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ジェレスタ135「 運 命 を 変 え る 者 フ ェ イ ト シ ャ イ ニ ン グ 」
あの日、彼が来てから私の運命は大きく変わった。
「私は行くわ、あの子が遠き世界に転生しようとも、必ず見つけ出す!」
「ならば少女よ、なにを望む」
「永久を生きる命を、再び地を歩く足を望むわ!例えどんな代償が出ても構わない、私に力を!皇の扉よ!」
きっと、生まれ変わったと信じてただただ歩き始めた。
~~~
「…おしまいですわね」
「ヒカル…おい!早く起きろよ!!なにしてんだよ!」
このままだと残り3回の攻撃を受けて負けちまう……でも、こんなところで負けるなんて……。
「そんなんお前らしくねえよ!!」
「ふふっ、そこでなにもできない自分の愚かさを痛感してください。私はリカティナで再び《マリオネットトークン》を攻撃!」
《ヒカルのライフ:1200》
「また……!」
ライフは残り1200……頼むヒカル…なんとか、そこから出てきてくれ!!
~~~
「―――――、ここは…」
薄暗い、アイツの…心の中……?
『着いたか』
「…あぁ」
『そこは心の世界、思いが具現化された場所だ』
「思い………」
『時間には限りがある、急げ』
「そうだな……」
そんなことは分かっている、だが……なんだここ…薄暗いのは百歩譲っても分かる――だが、まるで夜の砂漠に糸が張り巡らされたような…複雑怪奇な世界、一体アイツの心はどうなっている…。
「……!水の中に…鏡?」
水の柱、そこだけ薄く光が放っているように見える。まさか、この光だけがこの世界を照らしている…?いや、そんなこと……。
「これは…懐かしいな」
水の柱から見た鏡からは遊矢たちとの思い出が映っていた。これが、アイツにとっての潤った心、つまりアイツは…昔から心が渇いたまま、か。
気配はする、ただ一向に見つからない。
……どうなっている…、時間がただ過ぎるだけ…急がないといけないのは、分かっているのに………!
『水中に沈むのは、楽しいことかもしれない』
「!」
今のは……!?…もしや、近付いている……?
『ただこの砂に埋もれるのは辛いこと、なにもできない、なにも』
違う、心に閉じ籠るなら勝手にやればいい、かつての俺のように、自由気ままにすればいい。
『たくさんのモノを置いてきた、壊してきた、捨ててきた。ならば、今度も―――捨ててしまうのが道理だろう。渇いた大地にいくら水を注いでも、それが海になるとは限らない、心と同じ』
置いてきたなら拾えばいい、壊したなら直せばいい、捨てたのなら探せばいい。どから、お前は――お前の心にはいつだって――――!
「…!…ヒカル……」
「――――」
~~~
「さて、攻撃に移らせていただきますわ」
「…!」
「《マリオネットトークン》へ三度目の攻撃!行きなさい!」
《ヒカルのライフ:600》
嘘だろ…本当にこれでいいのかよ…!!これで……。
「あぁ…あぁ!分かりますわ…!私の苦しい戦いは、これで執着を迎える…涙が止まりませんわね…本当に……あの日あの子が死んでから、ずっと」
「あの子……?死んだ…?」
アイツ、デュエル中にいきなりなに言い出してんだよ……。
「私の望みは叶う、貴方を手に入れることで、永久に!」
トルテの望み……ただヒカルがほしいだけじゃなかった……?
「さぁ、行きますわよ―――」
「!!」
「最後の《マリオネットトークン》に、攻――――!!」
「やめろ!!」
「――!風雅……遊矢……」
~~~
分かる。アイツの仕業だと、深い心の底に眠った負の思いが掘り起こされたのだということ、だが、遊矢にとってそれは無意味だ。
「ヒカル、苦しむな、お前らしくいればいい」
苦しみは一人のモノではない、分かつもの、遊矢がいなければきっと俺も今は――。
「その友への思い、いつか形になる、お前にとっての希望になる。そうだろう?」
「――――…」
友への思い、その力があれば遊矢もヒカルも、きっと心配要らないはずだ。
「それに、俺も…いるかもしれないな」
誰かに忘れられても構わない、だが、あの約束を忘れない限り、誰かが覚えていてくれている限り――――、
「必ず戻るから、その時まで…笑って、待っていろ。その笑顔を、誰もが愛しているんだ」
だから迷う必要も戸惑う必要も本当に必要はない。
「ただ、お前の前にいる仲間のために、目を覚ませ!ヒカル!」
「――…………」
「!」
……今、なにかを……?
「――……たく、…と……?」
「!遅い、早く起きろ」
「~~~っ、…うん」
よかった、ただよかった。
「…ありがと」
「気にするな、お前たちに危機が迫れば、きっと俺は力になる、この命に代えてもだ」
「そっか、…じゃあ、絶対お前が生きられるように平和な世界築いてやる」
「それが一番ありがたい話だな―――!」
「…お前………」
「悪いな、俺にも時間がないんだ」
「……待ってるから、きっと笑って、待ってるからな」
「…あぁ、約束だ―――――」
「………托都……、ありがと…ホントに………!」
~~~
「…………」
『もう、いいのか』
「伝えることは不格好でも伝えた。あとは、アイツの気持ち次第だ」
"知ってた"
なんて分かりやすい奴、…信じてる、俺から言えるのはそれだけだ。
~~~
「……何故、止めたのですか…」
「当たり前だろ!!こんな一方的にやるなんて卑怯にも程があるだろ!正々堂々デュエルしろ!」
「あなたが邪魔立てする理由も見当たりませんが?」
「仲間のピンチになったら仲間が助ける、なんて当然のことじゃねーかよ!」
「危機を救う……ですか。その理由付けは愚かです」
「なんだよ…!どういうことだよ!」
「仲間が危機を救うのならば、何故高位な存在の神は私を救わなかったのですか!」
「………神…?」
救いが平等とは限らない、それはよく知ってる、分かってる。自分もそうだから、でも、変化を求めれば、それもまた別のもの。
「…救いを待つだけじゃ、ダメなんだ」
「!ヒカル…!」
「な、何故……!」
「よかったぁ!大丈夫か?」
「どっかのお人好しのおかげでな」
「お人好し……?!あの混血、また余計なことを……」
自分も人のことは言えない。だけど、お人好し云々の問題じゃない。ここから先は、あくまで未来を変えるために俺自身が俺自身のためにやることだ。
「どうして邪魔ばかり…私はどれだけ運命に見放されればいいんですか!!」
「………」
「わかりません…!貴方たちの思想のなにもかもが私には理解ができない…!」
「トルテ……」
「貴方が私と全く違うのは分かっています、だから!!」
全く違う―――、違わない、間違ってる。みんなが見ているよりも違う。
「消えてください、もういりませんから、私と同じ運命を持たないのなら!!」
「……そうじゃない、」
「!」
「自分の運命は切り開くものだ、それをましてや流れに任せている限り、お前は絶対に救われない!!」
「やめてください!!ヒノは、あの子はそんなこと言わなかった!!早く、視界から消えてください!」
「ヒカル!!」
「分かってる!墓地の《リベンジカースト》をデッキに戻し、効果を発動!相手モンスターの攻撃を無効にし、そのダメージを相手に与える!」
「っ!!」
《トルテのライフ:3400》
やっとライフを減らしたとか洒落になってねえ、あっちはあっちでおかしくなってるし。
「………」
「いい加減に目を覚ませ。悠久は存在しない、お前は自分で決めることもせず運命に流されてるだけだ」
「……ターンは終了しています、早くしなさい」
《手札:1》
「…かわいそうな奴」
でも、こんなこともう終わりにしよう。
「俺のターン、ドロー!……!」
これ……これなら、デュエルを終わらせられる……?
「…魔法カード《希望の解放》を発動!」
「な、なにそれ!?」
「このカードの発動時、自分フィールドのレベル8以下モンスターの効果を無効にし、墓地に送る。更に、墓地に送ったモンスター1体につき、相手フィールドの魔法・罠を破壊し、ギャラクシー・カオスの攻撃力を300ポイントアップする!」
《攻撃力:5200》
「攻撃力5200!しかも、邪魔な永続罠と《マリオネットトークン》も一掃できた!」
托都が残してくれた希望、これがあれば戦える!
「行け!ギャラクシー・カオスでリカティナを攻撃!」
「リカティナのモンスター効果により、ダメージは半分となり、破壊は無効になります」
《トルテのライフ:1800》
「それでもライフが一気に削れた!すげえぜ!」
「《銀の翼》の効果により、カードを一枚ドロー!……カードを一枚伏せ、ターンエンド!」
《手札:0》
やれるだけはやってる、あとは、このカード次第…。
「……」
「トルテ……知ってる、お前が、弟に命を救われたのは」
「…!」
「火事で燃える家に取り残されたお前を助けて死んだんだよな」
「……そう、」
――――――――、
―――――、
「お父様!お母様!皆さん、どこへ行ってしまったのですか…ヒノ……きゃっ!」
車椅子の私は置いていかれてはなすすべすらなかった。
「イブお姉ちゃんが!!イブお姉ちゃんが残ってるの!助けなきゃ!」
「無理よ、これじゃあ助からないわ」
「諦めるんだ。跡取りのお前が生きていれば――」
「嫌だ!絶対にお姉ちゃんを見つけるから!!」
「ヒノ!!」
足を引きずっている私は、助かるわけがないと思っていた。なのに、
「お姉ちゃん!!」
「…ヒノ、どうして戻って…」
「早く出よう!車椅子!!」
崩れる家の中で必死にヒノは走り回りました。
ついに玄関ホール、ですが、火の手は回らずとも崩れ始めていました。そして、玄関扉が瓦礫で埋もれ始めた時――――、
「お姉ちゃん!しっかり掴まって!」
「えっ?ヒノ?」
「せえのっ!!てやぁ!」
「!待って!!ヒノ!」
「ばいばい、お姉ちゃん」
――――――、
―――――――――、
「瓦礫は崩れた」
「…マジかよ……」
「弟が小さいと仮定したら、押して走ったら間違いなく二人とも死ぬ、そう踏んだのか」
「……そう、ヒノは死んでしまった。ですが、あの家族は………!」
―――――――――、
――――――、
「どうして貴方はいつまでも立てないのよ!!」
「す、すいません!」
「貴方みたいなどんくさい女のためにうちの跡取りが一人死ななければいけないなんて…!!」
「…ヒノ………」
「あぁああ!!貴方が代わりに死ねばよかったのに!」
「!大丈夫かい?」
「アナタ…」
「ほら、部屋で休もう。イブもリハビリに行くんだ」
「……はい」
ヒノがいないだけで家族は崩壊し、私は要らない子の扱いを受けた。
だから―――――、
「な、なにをするんだ!!」
「やめて!やめてイブ!」
――――――、
――――――――、
「私は家族を殺めました。当主となり、名前を捨て、禁忌の契約を結ぶことでヒノの生まれ変わりを探したのに、貴方も、違う…!」
「……」
全部日記の通りだった。こんな、ことが……。
「貴方ではないなら、誰なのか…もう、私にはなにも……」
「…もし、お前の弟が生まれ変わり、それが俺だったとしても、前世を思い出すことはできない。俺は俺だから、自分の歩んだ記憶すら、思い出せなくなるときもあるのに………」
「ヒカルさん…」
「ヒカル…?」
「今生きる俺と、ヒノは違う人間だ。それだけは覆せない違い。…だけど、これから記憶を築くことだってできるはずだ」
「これから…」
「遊矢たちの考えなら、きっと…仲間になれるんじゃ、ないか?」
俺には分からないことが多すぎるけど、きっと、大丈夫。
「さぁ、もうこんな戦い、終わらせよう。またやり直せるはずだ」
「…これからの、未来を……本当に…」
「もちろん!!ヒカルだけじゃない!俺だっているからな!」
「遊矢、さん…よかった、これで、私は―――――!」
…なにかが変わった…?この気配は……、
『何をしている、お前の望みはすぐそこに在るのだぞ』
「皇の…扉……!」
「あれが…」
「……」
『さぁ、願いを叶えるが良い、もうすぐ傍に、在るものを奪うだけで良いのだ』
「あぁぁ!やめてください!!私は、私は――!!」
『―――さぁ、――さぁ!!』
「ぁ――」
「トルテ!!」
「…………」
『在るものは奪えば良い、その力があれば、お前の望みなど容易に叶う』
「……ええ」
「!」
皇の扉……こいつが、……やるしかないか…!
「私のターン!私はリカティナをエクシーズ素材に、マイナスエクシーズチェンジ!」
「来るか…!」
「マイナスエクシーズ……」
「昼と夜の狭間に生きる悠久の踊り子よ、その目を覚まし、舞い踊れ!現れよ!《ルインマリオネット ザッハトルテ》!」
《攻撃力:0/ランク:4/ORU:3》
《攻撃力:4200/ORU:0》
マイナスエクシーズ…遂に来たか…。
「ザッハトルテの効果発動!オーバーレイユニットを全て墓地に送り、相手の墓地に《マリオネットトークン》を三体送る!」
《ORU:0》
「トークンを!?」
「そして、1体につき、攻撃力は700ポイントアップします!」
《攻撃力:4900》
「攻撃力…4900……」
「これ食らったらヒカルの負けじゃ…!」
ライフは600、確かに食らったら負け……。
「さぁ行きなさい!ギャラクシー・カオスに攻撃!エターナルソウルダンス!」
「ヒカル!」
「罠発動!《竜の魂》!墓地のカードを二枚除外し、攻撃を無効にして、ギャラクシー・カオスを次の自分のスタンバイフェイズまで除外する!」
《攻撃力:3500》
ミザエルのカードのおかげで攻撃は凌いだ、《銀の翼》がなくなったのは痛いが、ワガママは言っていられないのも事実だ…!
「まだですわ!ザッハトルテの効果発動!オーバーレイユニットのないこのモンスターがバトルを終えたターンのエンドフェイズ、相手の墓地の《マリオネットトークン》1体につき、100のダメージを与えます!この攻撃を、受けなさい!」
「っ!!あぁっ!」
《ヒカルのライフ:100》
「このままじゃ…ヒカルが……」
「ターンエンドです」
《手札:2》
『そうだ、そうすれば良いのだ。お前の欲する全てのために、全てを壊すのだ』
っ……まずい、体から力が抜けていくのが分かる…やはり、あの闇は隠しても隠しきれてないのか…。
アイツに対抗するためには……だが、あの手札が墓地に《マリオネットトークン》を増やすものだとしたら、返り討ちにあうのは目に見えてる。
どうすれば……どうすればアイツを救い出せるんだ…どうすれば、こんな哀しい運命を変えられるんだ!
『我が力を使え』
「…!お前…お前がゲデヒトニスか」
『いかにも。我が力があれば、時空を越え、未来は変わるだろう』
時空を越えて未来を変えられる力…もし、そんな力があるなら……あるなら俺は……!
『我に肉体を預けよ、一瞬で終わらせよう』
「!」
『どうするのだ』
「…お前に体を渡すわけにはいかない」
『ほう?』
力はもらう。トルテ…いや、イブを救い、運命を変えるために。この悲惨な未来を変えるために。
だが、それは俺がやらなきゃ意味がない。
俺のためにも、イブのためにも、俺自身が、やらなければいけない!
「お前が俺に合わせろ、お前の力を俺が吸収する」
『なるほど、面白い判断だ。興が乗った、いいだろう。だが、忘れるなよ?人の未来を変えることは、それは正しい時、間違った時があると』
「…今やらなくて、いつやるんだ」
『……良い返答だ。さぁ、この力、思う存分に振るうが良い――!!』
………そう、今じゃなければいつだ。チャンスは今しかない。未来を救うためには、このターンで、決める!!
「…!風が、吹いた……」
「…………」
『なんだ、これは』
「…行くぞ、皇の扉!正しい未来のために、運命を変えるために、お前を倒す!」
『…!!』
「これって!!」
「俺は、天の光でオーバークロス!!」
遊矢の持つ力と同じ、これなら大丈夫。
「…風の力……」
月の光纏う時、運命を変える刃となる。
思いは、希望へと変化する!
「月の希望纏う運命の光―――フェイトシャイニングアーマード!!」
136話へ続く
=================
【あとがき】
今回の一言、「┌(┌^o^)┐ホモォ…」
相も変わらずあのお二人が絡むと何故こうもホモっぽいのか、今回余計にそう思った。だが彼らはホモではない。
托都さん復活早いですね、実際外に出れる3分を使いきったからまた出てこれない引きこもり化余裕なんですが。
あの走り抜けた精神世界はCCCの乙女コースターみたいなもんですね、パロでも出てきたし。つまり、托都はレリーフの中心に来てたと言えばかなり分かりやすいと思います。
んでもって今回は勢いを重視した謎パワーでさっさと堕とされちゃったヒカルさん。そして謎のイケメンと絆パワーを発揮する托都さん、なにこの二人、だからRRでもコンビ組まされるんだよ(暴論)
そして上げて落とす。和解ルートかな?とか思った途端にこれだよ、さすが聖桜悪い意味でブレねえな。まぁ遊戯王はこうだよね、デュエル以外で平和解決できるのは遊馬先生か遊矢くんだけだと思います。うちの連中はやることやるから。
生きていたのかゲデヒトニス!出番がないから冷や冷やしたけど、ヒカルに力を譲渡したからマジで死にました。本来もう生きてないからね。仕方ないね。
次回!!輝く光で未来を変えろ!そして新たな敵が迫り来る…!
フェイトシャイニングアーマードを手に入れたヒカルはデュエルに終止符を打つため、最強のドラゴンを呼び出す!
デュエルが終わる時、遂に裏切り者が…!?
【予告】
フェイトシャイニングアーマードとなったヒカルはデュエルを、そしてトルテの運命を終わらせるために、「原始と新星」の名を持つ究極のドラゴンを呼び出す。
ヒカルとトルテの二人の数奇な運命、それを変えるため、ヒカルは過去の世界でヒノに出会う。
運命を変えるデュエルが終わる時、遊矢たちの前に不穏な闇と裏切り者の影が迫る……。
次回!第136話「未来は希望!我が名は「原始新星竜」!」
※深夜0時~5時までのコメントや読者登録はマナー違反です。おやめください。
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ジェレスタ135「 運 命 を 変 え る 者 フ ェ イ ト シ ャ イ ニ ン グ 」
あの日、彼が来てから私の運命は大きく変わった。
「私は行くわ、あの子が遠き世界に転生しようとも、必ず見つけ出す!」
「ならば少女よ、なにを望む」
「永久を生きる命を、再び地を歩く足を望むわ!例えどんな代償が出ても構わない、私に力を!皇の扉よ!」
きっと、生まれ変わったと信じてただただ歩き始めた。
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「…おしまいですわね」
「ヒカル…おい!早く起きろよ!!なにしてんだよ!」
このままだと残り3回の攻撃を受けて負けちまう……でも、こんなところで負けるなんて……。
「そんなんお前らしくねえよ!!」
「ふふっ、そこでなにもできない自分の愚かさを痛感してください。私はリカティナで再び《マリオネットトークン》を攻撃!」
《ヒカルのライフ:1200》
「また……!」
ライフは残り1200……頼むヒカル…なんとか、そこから出てきてくれ!!
~~~
「―――――、ここは…」
薄暗い、アイツの…心の中……?
『着いたか』
「…あぁ」
『そこは心の世界、思いが具現化された場所だ』
「思い………」
『時間には限りがある、急げ』
「そうだな……」
そんなことは分かっている、だが……なんだここ…薄暗いのは百歩譲っても分かる――だが、まるで夜の砂漠に糸が張り巡らされたような…複雑怪奇な世界、一体アイツの心はどうなっている…。
「……!水の中に…鏡?」
水の柱、そこだけ薄く光が放っているように見える。まさか、この光だけがこの世界を照らしている…?いや、そんなこと……。
「これは…懐かしいな」
水の柱から見た鏡からは遊矢たちとの思い出が映っていた。これが、アイツにとっての潤った心、つまりアイツは…昔から心が渇いたまま、か。
気配はする、ただ一向に見つからない。
……どうなっている…、時間がただ過ぎるだけ…急がないといけないのは、分かっているのに………!
『水中に沈むのは、楽しいことかもしれない』
「!」
今のは……!?…もしや、近付いている……?
『ただこの砂に埋もれるのは辛いこと、なにもできない、なにも』
違う、心に閉じ籠るなら勝手にやればいい、かつての俺のように、自由気ままにすればいい。
『たくさんのモノを置いてきた、壊してきた、捨ててきた。ならば、今度も―――捨ててしまうのが道理だろう。渇いた大地にいくら水を注いでも、それが海になるとは限らない、心と同じ』
置いてきたなら拾えばいい、壊したなら直せばいい、捨てたのなら探せばいい。どから、お前は――お前の心にはいつだって――――!
「…!…ヒカル……」
「――――」
~~~
「さて、攻撃に移らせていただきますわ」
「…!」
「《マリオネットトークン》へ三度目の攻撃!行きなさい!」
《ヒカルのライフ:600》
嘘だろ…本当にこれでいいのかよ…!!これで……。
「あぁ…あぁ!分かりますわ…!私の苦しい戦いは、これで執着を迎える…涙が止まりませんわね…本当に……あの日あの子が死んでから、ずっと」
「あの子……?死んだ…?」
アイツ、デュエル中にいきなりなに言い出してんだよ……。
「私の望みは叶う、貴方を手に入れることで、永久に!」
トルテの望み……ただヒカルがほしいだけじゃなかった……?
「さぁ、行きますわよ―――」
「!!」
「最後の《マリオネットトークン》に、攻――――!!」
「やめろ!!」
「――!風雅……遊矢……」
~~~
分かる。アイツの仕業だと、深い心の底に眠った負の思いが掘り起こされたのだということ、だが、遊矢にとってそれは無意味だ。
「ヒカル、苦しむな、お前らしくいればいい」
苦しみは一人のモノではない、分かつもの、遊矢がいなければきっと俺も今は――。
「その友への思い、いつか形になる、お前にとっての希望になる。そうだろう?」
「――――…」
友への思い、その力があれば遊矢もヒカルも、きっと心配要らないはずだ。
「それに、俺も…いるかもしれないな」
誰かに忘れられても構わない、だが、あの約束を忘れない限り、誰かが覚えていてくれている限り――――、
「必ず戻るから、その時まで…笑って、待っていろ。その笑顔を、誰もが愛しているんだ」
だから迷う必要も戸惑う必要も本当に必要はない。
「ただ、お前の前にいる仲間のために、目を覚ませ!ヒカル!」
「――…………」
「!」
……今、なにかを……?
「――……たく、…と……?」
「!遅い、早く起きろ」
「~~~っ、…うん」
よかった、ただよかった。
「…ありがと」
「気にするな、お前たちに危機が迫れば、きっと俺は力になる、この命に代えてもだ」
「そっか、…じゃあ、絶対お前が生きられるように平和な世界築いてやる」
「それが一番ありがたい話だな―――!」
「…お前………」
「悪いな、俺にも時間がないんだ」
「……待ってるから、きっと笑って、待ってるからな」
「…あぁ、約束だ―――――」
「………托都……、ありがと…ホントに………!」
~~~
「…………」
『もう、いいのか』
「伝えることは不格好でも伝えた。あとは、アイツの気持ち次第だ」
"知ってた"
なんて分かりやすい奴、…信じてる、俺から言えるのはそれだけだ。
~~~
「……何故、止めたのですか…」
「当たり前だろ!!こんな一方的にやるなんて卑怯にも程があるだろ!正々堂々デュエルしろ!」
「あなたが邪魔立てする理由も見当たりませんが?」
「仲間のピンチになったら仲間が助ける、なんて当然のことじゃねーかよ!」
「危機を救う……ですか。その理由付けは愚かです」
「なんだよ…!どういうことだよ!」
「仲間が危機を救うのならば、何故高位な存在の神は私を救わなかったのですか!」
「………神…?」
救いが平等とは限らない、それはよく知ってる、分かってる。自分もそうだから、でも、変化を求めれば、それもまた別のもの。
「…救いを待つだけじゃ、ダメなんだ」
「!ヒカル…!」
「な、何故……!」
「よかったぁ!大丈夫か?」
「どっかのお人好しのおかげでな」
「お人好し……?!あの混血、また余計なことを……」
自分も人のことは言えない。だけど、お人好し云々の問題じゃない。ここから先は、あくまで未来を変えるために俺自身が俺自身のためにやることだ。
「どうして邪魔ばかり…私はどれだけ運命に見放されればいいんですか!!」
「………」
「わかりません…!貴方たちの思想のなにもかもが私には理解ができない…!」
「トルテ……」
「貴方が私と全く違うのは分かっています、だから!!」
全く違う―――、違わない、間違ってる。みんなが見ているよりも違う。
「消えてください、もういりませんから、私と同じ運命を持たないのなら!!」
「……そうじゃない、」
「!」
「自分の運命は切り開くものだ、それをましてや流れに任せている限り、お前は絶対に救われない!!」
「やめてください!!ヒノは、あの子はそんなこと言わなかった!!早く、視界から消えてください!」
「ヒカル!!」
「分かってる!墓地の《リベンジカースト》をデッキに戻し、効果を発動!相手モンスターの攻撃を無効にし、そのダメージを相手に与える!」
「っ!!」
《トルテのライフ:3400》
やっとライフを減らしたとか洒落になってねえ、あっちはあっちでおかしくなってるし。
「………」
「いい加減に目を覚ませ。悠久は存在しない、お前は自分で決めることもせず運命に流されてるだけだ」
「……ターンは終了しています、早くしなさい」
《手札:1》
「…かわいそうな奴」
でも、こんなこともう終わりにしよう。
「俺のターン、ドロー!……!」
これ……これなら、デュエルを終わらせられる……?
「…魔法カード《希望の解放》を発動!」
「な、なにそれ!?」
「このカードの発動時、自分フィールドのレベル8以下モンスターの効果を無効にし、墓地に送る。更に、墓地に送ったモンスター1体につき、相手フィールドの魔法・罠を破壊し、ギャラクシー・カオスの攻撃力を300ポイントアップする!」
《攻撃力:5200》
「攻撃力5200!しかも、邪魔な永続罠と《マリオネットトークン》も一掃できた!」
托都が残してくれた希望、これがあれば戦える!
「行け!ギャラクシー・カオスでリカティナを攻撃!」
「リカティナのモンスター効果により、ダメージは半分となり、破壊は無効になります」
《トルテのライフ:1800》
「それでもライフが一気に削れた!すげえぜ!」
「《銀の翼》の効果により、カードを一枚ドロー!……カードを一枚伏せ、ターンエンド!」
《手札:0》
やれるだけはやってる、あとは、このカード次第…。
「……」
「トルテ……知ってる、お前が、弟に命を救われたのは」
「…!」
「火事で燃える家に取り残されたお前を助けて死んだんだよな」
「……そう、」
――――――――、
―――――、
「お父様!お母様!皆さん、どこへ行ってしまったのですか…ヒノ……きゃっ!」
車椅子の私は置いていかれてはなすすべすらなかった。
「イブお姉ちゃんが!!イブお姉ちゃんが残ってるの!助けなきゃ!」
「無理よ、これじゃあ助からないわ」
「諦めるんだ。跡取りのお前が生きていれば――」
「嫌だ!絶対にお姉ちゃんを見つけるから!!」
「ヒノ!!」
足を引きずっている私は、助かるわけがないと思っていた。なのに、
「お姉ちゃん!!」
「…ヒノ、どうして戻って…」
「早く出よう!車椅子!!」
崩れる家の中で必死にヒノは走り回りました。
ついに玄関ホール、ですが、火の手は回らずとも崩れ始めていました。そして、玄関扉が瓦礫で埋もれ始めた時――――、
「お姉ちゃん!しっかり掴まって!」
「えっ?ヒノ?」
「せえのっ!!てやぁ!」
「!待って!!ヒノ!」
「ばいばい、お姉ちゃん」
――――――、
―――――――――、
「瓦礫は崩れた」
「…マジかよ……」
「弟が小さいと仮定したら、押して走ったら間違いなく二人とも死ぬ、そう踏んだのか」
「……そう、ヒノは死んでしまった。ですが、あの家族は………!」
―――――――――、
――――――、
「どうして貴方はいつまでも立てないのよ!!」
「す、すいません!」
「貴方みたいなどんくさい女のためにうちの跡取りが一人死ななければいけないなんて…!!」
「…ヒノ………」
「あぁああ!!貴方が代わりに死ねばよかったのに!」
「!大丈夫かい?」
「アナタ…」
「ほら、部屋で休もう。イブもリハビリに行くんだ」
「……はい」
ヒノがいないだけで家族は崩壊し、私は要らない子の扱いを受けた。
だから―――――、
「な、なにをするんだ!!」
「やめて!やめてイブ!」
――――――、
――――――――、
「私は家族を殺めました。当主となり、名前を捨て、禁忌の契約を結ぶことでヒノの生まれ変わりを探したのに、貴方も、違う…!」
「……」
全部日記の通りだった。こんな、ことが……。
「貴方ではないなら、誰なのか…もう、私にはなにも……」
「…もし、お前の弟が生まれ変わり、それが俺だったとしても、前世を思い出すことはできない。俺は俺だから、自分の歩んだ記憶すら、思い出せなくなるときもあるのに………」
「ヒカルさん…」
「ヒカル…?」
「今生きる俺と、ヒノは違う人間だ。それだけは覆せない違い。…だけど、これから記憶を築くことだってできるはずだ」
「これから…」
「遊矢たちの考えなら、きっと…仲間になれるんじゃ、ないか?」
俺には分からないことが多すぎるけど、きっと、大丈夫。
「さぁ、もうこんな戦い、終わらせよう。またやり直せるはずだ」
「…これからの、未来を……本当に…」
「もちろん!!ヒカルだけじゃない!俺だっているからな!」
「遊矢、さん…よかった、これで、私は―――――!」
…なにかが変わった…?この気配は……、
『何をしている、お前の望みはすぐそこに在るのだぞ』
「皇の…扉……!」
「あれが…」
「……」
『さぁ、願いを叶えるが良い、もうすぐ傍に、在るものを奪うだけで良いのだ』
「あぁぁ!やめてください!!私は、私は――!!」
『―――さぁ、――さぁ!!』
「ぁ――」
「トルテ!!」
「…………」
『在るものは奪えば良い、その力があれば、お前の望みなど容易に叶う』
「……ええ」
「!」
皇の扉……こいつが、……やるしかないか…!
「私のターン!私はリカティナをエクシーズ素材に、マイナスエクシーズチェンジ!」
「来るか…!」
「マイナスエクシーズ……」
「昼と夜の狭間に生きる悠久の踊り子よ、その目を覚まし、舞い踊れ!現れよ!《ルインマリオネット ザッハトルテ》!」
《攻撃力:0/ランク:4/ORU:3》
《攻撃力:4200/ORU:0》
マイナスエクシーズ…遂に来たか…。
「ザッハトルテの効果発動!オーバーレイユニットを全て墓地に送り、相手の墓地に《マリオネットトークン》を三体送る!」
《ORU:0》
「トークンを!?」
「そして、1体につき、攻撃力は700ポイントアップします!」
《攻撃力:4900》
「攻撃力…4900……」
「これ食らったらヒカルの負けじゃ…!」
ライフは600、確かに食らったら負け……。
「さぁ行きなさい!ギャラクシー・カオスに攻撃!エターナルソウルダンス!」
「ヒカル!」
「罠発動!《竜の魂》!墓地のカードを二枚除外し、攻撃を無効にして、ギャラクシー・カオスを次の自分のスタンバイフェイズまで除外する!」
《攻撃力:3500》
ミザエルのカードのおかげで攻撃は凌いだ、《銀の翼》がなくなったのは痛いが、ワガママは言っていられないのも事実だ…!
「まだですわ!ザッハトルテの効果発動!オーバーレイユニットのないこのモンスターがバトルを終えたターンのエンドフェイズ、相手の墓地の《マリオネットトークン》1体につき、100のダメージを与えます!この攻撃を、受けなさい!」
「っ!!あぁっ!」
《ヒカルのライフ:100》
「このままじゃ…ヒカルが……」
「ターンエンドです」
《手札:2》
『そうだ、そうすれば良いのだ。お前の欲する全てのために、全てを壊すのだ』
っ……まずい、体から力が抜けていくのが分かる…やはり、あの闇は隠しても隠しきれてないのか…。
アイツに対抗するためには……だが、あの手札が墓地に《マリオネットトークン》を増やすものだとしたら、返り討ちにあうのは目に見えてる。
どうすれば……どうすればアイツを救い出せるんだ…どうすれば、こんな哀しい運命を変えられるんだ!
『我が力を使え』
「…!お前…お前がゲデヒトニスか」
『いかにも。我が力があれば、時空を越え、未来は変わるだろう』
時空を越えて未来を変えられる力…もし、そんな力があるなら……あるなら俺は……!
『我に肉体を預けよ、一瞬で終わらせよう』
「!」
『どうするのだ』
「…お前に体を渡すわけにはいかない」
『ほう?』
力はもらう。トルテ…いや、イブを救い、運命を変えるために。この悲惨な未来を変えるために。
だが、それは俺がやらなきゃ意味がない。
俺のためにも、イブのためにも、俺自身が、やらなければいけない!
「お前が俺に合わせろ、お前の力を俺が吸収する」
『なるほど、面白い判断だ。興が乗った、いいだろう。だが、忘れるなよ?人の未来を変えることは、それは正しい時、間違った時があると』
「…今やらなくて、いつやるんだ」
『……良い返答だ。さぁ、この力、思う存分に振るうが良い――!!』
………そう、今じゃなければいつだ。チャンスは今しかない。未来を救うためには、このターンで、決める!!
「…!風が、吹いた……」
「…………」
『なんだ、これは』
「…行くぞ、皇の扉!正しい未来のために、運命を変えるために、お前を倒す!」
『…!!』
「これって!!」
「俺は、天の光でオーバークロス!!」
遊矢の持つ力と同じ、これなら大丈夫。
「…風の力……」
月の光纏う時、運命を変える刃となる。
思いは、希望へと変化する!
「月の希望纏う運命の光―――フェイトシャイニングアーマード!!」
136話へ続く
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【あとがき】
今回の一言、「┌(┌^o^)┐ホモォ…」
相も変わらずあのお二人が絡むと何故こうもホモっぽいのか、今回余計にそう思った。だが彼らはホモではない。
托都さん復活早いですね、実際外に出れる3分を使いきったからまた出てこれない引きこもり化余裕なんですが。
あの走り抜けた精神世界はCCCの乙女コースターみたいなもんですね、パロでも出てきたし。つまり、托都はレリーフの中心に来てたと言えばかなり分かりやすいと思います。
んでもって今回は勢いを重視した謎パワーでさっさと堕とされちゃったヒカルさん。そして謎のイケメンと絆パワーを発揮する托都さん、なにこの二人、だからRRでもコンビ組まされるんだよ(暴論)
そして上げて落とす。和解ルートかな?とか思った途端にこれだよ、さすが聖桜悪い意味でブレねえな。まぁ遊戯王はこうだよね、デュエル以外で平和解決できるのは遊馬先生か遊矢くんだけだと思います。うちの連中はやることやるから。
生きていたのかゲデヒトニス!出番がないから冷や冷やしたけど、ヒカルに力を譲渡したからマジで死にました。本来もう生きてないからね。仕方ないね。
次回!!輝く光で未来を変えろ!そして新たな敵が迫り来る…!
フェイトシャイニングアーマードを手に入れたヒカルはデュエルに終止符を打つため、最強のドラゴンを呼び出す!
デュエルが終わる時、遂に裏切り者が…!?
【予告】
フェイトシャイニングアーマードとなったヒカルはデュエルを、そしてトルテの運命を終わらせるために、「原始と新星」の名を持つ究極のドラゴンを呼び出す。
ヒカルとトルテの二人の数奇な運命、それを変えるため、ヒカルは過去の世界でヒノに出会う。
運命を変えるデュエルが終わる時、遊矢たちの前に不穏な闇と裏切り者の影が迫る……。
次回!第136話「未来は希望!我が名は「原始新星竜」!」