毎日ダラダラと一日中寝ている主人に、「父を生まれ故郷に連れて行きたいけど車で行ってくれない?」と聞いてみた。

意外にも「いいで!」とあっさり。


父は2年ほど前から、自分が産まれた家を処分しなければと母に言っていた。母は、結婚前の家の話をされてもわからない。

わからない家の話をされるのが苦痛だと頻繁に私に電話をしてくる。

私もそんな話しをされてどうしようもないと思っていたら、母が一度生まれ故郷に連れて行きたいと言うので、主人に頼んでみたのだった。

車で片道4時間半の所に日帰りで行った。

何十年かぶりの故郷は、かなり変わっていて、父は自分の産まれた家がわからない。


市役所で調べてもらい、法務局まで行って調べると父の産まれた家は他の人が買い取っていた。


それに父は納得がいかない。

手順を踏んでその人は買い取ってるのに、父はその人に電話をかけて、どのような経緯で買い取ることになったのか、見ず知らずの人なのに聞いた。  


結局、自分が貸した人が父に何も言わずに

今住んでる人に高い値段で売ったことが判明した。

それはもう20年以上も前のことだった。

「こちらは、手順を踏んで高い値段で買ってますから、納得いかないなら裁判してもいいですよ」と言われたらしい。


父は裁判してもいいと言われてから元気がなくなった。

貸した人は何故、自分に何も言わずに売ったのかと裏切られた思いがしたみたいだった。

「故郷の家に帰りたいの?」と聞くと、「いや、そうでは無く自分の家のことは、はっきりとさせたい。売れるなら売りたいと思ったから」と言う。「そうゆうことは、もっと若いときにすればよかったやん」と私.  

それに、もう父の家は他の人が買い取っている。

足もおぼつかなくなり、1人で買い物さえいけなくなってから、こんなこと言われてもみんなが困る。 


父はまだ納得がいかないようで、時折り故郷の家の話をする。その度に母は憂鬱だと私に電話してくる。

上手く流せばいいじゃないかとおもうが、すぐに母は私に電話をかけてくる。

それは仕事中だろうが、朝だろうが夜だろうがおかまいなしだ。

その繰り返しで、電話の音が恐怖になってきた。

もう本当に両親のことが嫌になった。

 

父を生まれ故郷に車で連れて行ってくれた主人は、ひどく疲れてその日から数日は「疲れた疲れた」と言ってずっと寝ていた。

その日を境に二度と車を運転することはなかった。