春休みになり
家でダラダラ過ごすことが多くなった太郎。
たまにスーツに着替えて外出したり
上だけスーツ、下はパジャマで家の中をウロウロしたり。
たぶん就活してるんだろうけど
あれこれ聞いたところで
ろくに返事もしないので
もう勝手にすればいいと思っていた。
成人しているし
母は感知しないから。
そんなこんなで
夕べ太郎がスマホを見ながら大声をあげた。
「A社からメールが来た」
あら、そうなんだ。
このA社とは
太郎が恋焦がれていた会社で
常々ここしか受けないと豪語していた。
もしご縁がなければ
留年して来年再チャレンジするとまで。
しかし
キャリアセンターの人に止められて
渋々5社にエントリーしたらしい。
今日の太郎は
私の質問にたくさん答えてくれる。
因みに
5社のうちの1社はコンサル。
なんで毛色の違う企業を選んだのか。
「A社のことを知りたかったから。コンサルに興味があるフリしてA社のことをあれこれ質問した。」
うーん、なるほど。
「◯◯開発のことをどう思うかって聞いたら、実はこういう裏があって、あーだこーだっていろいろ教えてもらった。」
そういうの、ありなん???
「A社の面接の時にその話をしたら、よく勉強してますねって褒められた。」
そうなんだ。
「残りの3社は適当。」
おいおい‼️‼️
太郎曰く
A社とはかなり早い段階から相思相愛だったと自負していた。
インターンに参加した時から
かなり手応えがあったのだそう。
説明会で渡された資料に
これから就活がどのように進んで行くのか書いてあったけど
その夜連絡があり
君は別メニューだから、くれぐれもエントリーしないでくださいと言われた。
資料とは別日に召集された50人が
5チームに分かれてGDが行われた。
最優秀賞に輝いたチームには会社名が刻まれた筆記用具がもらえる。
パソコンをカタカタ叩いていたら
社員に話しかけられた。
「君、名前は?」
これはどういう意図なのだろう。
コイツは要らない、弾いてやろうってことなのか
それとも
この子、なかなか良いやん‥‥なのか。
で
いよいよ結果発表。
太郎達のチームが優勝した。
同じチームの子から
君のお陰で優勝できたよ、このペンは君にもらったようなもんだと熱い抱擁を受けた。
ここで内定を確信した太郎。
今まで適当に生きてきたけど
ここまで来たらなんとかバシッと決めたい。
別日に召集された50人全員が採用されるとは到底思えないけど
多少は有利な気がしないでもない。
でも油断は禁物。
春休みなのに足繁くキャリアセンターに行ったり
A社で働いてる花子の友達に相談したり
いろいろ動いていた。
この頃
太郎にリクルーターがついた。
A社の社員で
気になったこと分からないことを相談できる人だ。
面接で現在の就活状況を聞かれた。
「御社から内定いただければ就活終了です。」
「ここまで来たら落ちることは無いから安心して。一緒に頑張りましょう。」
最終面接は今月末。
他の4社には目もくれず、A社のためだけに時間を割いてきたのだからなんとしてでも内定が欲しい。
で、
前置きが長くなったけど
そのA社からのメールにはこう書かれてあった。
「山田様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。」
いや、お祈りメールかーい💢
納得いかない太郎。
私が止めるのも無視してA社にメール。
「今後の参考のために不採用の理由を教えてください。」
しかし
華麗にスルー
思えば太郎の人生
抜け道を上手に潜り抜けて来たもんね。
人生初の挫折と言っても過言では無い。
無茶苦茶落ち込んでたけど
何事も経験だよ。
持ち駒1つ減ったけどきっとなんとかなるから。
‥‥知らんけど