秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

「あの時は学生でありながら金あったから、バイトとパチスロで。
 パチスロが出たばかりでね、師匠に習って、毎日儲けさせてもらってね、
 出入り禁止のパチンコ屋ばかりだったね」
「ははは、らしいや」
「当時金あったの。バイトの金は親父怒らないけど、ギャンブルの金見つかると半殺しだね。
 だから、その日の金はその日の内にだった。ビリヤード場貸切とか。
 当時ディスコあっただろ、Tバックって下着流行り出したのがその当時だね。
 ワンレンボディコンでねTバック出た時、履かなくて良いんじゃねとか言ってたもん
 どうせ踊ってるうちに食い込んで、邪魔だろ~とか言って」
「あはははは、そうなんだ、食い込むんだよ」


声を殺して笑っていると息子が私の布団に来た。
「抱っこ、表抱っこと裏抱っこの時間」
「うん、表抱っこ」
しばらく向かい合わせに抱きしめていた。彼の背中の方から抱きしめるのが「裏抱っこ」だった。
それを、2.3回繰り返すのが入眠前のいつもの儀式のようになっている。
「もう一回表抱っこ」
「ぎゅっ」
「裏抱っこ」
「ぎゅっ」
「…」
「ハイ、じゃ自分のベッドで寝なさい、おやすみ」

徹にそれが聞こえていた。


「待たせてごめん」
「表抱っことか裏抱っこってどんなプレイじゃ、一緒に寝てやりなさい」
「本当はもう抱っこなんかする年じゃないから、寝るときぐらい自立させないと」
「だけど」
「ディープキスがすごく上手いんだよ、親子で許される範囲を超えてる。ごめん、嫌だった?」
「やぁ、なんかほんわかしたいい感じの家庭だなぁと」
「…」
「ま、もう俺も寝るから」
「うん、おやすみ」
子供の気配がすると徹はいつも固まる。昨日もそうだった。



もちろん宵っ張りの私がそのまま寝るわけも無く、いつもの習慣でニュースチェックをすると
「セシウム米調査:汚染米の全量廃棄は旧市町村単位で」というニュースがあったから、明日でも徹が見れば良いとURLをチャットウィンドウに貼り付けた。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110804k0000m040109000c.html



ログオフしていた徹が戻ってきた。
「福島県はおわったね…残念だが…」
「東電に買ってもらえるからそのほうがいいんじゃ…」
「米の自由化になってるから産地偽装が多発するよ、米の価格が上がるからチャンスだからね」
「だから出所の明らかな米を食べるんだ。ホント、つながりがあるところがあってよかったと思ってる」
「福島県の米は1番危険だよ」
「うん」
「うちは親類縁者がいないから大変だ」
「おそらく山形の米は大丈夫だろうと思う」
「今日もお袋と話したけど、パスタは安いだろ、米を1回にして1日2食を麺にすれば生き延びれるかなぁって」
「山形の米喰え、北のほうだから大丈夫だ」
またなんだか話がかみ合わなくなってきた。
「山形の米も高騰するよ」
「直で入れるから」
「米どころ福島で普通に美味しい米安く食えてるから。米価が高騰すると買えないよ」
「うん?秋までの話をしているの?」
「お袋は歳だからあまりパスタなんて食べないと思うけど仕方ないよ」
「来年の米は用意するって言ったじゃん」
「冬までに、今有るお金で、家の修復終らせないと寒いから」
「秋からのお米は徹ちゃんちに送るって話、この間したじゃん。お金はいいの、プレゼント」
「すまない…申し訳ない…」
「何回も言うな、言わせんな」
「ごめん、おにぎり好きだから、俺」
「おにぎりの中身はなにが良いの?」
「1番好きなのは鮭か、しそ昆布」
「山形のお米も美味しいから、しそ昆布のおにぎり楽しみにしてけろ(くれろの短縮形?くださいの意)」


福島はもうダメだ、終わりだと言いながら、見捨てられない彼が居た。それは土地というより、やはり人の繋がりそのもので、彼の人生の殆どがそこにあった。土地は捨てられても、人は捨てられない。
地震や津波であれば、いつか乗り越えられるだろう。しかし広がった放射能汚染が、人を蹴散らし、繋がりを破壊していつか命さえも奪っていく。彼はそれに殉ずるつもりらしかった。

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