次の日・・・太陽はだいぶ高い位置にあった。二人は、犬の鳴き声に目をさました。

囲炉裏の脇には、ふきんがかけられて、ごはんが用意されていた。二人は、トモゾウじいさんの親切に感謝しながら、遅い朝ごはんをすませると、広場に向かった。

 広場に行くと、昨日のように、老人たちが、集まっていた。若い人の姿はなかった。

 ベンチの一角には、昨日、おにぎりをくれた、梅さんがいた。相棒のお松さんの姿はなく、あんなに明るそうな梅さんがしょげているのか、うつむいていた。

「こんにちは、昨日はおにぎりありがとうございます」

 二人が、挨拶すると、少しだけ、梅ばあさんの表情が明るくなった。

「ああ、昨日の若い人ね。温泉は行ったの?」

「はい、実は、駄目と言われたんですが、夜になって、温泉に行ったんです。それで、その帰り道、この広場にたくさん若い人がいたんですが・・・」

鉄郎がたずねると、梅さんは、しわのよった目を、少しだけ大きくした。

「あら、いけませんよ。夜にこの町を歩いちゃあ。でも、若いから、仕方ないわね。それに、ここに若い人はいないわ」

「え! でも!」

鉄郎とレベッカが見たのは幻だったのだろうか。でも、確かに二人は目撃し、共に踊った。

「ふふ・・・若い人はいいわねえ。私にも、あなたたちのように、若い時があったけれど・・・あなたたちは、旅をしているの?」

「はい、色々な星を銀河鉄道で旅しています」

鉄郎が言った。

「そう、私にはとても、考えられないわねえ。私は、故郷の星とこの星しか知らないもの」

「ねえ、おばあちゃん。昨日いた、もう一人のおばあちゃんいないの?」

レベッカが何気なく聞くと、梅ばあさんは、また、しょげてしまった。

「お松さんはねえ、昨日、亡くなったよ」

「え!」

「お松さんは、すごい苦労した人でねえ。家が貧しいし、若い時に戦争があってね。さびしいねえ、一人ぼっちになっちゃたよ。私も早くあっちに逝きたいねえ」

「・・・」

梅さんがしょんぼりと言った。それを、聞くと、レベッカが、かけてどこかに行ってしまった。そして、ちょっとたつと、また駆け足で戻ってきて、梅ばあさんに、おにぎりを渡した。

「これ、食べてよ。世話になっているじいちゃんとこで、作ってきたの。元気だしなよ!」

レベッカが作ったのはお世辞にもきれいなおむすびではなかったが、心がこもっていた。

 鉄郎は『以外にいいとこ、あるんだな』と思った。

 梅さんは、ありがとう、ありがとう、といって、おにぎりを食べている。

 その様子を他の老人も気づき、「ぞうじゃよ、梅さん。生きていれば、また、楽しいこともあるさ」とか、「松さんの分もがんばって生きなきゃ!」と、励ました。

 その時だった。

「ふん、長生きしたって、どうせ、ろくなことはないわい!」

 と怒声が響いた。何人か座れるベンチの真ん中に一人で占領して、どっかりと座っている、声の主は、トラマサじいさん、その人だった。

「みんな、この星に追われてきたんじゃろうが! やっかいもの扱いされてな! わかっているじゃろうが、老人のわしらが生きていたって、若い人間に邪魔者扱いされるだけじゃろう! そこの二人だって、心ではそう思っているんじゃ!」

 トラマサじいさんの話を聞くと、なんだか、みんなしょんぼりしてしまった。

 レベッカは、拳を震わせながら、わなわなふるえていた。

「レベッカ、よせ!」

鉄郎は、すぐに気付いて、レベッカを留めたが、無駄だった。

「なにさ、あんた、何さまのつもり! みんなが楽しくやっているところにきて、そんなこといって、何かいいことあるわけ! あんたみたいな、ひねくれじいさんは、たとえ、どこに行ったって・・・」

「レベッカ、もういいだろ」

鉄郎が間に入ったが、

「どこに行ったって、嫌われ者よ!」

「ふん」

 トラマサじいさんは、その言葉を聞くと、棒を杖代わりにして、よれよれと、広場を去って行った。

 それから、さすがにレベッカも言い過ぎたと反省したのか、元気がなくて、無口だった。

 死神の謎や、夜の広場の謎を探ろうにも、そういう雰囲気ではなくなってしまった。民家に戻って、用意してある、昼飯を食べるが、あまりうまくない。レベッカが、まるで元気ないのだ。でも、鉄郎は、レベッカの優しさをみたから、何とかしたかった。

「ねえ、レベッカ。元気出せよ。あのおじいさんだって、あんなふうになったのは、きっと理由があるんだよ。それに、レベッカ、見なおしたよ。落ち込んでたおばあさんに、ああやって、親切にしてあげて、なかなかできないことだよ」

 それを聞くと、何かが切れたように、レベッカが両腕で顔を隠すと、わーと泣きだした。

「レベッカ、泣くなよ。君はいいことをしたんだからさ。正々堂々と胸をはらなくちゃあ、もったいないよ・・・きっと、あのおじいさんだって、反省してるよ・・・」

 レベッカが、自分の腕の中で、小さくうなずいた。

「そうだ、あのおじいさんに、おにぎりを作って持っていこうよ」

レベッカは鉄郎の提案を聞くと、泣くのをやめ、腫れぼったい眼を、一生懸命ふいて、もう、もとの明るい笑顔を見せた。


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