詳しすぎる?あらすじの続きです。
木村拓哉主演!TBS開局60周年記念ドラマ!
「ベック危篤」の報にあわてて基地に戻った倉持に、目を開いて、「わんっ」と元気な声を上げて喜ぶベック。「なんだ、元気じゃないか」とベックを抱いて喜ぶ倉持だったが、ふと見ると、すでに息を引き取っている。最後の力を振り絞って、倉持の帰りを待っていたベック。「だれも死ぬなって決めたのに」と、隊員たちも悲しむ中、樺太犬ベック3歳は腎臓病で去った。
日の丸でベックの眠る箱を包み、氷の海に流す倉持と犬塚。「南極をもっともっと見せてやりたかった。日本に連れて帰りたかった」と悲しみながらも、ベックの分まで懸命に生きることを誓う倉持。
そんな倉持に犬塚は「倉持さんにオーロラの研究をやってみろと言われてうれはかったけれど、講義を受けていなかったから、ぜんぜんわからなくて…。僕、いつも中途半端で、南極に来たのも実家の農業を継ぎたくなくて逃げて来たからで、おやじにも認められていないんです。必死で生きたベックに恥かしいです」と言う。
「俺もみんなも、そして、犬たちも、だれもおまえのことを中途半端だなんて思っているやつはいないよ。最後までやり遂げてみろよ」と励ます倉持に、勇気を得た犬塚は「はい。でも、犬ぞりの仕事も僕にやらせてください。どっちも頑張りますから」と、オーロラ研究に専念させようと、犬ぞりでの調査に同行させていなかった倉持に、改めて願い出る犬塚だった。
次の犬ぞりでの調査に勝手に乗り込む鮫島。「俺の研究はペンギンの研究くらいかなって。ガキが喜ぶからよ」と、ペンギンの後を追う鮫島。
「ペンギン待てーっ。…ガキの声くらい聞きてえなあ」
日中の犬ぞり調査に出ていた犬塚は夜間はオーロラの観測に精を出す。おにぎりを差し入れする倉持は「あまり無理をするなよ」と体を気遣うが、「これだけは頑張らないと、おやじに認めてもらえないから」と犬塚は必死だ。
が、そんな気持ちとは裏腹に、疲れてカブースで居眠りをしてしまう犬塚。取り落とした研究資料にストーブの火が燃え移り、あっという間に火事になる。気がついた犬塚は消火器で消そうとするが、すでに使ってしまっていて出ない。犬たちの叫ぶ声で目を覚ました倉持が火事に気付くが、カブースは火の海。ほかの隊員たちも気がついて出てくるが、さらにカブースの隣りに設置してあったガソリンのドラム缶に火がつきそうだ。「油に燃え移ると、基地にも火がつくかもしれない」との声に倉持は、必死でガソリンの缶の上に雪をスコップでかけて、燃え移りを阻止した。研究ノートと機材も焼けてしまい、涙を流す犬塚。
「すみません。すみませんでした」と犬塚は隊員たちに頭を下げるが、氷室はカブースで研究を進める犬塚に、「火にだけは気をつけろけと注意していただけに怒りがおさまらない。
氷室に注意されて犬塚は消火器の使い方を練習したのだが、それが1度だけしか使えないことを知らなかったのだ。責められる犬塚を見かねて、倉持が割って入るが「何がもういいんだ。本観測で使うカブースがダメになってしまったんだぞ。素人にへたなことをさせるからいけないんだ」と、倉持の研究テーマを持たせようといった提案を批判する氷室。
「終わったわけじゃない」と反論する倉持だったが、「もう、予定通り、粛々と生活しておけばいいんだよ。死んだらおしまいなんだから」と鮫島たちも反発する。
そんな倉持を呼んだ星野。みんなを「無線棟」に呼んでほしいと言う星野は上機嫌で大きな丸をつくってみせた。
それは倉持が提案していた日本の家族からの声の便りが届いたという知らせだった。
南極放送と名づけられた収録された家族からの声は、まず、鮫島の息子の声だった。「とうちゃん、もうペンギンを見た?」との呼びかけに、「見た見た」と返事をする鮫島。自分の声は届かないのだが、「研究で見ておいてよかった」と、いっぺんに顔が明るくなる。
横峰の留守中に双子を産んだ妻は「大地と友が会いたいって。無事に帰って来て」と、語りかけ、倉持の義妹の美雪は、倉持のことが大好きな自分の小学校の生徒、ハルオと呼びかけた。「お義兄さん、あんまり無茶しないでね。それと、氷室さん、お義兄さんのこと、よろしくお願いします」と。美雪のやさしい声に氷室の顔にも明るさが灯る。
落ち込んで引きこもっていた犬塚を内海は「倉持が言ってたぞ。南極に来れたのはおまえのおかげだって」と励まし、無線棟に連れて来たのだったが、家族からの声の便りと知って、犬塚は「自分には関係ない」と立ち去ろうとする。が、そこに聞こえて来たのは犬塚の妹、美津子の声だった。しかも、そのあとには父親の「今度、家に帰ってくるときは、胸を張って堂々と帰って来い、いいな」という声。泣き崩れる犬塚。「どうせ何をやっても中途半端な男だ」と、兄を認めない父親を「南極は中途半端な気持ちじゃ行けない場所」と言って、父にも認めさせた美津子だった。
「成功にははじまりがあるように、失敗にもはじまりがある。そうやって1年間やっていかなくちゃいけない。失敗したらもう1回やればいいんです」という星野に、「でも、みんなに迷惑をかけて…」とひるむ犬塚。「俺たちは手ぶらで帰るわけにはいかないんだ。な、いいよな、氷室?」と声をかけると、氷室も頷いた。
「そういえば、学生のころ、私も悩んだことがありました。兄が外交官で、えらい科学者がやって来て、京都見物をしたいと言うのにお供させられたんですが、その人が言うたんです。人のやらないことをやれ、失敗を恐れるな。人は経験を積むために生まれて来たってね。とにかくやってみなはれ」と星野。「あ、それと、これ」と手渡したのは観測用の機材。「壊れたら作ったらええだけです」と星野はいつものようににこやかに語る。
火事のあと、星野が部屋に引きこもっていたのは、そのせいだったのかと、倉持も安堵する。「で。その科学者ってだれなんです?」と問いかけると、「アインシュタインはんですわ」の星野の言葉に唖然とする倉持。
ボツンヌーテンを目指して準備する倉持に「本当に行くつもりか」「判断を間違えるなよ」と言う氷室。南極に厳冬期が近づいていた。
そのころ、東京ではやっと戻って来た白崎が報告会を開き、「宗谷の改造工事にすぐに取り掛からないと、あの船でもう一度、南極に行くのは不可能です」と口にしていた。(fin)