「夜中に女がふらふら出歩いて、無事で済むと思ってんのか?」

低く艶めいた声で耳元に囁かれ、ぞくりと甘い痺れが走った。

「…っ、離して」

身じごろうとすると、さらにきつく抱き寄せられてしまう。

「追っかけて来たってことは、それなりの覚悟があるんだろう?」

囁く夏津さんの唇が耳に触れ、吐息が吹きかかった。

「…ぁ、…っ」

思わず漏れそうになる声を、唇を噛んでこらえて、夏津さんをにらむ。

「……前から思っていたが」
「お前、そうやって強がんの、やめた方がいいぞ」

見下ろしてくる夏津さんの目が細められた。

「…強がって、…なんか…いません」
 
夏津さんに脅かされてるのを認めるのが悔しくて言い返す。

「嘘つけ」

楽しそうに喉の奥で笑う夏津さん目が熱を帯びる。

「…その目を見てると、泣かせたくなる」

囁きながら夏津さんが、耳もとへ唇を寄せた。

「……っ!」

突然の事に驚き、思わず身をびっくとよじる。

しかし夏津さんの腕の力は強く、そのまま耳へ口づけが落とされる。

(…っ、何で、こんな…っ) 

耐え難い感覚を必死にこらえ、唇を噛む。

(遊ばれて、からかわれているだけのはずなのに…)

こうして夏津さんの腕に抱きしめられて、
夏津さんの匂いに包みこまれていると…。

(どうしてこんなに…)

自分でも信じられないほど、胸が高なって仕方なかった。

「な、夏津…っ」

混乱したまま、抗議のつもりで強く名を呼んだ。

「…!」

すると、急に夏津さんの腕の力が弱まる。

(あ、れ…?)

戸惑いながら顔を上げて夏津さんの顔を見た。

「……」

夏津さんは、驚いているような、戸惑っているような…複雑な表情をしている。

やがて夏津さんは、小さな声でぼそりと呟いた。

「………何やってんだ、俺は」