2022/10/30 汚リンピック | どらきゅら城へようこそ

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札幌市が招致を目指す2030年冬季五輪・パラリンピックで、カナダ・バンクーバー市が招致から撤退する見通しとなった。招致レースは札幌市と米ソルトレークシティーが争う構図になる。札幌優位との見方もあるが、東京五輪の汚職事件が拡大し、物価高騰に伴う札幌市の経費負担増も明らかになる中、市民の支持を高められないまま「消去法」で札幌開催が決定すれば、世論の反発がさらに強まる懸念も浮上。開催都市が事実上内定する来春までに理解を広げられるか、札幌市にとっては正念場が続く。


州が財政負担を問題視 バンクーバー


 バンクーバー市の撤退の流れを決定づけたのは、開催に伴う地元の財政負担だった。


 「直接費用の12億カナダドル(1295億円)に加え、さらに10億カナダドル(1080億円)がかかるリスクがあると試算された」。同市があるカナダ西部ブリティッシュコロンビア州政府のリサ・ベア観光・スポーツ相は記者団に強調。バンクーバー市の五輪招致への不支持を表明した。


 カナダ・オリンピック委員会(COC)は昨年12月、五輪招致の検討を始めると発表。今月15日のバンクーバー市長選で当選したケン・シム氏が五輪招致の推進を明言し、招致熱が高まることも予想されたが、州政府の財政負担がなければ実現はほぼ不可能だ。


 同州政府では五輪招致への反対論が強まりつつあった。現在のジョン・ホーガン州首相は健康上の理由で辞任を表明。11月に新首相に就任するデイビッド・イービー州司法長官は10年の前回バンクーバー五輪に批判的だった人物だ。


 地元メディアによると、今回の招致不支持の表明の背景にも、イービー氏の強い意向があるという。カナダの招致関係者が再考を求めたものの、州政府の意向は固く、今後、バンクーバーが招致レースに戻る可能性は極めて低い。(ワシントン 広田孝明)


連続開催に反対論強く ソルトレーク


 ブリティッシュコロンビア州の招致不支持表明を受け、米西部ユタ州ソルトレークシティーの地元紙は27日(日本時間28日)、30年五輪の開催地として「ユタ州の可能性が高まった」との記事を掲載。地元招致委員会のフレイザー・ブロック会長は現地メディアに「大会開催の可能性が高くなっていることは確かで、招致に向けた最終作業を続ける」と述べた。


 国際オリンピック委員会(IOC)の要請があれば「30年大会を実現する用意がある」とも明言してきたソルトレークシティー。ただ、28年の開催が決まっているロサンゼルス夏季五輪と連続開催になり、スポンサーの確保などが難航することへの懸念は強い。


 バンクーバー市の撤退により、札幌の優位性が高まるとの見方もある。元IOCのプレス専門部会メンバーの竹内浩氏は「IOC内では、米国での2大会連続開催への反対論が強く、ソルトレークシティーが次のステージに上がることはないだろう。バンクーバーが消えれば、来春に札幌が内定する流れが強まる」とみる。


 IOCが神経をとがらせるのは、東京五輪を巡る汚職事件への日本国内世論の反発だ。IOCは汚職事件表面化後の9月、開催地を正式決定するインドでの来年のIOC総会を延期すると突然発表。それに伴って年内の開催地内定も来春に見送った。竹内氏は「捜査がさらに広がっても、決定時期に柔軟性を持たせているIOCは、ほとぼりが冷めるまで待つだろう」として、札幌優位の構図は変わらないとの見通しを示す。(大矢太)


市民理解の広がり課題 札幌


 「札幌はもう厳しいと思っていたが、これで風向きが変わる。ソルトレークシティーとの一騎打ちだ」。招致を推進する市議はこう息巻く。


 東京五輪汚職事件に伴って広がる「五輪不信」。その払拭に向け、札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)は27日、招致実現後を想定していた不正防止策の具体的な検討開始を11月に前倒しすると発表した。バンクーバー撤退を機に、誘致実現へのアピールを強めたい考えだ。


 ただ、五輪招致に対する市民の支持拡大の道のりは、なお険しい。ブリティッシュコロンビア州政府がバンクーバー市の五輪招致への不支持を決める決定打となった、大会経費増加の「潜在的リスク」は、札幌市にも降りかかる。


 札幌市が11月上旬に公表予定の新たな試算では、物価高騰の影響により大会経費が当初想定より170億円増えて2970億~3170億円に膨らみ、市の税負担は40億円増の490億円になる。試算し直した大会経費に市民の厳しい目が注がれるのは避けられない。


 その一方で市は、試算に合わせて公表する開催概要案の改訂版に、大会をきっかけに観光客が増えるとして10年間で4千億円に上る経済波及効果を盛り込む方針。経費増への批判を和らげる狙いが透けるが、別の市議は「汚職事件で五輪スポンサーに対する厳しい見方が強まっており、札幌のスポンサー集めも苦労するだろう」と指摘。市幹部は「物価や為替の見通しは誰にも分からない」とし、経費がさらに増える可能性を認める。


 ライバル都市が減れば招致実現の可能性は高まるが、それは幅広い市民が支持する「歓迎される五輪」の実現とは異なる。仮に市民理解の広がりを欠いたまま札幌開催が決まれば「消去法でIOCに押しつけられたとの思いが市民に広がりかねない」(市幹部)。招致に前向きな市議は「他都市がどんどん手を下げて札幌に決まっても、市民にとって価値はない」と指摘した。(野口洸)