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Second Act.10「創刻」



その日は酷く寒い冬の日だったことを覚えている。

時を司る力を持つ者として、父の悲願の末路―――未来はすでに知っていた。

その事実を伝えなかったのは父への裏切りにも等しい行為だった。

そうしなければ、我が身を失うことになってしまうことも知っていた。

「だが案ずることはない」

父は新世界で蘇る。

この手で時を支配している限り、それは必ず訪れる未来だ。


「さぁ、裁定の時だ」


照り付ける太陽が告げる。

奴はここに来る。

そう、必ず。


~~~


敗北に悔しさが伴うのは当然のことだ。

悔しさはバネとなり次の勝利へきっと繋がる、それは教科書やテストの模範解答に過ぎない。

そんなものが通用するのは常識が働く世界だけ。
非常識非日常が埋め尽くした彼の世界には全くの不正解だろう。

心身ともに傷付いた。というより、痛め付けられたと言うべきか新手の自傷行為と言うべきか。

「…なにをしているんだ、俺は」

右目を覆うように伸びた前髪をぐしゃりと潰す。
暗い室内を眺めた後視線を落とした。

胸に言葉が突き刺さったまま、時は静かに動き出した。


~~~


「あのバカ、一体どこに…」

家を飛び出してすでに10分以上経った。
真夏の灼熱が容赦なく襲い掛かる中、ひたすら人の影を探したがどこにも見当たらない。

一体慶太はどこに消えたのだろうか。

「くっ…なんだってこんなことに…!」

慶太はなんの関係もない、狩也と謎の男のデュエルに巻き込まれただけの友人だ。
どうしようと彼をこれ以上巻き込むわけにはいかないはずが、自分がダウンしたおかげで更に巻き込んでしまった。こんなものどうしようもない。
せめて家に連れ戻すことができれば万々歳、だが夕闇に染まるハートランドシティは閑散とし、あまりにも静かだ。

家を出て30分。
あらゆる場所を探したが塵一つ見当たらない。

「……?」

そう、塵一つ見当たらない世界でそれは見つかった。

慶太が持っていたコーラの空ボトルが落ちていたのだ。

"アイツがポイ捨てなんて"

絶対にありえない、そう踏んだ狩也は目の前の庭園へと足を踏み入れた。

赤い太陽に照らされた緑の木々と花は影を落とし不気味に佇み咲いている。まるで侵入者を監視するかのように。

「………!」

迷路を抜けた先、それは視界に現れた。

橙色に染まった世界に、色のない白いと白銀の髪。陶器のような白い肌。そして、異質な赤い瞳。

「来たか、待ちわびたぞ」

「……お前は」

見覚えがあるような、気がする。
しかし過去に出会ったあらゆる人物と照合するが、一致しないのは何故だろうか。
他人の空似だろうか?

「我が名はトラヴィス。我が父を、覚えているか?」

「――まさか、あの時の」

ここでようやく合致した。
あの事件、新興宗教による鏡の復活―――未遂に終わらせたがその時の敵の姿をはっきりと記憶している。
白銀の髪、赤い目、皺のある顔――ではないが、目の前の男はよく父とやらに似ている。

「この仕業はお前らか!」

「あぁそうだ。本来ならば、お前だけをここに引きずり込めばよかったのだがな」

「…じゃあ慶太は…!!」

「元の世界に消えてもらった」

「…………」

よかった、という言葉を飲み込んだ。
慶太がこれ以上事件に巻き込まれることはなくなった。
だが逆を言えば慶太が目の前の男に倒された、ということだ。思わず拳をグッと握り締める。

「それで、目的はなんだ」

「我が父を倒した貴様を、迎えに来た。と、いうべきだろうかな」

「迎えに……?」

「そうだ。貴様は判っているのだろう?自分になにが隠されているのかを」

恐らく未完の聖杯のことを言っている。
黙って付いてくるのなら悪いようにはしないとでも言いたいのだろうか、仮にも仇敵だろうに。

「俺は、あんな化物にはならない。なってない。お前がなにを言おうが関係はない!元の世界に帰してもらおうか!!」

「ふん…奴も言っていたな。貴様が未完の聖杯ではない、と」

「慶太が…」

「ならば貴様の手にあるそのデッキはなんだ?どこから現れた?デュエルモンスターズにそんなカテゴリーは存在しない、そんな竜はこの世に存在していないのだ」

「!」

そう。「コスモ・メイカー」というカテゴリは存在しない。何億とあるカードデータファイルにアクセスしてもそんなものは見つからない。
何故なら存在しないから。本来ならないものだから。

あの日、目を覚ました時、40枚のカードの束が枕元に置いてあった。
「コスモ・メイカー」と書かれたそれらの強さは必ず"彼"に勝てると確信できるものがあった。

だがそれはどこからやってきたのか?
強くなりたいと願い、眠りについた彼ならきっと分かっていただろう。その理由を、その真実を、初めから。

「…認めない、絶対に」

「そうか。だが俺は貴様を求め欲する。仇敵であろうとも、貴様は計画遂行の道具に過ぎない」

「お前…!!」

「貴様の敵は目の前にいる。選べ―――ここで俺に敗れるか、我らと共に新世界の扉を開くか」

トラヴィスが手を差し伸べる。
優しげな目をしているがその裏に潜むのは狂気と野望。そんなものに付き合うほど狩也はお人好しになった覚えはない。

「俺が選ぶのは第三の選択だ。ここでお前に勝って、元の世界に帰りその野望を砕く!」

「―――いいだろう。その挑発、乗らせてもらう」

トラヴィスは表情一つ変えずに白銀のデュエルディスクを構えた。広がった白のマントは風に靡いている。

「デュエルディスクセット!!」

「さぁ始めるとしよう。これが―――終わりの始まりとなるのだ」

世界は沈む、星が浮かび月が微笑む。
その満天を輝きを待っている。

「「デュエル!!」」

《LP:4000》


~~~


「………」

「それで、トラヴィスの狙いは分かったけどさ…なんでヒカルを放置してんだ?」
「野放しにしている理由はわからない。ただ、…別に狙いがある」
「えっ?」
「未完の聖杯がいかなるものかは、遊矢も知ってると思う。でも、その性能には当然差があるんだ」

「差が?」

「あぁ」

未完の聖杯とは、あらゆる願いを叶え滅びをもたらす願望器。それが遊矢たちの総合的な認識だ。
しかし、クロスから言わせればヒカルやルクシアのような世界を滅ぼすことのできるほど存在は極めて特異らしい。
元々人の魂を肉体に留めるための器が変異したものこそが未完の聖杯というもの。
器が放つ輝きは魂の強さに他ならない。

つまり、確固たる魂の強さを持つ人間なら誰であろうと未完の聖杯を持つ可能性があるが、叶う願いや代償は大から小まである、ということだ。

「じゃあその可能性は遊矢も有り得るのか?」

「ない。特に遊矢は、元々別の人間の魂から分離した存在だ。今がどうであれ存在自体が不安定な以上は絶対に。それに彼も、一度魂が消滅しているからないだろう」
「なるほどなぁ…わかんね!」

「遊矢……」

難しい話は入ってこないし、遊矢はそう返事を返した。

「…本題に戻ろう。別の狙いが、未完の聖杯のことなのは分かったと思う。ハッキリ言うよ、兄さんの狙いは、岸岬――――」
「…!狩也が!?」
「………うん」

「待て!おかしいだろ…!?遊矢からの話じゃ、アイツは…」

先程のクロスの言い分的に考えれば、狩也も条件は托都と同じ。一度消えた魂に未完の聖杯は宿らない、そのはずだ。

「それは僕も思う。君みたいに、消滅する前に保護されて無事だった例もあったけど、彼は正真正銘"一度死んでいる"」

ヒカルも神の五王との戦いで一度は消えかけたものの、魂が消滅するまでには至らなかった。
だが、岸岬狩也という人間は一度この世界から亡くなっている。それは遊矢自身が確認し、狩也本人も認めている。
死ぬということは同時に個人の魂の消失を意味する。
明らかな矛盾、どういうことなのか。

「じゃあ、なんで…」
「…同じ人間が産まれることはありえない…。それは転生でも同義、だから…彼は別の人間…?」
「ありえない!狩也は狩也だ!別人なわけないだろ!」

「なら、同じ人間なんだろうな」

「えっ…?」

部屋の扉から托都が入ってきた。
目は覚めたようだがあからさまに機嫌は宜しくない。深緑の目の奥が鬱々としている。

「托都!」
「もう大丈夫なのか?」

「…あぁ」

「―――同じ人間、というのはどういうことだい」

「言葉のままだが」

言葉の通りに捉えれば簡単かもしれない、しかし同じ人間でありながらその矛盾は拭えない。

「転生、というのは表面上の言葉でしかない。実際はあの事件ごとなかったことになったんだろうな」

「…バイオデュエリストか」

「そうだ。全てがなかったことになったことで、死んだという事実すらなくなった」

「結果、彼は存命。魂が消えるなんて事実もない、と」

なにが要因かは分からない。
だがどこかのタイミングでドリーミストに関連する事件はなかったことにされ、バイオデュエリストそのものが生まれた事実も消え失せた。
そのため、言葉上「転生した」と思っていた狩也が単に生きていた、となったのだろう。

既成事実を書き換えるなんてことはヌメロンコードを使わない限りできるはずがない。
そう、できるはずないと思っていた。

「そうか…トラヴィス…!」
「あ!」

「なるほど、そういうことか」

時間を操ることのできる男。
ヒカルの未完の聖杯を復活させることができるのなら事実を変えることなど造作もないはずだ。

「……間違いない、兄さんならできるはずだ。でも、そんなことをすれば…」

「…やっぱり、なにかあるんだな」

クロスの表情はとても重苦しそうなものだった。

「……兄さんは――――」


~~~


「先攻はもらおう。俺は、永続魔法《終極の幻想時計》を発動!」

トラヴィスの背に現れた淡く儚い巨大な時計。
先程慶太に勝利した最大の要因だが狩也がそんなことを知っているわけもない。

「カードを1枚伏せターンエンド」
《Hand:3》

「フィールドを空けたまま…ブラフか…?」

「さぁな。運試しでもしてみるがいい」

1ターンを終えた《終極の幻想時計》はそのターン起きたことをなかったことにする効果を持つ。
もちろんそれこそが当たり、伏せカードなどちょっとした小道具に過ぎない。それが見破れなければ一気に戦況はトラヴィス優勢になるだろう。

「俺のターン!俺は魔法カード《星屑の飛来》を発動!互いのフィールドにモンスターが存在しない時、手札の「コスモ・メイカー」2体を選択しエクシーズ召喚を行う!この時、使用するモンスターのレベルは7に統一される」

「通常召喚権は行使しないか…」

「手札のコズミック・アクシズとジャベリン・ベガをオーバーレイ!エクシーズ召喚!来い!《コスモ・メイカー ネヴラスカイ・ドラゴン》!」
《ATK:2600/Rank:7/ORU:2》

遥か彼方、宇宙の果てから飛来せし輝きの竜は翼を開き、目の前の驚異に対し威嚇するように咆哮する。
―――いつも戦う時と明らかに違う、明らかな敵意だ。

「行けっ!ネヴラスカイ!ダイレクトアタック!!」

「《終極の幻想時計》を前に攻撃か、悪くない」

「やっぱりそれが当たりか!」

「なに…?」

―――フィールドの時間が戻らない。
ネヴラスカイ・ドラゴンは攻撃姿勢を取り、そのまま宇宙の光を内包した激流を放つ。

「っ…罠発動、《時のブラック・ボックス》!デッキから「刻翔の琉鍵」と名のつくモンスターを守備表示で特殊召喚する。現れろ、《刻翔の琉鍵 ベート》」
《DEF:0/Level:2》

Ⅱと刻まれたモンスターは現れたと同時に激流をまともに受け、消滅する。

そんなことはどうでもいい。一体なにをしたのか。
《終極の幻想時計》に必要な《一の針》はデッキにある。何故効果が発動しなかったのか。

「《コスモ・メイカー コズミック・アクシズ》がエクシーズ素材になったターン、相手の表側表示のカード効果は発動できない!これ見よがしに見せびらかしてたら落とすのは容易いな!」

「ほう…」

ネヴラスカイ・ドラゴンのオーバーレイユニットと化した戦士は時計の針を鎖で封じ込め、その動きを封印していたのだ。

「あからさますぎるんだよソレ、次は破壊させてもらうぜ」

「―――確かに、これは俺の切り札であり新たな時を刻む存在。この針が6の刻を指す前に貴様に倒しきるとしよう」

「やれるもんなら、やってみろ!ターンエンド!」
《Hand:3》

時計が6を指すまであと4ターン。
厳密に言うならばあと3ターンで決着をつけるということだ。
狩也が実力者でありフィールドにネヴラスカイ・ドラゴンが健在な時点で、トラヴィスの劣勢は明らかなもの。一体どう追い詰めるというのか。

「俺のターン!…俺は手札から魔法カード《刻翔超越》を発動!手札からアレフ、ベート、ギーメルの三体を除外!」

「3体のモンスターを…!?」

《刻翔超越》。
自分フィールドに《終極の幻想時計》が存在する時、指定された数のモンスターを除外し「刻翔」と名のつくモンスターを特殊召喚する極めて珍しいカード。

慶太の時と同じ。3体のモンスターは次元の穴へ飲み込まれ、それを食らい尽くす竜が天へと飛び立つ。

「顕れよ!《刻翔竜 ヴリエミア・フォリア・ドラゴン》!!」
《ATK:0/Level:10》


~~~


女性は古びた本棚からずっしりと重量感を感じる赤い本を取り出し、ふぅ、と一息吐いた。

「姫様、進捗は?」
「…全然」
「ミドガルドの扉を開いたヒカルがいれば、簡単に閉じることができるはずなんだけどな」
「その通りだ、だがヒカルは今どこにいるかも分からない。…いや、お前が分からないならここで分かる奴はいないか」
「…」

薄い色の上着を着た黒髪の男は女性――リンの頭を軽く撫でて、一番上の段にある黒い本に手を伸ばす。

「おい、それは…」
「これで無理ならどうやっても無理だ」
「そうじゃない、居場所は分かるのか?」
「さっき姫様が言っていた、時間が切り取られた歪な空間だけを探せばすぐに見つかるはず。それにヒカルには特別な目印を付けてある」
「お前なぁ…」

呪龍アドルイン―――、彼はデュエルモンスターズの精霊そのものが人間化し人間界で独立した存在を持つモンスター。

精霊は、本来人間に姿を変えることはできない。元々人間体ならともかく龍や動物はまず不可能。
しかし彼はなんらかの力で人間化している、その理由はリンも記憶が曖昧だ。

呪龍の名に相応しく、呪術や呪い、オカルトと呼ばれる現象魔術を使いこなし、裏でヒカルを助けたりもする。
恐らく今回もその一端を見ることになるだろう。
彼は本のページを探し出して切り取り、奥の部屋で妖しく輝く紅い魔方陣に入り込む。

「やるしか、ないな」

ぼそりと呟いた後、頁はゆっくり中心へと落ちていった。


~~~


「…なんだ、あのドラゴン……」

星の竜と刻の竜が相対する。

禍々しい、そんなちゃちな言葉で片付けられるものではない、なにか恐ろしいオーラを纏い放つそれは身の美しさの中に狂気を隠し損ねた悪魔にも見えた。

「ヴリエミア・フォリア・ドラゴンの効果により、除外されたアレフとベート、ギーメルを墓地に戻すことでこのターン、3回の攻撃を可能にする」

「攻撃力0で一体何を…!」

「フッその台詞、さっきの奴も宣っていたぞ」

「慶太が…?」

慶太が負けた要因はあの永続魔法だけではなく、モンスターにもあったわけだ。狩也は妙に納得した。

そう、ヴリエミア・フォリア・ドラゴンは攻撃力を持たない代わりに与えるダメージは効果ダメージ、攻撃回数につき1回、1000ずつライフが削られていく。

だが今の狩也のフィールドにはそれを迎撃できるネヴラスカイ・ドラゴンが存在する。
攻撃宣言し、ダメージステップに入ればトラヴィスは間違いなく2600のダメージを受けることになる。

「本来ならば負けるのは俺だろう。だがここはすでに俺が支配した俺の世界、何人もそれを汚すことは叶わない!速攻魔法《タイムパラドックス》発動!デッキから《タイムパラドックス》一枚をゲームから除外し、ネヴラスカイ・ドラゴンをエクストラデッキに戻す」

「なんだと!?っ…!ネヴラスカイ!!」

過去の改変を意味するタイムパラドックス。
それを冠したカードによって、ネヴラスカイ・ドラゴンは次元の遥か先、あったはずの過去から消滅してエクストラデッキに舞い戻っていく。

これで狩也のフィールドはがら空き、次に来るのはヴリエミア・フォリア・ドラゴンによる攻撃だ。

「バトル!3000のダメージを受けるがいい、ジェネシス・ミラージュ!!」

「ぐっ…!!うぁああああ!!」
《Kariya LP:1000》

星の嵐は容赦なく狩也を飲み込み、灼熱の痛みで身を焦がす。

「ッ……」

立ち上がるのにも必死なほどに全身を太陽の熱が襲う。
一気に削られたライフポイントよりも体力の方が限界を、終わりを迎えようとしている。

「立ち上がるな、そのまま敗北を認めるがいい」

「…誰が……」

「そう。負けを認めろ、そうすれば俺が新たな世界に連れていってやろう」

「……は…?」

手を差し伸べるトラヴィスは優しげな表情で、子供に語りかけるような声で話し始めた。

"新たな世界に―――、共に往こう"

と。

それは間違いない、遊矢たちや友を裏切りこちら側につけという誘いだ。勧誘だ。
敗北し、膝をついたのなら、苦しみも卑しさも、浅ましさもない世界へ連れていこうと彼は言う。

常人なら手を摂りたくなるような楽園へのチケット。
そんなものが転がってきたのだ。

「悪くはないだろう?なんなら、貴様が恋い焦がれるあの少女の手を引いて来るといい」

「冗談じゃ、ねえな…!!」

「……」

「俺は負けない…負けるはずがない。こんなところで……――に」

―――━━━を倒す前に、負けるのは許されない。

トラヴィスは見抜いた。その裏側、言葉の裏側を。
そして納得した。
未完の聖杯が、何故目覚めたのか。

「…そうか。ならば勝つがいい!俺に勝ってみろ、そして道を掴むがいい!」

「そんなことは、言われる前から分かっている!!」

返答に思わず口角が上がる。
全て、全てがただ思い通りに運んでいることほど人間にとって快感になる物事はない。

「これで俺はターンエンド」
《Hand:0》 

戦前、トラヴィスは言葉を重ねれば乗っかってくる性格なのは風雅遊矢だけだと思っていた。
だが実際のところ目の前の彼もかなり直情的だ。
これには最早なにがあっても納得せざるを得ない。
互いが似ているが故に、自分に足りないものがもう一人にあった時、もう一人に対する嫉妬は黒く歪んで心の底に溜まっていく。

トラヴィス自身にも覚えがあった。

「俺のターン!!」

「…勝つと言うのなら進め、そして――――」

赤い目はまっすぐに狩也の内側の、心の中を見つめていた。








Next act→

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【あとがき】

今回の一言「今月のぐだぐだしーしー」
これはひどいぐだぐだぶり、正直反省してます。
中盤なのに勢いが圧倒的に足りないよな、世は悲しいですぞ!!(死亡)

狩也の不調が続く。酷いくらいに続く。
デュエルの話じゃなくて実際の体調が本当にすこぶる悪くて熱中症疑惑がかかってるんだけど、そんな中でもデュエルをしている辺りがどう考えてもデュエリスト。
そしてトラヴィスがブレねえ!!あれは間違いなく変態だッ!!助けて裸族が私を狩りに来た!!(狩也だけに!!)
実は相性の良さそう?な感じがムンムンしてくる二人だなぁこいつらって気がずっとしているんだ。
さぁて、托都が一話ぶりに喋った!これがIKIHAJIの一部だな!?あの托都がわりとガチでパニクってるから一回冷静にさせる回を描くべき、主にヒカルを使って、殴らせる。
遊矢は今回はまたずっと驚く側、主人公なのにいまだデュエル回が2回という少なさにワイ驚愕。まぁヒカルと托都も1回ずつだから多少はね?大丈夫大丈夫。
なんだか色々とすごいことになってきてるけど纏まってはいるから大丈夫よ、次回からは本気出す。
本気、だ、出そう…。

次回!狩也のブラックな感情が爆発しそうな予感しかしない!!
トラヴィス戦後半、激しいデュエルと感情がぶつかっています、が…衝撃の結末へ…!?


【予告】
Second Act.11「風に別離と裏切りを」


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ついに一人の回が来てしまったか…!!

前回も今回も、敵は俺に恨みでもあるのだろうか…全くわからん…。

いや、今回は恨みがあるんだろうな。

まさかあんなことになるなんて思わなかったからな…。

夜月…なんだか、申し訳ない気分だ…。


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【吹雪の世界で合流後3】


「二人は寝たか…一日長かったな…」

こんなに長い一日を過ごすことになるとは、今までで最も長く感じた…。

「さて、風呂に入るか…」

少し落ち着いて明日への鋭気を養うとしよう。
部屋からもう出てこないだろうから問題ないな、どうせ自分の部屋に戻る気もない。

しかしあの場でバラそうと考えるなど驚きを通り越して恐怖だぞアレは。

「ヒカルは底が知れんな」

それが魅力でもある、か。

「…明日は忙しくなるぞ。おやすみ、二人とも」


END

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【吹雪の世界で合流後4】


「…遊矢起きてるか?」
「…うん」
「なんか合宿とか泊まりみたいだな」
「まぁ実際お泊まりだもんな~」
「不謹慎だけど、こうしているとすごく楽しいって思うし…なんだかワクワクするな
「枕投げでもする?」
「托都が起きるからダメだろ」
「じゃあ、えいっ」
「うひゃあぁ!?つめった!!」
「いえーい!引っ掛かった―!」
「この~…お返しだっ!」
「ひ~~!!足つめてえ!うぐぐ…なら俺も!」
「っ~!食らえ!」
「痛い痛い痛い!!つねってるつねってる!」
「ならこれで!」
「アッツイ!逆に暑い!わーっ!俺もお返しにとりゃー!!」

~~~

「………」

頼む、早く寝てくれ。


END