打ち合わせで向かいに座っている、

 

真面目で丁寧な取引先の男性の爪は、

 

指先に食い込んでいて、白い部分が全くない。

 

子どもの頃、爪を噛む癖があった同級生が、

 

そんな手をしていた。

 

几帳面すぎてストレスを抱えているんだろうか、などと想像してしまう。

 

 

「製品にカビが」というクレームが入った。

 

本来、カビる可能性などない商品だ。

 

製造元に状況を伝えても「カビ」があり得ないせいか、

 

電話で「ハリ?」などと何度も聞き返された。

 

最終的に「かびるんるんのカビです!」と言った。

 

通じた。

 

 

再雇用の女性(上品系な60代)が言う。

 

「以前は研修会で、芸能人とかスポーツ選手呼んで、

講演してもらったりしたことあったのよ」

 

聞けば「おもしろいボクサー」も来たが名前が思い出せないらしい。

 

ガッツ石松ですか? 違う。

具志堅用高ですか? 違う。

長州力…? 全然違う。

 

すっとスマホを出し、

 

「関根勤がモノマネするボクシングの人!

・・・あ!輪島功一!」

 

と言うので、笑ってしまった。

 

なんというか、

 

スマホで音声検索するタイプの人でないと思っていたので。

 

 

隣の部署から拍手が聞こえてきたので目を向けると、

 

産休に入る人が花束をもらって送り出されていた。

 

彼女、つい数か月前に産休明けで復帰したばかりだったのに、

 

新年度早々またかぁ~なんて言ったら良くないのも分かるし、

 

自分が産まないのだから言う立場にないし、

 

おめでたいことだし、当然の権利なんだけど!

 

人員補充もなく、

 

その分の仕事をする人は大変だろうと密かに同情する。

 

 

今年の新人は、見た目が大人びていて、

 

言動も落ち着いているように見える。

 

実際、回りからそう言われることが多いようだが、

 

本人が、

 

「こういう雰囲気だと、”中身が伴っていない”と

思われないように努力しないといけない」

 

と言っていて、それもそうかと思った。

 

逆に、思ったよりちゃんとしている、というのはプラス評価になるが、

 

最初のイメージが良すぎると、期待外れと思われかねない。

 

世間は勝手だ。