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Answer.21「二対の翼」
「………」
「…!遊矢!」
「…ここは……ヒカルたちは…?」
「…あの城を止めに行った」
「城……?」
城って、なんの話だっけ……。
城……、
「そうだ!!」
…ない、フリューゲルアーツも、
「ホープ・オブ・ソードも…」
~~~
『キひひ、ハハひ』
「さて、どうしてくれるか」
「お人好しもここまで来たら及第点だ。反撃と行くぞ」
「分かってる」
でもその前に……。
「遊矢、分かるか?」
「…うん」
「よし、城から出て、アミのところへ行ってほしい。大丈夫、俺は強いから」
「任せて、いいのか?」
「あぁ、俺たちの未来も賭けてるんだ。今更重荷が増えたくらいじゃ動じねえよ」
それに、コイツの無事の確保はアミから頼まれてる。
―――エース…?あの遊矢似の?
―――お願いします!エースを、遊矢を助けてあげてください。
頼まれたなら、それなりにこなさないとな。まだ借りが残ってるんだ、これで一つ返したことにしてほしいものだな。
「任せたぞ、センパイ」
「…任された!」
「さて、話し合いが通じるような相手
には思えんが」
『オ前たちガキたのハ、我々ニとって僥倖…爆破サれた屈辱ヲ、晴らすトき!』
「まさか貴様、テラとあの女人形か!」
「残骸同士を合体させて守護者にしてたのかよ、めんどくさい真似してくれる」
しかもよりにもよってこの二人かよ…濃いな。
『ヒひははハ!記憶のきろクにテまどってイるなァ…ならバ、その間に潰ス!』
「デュエルか」
「そう来るとは思ってたぜ、受けて立つ!」
しかし、記憶の記録…?一体なんのことだ?
『フはは…調整完了……ここからは、完全体の我々がお相手しましょう!』
「うわ…」
「引いてる暇はない、やるぞ!」
「おう!アーマードコアディスク、展開!」
『ふんッ!デュエルディスク、セッティング!ライフはハンディとして私が8000をもらうぞ!』
「それくらいのハンデなら、むしろちょうど良いくらいだ」
「とか言ってあっさり倒されてくれるなよ」
「お互い様だ」
コイツを倒せばヴェリタスは尻尾を出すはず。
遊矢のフリューゲルアーツとカード、取り返させてもらう!
「「「デュエル!!」」」
~~~
《ここで、番組編成を変更し、緊急番組をお送りいたします》
《ご覧ください!ハートランドシティ上空にあるはずの謎の城がここ、イギリスでもこんなに鮮明に確認できます!これは一体!?》
《世界各国で城が現れたというのでしょうか、各地で起きる暴動やテロも加え、人々の不安は募る一方です》
「世界中で…争いが…」
「あの城を止めなきゃならないんだよな」
「うん…」
「ヒカル…托都……」
城を止められるのは、ヒカルたちだけ、か。
「俺もヒカルに追い付かなきゃな!」
「遊矢……」
「だって良いとこなしじゃ、カッコ悪いじゃん?」
「行かないで!」
「…!アミ?」
「あんな危険な目に遭わせられない、今の遊矢はホープ・オブ・ソードもないんだよ!?」
…そうだった、今行って勝てる保証はないよな。
「二人を信じて!きっと帰ってくる!ヒカルさんが約束してくれたから!!」
「ヒカルが…!」
なら、俺も信じなくちゃな。
「…分かった!信じよう、二人を!」
~~~
「先攻はもらうぞ!俺は《カオス・パージ フラムセイバー》を特殊召喚!コイツは自分フィールドにモンスターがいない時、特殊召喚できる!」
《ATK:0/Level:8》
「そして、フラムセイバーを特殊召喚したことで《カオス・パージ アクアランサー》を特殊召喚!」
《ATK:1000/Level:8》
早速だが、一気に決めさせてもらう!!
「レベル8のフラムセイバーとアクアランサーでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ《ギャラクティック・カオス・ドラゴン》!」
《ATK:3000/Rank:8/ORU:2》
「早速、か」
『………』
「手札を全て伏せ、ターンエンド!」
《Hand:0》
ヘイルはともかく厄介なのはテラの方。しかもくっついてるとなれば何してくるかなんて分かったものじゃない。
『私のターン!私は永続魔法《アルケミー・アポカリプス》を発動!このカードは、私のターンに1度、《アルケミートークン》を1体、相手フィールドに特殊召喚する!』
「相手フィールドに…?」
《ATK:0/Level:1》
趣味の悪い奴……しかもトークン戦術か、俺も托都も正直「アレ」を思い出して結構キツいな…。
『そして相手フィールドに《アルケミートークン》が存在する時、永続魔法《原始錬金術》が発動!デッキもしくはエクストラデッキから「原始錬金」と名のつくモンスターを特殊召喚する』
「原始錬金、ってことは…」
『まずは世界樹をかじる大蛇、土を司る魔物…現れよ!《原始錬金獣 ニーズヘッグ・マグナ!』
《ATK:3500/Level:9》
「ニーズヘッグ・マグナ…また見えたか…」
テラが使っていたモンスター、これはつまり…あと3体が何らかの形で召喚されるということだな。
『ニーズヘッグ・マグナの効果発動!召喚に成功した時、相手モンスターの攻撃力を吸収する!』
《ATK:6500》
『デュエルはバトルロイヤルルール、全員が最初のターンを終えるまで攻撃はできない。残念だ。カードを1枚伏せ、ターンエンド』
《Hand:3》
トークンの存在だけが気がかりだが、今のところは大丈夫…かなぁ…。
「俺のターン、ドロー!」
「罠発動!《オーバーレイ・ユニット・バック》!」
「!」
「俺のフィールドのモンスターエクシーズ1体選択し、そのオーバーレイユニットを任意の数だけ取り除くことで、取り除かれたモンスターを相手フィールドに特殊召喚し、俺はカードを2枚ドローする!」
《ORU:0》
『仲間同士で手を取り合い…悪くはない…』
これでフィールドにモンスターを呼び出す!
「托都!」
「…オーバーレイユニットとなっていたフラムセイバー、アクアランサーをフィールドに特殊召喚!」
《ATK:0/Level:8》
《ATK:1000/Level:8》
「そしてカードを2枚ドロー!」
これで手札の補充もした、さぁ頼んだぞ。
「レベル8のフラムセイバーとアクアランサーでオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!降臨しろ!《機械堕天使 シャドウ・ハルシオン》!」
《ATK:3000/Rank:8/ORU:2》
「カードを1枚伏せ、魔法カード《シャドウ・トランス》を発動!次の俺のターンのスタンバイフェイズまでシャドウ・ハルシオンは効果の対象にならない。ターンエンドだ!」
《Hand:4》
これでシャドウ・ハルシオンに手は出せなくなった。
…このデュエル、もしアイツが残り3体を本当に出してくるならシャドウ・ハルシオンの相手効果吸収は必ず役立つはず。
せめて奴の4体を倒すまでは、意地でも死守してみせなきゃな。
「俺のターン!ギャラクティック・カオスを素材に、ギャラクシーカオスエクシーズチェンジ!来い!《ギャラクシー・カオス・ダークネスドラゴン》!!」
《ATK:4000/Rank:8/ORU:1》
しかし、ニーズヘッグ・マグナを突破するとなれば相当難しいのは目に見えてる。
それにまだこのトークンの正体がよく分かってない。
ならまずは、オーバーレイユニットを使わずに破壊を試みる…!
「ギャラクシー・カオスで、ニーズヘッグ・マグナを攻撃!ヴァーミリオンストリーム!!」
『くっ…!《原始錬金術》の効果で召喚されたニーズヘッグ・マグナは、戦闘では破壊されない』
《guardian Life:7500》
破壊はできない、か。
でも、ライフへのダメージを通すなんて…膨大なライフがあるならそれだけ余裕があるのか、なにか裏があるか…それとも…。
「ターンエンド!」
《Hand:3》
~~~
「……どうして、私なの。お父さん」
「私はお前の父ではない。ホムンクルスの分際で、問いは許可を得てから質すがいい」
「………」
「だが、そんなホムンクルスだからこそ教えてやろう。人間は脆い生き物だ、万物においてこれほど脆い存在はない。だが、ホムンクルスには代替えが利く。同じ素体から何体も作り出せる」
ホムンクルスを、作る……。
もしかして…!
「私の未完の聖杯を、別のホムンクルスに移して使い回そうとしてるの…!?」
「よく分かったな。その通り、彼は代替えしなくてもいい特別なものだったが、少々我が強すぎた。しかもまさかな、まさかホムンクルスに未完の聖杯が宿るなど誰が想像したか!」
「そんな…じゃああの部屋にいたホムンクルスたちは…」
「お前の代わりだ。未完の聖杯さえあれば肉体などどれでも構わん。ましてや娘を名乗った失敗作が!こんなものを持ち合わせているとはな!!」
…お父さん……どうして。
「さぁ、城のホムンクルスたちを起動させよう。侵入者はアニマが排除したはず。ならば――――!?」
「…お父、さん…?」
「馬鹿な…ホムンクルスが、焼失したのか!?誰がそんな真似を!…!!城の防衛システムは…!?今、なにをしている…!!」
ホムンクルスが焼失…!もしかして、遊矢さんたちが…!?
「……異世界の犬と、救世の装甲……だと!?」
「!!」
ヒカルさん、托都さん!?
~~~
『私のターン!!』
《なにをしている!!》
『…!マスター…』
「ヴェリタス…!」
尻尾出したか…!!この城の中からか…?
《直ち、未完の聖杯を回収し殲滅せよ。記憶の記録は終わっているだろう?》
『…あぁ、そうでした。デュエルに集中しててヘイルの頭脳に任せきりでしたので』
「さっきから、記憶の記録とは一体…?」
「なにか仕掛けてくるか…」
《ガーディアンの使命を》
『ええ、果たしてみせましょう』
「!待て!ヴェリタス!!…くっ」
なんだったんだ…アイツは…!!だが、何かしてくるなら油断はできない…!
『私は、このスタンバイフェイズに《アルケミートークン》の効果を発動!』
「なにっ!?っ…うぁぁあっ!!」
《Hikaru Life:2000》
「ヒカル!!」
「ぐ…一体何が…」
『相手フィールドに存在する《アルケミートークン》は私のターンのスタンバイフェイズ毎に、そのプレイヤーのライフを半分にする』
「フィールドから取り除かない限り毎ターンライフを削るトークンだと…!?」
ふざけるな、冗談がキツいぞこれは…。
つまりは自分でなんとかするか向こうから攻撃されなきゃいけないっていうことになる。そもそも俺のデッキじゃこのトークンを破壊すること自体が難しいって言うのに。
『あぁ、言い忘れていた。フィールドから《アルケミートークン》が離れた場合、プレイヤーは2000のダメージを受ける』
「なんだと!?」
「手をこまねくしかないということか…!」
『あぁ、1ターンに1度《アルケミートークン》を相手フィールドに特殊召喚できるな。なら、次はお前だ』
《ATK:0/Level:1》
「ッ…!」
フィールドからトークンを取り除けば負ける、でも取り除かなければピンチは迫ってくる。
どうする……!?
『さぁ、なんとかできるか?「天才」』
「……お前…」
『知っているぞ、類稀な才能を開花させ、世界中にその才能を魅せようとする者。この状況もさぞ素晴らしい戦略で乗り越えて行くのだろう?』
「うるせえ…」
「!ヒカル…」
「俺は、別に天才とかじゃない!!」
『………』
見え透いた挑発で倒せると思い上がられても困る。
それは誰が見ても分かることだ。
『ならば、その背中はなんなのだろうな?』
「…なにを言っている…」
『貴様達に共通することだ、逃げ隠したところで何になると言う?』
「わけの分からんことを、一々説明してみせろ」
『ふ、ふハハははは!ならバ、その目デ確かめるガいイ!!』
「っ!?」
「霧……!?」
前が見えない…!!なんの小細工だ、これは……!?
『さぁ、始めよウ。君達は、帰っテ来られるカ…?』
~~~
「………?」
ここは、…公園か……?
「…?」
さっきまでなにをしていたんだ…、まさか夢遊病などということはないと思いたいが。
「夕刻か、また遊矢がうるさくなる前に帰らないとな」
確か今日は一人だと言っていたはず。なにもできないのを一人でおいておくとは、あの親も末恐ろしいものだ。
「じゃあね~!」
「またあした~!」
「…………、…子供…?」
一人か。誰も迎えに来ないとは、同情するぞ。あぁ、本当に。
「おい、」
「…」
「そろそろ子供は帰れ、親はどうした」
「……来ない」
「…そうか」
やはりか。
そういうことが、俺以外にも本当にあるんだな。
「おにいちゃんは待ちつづけるの?」
「俺か?俺は帰る、帰る場所があるからな」
「…うそだよ」
「…?」
「おにいちゃんの帰る場所って、どこ?」
根掘り葉掘り聞く子供だな…。
……あれ、前にも同じことが…なかったか…?
「おにいちゃんは帰れない、どこにも帰る場所なんてないんだ」
「なにを…」
「にげたんだ、ねえ…また始めようよ、復讐劇」
「―――!!」
これは…!まさか、そんなことが…!?
「逃げないでよ。あのときも逃げられちゃった、だからこんどは逃がさない」
「…お前は、一体何者だ」
「ぼくはおにいちゃんだよ。おにいちゃんがずっとかくしてた復讐心、絶望、ぜんぶぜーんぶもってるんだ!」
確か…リリーヤといったか、それが勝手に作った幻想とばかり考えていたが…今こうして目の前にいる、ならば今は現実か…?
「ねえ、まずはだれにしようか!あおいかみの弟さん?パパもいいし、ほんとのパパでもいいよ?」
「黙れ!今更すぎる誘いだ、生憎今はそのような事に興味はない」
「うそつき」
「誰が嘘を言うものか!」
帰る場所ができた今、子供の戯れ言に付き合う暇は…。
「おにいちゃんはかくしてるよ、いつだってそう。めをとじればうかんでくる、復讐のためだけにいきてきたあの日々が」
「………」
言う通りだな、確かにあの5年間を復讐のためだけに生きていた。
だが…。
「あんまりのってくれないんだね。じゃあしかたない、おしえてあげる」
「…?」
「もしもー、夜月おねえちゃん?だっけ?おねえちゃんが、ゆうやのパパのせいでしんじゃったとしたら…どうする……?」
「…なにを、夜月は……」
「てをくだしたのはおにいちゃんだけど…げんいんはあのひと。だってあのひ、あの事故をおこしたのは――――パパのさしがねなんだから」
「――!?」
あれが寄越した差し金が、夜月を…?だが、俺が介錯したのは間違いのない事実。
あの事故を起こさせて、怪我を負わせたのが…それだったのか…?
「たしか、ちからをてにしたころのおにいちゃんって、トラウマで血がにがてだったんだよね。それでまたグレンがかってにおにいちゃんをうごかしちゃうから、夜月おねえちゃんは死んじゃった」
「原因不明の事故…夜月の公の死因はそれだ。しかしな、信憑性のない話を誰が信じる…」
「夜月おねえちゃんはパパのはいごかんけいをさぐってたんだよ?けされてももんくはいえないよね」
「…それは…」
そう、かもしれないが……。
「それがしんじつだよ、じゃああらためて、おにいちゃんの帰る場所って、どこ?」
こんな話を信じる必要がどこにある…!
だが夜月の事故は、確かに謎も多かった。なにも残さないままに終わったのも事実。それでも……、それでもまさかあれが人の命をそこまで軽んじているわけが…、
…ないと言いきれるか…?
「っ…」
「……ふふっ」
「俺はまた…ここから逃れられないのか…!」
「ほの暗い闇の中に招待してあげる」
「…!?なん、だ…!?」
「のみこまれちゃえ、おにいちゃんはまた、ひとりぼっちに逆戻りするんだ」
「…!」
どうして、また……!
一人には…なりたくない……。
「……ヒカル…!」
……?なんで、今…アイツを…?
~~~
「すげーよなぁ…天才だって」
「カイト様から指南を受けるらしいぜ」
「ママのこと追っかけてるだけのガキのくせに」
「マセてやがるし、生意気だよなぁ」
言わないで、そんなこと言わないで。
「ホントうぜーよな」
「天才なんだってよ」
「先公に持て囃されてるだけだろ?」
「マジうぜー」
「女みてえだしな」
違うんだ。
俺はそんなものじゃなくて。
「カイトからの推薦でプロリーグ入りだってよ」
「努力したことない天才サマなんだろーよ」
「努力してプロ入りした俺達のことわかっちゃいないんだろうな」
分からない、そんなことは。
でも努力した、頑張ってデュエルを覚えて、それをもっと努力しただけ。
それのどこがいけないことなんだ…。
精一杯努力したつもりだ、天才なのは俺にデュエルを教えたシアラの方。俺は、本当はそんなものじゃない。
「本当に、お前は孤高の天才だ。素晴らしいよ」
「違う、こんなものは…」
「生まれ持った才能!そしてその神秘!どれをとってもお前は人間離れしている!さぁ、誇りに思え、素晴らしいことに違いなかろうに」
「俺は天才でもない、こんな力も望んで手にしたわけじゃない!」
「いや、お前が望んだ力だよ」
「違う……」
望んだわけじゃない、勝手に現れただけで、これは…違う…!
「誰より力を望んでいたじゃないか、弟を守るために。そうだろう?」
「……」
「おめでとう、お前は晴れて化け物だ」
「!」
化け物…?アーマードは、誰かを守る力じゃないのか…?
「人ならざる力を持つ者。その手で誰かを守れたか?弟すら保身で殺すお前が」
「ッ!!黙れ貴様!」
「さぁ思い出せ、天才と持て囃されては卑下され、我が身の可愛さ極まった自分を」
ヒカリは死んでない、殺してない、だってあの時は仕方なかった。俺にはあぁすることしかできなかった。
天才じゃない、努力もした。それなのにどうして…!!
――人の気持ちが分からない化け物だコイツは!
――天才は自分が大事らしいぜ
――俺達のこと考えたこともねえくせに!
「考えたことないよ…そんなこと…」
自分のことしか考えてないから、周りの気持ちなんて分かるものか…!
「君はやっぱり、あの時俺が言った言葉に、否定しかできなかったんだな」
「…!誠…!?」
「そういうところ、俺にそっくりだ」
―――違うよ。
~~~
目を閉じれば底無しの深淵…最早逃げ場はないのか。
「おにいちゃんの帰る場所はここなんだよ、いまもむかしもかわらないでしょ?」
「あぁ、そうだな…」
確かに、正しいな。今更光を追い縋る必要がどこにある。
「それでも」
「?」
「これは俺が背負うべき罪だ、他の誰かに投げ出すことはできない」
「…わるいのはパパだよ?」
「ふん…あの男に今更言って聞かせたところでなにになる。あの状態なら夜月は助かっていた、それを死に至らしめたのは事実俺だ。地獄まで背負っていくのが俺以外に誰がいると言う」
「……かわっちゃったんだね、おにいちゃん」
「おかげさまで」
どこぞのお人好し二人に、当てられたのかもしれんな。
「もうさびしくないんだよね」
「一人ではないからな」
「うん。あのおにいちゃんがいっしょにいてくれるって、いったもんね」
「!」
――こんな俺みたいに役にも立たない奴でも傍にいたら、寂しくなくなるのか…?
だから、あの名前が出たのか。
「そう、かもしれないな」
「じゃあ、おにいちゃんはどこに帰るの?どこかに、帰れるの?」
「俺は帰る。二人のいる場所…光のある場所に」
「……ぼくもこれでかえれるんだね。よかった!」
三年越し、か。
それだけ俺はまだ乗り越えていかなければならないものもある。なら、大丈夫だ。
「じゃあね、あのおにいちゃんのこと、ささえてあげてね」
「言われるまでもない」
「うん!ありがとう、未来のぼく!未来を守ってね!」
…行くぞ。
帰る場所を、守る戦いに。
~~~
「誠、それは違う」
「ふーん?」
「俺は俺なんだ。俺は確かに自分勝手で人の気持ちなんて分からない、それでも必死に分かり合おうとしてるんだ」
だって、そうじゃなかったら―――、
「遊矢と、分かり合えなかったから」
「…遊矢ちゃんのこと、好きなんだね」
「……うん。遊矢が好きだから、みんなが好きだから、俺は頑張れる」
分かり合うことができなかった俺の精一杯の努力。
「もし俺が天才だとしても、分からないことはいくらだってある。誰からも理解されなくてもいい、それを埋めていくのは努力じゃないのか?」
「そうだな。確かにヒカルちゃんの言う通りだ」
「身勝手でもいい、それでも誰かを守りたい。一生逃れられない罪を抱いてでももう一度、あの時の結末を次は繰り返さないために!」
「……あぁ、いいね。それでこそ、君のあるがままだ」
あるがまま、俺が自分のために、誰かを守るんだ。
それは強さと弱さ、どちらにも繋がる大事な思いだと気付いていたんだ。
「さぁ、鏡ちゃんと俺のために、世界を、任せたよ」
「誠……」
「ヒカルの、あるがままに、戦うんだ」
「……あぁ!!」
ありのままの自分で、もう一度―――!!
「遊矢に、謝らなきゃな」
~~~
『……ッ!?バカな、心の闇に打ち勝っただと!?』
「全く……なにをしていた…」
「本当に、めんどくさい追体験だよ…」
「奇遇だな。俺もだ。さぁ、どうする?」
「もちろん反撃…だけじゃないな」
いや、それだけで済むかよ。
「「逆襲するぞ!」」
『っ…!!きっさまらァッ!!』
Next Answer→
==================
【あとがき】
今回の一言、「精神攻撃は基本」。
托都に対する精神攻撃が3年前と対して変わらないっておかしくないですか…(震え声)
ただし今回は答えをちゃんと得ていた模様。和解した托都に迷いなどないわ、あと夜月よりヒカルの方が好きだもんなお前。
ヒカルのSAN値がヤバイ、まさかすぎる誠登場はさすがに誰にも予測できないだろうなと。そして弟ネタはやっぱり地雷だった、覚醒体が誤って復活しなかっただけまだいいか。覚醒体が出てきたら手がつけられませんし…。
遊矢出たよ!!やったね遊矢!!出番あったよ!でもちょい役だよ!!是非もないネ☆
そしてホムンクルス燃やされて結果的にヒカルをほしがるヴェリタス、そして燃やした当事者はヒカル。ヴェリタスカワイソス(´・ω・`)
しかしルクシアちゃんの危機には変わりないし、ヴェリタスの居場所は分からずじまいと最早悲しみの向こう。
世界中で城が見えてる現象はつまり、実体はハートランド上空にあるけど、立体映像として人の目からはハートランド上空にある城と同じものが見えている、感覚も然り、つまり城が落ちてきたら人類\(^o^)/になる。
次回は驚くべき真実が!?え、ちょ、つまり死亡フラグ…?
【予告】
Answer.22「夢は願いとなりて」
~~~
ついに俺たちのタッグデュエルだってよ托都!なんだか楽しいな!
あ、あぁ…しかし、この状況だぞ?喜べるか?いや俺にはできない。
もしかして托都はタッグデュエルとか苦手か?
話を聞け、別に苦手視してるわけではなく、ただ状況が…。
もしかして俺が苦手…?
話を聞けスイーツ頭ッ!!
~~~
【風雅邸、テラ襲撃後…】
「托都…?」
「………」
「おーい」
「………」
「ちょっとだけって約束…」
「………」
あ、あれーっ!?
どういうことだ!?なんでこいつはこんなにあったかいんだ!?これが子供体温…!?
まさか、17だろう!?
しかも夏場なのになんで汗一つかいていないとは…。人間の人体構造を無視しすぎではないか…?
それに夏とはいえ、肌を露出させ過ぎればおかしな輩に付きまとわれでもしそうな…いや、これ以上は俺がおかしな輩を疑われかねない…!この絵面は少しどころ犯罪すぎる!
「すまん…なんかすまん…」
「突然なんだよ…つか、ぎゅーっとするな息苦しい、あと厚着しやがって暑い」
「ぐぅの音も出んことを…っ!?」
「仕返しだっ!」
「やめろ息苦しい!おい!」
「だって、されるだけとか損してるから」
「は、はぁ……?」
「ヒカルくーん?入っても………」
「……」
「……」
「…あらー、そういう……お邪魔しました、またあとでね!」
「…あちゃー」
「あちゃーで済むかスイーツ頭!!」
「いったぁー!?」
「……頼むから勘違いしてくれるなよ…」
END
※深夜0時~5時までのコメントや読者登録はマナー違反です。おやめください。
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Answer.21「二対の翼」
「………」
「…!遊矢!」
「…ここは……ヒカルたちは…?」
「…あの城を止めに行った」
「城……?」
城って、なんの話だっけ……。
城……、
「そうだ!!」
…ない、フリューゲルアーツも、
「ホープ・オブ・ソードも…」
~~~
『キひひ、ハハひ』
「さて、どうしてくれるか」
「お人好しもここまで来たら及第点だ。反撃と行くぞ」
「分かってる」
でもその前に……。
「遊矢、分かるか?」
「…うん」
「よし、城から出て、アミのところへ行ってほしい。大丈夫、俺は強いから」
「任せて、いいのか?」
「あぁ、俺たちの未来も賭けてるんだ。今更重荷が増えたくらいじゃ動じねえよ」
それに、コイツの無事の確保はアミから頼まれてる。
―――エース…?あの遊矢似の?
―――お願いします!エースを、遊矢を助けてあげてください。
頼まれたなら、それなりにこなさないとな。まだ借りが残ってるんだ、これで一つ返したことにしてほしいものだな。
「任せたぞ、センパイ」
「…任された!」
「さて、話し合いが通じるような相手
には思えんが」
『オ前たちガキたのハ、我々ニとって僥倖…爆破サれた屈辱ヲ、晴らすトき!』
「まさか貴様、テラとあの女人形か!」
「残骸同士を合体させて守護者にしてたのかよ、めんどくさい真似してくれる」
しかもよりにもよってこの二人かよ…濃いな。
『ヒひははハ!記憶のきろクにテまどってイるなァ…ならバ、その間に潰ス!』
「デュエルか」
「そう来るとは思ってたぜ、受けて立つ!」
しかし、記憶の記録…?一体なんのことだ?
『フはは…調整完了……ここからは、完全体の我々がお相手しましょう!』
「うわ…」
「引いてる暇はない、やるぞ!」
「おう!アーマードコアディスク、展開!」
『ふんッ!デュエルディスク、セッティング!ライフはハンディとして私が8000をもらうぞ!』
「それくらいのハンデなら、むしろちょうど良いくらいだ」
「とか言ってあっさり倒されてくれるなよ」
「お互い様だ」
コイツを倒せばヴェリタスは尻尾を出すはず。
遊矢のフリューゲルアーツとカード、取り返させてもらう!
「「「デュエル!!」」」
~~~
《ここで、番組編成を変更し、緊急番組をお送りいたします》
《ご覧ください!ハートランドシティ上空にあるはずの謎の城がここ、イギリスでもこんなに鮮明に確認できます!これは一体!?》
《世界各国で城が現れたというのでしょうか、各地で起きる暴動やテロも加え、人々の不安は募る一方です》
「世界中で…争いが…」
「あの城を止めなきゃならないんだよな」
「うん…」
「ヒカル…托都……」
城を止められるのは、ヒカルたちだけ、か。
「俺もヒカルに追い付かなきゃな!」
「遊矢……」
「だって良いとこなしじゃ、カッコ悪いじゃん?」
「行かないで!」
「…!アミ?」
「あんな危険な目に遭わせられない、今の遊矢はホープ・オブ・ソードもないんだよ!?」
…そうだった、今行って勝てる保証はないよな。
「二人を信じて!きっと帰ってくる!ヒカルさんが約束してくれたから!!」
「ヒカルが…!」
なら、俺も信じなくちゃな。
「…分かった!信じよう、二人を!」
~~~
「先攻はもらうぞ!俺は《カオス・パージ フラムセイバー》を特殊召喚!コイツは自分フィールドにモンスターがいない時、特殊召喚できる!」
《ATK:0/Level:8》
「そして、フラムセイバーを特殊召喚したことで《カオス・パージ アクアランサー》を特殊召喚!」
《ATK:1000/Level:8》
早速だが、一気に決めさせてもらう!!
「レベル8のフラムセイバーとアクアランサーでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ《ギャラクティック・カオス・ドラゴン》!」
《ATK:3000/Rank:8/ORU:2》
「早速、か」
『………』
「手札を全て伏せ、ターンエンド!」
《Hand:0》
ヘイルはともかく厄介なのはテラの方。しかもくっついてるとなれば何してくるかなんて分かったものじゃない。
『私のターン!私は永続魔法《アルケミー・アポカリプス》を発動!このカードは、私のターンに1度、《アルケミートークン》を1体、相手フィールドに特殊召喚する!』
「相手フィールドに…?」
《ATK:0/Level:1》
趣味の悪い奴……しかもトークン戦術か、俺も托都も正直「アレ」を思い出して結構キツいな…。
『そして相手フィールドに《アルケミートークン》が存在する時、永続魔法《原始錬金術》が発動!デッキもしくはエクストラデッキから「原始錬金」と名のつくモンスターを特殊召喚する』
「原始錬金、ってことは…」
『まずは世界樹をかじる大蛇、土を司る魔物…現れよ!《原始錬金獣 ニーズヘッグ・マグナ!』
《ATK:3500/Level:9》
「ニーズヘッグ・マグナ…また見えたか…」
テラが使っていたモンスター、これはつまり…あと3体が何らかの形で召喚されるということだな。
『ニーズヘッグ・マグナの効果発動!召喚に成功した時、相手モンスターの攻撃力を吸収する!』
《ATK:6500》
『デュエルはバトルロイヤルルール、全員が最初のターンを終えるまで攻撃はできない。残念だ。カードを1枚伏せ、ターンエンド』
《Hand:3》
トークンの存在だけが気がかりだが、今のところは大丈夫…かなぁ…。
「俺のターン、ドロー!」
「罠発動!《オーバーレイ・ユニット・バック》!」
「!」
「俺のフィールドのモンスターエクシーズ1体選択し、そのオーバーレイユニットを任意の数だけ取り除くことで、取り除かれたモンスターを相手フィールドに特殊召喚し、俺はカードを2枚ドローする!」
《ORU:0》
『仲間同士で手を取り合い…悪くはない…』
これでフィールドにモンスターを呼び出す!
「托都!」
「…オーバーレイユニットとなっていたフラムセイバー、アクアランサーをフィールドに特殊召喚!」
《ATK:0/Level:8》
《ATK:1000/Level:8》
「そしてカードを2枚ドロー!」
これで手札の補充もした、さぁ頼んだぞ。
「レベル8のフラムセイバーとアクアランサーでオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!降臨しろ!《機械堕天使 シャドウ・ハルシオン》!」
《ATK:3000/Rank:8/ORU:2》
「カードを1枚伏せ、魔法カード《シャドウ・トランス》を発動!次の俺のターンのスタンバイフェイズまでシャドウ・ハルシオンは効果の対象にならない。ターンエンドだ!」
《Hand:4》
これでシャドウ・ハルシオンに手は出せなくなった。
…このデュエル、もしアイツが残り3体を本当に出してくるならシャドウ・ハルシオンの相手効果吸収は必ず役立つはず。
せめて奴の4体を倒すまでは、意地でも死守してみせなきゃな。
「俺のターン!ギャラクティック・カオスを素材に、ギャラクシーカオスエクシーズチェンジ!来い!《ギャラクシー・カオス・ダークネスドラゴン》!!」
《ATK:4000/Rank:8/ORU:1》
しかし、ニーズヘッグ・マグナを突破するとなれば相当難しいのは目に見えてる。
それにまだこのトークンの正体がよく分かってない。
ならまずは、オーバーレイユニットを使わずに破壊を試みる…!
「ギャラクシー・カオスで、ニーズヘッグ・マグナを攻撃!ヴァーミリオンストリーム!!」
『くっ…!《原始錬金術》の効果で召喚されたニーズヘッグ・マグナは、戦闘では破壊されない』
《guardian Life:7500》
破壊はできない、か。
でも、ライフへのダメージを通すなんて…膨大なライフがあるならそれだけ余裕があるのか、なにか裏があるか…それとも…。
「ターンエンド!」
《Hand:3》
~~~
「……どうして、私なの。お父さん」
「私はお前の父ではない。ホムンクルスの分際で、問いは許可を得てから質すがいい」
「………」
「だが、そんなホムンクルスだからこそ教えてやろう。人間は脆い生き物だ、万物においてこれほど脆い存在はない。だが、ホムンクルスには代替えが利く。同じ素体から何体も作り出せる」
ホムンクルスを、作る……。
もしかして…!
「私の未完の聖杯を、別のホムンクルスに移して使い回そうとしてるの…!?」
「よく分かったな。その通り、彼は代替えしなくてもいい特別なものだったが、少々我が強すぎた。しかもまさかな、まさかホムンクルスに未完の聖杯が宿るなど誰が想像したか!」
「そんな…じゃああの部屋にいたホムンクルスたちは…」
「お前の代わりだ。未完の聖杯さえあれば肉体などどれでも構わん。ましてや娘を名乗った失敗作が!こんなものを持ち合わせているとはな!!」
…お父さん……どうして。
「さぁ、城のホムンクルスたちを起動させよう。侵入者はアニマが排除したはず。ならば――――!?」
「…お父、さん…?」
「馬鹿な…ホムンクルスが、焼失したのか!?誰がそんな真似を!…!!城の防衛システムは…!?今、なにをしている…!!」
ホムンクルスが焼失…!もしかして、遊矢さんたちが…!?
「……異世界の犬と、救世の装甲……だと!?」
「!!」
ヒカルさん、托都さん!?
~~~
『私のターン!!』
《なにをしている!!》
『…!マスター…』
「ヴェリタス…!」
尻尾出したか…!!この城の中からか…?
《直ち、未完の聖杯を回収し殲滅せよ。記憶の記録は終わっているだろう?》
『…あぁ、そうでした。デュエルに集中しててヘイルの頭脳に任せきりでしたので』
「さっきから、記憶の記録とは一体…?」
「なにか仕掛けてくるか…」
《ガーディアンの使命を》
『ええ、果たしてみせましょう』
「!待て!ヴェリタス!!…くっ」
なんだったんだ…アイツは…!!だが、何かしてくるなら油断はできない…!
『私は、このスタンバイフェイズに《アルケミートークン》の効果を発動!』
「なにっ!?っ…うぁぁあっ!!」
《Hikaru Life:2000》
「ヒカル!!」
「ぐ…一体何が…」
『相手フィールドに存在する《アルケミートークン》は私のターンのスタンバイフェイズ毎に、そのプレイヤーのライフを半分にする』
「フィールドから取り除かない限り毎ターンライフを削るトークンだと…!?」
ふざけるな、冗談がキツいぞこれは…。
つまりは自分でなんとかするか向こうから攻撃されなきゃいけないっていうことになる。そもそも俺のデッキじゃこのトークンを破壊すること自体が難しいって言うのに。
『あぁ、言い忘れていた。フィールドから《アルケミートークン》が離れた場合、プレイヤーは2000のダメージを受ける』
「なんだと!?」
「手をこまねくしかないということか…!」
『あぁ、1ターンに1度《アルケミートークン》を相手フィールドに特殊召喚できるな。なら、次はお前だ』
《ATK:0/Level:1》
「ッ…!」
フィールドからトークンを取り除けば負ける、でも取り除かなければピンチは迫ってくる。
どうする……!?
『さぁ、なんとかできるか?「天才」』
「……お前…」
『知っているぞ、類稀な才能を開花させ、世界中にその才能を魅せようとする者。この状況もさぞ素晴らしい戦略で乗り越えて行くのだろう?』
「うるせえ…」
「!ヒカル…」
「俺は、別に天才とかじゃない!!」
『………』
見え透いた挑発で倒せると思い上がられても困る。
それは誰が見ても分かることだ。
『ならば、その背中はなんなのだろうな?』
「…なにを言っている…」
『貴様達に共通することだ、逃げ隠したところで何になると言う?』
「わけの分からんことを、一々説明してみせろ」
『ふ、ふハハははは!ならバ、その目デ確かめるガいイ!!』
「っ!?」
「霧……!?」
前が見えない…!!なんの小細工だ、これは……!?
『さぁ、始めよウ。君達は、帰っテ来られるカ…?』
~~~
「………?」
ここは、…公園か……?
「…?」
さっきまでなにをしていたんだ…、まさか夢遊病などということはないと思いたいが。
「夕刻か、また遊矢がうるさくなる前に帰らないとな」
確か今日は一人だと言っていたはず。なにもできないのを一人でおいておくとは、あの親も末恐ろしいものだ。
「じゃあね~!」
「またあした~!」
「…………、…子供…?」
一人か。誰も迎えに来ないとは、同情するぞ。あぁ、本当に。
「おい、」
「…」
「そろそろ子供は帰れ、親はどうした」
「……来ない」
「…そうか」
やはりか。
そういうことが、俺以外にも本当にあるんだな。
「おにいちゃんは待ちつづけるの?」
「俺か?俺は帰る、帰る場所があるからな」
「…うそだよ」
「…?」
「おにいちゃんの帰る場所って、どこ?」
根掘り葉掘り聞く子供だな…。
……あれ、前にも同じことが…なかったか…?
「おにいちゃんは帰れない、どこにも帰る場所なんてないんだ」
「なにを…」
「にげたんだ、ねえ…また始めようよ、復讐劇」
「―――!!」
これは…!まさか、そんなことが…!?
「逃げないでよ。あのときも逃げられちゃった、だからこんどは逃がさない」
「…お前は、一体何者だ」
「ぼくはおにいちゃんだよ。おにいちゃんがずっとかくしてた復讐心、絶望、ぜんぶぜーんぶもってるんだ!」
確か…リリーヤといったか、それが勝手に作った幻想とばかり考えていたが…今こうして目の前にいる、ならば今は現実か…?
「ねえ、まずはだれにしようか!あおいかみの弟さん?パパもいいし、ほんとのパパでもいいよ?」
「黙れ!今更すぎる誘いだ、生憎今はそのような事に興味はない」
「うそつき」
「誰が嘘を言うものか!」
帰る場所ができた今、子供の戯れ言に付き合う暇は…。
「おにいちゃんはかくしてるよ、いつだってそう。めをとじればうかんでくる、復讐のためだけにいきてきたあの日々が」
「………」
言う通りだな、確かにあの5年間を復讐のためだけに生きていた。
だが…。
「あんまりのってくれないんだね。じゃあしかたない、おしえてあげる」
「…?」
「もしもー、夜月おねえちゃん?だっけ?おねえちゃんが、ゆうやのパパのせいでしんじゃったとしたら…どうする……?」
「…なにを、夜月は……」
「てをくだしたのはおにいちゃんだけど…げんいんはあのひと。だってあのひ、あの事故をおこしたのは――――パパのさしがねなんだから」
「――!?」
あれが寄越した差し金が、夜月を…?だが、俺が介錯したのは間違いのない事実。
あの事故を起こさせて、怪我を負わせたのが…それだったのか…?
「たしか、ちからをてにしたころのおにいちゃんって、トラウマで血がにがてだったんだよね。それでまたグレンがかってにおにいちゃんをうごかしちゃうから、夜月おねえちゃんは死んじゃった」
「原因不明の事故…夜月の公の死因はそれだ。しかしな、信憑性のない話を誰が信じる…」
「夜月おねえちゃんはパパのはいごかんけいをさぐってたんだよ?けされてももんくはいえないよね」
「…それは…」
そう、かもしれないが……。
「それがしんじつだよ、じゃああらためて、おにいちゃんの帰る場所って、どこ?」
こんな話を信じる必要がどこにある…!
だが夜月の事故は、確かに謎も多かった。なにも残さないままに終わったのも事実。それでも……、それでもまさかあれが人の命をそこまで軽んじているわけが…、
…ないと言いきれるか…?
「っ…」
「……ふふっ」
「俺はまた…ここから逃れられないのか…!」
「ほの暗い闇の中に招待してあげる」
「…!?なん、だ…!?」
「のみこまれちゃえ、おにいちゃんはまた、ひとりぼっちに逆戻りするんだ」
「…!」
どうして、また……!
一人には…なりたくない……。
「……ヒカル…!」
……?なんで、今…アイツを…?
~~~
「すげーよなぁ…天才だって」
「カイト様から指南を受けるらしいぜ」
「ママのこと追っかけてるだけのガキのくせに」
「マセてやがるし、生意気だよなぁ」
言わないで、そんなこと言わないで。
「ホントうぜーよな」
「天才なんだってよ」
「先公に持て囃されてるだけだろ?」
「マジうぜー」
「女みてえだしな」
違うんだ。
俺はそんなものじゃなくて。
「カイトからの推薦でプロリーグ入りだってよ」
「努力したことない天才サマなんだろーよ」
「努力してプロ入りした俺達のことわかっちゃいないんだろうな」
分からない、そんなことは。
でも努力した、頑張ってデュエルを覚えて、それをもっと努力しただけ。
それのどこがいけないことなんだ…。
精一杯努力したつもりだ、天才なのは俺にデュエルを教えたシアラの方。俺は、本当はそんなものじゃない。
「本当に、お前は孤高の天才だ。素晴らしいよ」
「違う、こんなものは…」
「生まれ持った才能!そしてその神秘!どれをとってもお前は人間離れしている!さぁ、誇りに思え、素晴らしいことに違いなかろうに」
「俺は天才でもない、こんな力も望んで手にしたわけじゃない!」
「いや、お前が望んだ力だよ」
「違う……」
望んだわけじゃない、勝手に現れただけで、これは…違う…!
「誰より力を望んでいたじゃないか、弟を守るために。そうだろう?」
「……」
「おめでとう、お前は晴れて化け物だ」
「!」
化け物…?アーマードは、誰かを守る力じゃないのか…?
「人ならざる力を持つ者。その手で誰かを守れたか?弟すら保身で殺すお前が」
「ッ!!黙れ貴様!」
「さぁ思い出せ、天才と持て囃されては卑下され、我が身の可愛さ極まった自分を」
ヒカリは死んでない、殺してない、だってあの時は仕方なかった。俺にはあぁすることしかできなかった。
天才じゃない、努力もした。それなのにどうして…!!
――人の気持ちが分からない化け物だコイツは!
――天才は自分が大事らしいぜ
――俺達のこと考えたこともねえくせに!
「考えたことないよ…そんなこと…」
自分のことしか考えてないから、周りの気持ちなんて分かるものか…!
「君はやっぱり、あの時俺が言った言葉に、否定しかできなかったんだな」
「…!誠…!?」
「そういうところ、俺にそっくりだ」
―――違うよ。
~~~
目を閉じれば底無しの深淵…最早逃げ場はないのか。
「おにいちゃんの帰る場所はここなんだよ、いまもむかしもかわらないでしょ?」
「あぁ、そうだな…」
確かに、正しいな。今更光を追い縋る必要がどこにある。
「それでも」
「?」
「これは俺が背負うべき罪だ、他の誰かに投げ出すことはできない」
「…わるいのはパパだよ?」
「ふん…あの男に今更言って聞かせたところでなにになる。あの状態なら夜月は助かっていた、それを死に至らしめたのは事実俺だ。地獄まで背負っていくのが俺以外に誰がいると言う」
「……かわっちゃったんだね、おにいちゃん」
「おかげさまで」
どこぞのお人好し二人に、当てられたのかもしれんな。
「もうさびしくないんだよね」
「一人ではないからな」
「うん。あのおにいちゃんがいっしょにいてくれるって、いったもんね」
「!」
――こんな俺みたいに役にも立たない奴でも傍にいたら、寂しくなくなるのか…?
だから、あの名前が出たのか。
「そう、かもしれないな」
「じゃあ、おにいちゃんはどこに帰るの?どこかに、帰れるの?」
「俺は帰る。二人のいる場所…光のある場所に」
「……ぼくもこれでかえれるんだね。よかった!」
三年越し、か。
それだけ俺はまだ乗り越えていかなければならないものもある。なら、大丈夫だ。
「じゃあね、あのおにいちゃんのこと、ささえてあげてね」
「言われるまでもない」
「うん!ありがとう、未来のぼく!未来を守ってね!」
…行くぞ。
帰る場所を、守る戦いに。
~~~
「誠、それは違う」
「ふーん?」
「俺は俺なんだ。俺は確かに自分勝手で人の気持ちなんて分からない、それでも必死に分かり合おうとしてるんだ」
だって、そうじゃなかったら―――、
「遊矢と、分かり合えなかったから」
「…遊矢ちゃんのこと、好きなんだね」
「……うん。遊矢が好きだから、みんなが好きだから、俺は頑張れる」
分かり合うことができなかった俺の精一杯の努力。
「もし俺が天才だとしても、分からないことはいくらだってある。誰からも理解されなくてもいい、それを埋めていくのは努力じゃないのか?」
「そうだな。確かにヒカルちゃんの言う通りだ」
「身勝手でもいい、それでも誰かを守りたい。一生逃れられない罪を抱いてでももう一度、あの時の結末を次は繰り返さないために!」
「……あぁ、いいね。それでこそ、君のあるがままだ」
あるがまま、俺が自分のために、誰かを守るんだ。
それは強さと弱さ、どちらにも繋がる大事な思いだと気付いていたんだ。
「さぁ、鏡ちゃんと俺のために、世界を、任せたよ」
「誠……」
「ヒカルの、あるがままに、戦うんだ」
「……あぁ!!」
ありのままの自分で、もう一度―――!!
「遊矢に、謝らなきゃな」
~~~
『……ッ!?バカな、心の闇に打ち勝っただと!?』
「全く……なにをしていた…」
「本当に、めんどくさい追体験だよ…」
「奇遇だな。俺もだ。さぁ、どうする?」
「もちろん反撃…だけじゃないな」
いや、それだけで済むかよ。
「「逆襲するぞ!」」
『っ…!!きっさまらァッ!!』
Next Answer→
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【あとがき】
今回の一言、「精神攻撃は基本」。
托都に対する精神攻撃が3年前と対して変わらないっておかしくないですか…(震え声)
ただし今回は答えをちゃんと得ていた模様。和解した托都に迷いなどないわ、あと夜月よりヒカルの方が好きだもんなお前。
ヒカルのSAN値がヤバイ、まさかすぎる誠登場はさすがに誰にも予測できないだろうなと。そして弟ネタはやっぱり地雷だった、覚醒体が誤って復活しなかっただけまだいいか。覚醒体が出てきたら手がつけられませんし…。
遊矢出たよ!!やったね遊矢!!出番あったよ!でもちょい役だよ!!是非もないネ☆
そしてホムンクルス燃やされて結果的にヒカルをほしがるヴェリタス、そして燃やした当事者はヒカル。ヴェリタスカワイソス(´・ω・`)
しかしルクシアちゃんの危機には変わりないし、ヴェリタスの居場所は分からずじまいと最早悲しみの向こう。
世界中で城が見えてる現象はつまり、実体はハートランド上空にあるけど、立体映像として人の目からはハートランド上空にある城と同じものが見えている、感覚も然り、つまり城が落ちてきたら人類\(^o^)/になる。
次回は驚くべき真実が!?え、ちょ、つまり死亡フラグ…?
【予告】
Answer.22「夢は願いとなりて」
~~~
ついに俺たちのタッグデュエルだってよ托都!なんだか楽しいな!
あ、あぁ…しかし、この状況だぞ?喜べるか?いや俺にはできない。
もしかして托都はタッグデュエルとか苦手か?
話を聞け、別に苦手視してるわけではなく、ただ状況が…。
もしかして俺が苦手…?
話を聞けスイーツ頭ッ!!
~~~
【風雅邸、テラ襲撃後…】
「托都…?」
「………」
「おーい」
「………」
「ちょっとだけって約束…」
「………」
あ、あれーっ!?
どういうことだ!?なんでこいつはこんなにあったかいんだ!?これが子供体温…!?
まさか、17だろう!?
しかも夏場なのになんで汗一つかいていないとは…。人間の人体構造を無視しすぎではないか…?
それに夏とはいえ、肌を露出させ過ぎればおかしな輩に付きまとわれでもしそうな…いや、これ以上は俺がおかしな輩を疑われかねない…!この絵面は少しどころ犯罪すぎる!
「すまん…なんかすまん…」
「突然なんだよ…つか、ぎゅーっとするな息苦しい、あと厚着しやがって暑い」
「ぐぅの音も出んことを…っ!?」
「仕返しだっ!」
「やめろ息苦しい!おい!」
「だって、されるだけとか損してるから」
「は、はぁ……?」
「ヒカルくーん?入っても………」
「……」
「……」
「…あらー、そういう……お邪魔しました、またあとでね!」
「…あちゃー」
「あちゃーで済むかスイーツ頭!!」
「いったぁー!?」
「……頼むから勘違いしてくれるなよ…」
END