったよりちゃんとしている、というのはプラス評価になるが、
最初のイメージが良すぎると、期待外れと思われかねない。
世間は勝手だ。