※〈〈読者・なう及びTwitterフォロー・アメブロ外〉〉以外のコメントは固くお断りいたします。コメントは削除されます上、不快と思った場合はそれなりのコメントをさせていただきます。また、宣伝やいいね返し目的のいいねはお断りします。
※深夜0時~5時までのコメントや読者登録はマナー違反です。おやめください。


===


「ねえ、」
「なに」
「いつか私も、あの星みたいになれるのかな」
「…」
「難しかったよね、ごめん」
「なれるよ」
「…えっ?」

「俺がそうしてやるから」










―――Star Dark Chronicle―――
      【少年が闇を孕んだ日】








~~~


――ブーッ!

「…!」

「遅いぞ!早く行け!」

「………」

居眠りか…らしくないことをしたな。

…そういえば、ここ数日ろくに寝ていなかったような気が……俺が出るわけじゃないのに、何故こんなに…。

「…急ぐか」


~~~


「あーもー遅い!!」
「珍しいな、あの人に限って遅れてくるなんて」
「珍しくはないけど、いくらなんでも遅すぎる…寝てるのかな…」

いつも一緒にいるような気がするけど、あれか?喧嘩するほど仲がいい、っていう……。

「しょうがないな、遊紗、時間は大丈夫か?」
「えっ、大丈夫だけど」
「ちょっと付き合え、暇潰し」
「……またか…」

なんか前にも似たような理由で付き合わされた気がするな…。
どうせ時間あるし、聞いてみるか。

「気になってたこと、聞いてもいいか?」
「なんのこと?」
「托都って、アイツ何者なんだ?アンタが凄すぎてあんま気にしたことなかったけど…」
「………」

と、止まった…?まさかまずいこと聞いた…?

「聞きたいか?」
「…ま、聞いていいなら」
「……そうか!じゃあ教えて――!」
「調子に乗るな」
「いったぁー!?」

……あ、

「人が遅れてきたらとんでもないことを…」
「なんだよ、別に大まかにお前が暗いバカだって説明をって痛い痛い痛い!!」
「…おい」
「すまないな、放っておくとこうなることを忘れていた…影響は恐ろしいものだな」

予想してたけどやっぱり悪ノリだよな。
いや、にしたって…どんな奴なのかとは聞いたけど、そこまでして聞かれるのを止めるのか?

「話すのがダメだとは言っていない、ただその勢いだとありもしない話を捏造されそうでな」
「し、しないに決まってるだろ!」
「…やりそうだな」

あぁ、すげえ捏造しそうだな。

「で、遊紗はどこまで知りたい?」
「うーん…ヒカルの話は結構聞いたし、できれば最初から?」
「あー、それなら俺も気になるかも」
「…かなり後味の悪い話になるぞ」
「慣れてるし、大丈夫」
「…そうか」


~~~


「…まず、ヒカルは知ってるな?」
「あぁ、あれはな」
「あれ?」
「托都の親の話、簡単に言えば母親は人間、父親は異世界の神様ってところだな」
「神!?えっ、えっじゃあ…いわゆるその世界の次の神様?」
「こっちは大迷惑だがな」

神様のハーフ…そもそも人間じゃないのかこの人……。

「で、その親がまぁ色々とあって、孤児だったコイツの次の親が俺の親友の親」
「……複雑なんだな、アンタ…」
「気にするほどのことじゃない、これだけ分かっていれば話が分かるはずだ」
「しかし、俺も知らない新事実?なわけか…」
「…そうなるな」

仲間も知らない過去の話か…そんな話聞いてもいいのか?

「16年前、遊矢が産まれて少し後の話だ」


――――――、


――――、


記憶にある通りなら、珍しく父親の仕事についていく名目だったはずだ。

「今日の仕事の間、じっとしていられたらカードを買ってあげよう」
「ホント!?」
「あぁ、好きなものもね」
「やったぁ!」

…まぁ、純粋な子供ではあったな。結果的にそれが仇になったわけだが。

《次は終点、中央駅前…中央駅前…》

「来たか」
「はやく行こう!父さん!」
「あぁ」

~~~

「托都、少しここで待っていてくれ。小さな用事を済ませてくるからな」
「うん!」

そうしてずっと待っていた、来ることがない親が来るのをずっと。

体感していた時間は異様に長かった覚えがある。やることもなかったからか。
一日くらい、経っていたのかもしれない。一人の男が話しかけてきた。

「ここで誰を待っているんだ」
「おとーさんをまってるんだ」
「…無意味だな、もうやめろ」
「どうして?」

男はそれ以上なにも話さなかった。ただ隣で座っているだけで、顔もなにも見せないままだった。

…来るべくしてきたのかもしれない、本当にただ父親を探すために、その場所を……いつの間にか離れていた。

「とうさん…どこー?どこー!」

無意味だと端から分かっていた。探してもその町にいないことは最初から明白だった。
そもそも、アイツが言った用事は――、

「…どこー?」


――――、


――――――、


「…そいつ…!許せねえ…」
「………」
「いまだに許したわけではない、いや、許すものかよ」


――――――、


――――、


それからかなりの時間が経っていた。
最初の場所に戻る道も分からずにさ迷い続け……、とにかく痛感させられたのは運が悪かったということだ。

「よう小僧、」
「子供がこんな場所でなぁにしてんだァ?」

「お、おとーさんをさがしてるんだ…!」

「お、と、う、さ、んん~?」
「ぷっ…!」
「パパ探しにこんなとこまで来たのかよ!」
「迷子クンがかわいそうになぁ!」

「ばかに、するな…!」

今だったら簡単に撃退できていただろうな。…だが、たかが4歳児になにができるか。

「おまえたちみたいなのに、まけるもんか…!」
「そうかよっ!」
「っ!!」

「へっ!へなちょこかよ!」
「そりゃあガキだからな」
「だな!ほらよもう一発くれてやるよ!」

「っ~!いたいよ…!いたいよ…」

……まぁ、こんなことがあったからか。あまり自分か他人かは関係なく、血液そのものが苦手になった気がする…。

ただ、その時はひたすら後悔していた。自分の行動に。
あの時もしあの場所から動かなければ、きっと家に帰れていたのかもしれない。今ではどうでもいいがな。

「やっべ!やりすぎた…」
「おらセキュリティ来る前にずらかるぞ!」

逃げていった二人組を今なら追いかけただろうな、その二人組もあの世にいるわけだが。

「…!子供…?……君、生きてる?しっかりして!」

…、その後だった。これが、俺の運命の出逢いだ。


~~~


「………ぁ…」

「…!」

「………」
「やっと目が覚めたね」
「!っ…」
「あ、やっぱビビられてる?無理ないか」

そりゃそうだよね、私だって見ず知らずの人の家で目覚まして見ず知らずの人が目の前にいたらビビるわな。

「まず落ち着いてくれる?そんな顔されたらおねーさん困っちゃうし」
「……だ、だれ…」
「あ、そこからか」

…いや、当たり前だっつーの。バカだな私ったら。

「私は朽祈夜月、ヤツキおねーさんだ」


―――朽祈夜月、その出逢いは必然だったのかもしれない。


――――――、


――――、


「朽祈、夜月…」
「夜月って、あの夜月さんか!?」
「あぁ」
「朽祈ということは、アンタの……」
「…母さんの、妹だ」


――――、


――――――、


「や、つき…」

「アンタを手当てしてやったのは私だ。ここは私の家!」

「…あ、…」

「…?」

「ありが、とう……」

「…人間として、当然のことをしたまでさ」

…少し声が小さいな、枯れてるし途切れてるしやられたか?子供なのにまずいな。
……いや、それよりも、

「アンタこそ名前は?私にだけ名乗らせる?普通」

「…か、……風雅、托都…」

「風雅…?」

風雅って、あの風雅?…最近子供が産まれたとは聞いたけど、こんな子供がいたの?

「…かえりたい……」

「…?」

「かえ、りたい、よ…父さん、母さんに…会いたい…!」

「…そういうこと……」

かわいそうに……。

「…!」
「大丈夫、ここにいても大丈夫。アンタが帰れるようになるまで、ここにいてもいいんだ」
「……でも、」
「アンタのご両親に絶対会わせてやる、だから少なくとも怪我が治るまではここにいるんだ」
「………」

……そりゃ、子供でも堪えるよね…分かってる分かってる。

「ねえ、私のこと、夜月おねーさんって呼んでみてよ」
「え…?」
「ほらはやくっ!」
「…やつき…おねーさん…?」
「よしっ!よくやった!」

「…?」

「今日から私たちは姉弟だ!托都、手出して」

「……わっ!?」
「アンタの怪我が治って大人になって、両親に会えるその日まで、私が姉ちゃんとして守ってあげるから。ここに、いてくれないかな」
「……うん…!」

辛いことも、悲しいことも夜月が全部平らげてやるから、だからアンタはそこで笑っていればいい。笑って、笑っていて。


――――――、


――――、


「…そうして辿り着いていたのが、ハートランドシティだ」
「夜月さん…」
「………」

すごい…な。みんな知らないところでなにかが繋がってることもあるのか。


――――、


――――――、


「えっ、アンタ4歳?」

「うん、このまえ誕生日だったよ」

「ほー?」

あー、でもあの子より3つ年上かぁ…。

「いやーさ、うちのねーちゃん子供いるんだよねー。私20で独身!ねーちゃん24で夫持ち!マジ信じらんなーい!」

「……すごいね」

「…ごめん、分からないわな」

つか、この子が今4歳で、風雅夫妻が確か…30代後半…?だったような…つまり、やっぱ養子?でもそんな話なかったし、どういうこと?

「今度会わせたげる!めちゃ可愛いの!濃紫の髪が私に似てて超キュート!!」

「お、おれの弟も…」

「…?」

「みどりいろのめ、おれにそっくりで…か、かわいい……?」

「……ほほーう?自分がかわいいと分かってるとは…頭のいーやつめー!」

ま、でも金髪と赤茶髪って結構いいよね。しかも目はうるうるだし、もしかしたらあの子よりかわいいかも!?

「よし!聞きたい話もあったし、ちょっと出掛けよう!」

「えっ、えっ!?」
「ほら行くぞ!」


~~~


――カーンカーン…

「ねーちゃーん!」

「あら、夜月どうしたの?連絡もしないで」
「いやさ、ヒカルくん元気かなぁって!」
「もう!そういうことなら尚更連絡してよ」
「悪い悪い!ほら、後ろ隠れてないで!」

「えっ、ええっ!!?」


――――――、


――――、


「えええええっ!?」
「………」
「じゃあ、会ったことが…!?」
「ある」
「う、嘘だろ…」


――――――、


――――、


「かわいかったろ?」
「うん」
「そっか」

久々に会ったけど、喋れるようになったかぁ…ままぱぱって可愛かったなぁ…。

「アンタの弟ってどんな子なわけ?」
「おれの…弟……」
「……ごめん。…そだ!私さ、警察の手伝いみたいなのやってんの!」
「けーさつ?」
「アンタの家、今必死こいて探してるから見つけて絶対に帰してやる!」

早く弟に会わせてやらないと、それに、私が風雅に一発殴らないと気が済まないんだよね。

「…おれ、」
「?」
「やつきのこと、しんじてる…!」
「…嬉しい返事だよ」

こんな可愛い弟のためだ、早くなんとかしてやらなきゃ――――!


~~~


それから1年、風雅夫妻の居場所が分かった。
……けど、

「どうしてですか!!なんで風雅氏と接触させてもらえないんですか!」
「だから、風雅氏本人から拒否が来ているんだ。だから―――」
「意味がわかりません!!」

表で噂されているのはスキャンダルから逃げているというもの、風雅氏との接触はマスコミや一部セキュリティにできなかった。

それはきっとあの子も分かっていたはず。


《風雅議長!養子の話は事実なのですか!》
《そんなのはでたらめだ!私の子は遊矢だけだ!》

「……なにが、議長だよ…!」

調べきった風雅の戸籍からも、托都の名前はなかった。あるのは夫妻と1歳になった息子の風雅遊矢だけ。
存在は、完全に消されていた。

それでも、―――それでも!!


―――――、


―――――――、


「俺がそれを知ったのは、それから更に4年後の話だがな」
「遊矢の父親…そんなことまで……」
「ひどい…」
「そんなことも知らなかった、それまではな。だが、4年後の夏に…アイツと出会った」


誰が望んでそうなったか、知りたくもない。それでも、俺は――…。

ただ、あの頃は夜月の弟でいたかった。








後編へ続く