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Answer.13「父と子と」



「……夜月…」

俺はまた、このままだと逃げてしまいそうで…どうすればいいか、分からないんだ。

「アンタなら、分かるか?」

……死人に口なし、俺が分かるはずもないか。

でも、それでも知りたいんだ。

「家族…って、なんなんだろう」


~~~


「あー!!あとどれくらいで到着かなぁ?」
「そんなこと分かるわけないだろ、大体!お前の方が分かるだろ!」
「交通整備されてて全然道が変わってんだよ!」
「はぁ!?」
「…頼むヒカル、腹が苦しいから、しがみつきながら口論するな……」
「あ、ごめん」

しっかし、托都のバイクってばすげえ馬力だなぁ…三人乗りしてんのに結構いいスピード出てるぜこれ。
風が気持ちいいなぁ……ハートランド出て3時間しか経ってないと思えないや。

「はぁ…」
「ヒカルは後ろに乗ったのは初めてじゃないのかよ?」
「あぁ、何度かある」
「なんで横向き?」
「そ、それは…」
「その話はやめてくれ、俺の方が精神的に痛い」

???なんかあったのかな?まぁいいや!

「つか!ヒカルの髪、ばっさばっさこっち来るんだけど!リボンは!?」
「ないんだよ!どれだけ探しても!」
「ええー!?父さんに彼女だー!とか言われたらどうすんだよー!」
「い、いい言われるわけないだろばかあ!」
「……だから後ろで暴れるのをやめろ…」


~~~


「……豪邸、だな」
「すげーだろー!!」

ここが、俺の実家!!父さんや母さんがたまぁに帰ってくるだけだから半分空き家みたいなモンだけどさ。

「…伏魔殿かなにかか……」
「なんか言ったか?」
「いや、俺もここに来たの自体はここを出た時以来だ」
「…そっか」

托都がここを出た時…父さんに、捨てられた時か……。

「遊矢、お前が気に病むことじゃない。行くぞ」
「うん……」
「……托都…」

本当に、大丈夫かな…?


「おかえり!遊矢!!」

「父さん!!」

「…………」
「……」

よかったぁみんな元気そうだ!ここも襲撃とかされてたら、って不安いっぱいだったしな!
ま、SPいるのにまさか襲われないよな!

「見ない内に、また背が伸びたな!」
「今170越えたんだぜ!」
「おぉ!父さんも越されてしまうかなぁ?」
「でっけえくせにー!」

俺、170ちょい、父さん、190越え。
どうしたらそんなでかくなれるのか詳しく聞きたいくらいです。

「君が、朽祈ヒカルくんだね」
「は、はい…」
「噂は聞いているよ。希代の天才デュエリストだと」
「そんなことは…まだ、未熟者です…」
「謙遜しないで、遊矢の友人だと聞いている。君のことは一個人として、考えているよ」
「あ、ありがとう…ございます…!」

ヒカルってやっぱ、外の人からはこういう反応されるんだなぁ…プロデュエリストなんだから当然か。
俺がフレンドリーすぎるだけ?いや、親友なんだから当たり前だよ、うん。

「そして、托都」

「……」

「いらっしゃい」

「…!誰が歓迎がいると言った、今日は二人の付き添いだ。黙って二人と話をしていろ、こっちは物置だとでも思うがいい」
「托都…!そこまで言わなくても…」

やっぱり、仲悪いまんま、なんだな……。

「…そうか。三人とも、ここで話すのもなんだ。部屋へ行こうか、母さんも待っている」

「マジで!?やったぁ!!」

「……ホントによかったのか?」
「構わん、あの馬鹿にはその程度で効くものと思ってはいないさ」

うっわぁ……すげえ不機嫌……。

「…!!誰だ!ぐはっ!?」
「どうした!」
「ぐふっ!?」

「えっ!?」

SPの人たちが倒れた!?

「ふ、フッ」

「何者だ!!」

「何者とは失礼な」

「貴様、」
「テラ!!」

なんでこんなところにテラが!?なんで俺たちの場所知ってるんだよ!!

「未完の聖杯を返していただきに参りました。どうぞ、大人しく奪われてください」

「っ……」
「誰が大人しく渡せるか!」

「ええ、貴方に興味はありません。私が興味があるのは―――!!」

しまった!!早い!!

「……えっ!?」

「くっ…!」
「貴方ですよ、貴方!!」
「退け!!…遊矢、ヒカルとそこのお荷物連れて早く中に入れ!」

お、お荷物……。

「わ、分かった!父さん!」

「分かったが……」

「貴様…なにが狙いだ…!」
「狙いですか?無論未完の聖杯ですが、マスターに貴方を完膚なきまで潰せと命を受けました。手段を問わないと!」

「そうだろうな…!そうじゃなかったらわざわざ障壁なんて張らんだろうよ!!」

「相当無理をしていらっしゃる、はやり半神半人には限界があるのでは?」

「黙れ…!」

「ならばすぐに楽にさせて差し上げましょう!!」

「ッ!!」

「托都!!」
「父さん!だから早く!!」

「……!」

危ないって言ってんのに!!

「ちょうどいい、ならば……!!」

「!」

「とうさ―――!!」

「貴方方から始末を―――!!」

「遊矢!!」

まずっ…!!せめて父さんだけは―――!

「う、ぐっ…!」

「なっ…!」

托都が庇った…!?

「托都……!?」
「おい!」

「フッ…ハハッ!……興醒めしました…こうも役者不揃いだと楽しむものも楽しめません。出直すとしましょう」

「待て!!俺とデュエルしろ!おい!!」

「ごきげんよう、また後で会いましょうとお伝えください」

消えやがった……。

「托都……」
「黙れ…触るな……!」
「怪我をしているのにか!?」
「こんな時だけ、父親面するのはやめろ……」
「…!」
「だから、アンタが…きらいで……」

「托都!!」

くそ…!!


~~~


全く、煮え切りませんね。

「ご苦労だ、テラ」

「なんのことでしょう。まだ役目を果たしてはいません」

「分かっているとも。だが、確実に潰していくその性根の腐りきったところは、嫌いではない」

「嬉しくもない誉め言葉をどうも」

……まぁ、それなりの収穫はありましたから、いいとしましょう。

「楽しみにしていますよ、托都さん」


~~~


「…………」

ずっと一人で、ずっとずっとずっと。

「おとうさん、おかあさん…ゆうや…?」

誰も救ってくれなかった。

「どこ?」

誰も見てくれない、振り返ってくれない。

「夜月………」

「……」

「待ってくれ夜月!」

誰も、信じられなかった。

「一人に、しないでくれ…俺を、置いていかないでくれ…!」

「………」

「一人ぼっちは……怖いんだ…」

「………泣くなよ」

「また俺の前からいなくなってしまうのが嫌なんだ…!!」

「アンタを、必ず……」

「もうそれ以上言わないでくれ!!」

今だって、信じたくないのに。

「遊矢……ヒカル……」

お前たちも、俺を置いて行ってしまうのか?


―――……?

―――…………?

「托都?」

「…………」

……夢を、見ていたのか?

「………ヒカル、」
「魘されてたから、気になってな」
「…すまん。ずっとここにいたのか?」
「遊矢は、両親と一緒にいるから」
「……そうか」

置いていかれなかったか、よかった。

「大丈夫か?」
「なにが」
「本当に酷く、魘されてた」
「たかが夢見が悪い程度で……」
「寂しい、って」
「…!」

寝言までそんなことを……恥を知らなければな…。
さすがに19にしてそれは恥ずかしすぎる。

「怪我は?」
「掠り傷だ、恐らく力を使ったことの方が問題だったんだろうな。普段しもしないことをしたから…」
「……どうして、守ってくれるのか、分からないんだ」
「…?」
「遊矢も、そういってるけど…正直分からない。アイツは親友だから俺だって守りたい!でも俺のことは考えてくれなくていいんだ…」

……めんどくさい奴め、全く。

「守り守られか……。俺は、あくまで自分のためにだがな」
「お前が俺たち守ってなんの利益があるんだよ」
「…さぁな。だが、自己満足程度にはなる」
「……そう、なのか…」

本当は、誰一人失いたくない、傍から離れてほしくないなんて…エゴだ。情けないな。

「もし、の話で聞いてほしい」
「……」
「もしも、さっきの寂しい…が、お前の思ってる本心だとしたら、」
「!」
「こんな俺みたいに役にも立たない奴でも傍にいたら、寂しくなくなるのか…?」
「……ヒカル」

こいつは本当に……本当に…。

「馬鹿が」
「……!托都……」
「…少し黙ってろ、少しだけだ」
「…わかったよ」

夜月にそっくりで、扱いに困る。


~~~


「…遊矢?入るぞー」

「あ、うん!!」

「おじゃましま……えっ?」
「……これは一体…」
「これは…!」

……スイーツ?
なるほど、もてなしか。しかし隣から心なしか嬉しそうかオーラが……。

「まさか、甘党か」
「違う!!」
「その目を見て嘘だと思えないんだが」

「ヒカルくんは甘いものが好きだって、遊矢から聞いていたから」
「ナイスだぜ母さん!!」

「はぁ!?」
「どうやらバレバレだったようだな」

ある種安心感を覚えたぞ、俺は。こういった奴だと理解していたつもりだが、予想通りすぎて引くレベルだ。

「…嬉しいけどさ」
「構うな、客なら客らしく振る舞え。悪いが俺は一人にさせてもらう」
「ちょ!おい!」

「托都……」

あれがいないのは構わんが、…性に合わないのだから仕方ないだろうが。

いつまたテラが来るかが分からない、今のうちに準備する必要だってあるはずだからな。

「………」

「ねえ?」

「………」

「やっぱり、まだ許せないの?」

「知らん。そんなものは、俺に聞くより奴に聞け」

「…そう、ね。ごめんなさい」

「早く戻ったらどうだ。曲がりなりにも母親なら、子供の面倒は見るべきだと思うが?」

「あ…!」

いくら母親に罪はないとはいえ……、母親か。


~~~


「……」
「ヒカル!元気ないじゃん?なんかあった?」
「いや、ちょっと……」
「ちょっと?」
「俺は詳しく托都とお前の父親になにがあったとか知らないんだよ、聞こうとしたらはぐらかされたから…!」

聞こうとした!?…案外チャレンジャーだな、ヒカル。

「詳しく、かぁ」

「どうかしたのかい、遊矢」

「うわぁっ!?父さんいつの間に!?」
「托都になにがあったか聞かせてください!」
「んな唐突に!?」

時々ヒカルの行動力が異様に高く感じる…普段はわりとおとなしめ?に収まってるし、静かと言えば静かだし。

「…聞いてどうしたいんだ?」

「あわよくば仲直り。最低でも日常会話がこなせるくらいには和解してほしい」
「ヒカル……」
「両親がいないっていうのがどれだけ悲しいかは分かってるつもりだ、遊矢」

そうだよな。ヒカルだって、今まではホントに色んなことあって…よく和解できたなって思ってるけど…。
でも托都と父さんのことは、そんなんじゃ済まないはずだろうし。

「……彼は今年で二十歳だったか…」

「そうですね」
「はえーなぁ、もう三年かぁ」

「なら話は20年近く前になるか。妻は不妊だった、遊矢は知っているね?」

「うん」

俺が生まれた時にはもう40近くて、奇跡的だったって言ってたよな…よくわかんねえけど。

「それ以前の話だ。どうしようもなくなってしまって、跡取りを真剣に考える必要があった。命夜市という地域に、私の知り合いで施設を経営する者がいてな。その頃、まだ赤ん坊くらいの子供が放置されていたのを保護したという話を聞いたんだ」

ちょっと初耳かも……命夜市って、ハートランドに帰る時に通ってるし。

「そして私達はその子供を引き取った。もちろん、そのことを当時本人に話そうと思わなかった。他言無用とし、母体から産まれた子だと偽った」

「それがどうして遊矢が産まれて捨てる発想に至ったんだ…」

「…私にも分からない。ただ、昔から托都から異様な雰囲気を感じていた。赤い人がこちらを見ているだとか、名前も知らないような人間に声をかけられたと、日常的に言われていたのが不気味で仕方がなかった」

それなら俺となんら変わらねえじゃん!むしろ俺の方が違う意味で危なかった気がする…今でも雪那に救急箱持たされてるし…。

「本当に、あの時は偶然だった。実子が産まれたなら、もう必要ないじゃないかと誰かに囁かれた気がした。置き去りにして一ヶ月後にハートランドを訪れ探したが見つからなかった。もう死んだものとばかり思っていた。弁解の余地はない。私は事実を隠蔽してまで托都から逃げたのだから」

……でも、なんで托都は色々知ってたんだろ…自分で調べたのかな…それともグレンやドン・サウザンドの仕業?

「………お心苦しいお話をさせてしまってすいません。でも、俺見てたんです。アイツ…なんかすごくここに来た時、嫌そうにしてたんじゃなくて、辛そうだったんです」

「………」

「本当は、帰りたかったんじゃないかって…だから、一言声をかけてさえあげれば…」

「それは無理な相談だよ。もう彼は私の子ではないのだから」

「なにを言ってるんですか…」

「どう償ったところで…私は彼に嫌われていてな、最早謝罪もままならない。私にはどうすることもできないのだ…」

父さん……前もそうだったけど、なんでこうなんだよ……いっつもそうやって逃げてばっかりで…俺だって、辛いのに。

「でも!!」

「もういいヒカル」

「!」
「托都!いつからそこに!?」

「最初からだ。………」

「…………」

なんだろうこの空気感……もう勘弁してくれよ…。

「勘違いされないように言っておく。俺はアンタが大嫌いだ。遊矢に対してもだが、ここぞとばかりに父親面するのはやめろ」

「それは………」

「それと、だ。一般人の分際で、戦いに現れるな。お前がいなければ、さっきはもっとマシな結果に終わっていただろうな」

「托都!!」
「ヒカル…!」
「……遊矢…でも……」

俺だって、分かるけどさ……でも。

「席を外させていただくよ。遊矢、また後で」

「う、うん……」

こんなんじゃ、仲直りなんて…無理だよな。

「…全くなんなんだ!あの男は!」
「ヒカル、落ち着けって」
「落ち着けるか!!」
「…本当に、あの頃と同じ人間かと疑いたくもなる」
「……」

複雑なのはわかる、すげえ分かるけど……どうして、こうなっちまったんだろう…。

「…………」
「そういやさ?この部屋ってなんの部屋か知ってる?入るなってずっと言われてたんだよ」
「…そこは」
「つーわけでご開帳!!」
「おいやめ……」

……………!?

「カードの山……?」
「すげー!!でもデュエルし始めた時にはもうスカイソニッカーだったし、じゃあこの部屋は…」
「俺の部屋だ」
「え……えぇぇぇぇっ!?」
「お前、昔から片付けられない奴だったのか…」
「断じて違う」

でも、それにしたってすげえ山……。カード、カード……服?やっぱり片付けられない奴なんじゃないか…!?

「…しかし、そのままにすることなかろうに…」
「やっぱ片付けられないんだ」
「だから違うと…!……これは……!」
「ん?なにそれ?」
「なんでもない、俺の事情だ」

なに見つけたんだろ?こんなんだからもうそれらしいのは見付からないだろうけど。

「はぁ…」
「手伝うか?」
「できれば…な」


~~~


「全く、なんでアタシがこれをアンタにあげなきゃならないわけ?」
「仕方がありませんから、次の撤退時にお願いします」
「撤退前提とか頭湧いてるの?バカなの?」
「もしも、を言っていますよ?」

ヘイルの毒舌はとてもではないが耐えられないですね……。

しかし、事実間違いではありませんが…さて、撤退せずにいけるものか……。


~~~


「…………」

「あの!」

「…!ヒカルくん……」

「さっきはすみませんでした…」

「気にしないでくれ。ところで、どうした?」

……こんなこと、やっぱり托都に怒られるのかな。

「俺、やっぱり托都と和解すべきだと思います」

「さっきも言っていただろう。私ではいけない、私は懺悔の時を間違えたのだ。時間を、巻き戻せはしない…」

「…だったら、言ってほしいんです」

「なにを、だい?」

「アイツに、たった一言。謝るんじゃない、歓迎でもない。家族なら当たり前の一言を、言ってやってほしいんです」

きっと、アイツがあの時…言ってほしかったのは……。
だって家族なのに、仮にも一緒に過ごしてたのに…なんでそんな当たり前のことが、言えないのだろうか。

「……俺も、似たようなものなんで…」

「ヒカルくん、君は…」

「寂しさを埋められるのは、仲間だけじゃないんです。それを忘れないでください」

「………私は――――」

「そこまでですよ」

「!!」

この声……!!

「来たか…!」

「お待たせいたしました。さぁ、この手を取ってくださいませ、マスターがお待ちです」

「誰が!!…早く家の中へ…!」

「だが…!」

「俺は強いですから」

大丈夫、時間を稼ぐくらいできる…!

「良いのですか?」

「あぁ、お前なんかに二度と捕まるものか」

「威勢がいいのはよいことです。ですが、その体で、逃げ切れると?」

「なにを……っ!?」

なん、これは……?!
頭がぐらぐらする…?なんで…?

「レーヴァテインの呪縛は、逃れただけでは終わらない。さぁどうします?急いで治癒能力を取り戻さねばなりませんねえ?」

「なんて…卑劣な真似を…!」

「なんとでも言うがいい!さぁ、いただきますよ――!!」


~~~


――ドン…! 

「なんだ!?」
「地響き…?これは…」
「まさか!!」


~~~


「っ…!」

「逃げないでください、乱暴に扱うつもりはないのですが」

「逃げるが勝ちってやつだ、人形には分からないだろうよ!」

「そう、ですか…残念です。ならば…力ずくで―――!」

「…!!」

「なにっ!?」

間に合ったな…!

「遊矢!托都!」

「待たせたな!!」
「全く、一日に二度目とは、懲りない奴だ」

「来ましたね」

「テラ!!」

やっと、この時が来た…!!

「そろそろ決着としようか、いい加減に我慢が効かなくなってきてしまったようだ」

「ええ、私もです」

「ヒカル、立てるか?」
「ありがとう遊矢…」

あの時の屈辱を、忘れるものか。
むしろこの場所でこの相手、なんて心地のいいことこの上ない…!

「さぁ来なさい!!」

「デュエルディスク、セット!!」

「(せいぜい、楽しませていただきましょう…!)」

「「デュエル!!」」


~~~


「私は………」


―――アイツに、たった一言。謝るんじゃない、歓迎でもない。家族なら当たり前の一言を、言ってやってほしいんです。


「私に、その資格は……」



~~~


「先攻はいただきます、私は《ソウル・アダマン ツーヘッドドラゴン》を召喚!」
《ATK:1800/Level:4》

「カードを3枚伏せ、ターンエンド。さぁ、貴方のターンだ」
《Hand:1》

「俺のターン!」

3枚の伏せカードか、嫌な経験しかない以上、警戒は避けられない…!

「俺は手札の《ネクロスフィア モルフィーネ》を墓地に送り、《ネクロスフィア タイタン》を特殊召喚!このモンスターは自身の効果で特殊召喚された場合、1体で2体分のエクシーズ素材となる!」
《ATK:2000/Level:8》

「レベル8が二体分!」
「よし!」

「レベル8のタイタン二体分で、オーバーレイ!!エクシーズ召喚!現れろ《機械堕天使 シャドウ・ハルシオン》!」
《ATK:3000/Rank:8/ORU:1》

シャドウ・ハルシオンは、バトル中1度だけ相手の魔法・罠を無効にする効果がある。これであの3枚が攻撃に対するものか、見極めることができればいいが……。
奴はデュエルを見ていた、なんの対策もなしにデュエルを挑んでくるはずもない。

「行け!シャドウ・ハルシオン、ツーヘッドドラゴンに攻撃!トワイライトレイン!」

「罠発動《アダマン・アミュレット》!このカードは、バトルによる地属性モンスターの破壊を無効にし、バトルによるダメージを半分にできるカード。更に、ツーヘッドドラゴンは罠の効果が発動した時、相手に800ポイントのダメージを与える!」

「無駄だ。シャドウ・ハルシオンは戦闘時、相手の発動した魔法・罠を一度だけ無効にする」

やはりその手のカードを仕込んでいたか…!

「そう時間をかけてはいられんのでな、イニシアチブは取らせてもらうぞ!」

「イニシアチブを取ると…甘い、なんと甘い考え!分からないのですか貴方には!!」

「なんだと…?」

「未完の聖杯より回収した装甲の力は、今私が持っているのですよ!」

「なっ…!!」
「アーマードを扱えるわけでもないお前がそれを誇示したところで、一体なんの意味が…!」

そうだ、その力が使えるのは二人だけ。わざわざ言う必要が――――、

「そういうことか…!」

「分かりましたか?」

「奇跡の光による、治癒能力……」

「そう!彼を、完全にレーヴァテインから解放したいのなら、もれなくこの能力は必要不可欠!!」

実質、またもや人質を取られたと同然の状況下……なんと姑息な手を……!

「だが!!その程度で、俺が攻撃を躊躇うとでも思ったか!行け!!シャドウ・ハルシオンで攻撃を続行!」

「違う!!托都!それ自体が罠だ!!」
「罠…!?」

「なに…!?」

「気付いたところで遅い!!永続罠《封石 アダマン・ストーン》を発動!相手モンスターの攻撃時、その攻撃を無効にし、攻撃力を互いのエンドフェイズ毎に500ポイントずつダウンさせ、相手に800ポイントのダメージを与える!」

もしや、攻撃に対する罠を無効にされると分かった上で、このカードの発動タイミングを待っていたとでもいうのか!?

「このカードの影響を受けたモンスターは効果を発動できず、攻撃もできない!どうだ!」

「感情的になり、鞘走るのを待っていたということか……不覚だ…!」

「しかし、嘘ではありませんよ。事実、ほら」

「あの輝きは…アーマードの…!」
「じゃあ、やはり……」

「私を負かせれば、返して差し上げましょう。私を倒せるならば…の話ですが」

二重の意味合いで、俺は手も足も出せない状況……。
奴を倒せなければ…全滅は免れない。
二人を守るのが兄であり友である俺の役目。負けるわけにはいかない。だがこの状況…どうする…!!

「さぁ、考えろ。少なくとも残されたターンは5ターン…せいぜい足掻いてみせろよ」









Next Answer→


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【あとがき】

今回の一言、「だんだんクセになる罵倒」
遊矢パパのクズ野郎化は止まらない、というか止まれない。逆に夜月さんの株価は上がっていく。夜月さんと托都のお話はRRのカテゴリからどうぞ、前編が上がってます。

最早罵倒がツンデレに見えるくらい罵倒してるんだけど本当に托都は遊矢パパン嫌いなんだよ…じゃあドン千はというと嫌いだけど便利だからっていう金蔓的なアレ。
おい、デュエルしろよ。とも言いたくなるようなリアルファイトがいくつかあったけど、LSでリアルファイトできるっつーかリアルファイト向けなのは彼しかいないのよ、さすが便利屋。しかし負ける辺りが脱不遇枠できてないのを物語ってる気がする、悲しい。
托都ってあくまでそっちの人間だからね、守ることには特化してないのよね。
そしてLSじゃ描写されなかった最大の描写。遊矢とヒカルの弱い部分は何度も見ただろうけど托都の弱い部分はわりと知り得ない事実。じゃあなんで今までわりとぼっちだったのに今更?という疑問に関しては、一期終了まではそれどころじゃなかったし二期以降はなんだかんだで兄貴面引っ提げてたし。
結局、フリューゲルアーツの潜在意識との対話によって隠れてた心の傷を自分で抉ったという感じに。
トドメにヒカルは夜月にだんだん似てきてる。オッドアイじゃないあの金色の目だから自覚が盛り上がってきてる。という状態です。なにが言いたいかってあいつ遠回しにシスコry
ヒカルのことを突然抱き締める程度には夜月とごちゃごちゃしてるからはようオッドアイに戻してあげなさい。


【予告】
Answer.14「紅月の翼」


~~~


しっかし、一番手は私ですか。最近仕事多くないですかぁ?

一番の功労者のはずなのにこの使いパシリ感…んん~マスターはブレませんねえ…。

まぁ?私はプロムのような頑固者でも、アニマのようなバカでもありませんし?最弱を潰すなんて簡単かつ余裕のある仕事を任されたのですからお任せくださいませ~。

じゃあいっちょ、片付けに行って参りますネ。


~~~

【一方その頃…】


「ルクシアちゃーん?って、けむ…!?」

「ふえぇ…また失敗しました……」
「い、一体なにしてるの?」
「あ!アミさん!今休憩しようと思って、おにぎりを作っていたのですが…」
「……これが、おにぎり?」
「はい!製法に基づき、錬金術を用いてお米から生成してみました…!」
「ごめんね、私にはパンにしか見えないわ…というよりも!錬金術って、食べ物作れたの!?」
「はい、可能ですよ。少し疲れましたが…」
「休憩のためと言っていたのは一体…!?」
「是非味見しましょう!一緒に!」
「一緒に!?」
「はい!」
「じゃあ……いただきます…。…………」
「………おいしいですね!」
「え、ええ…」

言えない、素のうどんの味しかしないなんて。
こんな純粋な目をした子には言えない…!

「うぅ…遊矢のばかぁ」


END