最終回「命の金」
おもしろいドラマでした。とても現実的で、実際の事件例を思い出されるような場面もありでしたが、それでいて、ありきたり感がなかったのは、やはり、保険とは何かというテーマがぶれず、人の欲や愛情や、殺意や連帯やと、人間のあらゆる側面を忠実に描き出した力によるものだと思います。亜希子が天使か悪魔かわからなかったように、すべての人間が両面を持ち、ひとことで悪い人間、よい人間などとくくることができない。結果は同じだったとしても、それぞれの人の背負うものは違う。それをどう理解するのか、どう寄り添い、どう行動するのか…。難しい判断をあるべき方向に導き出した結果に、とても共感を覚えました。
くわしいあらすじ(思いっきりネタバレ)です。
如月が鉄パイプで亜希子に殴られ、意識不明の重体になったことが、ニュースになり、清和生命では「向島を呼び出せ」と大騒ぎになるが向島には連絡が取れない。同僚たちが案じて大野に連絡を取り、「連れ戻して。でないと、向島さんは今度こそクビよ」と叫ぶ。
大野は向島の後を追うことにしたが、そこに現れたのは弁当工場の奥居だった。奥居は亜希子と連絡が取れないと言い、「行き先を教えろ」と大野に迫るが、「知らないですよ。僕が知るわけないでしょう」と突き放すと、大野が乗ったタクシーに自分も乗り込んでしまう。
「バカだと思うでしょうが、僕が彼女の無実を証明してあげたいんです」と言い張る奥居に、大野はあきれ顔だ。
新潟に着いた向島は、亜希子が話していた実家の酒蔵を訪ねるが、そこに娘はいるが、亜希子ではないことがわかる。当時の事情を知る人に尋ねると、亜希子の母親は早くに亡くなって、父ひとり子ひとりだったが、父親は飲んだくれで体を壊し、亜希子が小学2年のころに死んでしまったのだという。その酒蔵の「おじょうさんと同じ年齢なのに、どうしてここまで境遇が違うのかと、思った」と言う。
その後、「佐渡にもらわれていった」という話を向島が聞いているとき、亜希子と翔は佐渡をゆっくりと、歩いていた。「ここが僕の生まれた場所なの?」と聞く翔だが、「明日は学校だよ」と、心配に口にする。亜希子はやさしく、「もう少し、お母さんにつきあって。もう少しだけ…」と語りかける。
一ノ瀬もニュースを見て驚き、大野に連絡を取ってくる。電話口で「向島さん、クビになっちゃうかもしれない。一ノ瀬さん、俺、どうしたらいいんでしょう。向島さんを助ける方法はないんでしょうか」と、切羽詰った口調で言と、「向島さんを助けるためには、大野君自身がどうなっても後悔しない?」一ノ瀬が聞き返す。大野が迷うことなく、あっさりと「はい」と言うので、少し微笑んだ一ノ瀬は、「これは一保険会社の問題じゃないわ。保険業界全体の問題なの。一緒にがんばりましょう」と答える。
向島は佐渡に渡る。
佐渡で亜希子が住んでいた家の近所の人に話を聞くと、亜希子は10年ほどおばさんのところに住んでいて、「亜希ちゃんはとてもいい子だったけど、おばさんのだんなっていうのが業突く張りでね。小さい亜希ちゃんに新聞配達や子守りをさせてこき使った上に、中学を卒業したころにおばさんが死んでしまうと、亜希ちゃんは学校にも行けず、年をごまかしてスナックで働かされていたの。何とかしてあげたかったけれど、何もできなくて…。いつの間にかアパートも出て行っていたわ」と話す。
さらに、そのスナックを訪ねると、ママが「亜希ちゃんはねらったいた男たちもたくさんいたのに、さえない男と一緒になってね…。それにあんなこと…」「あんなこと?」向島が問いただすと、亜希子の夫、野沢は自殺してしまったのだと言う。しかも、「自分にできるのはこれだけだから」と言って、保険を残したのは、亜希子ではなく、愛人の女だったのだ。借金があり、まだ、赤ん坊だった翔を抱えて路頭に迷うわけにはいかない亜希子は保険の査定員たちに土下座をして、「そのお金がないと、困るんです。どうか支払ってください」と死に物狂いで追いすがって頼むが、「受取人の名前が奥さんから書き換えられているから無理なんです」と言って振り払われてしまい、残ったのは借金だけだったのだ。
話を聞いた向島は「保険なんてなかったらよかったのに。そうしたら、みんな苦しまずにすんだ。あなたも私も…」と言っていた亜希子の言葉を思い出す。
清和生命に電話をかける向島。部長が「向島、今、どこにいる? 大野がそっちに向かっているから…もう、いい加減にしろ」と怒鳴りつけるが、向島は「調べてほしいことがあるんです。大事なことを見落としている気がして…」と話す。
話を聞いていた部長は「くわしく聞かせてみろ」と態度を変えた。
亜希子はそのまま佐渡に泊まり、眠る翔に寄り添い、いとおしそうに頭をなでる。
※次に続きます。