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===
―――それなりに平和な生活はしていた。
―――夜月の性格もあってか、楽しかったのかもしれない。
―――ただ、あの日、…。
「あー、ダメだわ!」
「なにがダメなんだよ、夜月」
「仕事の話!中々見つからないんだよねー」
一体なに探してるやら、ま、子供には分からなくていいことだよな。
「托都ーアイス買ってきてー」
「また?」
「お願いー!」
「しょうがないか…」
仕事がたまってるなら仕方ないな。
「…あ、Dパット置いていった………ヤバいかも…」
~~~
「ありがとうございましたー」
「結構遠くまで来ちゃったなぁ…」
…確か裏道なかったっけ?ここって。
あればそっから行けると思うけど、あんま明るさ変わらないし近道なら使った方がいいな。アイス溶けちゃうし。
「…あった」
ここ抜けたらちょうどって感じだ、なら一気に行っちゃおう!
「おっ!おいお前!」
「…!お、お前ら……」
「……誰かと思ったら、昔突っ掛かってきたガキじゃねえか」
「でかくなったなぁ?」
「うるさい!退いてくれ、早く帰りたいんだ!」
「一丁前にデカい口叩くなよ」
「通りたかったら通行料払いな」
通行料とかバカな話して、こんな奴らが大人なんて思いたくないな…!
とにかく、早く戻らなきゃ!巨漢相手の時は……足を狙う!!
「そこを、どけっ!!」
「ぐぉっ!?」
「て、てめえ!!ガキのクセに!!」
今だ―――!!今走り抜ければ隙が付ける!
「逃がすか!!」
「――っ!あっぐ!!」
しまった!!
「っ……」
「てめえ、あんだけやられて懲りねえな」
「うっ、さい…!」
「前よりひどい目に遭いたくなかったら、今ここで、死んで詫びるんだな!!」
「くあっ!!」
――ヤバイ、
「……ぁ、血……血が…」
――頭がふわふわする、血が出てきた、本当に死ぬかもしれない、いや、死ぬんだ。
――こんなとこで、こんなくだらない理由で、こんなどうでもいい人間に殺されるんだ。
――なんてばかこと、頭の中からなにかがぬけたような気がする。
「…あーあ、やっちまったな」
「バカ!セキュリティに見つかったら逮捕じゃすまねーぞ!」
「俺らは被害者だ!このガキが先にお前を殴ったから反撃したんだろ!」
「………」
ここでおしまい、そとがわもうちがわも、こわれてなくなりました。
『ソレデ、ヨイノカ』
「―――!!」
『我ハ闇ヲ運ブ者、オ前ハ生ヲ全ウシ、世界ヲ滅ボス者』
「それって、生き返らせてくれるってこと?やっぱ俺死んだ?あとなにこの腕の真っ黒いの、剥がれないんだけど」
『ソレハ混沌ノ刻印。ソシテオ前ハ死シテハイナイ、ダガ、コノママモ惜シイ』
あ、やっぱヤバイのか。全然頭が考えに追い付かねーし、終わったな。
「言ってる意味分かんないし、でも生き返らせてくれたら嬉しいな。夜月に会いたい、弟に会いたい、やりたいこといっぱいあるんだ」
『弟……オ前ハアノ者共ニ会イタイカ?』
「…なに言ってんの、当たり前だろ。家族なんだから、大人になって居場所がわかれば会いに行くさ」
『ソノ親ガ、オ前ヲ棄テタトシテモ』
「………は…?」
捨てられた…?まさかそんな、そんなことない。
『オ前ニハ二ツノ親ガイタ。一人ハオ前ノコトヲ見向キモセズ棄テタ。ソシテモウ一人ハ―――』
「―――!」
『オ前ヲ無視シテ、一人息子トヤラヲ愛シテイル』
「………父さん…母さん……」
そんな、俺は…俺は誰なんだ。
父さんたちの子供じゃない?もう一人の親ってなんだ?知らない、そんなの知らない…!
「知らない!!そんな偽物を見せて俺を騙そうなんてそうは――!」
《遊矢はとっても物覚えがいいな》
《さすがは私たちの一人息子ね!》
《この先の未来は明るいな!ハッハッ!》
《ええ!遊矢がいれば大丈夫》
「……遊矢……?」
『可哀想ナ子供ダ、大人ヘノ憧レハ捨テヨ、コレガ現実ダ』
こんなの、誰だよ…!俺には弟がちゃんといる…!一人息子なんかじゃない…!
俺がいないのにあんな明るい笑顔で父さんたちは笑ったりしない…!きっと探してくれてるはずだ!
《托都くんの戸籍情報、抹消完了しました。もうこの家には遊矢くんしかいません》
《ご苦労。いいな、この家には子は遊矢しかいない!この家の跡継ぎは遊矢一人だ!》
「……………」
『分カッタナ、オ前ガ信ジタ両親ハ、オ前ヲ裏切ッタ』
……俺は誰なんだ、結局どこの誰なんだ。
意味がわからない。いや、分かっている。信じてたまるかよ。信じなければ前には進めない。
遊矢は?遊矢はどうしてる?
俺はここにいる、大人になったら会いに行く。
お前が俺を、知っていれば死なずにすんだものを……。
かわいそうな遊矢――――、
「アンタ、何者だ?」
『…我ガ名ハ「グレン」、願イヲ持ツ者』
「アンタの願いを叶えてやるよ。だから、俺を生き返らせてくれ、そして――奴らに復讐する力をくれ」
『……良かろう、貴様の混沌は闇だ。闇を振るえ、世界を壊せ、さぁ闇の子よ、その心の裏側に孕んだ闇をお前を裏切る全てに振るうがよい』
「…神様の仰せのままに」
――――、
――――――、
「ふっ……あ、ははっ…」
「なっ、なに笑ってやがるこのガキ…!」
「死んだはずだろ!!聞き間違えじゃ…!」
「バカ野郎!死体が動くわけないだろ!!」
「その通りだ、死体が動くわけがない。そう、死体は動かない」
「な、なんだよアイツ!?」
「ひっ!!こっちに来るんじゃねえ!!」
「う、うわああああああああ!!」
~~~
「……………」
「……………」
「聞いていて気分の良い話ではないだろう?続けるか?」
そんな、途方もないことが…。
それに比べたら、やっぱり俺はまだまだ小さいんだな…。
「まぁ、実際この後遊矢たちに出会うまでの期間、記憶が大半以上ないがな」
「本当か!?」
「どうする?遊紗、お前が言い出した話だ。お前が決めていい」
「……続けてくれ…!」
~~~
「托都!!」
「!夜月…?」
あれ?……あれ?
「良かった…!心配したよ…!?怪我はない?」
「うん、ないけど…」
「そう…!良かった!!」
なにか、忘れてるような……。なんだっけ、思い出せない……うーん?
「…!アイス!」
「溶けてる……」
「ごめん…」
「いいんだよ!托都が無事ならいい!」
アイスが溶けるくらい外にいたっけ?
全然思い出せない、夜月がこんなに心配してるのも―――あれ?
「ここ、どこだっけ」
「托都…?」
おかしい、なんかおかしい。
なんでこんなところにいるんだ?……なんで、だっけ……?
「もしかしたら風邪引いた?早く寝た方がいいね」
「…そうする」
「よし!」
「……」
『忘れるな、憎しみを忘れるな』
「…!」
……あ、そうだった。
「忘れてないよ、神様」
「なに言ってんの?」
「…!なんでもない…」
なにしてるんだ俺、馬鹿みたいだな。馬鹿だけど。
―――実際、変わったことはなかった。
―――だが…問題は更にその後、それから4年後のことだった。
「托都!!」
「なに?夜月」
「喜びなさい!お母さんとお父さんに会えるよ!!」
「えっ……?」
「インタビューがとれたの!!自宅に行くって!だからもう大丈夫!!」
「会える、のか?」
「そう!会える!!元に戻れるんだ!」
―――夜月は心底嬉しそうだった。
―――同時に寂しそうにもしていたか。それでも前日に夜月が珍しくパーティだとはしゃいでいた。
―――だが、その時はもう帰りたいとは微塵も思わなかった。
―――むしろ好機だと、三人をまとめて始末できるとしか考えられなかった。
―――そして、来るその日は…雨だった。
―――ヒカルは知っているか、…なんだ、恥ずかしながら…血は苦手でな。
―――分かるはずだが、原因は最初の男達だ。それ以降今でも見るに耐えん。
―――…これは、そうやって引き起こされた。
「着いたらまずさ、誰に会いたい?」
「…遊矢、かな」
「かわいいだろうね!楽しみだ!」
あの子がこうやって喜んでいる。
8年間私の弟だった子が喜んでるんだ、私が泣いたら示しがつかないってね。
だから最後の瞬間まで泣かない、絶対に。
「…!夜月!!」
「……!!」
―――衝突事故、だった。
―――原因不明。公では雨でタイヤをとられたトラックが衝突した、という話だが、
―――実際はアレが仕組んだことだった。
―――今更奴になにかを言おうとは思わんがな。
~~~
「ひどい、な……」
「……」
托都も、事故で誰かを亡くしたんだな。
俺みたいに……。
~~~
「っ……やつき……夜月……」
どこ……だ……?
「………?」
なにか、触った……?
「…………――――えっ」
……なんで、なんで……!?
「夜月!!夜月!!」
「ぅ……」
「血、こんなに……どうして…!?」
分からない、夜月が、夜月が……。
真っ赤で…こんなの………。
『トドメを刺せ』
「いやだ……」
『消してしまえ』
「いやだ…!!」
『その汚らわしい血を、見たくはないだろう?』
見たくない、見たくない見たくない見たくない!!
『やれ―――!!』
「ッ……アァアアーーーッ!!!」
~~~
「そこでなにをしたのかは、もう分からなかった。気づいた時には、事切れた夜月がいた」
「……」
「今でも思っている、不甲斐ない自分が招いた結末だった。誰もを犠牲にすることなく遊矢たちには辿りつけなかった」
俺はあの時から決まっていた、影で生きるしか道はないと。
~~~
………あれ……。
「――――……」
お腹痛いなぁ……なんでだろ……。
「………」
事故った、そう、事故ったんだ。
……托都は…?
「……ごめんなさい……ごめん…」
「……」
……あ、そう。
私、あの子に刺されてるんだね。
なんでかな。なんでなのかな。
「ぁ……と……」
「…!!死ね!死ね!!消えろ!!」
……私、嫌われてたのかな……。
「たくと……」
「………夜月……やめて、くれ。話しかけないでくれ、怖いんだ、血が…怖いんだ。だから、消さなきゃいけないんだ…」
「そ…う……」
よかった、嫌われたんじゃ、ないんだ。
「……でも、ね……いたいよ……」
「!!」
「やつ、き、おね、ちゃん、いたい、な…」
「夜月……?夜月…?」
「いた、いよ…たくと、やめ、てほし、い」
「……なんで…」
「おもい、きり、だきしめて、ほしいな…」
結婚できなかったんだもん。
だから、今は、私が愛した弟に、抱き締めてほしい。
「……ごめんなさい、ごめんなさい…!」
「あやまらないで…ほら、」
「っ…俺…こんなこと、したくなかった…!」
「だいじょうぶ…だいじょうぶ…だから」
…あぁ、でもダメだ、托都の顔、見えないな。
「おむかえ、かなぁ…」
「…!!いやだ!死ぬな夜月!!」
「ごめん、な、やくそく、まもれなかった…」
「そんな、こと……」
あれ、なんか、あたったな。
なぁんだ、ないてるんだ、このこ。
なきむしさんだなぁ……。
「泣くなよ……かならず、とうさんと、かあさんに、…」
「夜月!!死ぬな!夜月!」
「……あわせ、て――――………」
「――!夜月…冗談だろ?また嘘ついてるんだろ?仕事で疲れたんだ、そうに決まってる。……嘘は、つかない約束……だろ……」
楽しかった。
アンタ面白いんだ、私のこと気使って、お馬鹿なのに頭フル回転でいっつも私に面白い話するんだ。
あぁ、なんて素晴らしい8年だったんだろう。
神様は、残酷だな。
「……夜月……いじわるだ…寝たフリするなよ……起きろよ…嘘つき…!…嘘、つき………」
「――――」
「…ッ…うぁあああああああ!!!」
―――朽祈夜月の人生は、幕を下ろした。
~~~
「あの人を………」
「……ヒカルは、知ってたのか?」
「葬式があった、っていうのは知ってる。……それが、真実か?」
「…あぁ」
ひどい、話だ……。
「……それからは早かった。夜月の家に戻った俺は、夜月の調べていた全てを知った。風雅家に捨てられていた、全ては…事実だった」
生きた心地はしなかった。
それから5年はただ、ただ復讐のためにあの背中を追い続けていた。
「今考えてみれば、滑稽だったかもしれないな」
「托都…」
「遊紗、覚えておけ。誰かを憎むのなら、相応の悲劇を背負うことを。大切な人の死を忘れてはいけないことを」
「…分かった!」
……なら、この話は終わりだ。
「よし、…にしても気分が悪いな。ヒカル、」
「なんだよ唐突に」
「世話してやってるんだ、コーヒーの一杯くらい淹れてくれ」
「はぁ!?意味分からない!!なんだよそれ!」
「あぁ、ブラックで頼む」
「スルーするなよ!」
「ほら!とにかく帰ろう!ヒカル!」
「遊紗まで!」
「………」
夜月、伝えたいことがあった。
アンタと同じ血を持ったあの時の赤ん坊が、今ここにいる。
真面目で楽天的、アンタにそっくりだ。
……あの時、俺にはなにも守れないとアンタは言っていた。
それは違う。もう、守れないんじゃない。
守らなければいけない。
いつも楽しそうで、それでも寂しがりなコイツを、今は俺が。
だから見守っていてほしい。
もう泣き虫だとかは言わせない、俺は…………、
「もう、一人じゃない。そうだろう?」
「…!!」
「托都!早くしろ!」
「ヒカルがおかんむりだぞー!」
「……あぁ、今行く」
そう、ひとりじゃない。
END
==================
【あとがき】
だいぶ駆け足になりましたが後編でした!!
夜月さんがいい人過ぎてヤバイ。
享年28歳、この時のお葬式にヒカルは来てません、もう両親を失ってます。でも身内のことなので知ってました。
托都に怪我がなかったのは夜月さんがハンドル切りながら片手で托都をぐいっと抱き締めて庇ったから。
咄嗟の判断で12歳の子供を庇うとかヤバイです。
グレンが余計なことしなかったらどうなっていたか、まぁ世界が滅んでました。それこそドン千のカオスパワーで托都が人間やめてた。
全ては運命、ですね。
さて、すんごく後味も悪いしあれですが!!!
次のお話はですね、皆様お待たせいたしました。
主 人 公 さ し お き 狩 也 メ イ ン だ よ ! !
主人公はもう少し待ってね。
なので次回は狩也を、お楽しみに!
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―――それなりに平和な生活はしていた。
―――夜月の性格もあってか、楽しかったのかもしれない。
―――ただ、あの日、…。
「あー、ダメだわ!」
「なにがダメなんだよ、夜月」
「仕事の話!中々見つからないんだよねー」
一体なに探してるやら、ま、子供には分からなくていいことだよな。
「托都ーアイス買ってきてー」
「また?」
「お願いー!」
「しょうがないか…」
仕事がたまってるなら仕方ないな。
「…あ、Dパット置いていった………ヤバいかも…」
~~~
「ありがとうございましたー」
「結構遠くまで来ちゃったなぁ…」
…確か裏道なかったっけ?ここって。
あればそっから行けると思うけど、あんま明るさ変わらないし近道なら使った方がいいな。アイス溶けちゃうし。
「…あった」
ここ抜けたらちょうどって感じだ、なら一気に行っちゃおう!
「おっ!おいお前!」
「…!お、お前ら……」
「……誰かと思ったら、昔突っ掛かってきたガキじゃねえか」
「でかくなったなぁ?」
「うるさい!退いてくれ、早く帰りたいんだ!」
「一丁前にデカい口叩くなよ」
「通りたかったら通行料払いな」
通行料とかバカな話して、こんな奴らが大人なんて思いたくないな…!
とにかく、早く戻らなきゃ!巨漢相手の時は……足を狙う!!
「そこを、どけっ!!」
「ぐぉっ!?」
「て、てめえ!!ガキのクセに!!」
今だ―――!!今走り抜ければ隙が付ける!
「逃がすか!!」
「――っ!あっぐ!!」
しまった!!
「っ……」
「てめえ、あんだけやられて懲りねえな」
「うっ、さい…!」
「前よりひどい目に遭いたくなかったら、今ここで、死んで詫びるんだな!!」
「くあっ!!」
――ヤバイ、
「……ぁ、血……血が…」
――頭がふわふわする、血が出てきた、本当に死ぬかもしれない、いや、死ぬんだ。
――こんなとこで、こんなくだらない理由で、こんなどうでもいい人間に殺されるんだ。
――なんてばかこと、頭の中からなにかがぬけたような気がする。
「…あーあ、やっちまったな」
「バカ!セキュリティに見つかったら逮捕じゃすまねーぞ!」
「俺らは被害者だ!このガキが先にお前を殴ったから反撃したんだろ!」
「………」
ここでおしまい、そとがわもうちがわも、こわれてなくなりました。
『ソレデ、ヨイノカ』
「―――!!」
『我ハ闇ヲ運ブ者、オ前ハ生ヲ全ウシ、世界ヲ滅ボス者』
「それって、生き返らせてくれるってこと?やっぱ俺死んだ?あとなにこの腕の真っ黒いの、剥がれないんだけど」
『ソレハ混沌ノ刻印。ソシテオ前ハ死シテハイナイ、ダガ、コノママモ惜シイ』
あ、やっぱヤバイのか。全然頭が考えに追い付かねーし、終わったな。
「言ってる意味分かんないし、でも生き返らせてくれたら嬉しいな。夜月に会いたい、弟に会いたい、やりたいこといっぱいあるんだ」
『弟……オ前ハアノ者共ニ会イタイカ?』
「…なに言ってんの、当たり前だろ。家族なんだから、大人になって居場所がわかれば会いに行くさ」
『ソノ親ガ、オ前ヲ棄テタトシテモ』
「………は…?」
捨てられた…?まさかそんな、そんなことない。
『オ前ニハ二ツノ親ガイタ。一人ハオ前ノコトヲ見向キモセズ棄テタ。ソシテモウ一人ハ―――』
「―――!」
『オ前ヲ無視シテ、一人息子トヤラヲ愛シテイル』
「………父さん…母さん……」
そんな、俺は…俺は誰なんだ。
父さんたちの子供じゃない?もう一人の親ってなんだ?知らない、そんなの知らない…!
「知らない!!そんな偽物を見せて俺を騙そうなんてそうは――!」
《遊矢はとっても物覚えがいいな》
《さすがは私たちの一人息子ね!》
《この先の未来は明るいな!ハッハッ!》
《ええ!遊矢がいれば大丈夫》
「……遊矢……?」
『可哀想ナ子供ダ、大人ヘノ憧レハ捨テヨ、コレガ現実ダ』
こんなの、誰だよ…!俺には弟がちゃんといる…!一人息子なんかじゃない…!
俺がいないのにあんな明るい笑顔で父さんたちは笑ったりしない…!きっと探してくれてるはずだ!
《托都くんの戸籍情報、抹消完了しました。もうこの家には遊矢くんしかいません》
《ご苦労。いいな、この家には子は遊矢しかいない!この家の跡継ぎは遊矢一人だ!》
「……………」
『分カッタナ、オ前ガ信ジタ両親ハ、オ前ヲ裏切ッタ』
……俺は誰なんだ、結局どこの誰なんだ。
意味がわからない。いや、分かっている。信じてたまるかよ。信じなければ前には進めない。
遊矢は?遊矢はどうしてる?
俺はここにいる、大人になったら会いに行く。
お前が俺を、知っていれば死なずにすんだものを……。
かわいそうな遊矢――――、
「アンタ、何者だ?」
『…我ガ名ハ「グレン」、願イヲ持ツ者』
「アンタの願いを叶えてやるよ。だから、俺を生き返らせてくれ、そして――奴らに復讐する力をくれ」
『……良かろう、貴様の混沌は闇だ。闇を振るえ、世界を壊せ、さぁ闇の子よ、その心の裏側に孕んだ闇をお前を裏切る全てに振るうがよい』
「…神様の仰せのままに」
――――、
――――――、
「ふっ……あ、ははっ…」
「なっ、なに笑ってやがるこのガキ…!」
「死んだはずだろ!!聞き間違えじゃ…!」
「バカ野郎!死体が動くわけないだろ!!」
「その通りだ、死体が動くわけがない。そう、死体は動かない」
「な、なんだよアイツ!?」
「ひっ!!こっちに来るんじゃねえ!!」
「う、うわああああああああ!!」
~~~
「……………」
「……………」
「聞いていて気分の良い話ではないだろう?続けるか?」
そんな、途方もないことが…。
それに比べたら、やっぱり俺はまだまだ小さいんだな…。
「まぁ、実際この後遊矢たちに出会うまでの期間、記憶が大半以上ないがな」
「本当か!?」
「どうする?遊紗、お前が言い出した話だ。お前が決めていい」
「……続けてくれ…!」
~~~
「托都!!」
「!夜月…?」
あれ?……あれ?
「良かった…!心配したよ…!?怪我はない?」
「うん、ないけど…」
「そう…!良かった!!」
なにか、忘れてるような……。なんだっけ、思い出せない……うーん?
「…!アイス!」
「溶けてる……」
「ごめん…」
「いいんだよ!托都が無事ならいい!」
アイスが溶けるくらい外にいたっけ?
全然思い出せない、夜月がこんなに心配してるのも―――あれ?
「ここ、どこだっけ」
「托都…?」
おかしい、なんかおかしい。
なんでこんなところにいるんだ?……なんで、だっけ……?
「もしかしたら風邪引いた?早く寝た方がいいね」
「…そうする」
「よし!」
「……」
『忘れるな、憎しみを忘れるな』
「…!」
……あ、そうだった。
「忘れてないよ、神様」
「なに言ってんの?」
「…!なんでもない…」
なにしてるんだ俺、馬鹿みたいだな。馬鹿だけど。
―――実際、変わったことはなかった。
―――だが…問題は更にその後、それから4年後のことだった。
「托都!!」
「なに?夜月」
「喜びなさい!お母さんとお父さんに会えるよ!!」
「えっ……?」
「インタビューがとれたの!!自宅に行くって!だからもう大丈夫!!」
「会える、のか?」
「そう!会える!!元に戻れるんだ!」
―――夜月は心底嬉しそうだった。
―――同時に寂しそうにもしていたか。それでも前日に夜月が珍しくパーティだとはしゃいでいた。
―――だが、その時はもう帰りたいとは微塵も思わなかった。
―――むしろ好機だと、三人をまとめて始末できるとしか考えられなかった。
―――そして、来るその日は…雨だった。
―――ヒカルは知っているか、…なんだ、恥ずかしながら…血は苦手でな。
―――分かるはずだが、原因は最初の男達だ。それ以降今でも見るに耐えん。
―――…これは、そうやって引き起こされた。
「着いたらまずさ、誰に会いたい?」
「…遊矢、かな」
「かわいいだろうね!楽しみだ!」
あの子がこうやって喜んでいる。
8年間私の弟だった子が喜んでるんだ、私が泣いたら示しがつかないってね。
だから最後の瞬間まで泣かない、絶対に。
「…!夜月!!」
「……!!」
―――衝突事故、だった。
―――原因不明。公では雨でタイヤをとられたトラックが衝突した、という話だが、
―――実際はアレが仕組んだことだった。
―――今更奴になにかを言おうとは思わんがな。
~~~
「ひどい、な……」
「……」
托都も、事故で誰かを亡くしたんだな。
俺みたいに……。
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「っ……やつき……夜月……」
どこ……だ……?
「………?」
なにか、触った……?
「…………――――えっ」
……なんで、なんで……!?
「夜月!!夜月!!」
「ぅ……」
「血、こんなに……どうして…!?」
分からない、夜月が、夜月が……。
真っ赤で…こんなの………。
『トドメを刺せ』
「いやだ……」
『消してしまえ』
「いやだ…!!」
『その汚らわしい血を、見たくはないだろう?』
見たくない、見たくない見たくない見たくない!!
『やれ―――!!』
「ッ……アァアアーーーッ!!!」
~~~
「そこでなにをしたのかは、もう分からなかった。気づいた時には、事切れた夜月がいた」
「……」
「今でも思っている、不甲斐ない自分が招いた結末だった。誰もを犠牲にすることなく遊矢たちには辿りつけなかった」
俺はあの時から決まっていた、影で生きるしか道はないと。
~~~
………あれ……。
「――――……」
お腹痛いなぁ……なんでだろ……。
「………」
事故った、そう、事故ったんだ。
……托都は…?
「……ごめんなさい……ごめん…」
「……」
……あ、そう。
私、あの子に刺されてるんだね。
なんでかな。なんでなのかな。
「ぁ……と……」
「…!!死ね!死ね!!消えろ!!」
……私、嫌われてたのかな……。
「たくと……」
「………夜月……やめて、くれ。話しかけないでくれ、怖いんだ、血が…怖いんだ。だから、消さなきゃいけないんだ…」
「そ…う……」
よかった、嫌われたんじゃ、ないんだ。
「……でも、ね……いたいよ……」
「!!」
「やつ、き、おね、ちゃん、いたい、な…」
「夜月……?夜月…?」
「いた、いよ…たくと、やめ、てほし、い」
「……なんで…」
「おもい、きり、だきしめて、ほしいな…」
結婚できなかったんだもん。
だから、今は、私が愛した弟に、抱き締めてほしい。
「……ごめんなさい、ごめんなさい…!」
「あやまらないで…ほら、」
「っ…俺…こんなこと、したくなかった…!」
「だいじょうぶ…だいじょうぶ…だから」
…あぁ、でもダメだ、托都の顔、見えないな。
「おむかえ、かなぁ…」
「…!!いやだ!死ぬな夜月!!」
「ごめん、な、やくそく、まもれなかった…」
「そんな、こと……」
あれ、なんか、あたったな。
なぁんだ、ないてるんだ、このこ。
なきむしさんだなぁ……。
「泣くなよ……かならず、とうさんと、かあさんに、…」
「夜月!!死ぬな!夜月!」
「……あわせ、て――――………」
「――!夜月…冗談だろ?また嘘ついてるんだろ?仕事で疲れたんだ、そうに決まってる。……嘘は、つかない約束……だろ……」
楽しかった。
アンタ面白いんだ、私のこと気使って、お馬鹿なのに頭フル回転でいっつも私に面白い話するんだ。
あぁ、なんて素晴らしい8年だったんだろう。
神様は、残酷だな。
「……夜月……いじわるだ…寝たフリするなよ……起きろよ…嘘つき…!…嘘、つき………」
「――――」
「…ッ…うぁあああああああ!!!」
―――朽祈夜月の人生は、幕を下ろした。
~~~
「あの人を………」
「……ヒカルは、知ってたのか?」
「葬式があった、っていうのは知ってる。……それが、真実か?」
「…あぁ」
ひどい、話だ……。
「……それからは早かった。夜月の家に戻った俺は、夜月の調べていた全てを知った。風雅家に捨てられていた、全ては…事実だった」
生きた心地はしなかった。
それから5年はただ、ただ復讐のためにあの背中を追い続けていた。
「今考えてみれば、滑稽だったかもしれないな」
「托都…」
「遊紗、覚えておけ。誰かを憎むのなら、相応の悲劇を背負うことを。大切な人の死を忘れてはいけないことを」
「…分かった!」
……なら、この話は終わりだ。
「よし、…にしても気分が悪いな。ヒカル、」
「なんだよ唐突に」
「世話してやってるんだ、コーヒーの一杯くらい淹れてくれ」
「はぁ!?意味分からない!!なんだよそれ!」
「あぁ、ブラックで頼む」
「スルーするなよ!」
「ほら!とにかく帰ろう!ヒカル!」
「遊紗まで!」
「………」
夜月、伝えたいことがあった。
アンタと同じ血を持ったあの時の赤ん坊が、今ここにいる。
真面目で楽天的、アンタにそっくりだ。
……あの時、俺にはなにも守れないとアンタは言っていた。
それは違う。もう、守れないんじゃない。
守らなければいけない。
いつも楽しそうで、それでも寂しがりなコイツを、今は俺が。
だから見守っていてほしい。
もう泣き虫だとかは言わせない、俺は…………、
「もう、一人じゃない。そうだろう?」
「…!!」
「托都!早くしろ!」
「ヒカルがおかんむりだぞー!」
「……あぁ、今行く」
そう、ひとりじゃない。
END
==================
【あとがき】
だいぶ駆け足になりましたが後編でした!!
夜月さんがいい人過ぎてヤバイ。
享年28歳、この時のお葬式にヒカルは来てません、もう両親を失ってます。でも身内のことなので知ってました。
托都に怪我がなかったのは夜月さんがハンドル切りながら片手で托都をぐいっと抱き締めて庇ったから。
咄嗟の判断で12歳の子供を庇うとかヤバイです。
グレンが余計なことしなかったらどうなっていたか、まぁ世界が滅んでました。それこそドン千のカオスパワーで托都が人間やめてた。
全ては運命、ですね。
さて、すんごく後味も悪いしあれですが!!!
次のお話はですね、皆様お待たせいたしました。
主 人 公 さ し お き 狩 也 メ イ ン だ よ ! !
主人公はもう少し待ってね。
なので次回は狩也を、お楽しみに!