帯状疱疹は治療が遅れると神経痛症状が残ってそれに長期間苦しむ得体の知れない疾患という曖昧な概念が脳裏をよぎり、その不安感に襲われた。既に発疹が出てから少なくとも8日も経っているのだ。その日の夜は痛みでよく眠れないまま翌日の27日を迎えて、診療開始直後の皮膚科クリニックに駆け込んだ。

 やはり背中の発疹は帯状疱疹で胃痛はそれが原因だろうという診断だった。抗ウイルス薬(パラシクロビル錠500mg)と鎮痛剤(アセトアミノフェン200mg)とビタミンB12と塗り薬(ビダラビンクリーム3%)が処方されたが、抗ウイルス薬の効果が認められるとされる発症後72時間以内の治療開始時期を既に大きく過ぎていた。病院を出ると、近隣の店で買ったジュースで急いで抗ウイルス薬を飲み帰宅した。

 

 その日、激しい胃痛は治まらず夜もほとんど眠れなかった。28日になると左背中の発疹は肋骨に沿うように脇腹から左前腹まで伸びて帯状疱疹の典型的な姿を現してきた。翌日の29日、入院設備のある数日前に救急搬送された総合病院の皮膚科外来へ行くと、やはり帯状疱疹神経痛と診断された。入院治療を希望したが叶えられず、皮膚科クリニックで処方された抗ウイルス薬とアセトアミノフェンなどに末梢神経障害性の疼痛に対する鎮痛剤(タリージェ10mg)が追加されて通院治療となった。

 何故か日中よりも夜の痛みの方がはるかに強まるので睡眠に苦労していたが、就寝前にタリージェを飲むと直ぐに眠りにつくことができた。しかし4時間ほど眠ると左胃上部の強い肋骨痛と尿意で毎日必ず目を覚ました。その時には布団から起き上がるのも、すぐ傍のトイレまで歩くのも、放尿するのも、布団に戻るのも、激痛に思わず「イタイタ・・」と口元で小さく声がでてしまう。持病の前立腺肥大による頻尿も加わって毎日5〜6回はトイレに起き、その度にこれを繰り返した。(つづく)