誕生日プレゼント | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

「うー、本格とんこつは久しぶりっ!いただきまーす」
「ふむ、で、誕生日のプレゼントいい加減に決めてよ」
「あーーっ、そうそう
 やっと欲しいもの出来た!」
「なになに」
「チェーンソーでしょう、耕運機、薪ストーブ、軽トラックだね」
「ごほごほ…」
「大丈夫?薪ストーブはねー、針葉樹用のやつで」
「なにそれ」
「薪は普通楢とか広葉樹を燃やすんだよ
 針葉樹は広葉樹より燃焼温度が高いから、針葉樹用の薪ストーブじゃないと、ストーブが持たないんだ」
「へー、いろいろ勉強したんだねぇ」
「うん、勉強した
 どれでも良いよ、ホントはトラクターがほしいんだけど、250万ぐらいするからー」
「くくく」
「ホントいろいろ勉強したんだー、クボタのHPとか見て。トラクターっていろいろアタッチメントが付いていて汎用性が高いんだー」
「免許は要らないの?」
「トラクターで公道を走るんじゃなきゃ要らないはずだけど、普通免許じゃダメなのかな」
「さぁ」
「結構知らないことってたくさんあるんだよ
 黒マルチってなんだか知ってる?」
「なにそれ」
「たかしだって見たことあるはず」
「知らない」
「あのさー畑の作物のところにビニールが敷いてあるでしょ」
「うん」
「あれ。じゃ何のために敷くか」
「土の温度を上げるため」
「さすがー、でもそれだけじゃないんだ
 アレを敷いて置くと雑草も出ないし、虫も防げる」
「土も乾かないね」
「うん、黒マルチは凄いんだよ。替え玉頼んでもいい?」
「そう来たか」
「たかしは?」
「いらない」
「それっぽっちで足りるの?」
「うん」
「すみませーん、替え玉ひとつくださーい」
「耕運機とかは使う時になったら向こうで探したほうが良いんじゃないの?」
「うん、薪ストーブも今あっても困るしー、この辺を軽トラで走るっていうのもなー」
「ふふふ」
「チェーンソーは?今から練習できるよ」
「ジェイソンみたいだなー」
「チェーンソーってこの辺だとどこに売っているんだろう」
「さぁ」
「ハイ、お待ち」
「あ、こっちに入れてください、たかしもちょっとだけ替え玉あげる、ハイ」
「あぁ、それで十分」
「なんだかいつも私のほうが食べるよねー」
「ふふふ」


不安を追い払うかのように多弁になる私。いろんなことに押しつぶされそう。
目の前の不安を見ないように、遠い未来を夢見て現実からひたすら逃げてる。



翌日たかしからメールが入った。

「door、このチェーンソーなら軽いからdoorにも使えるよ」
メールにカタログだかチラシを複写したものが添付してあった。
冗談のつもりだったのに。
誕生プレゼントにチェーンソーを頼むほうも頼むほうだけど、真剣に探す方も探すほうだ。

「ちょっと待って!これは充電式なのかな?」
「AC100Vのコンセントが要るみたいだー、エンジンチェーンソーは重量が5kgぐらいあるぞー」
う”~
リボンの掛かったチェーンソーを想像するのは難しかったけど、いまさら冗談のつもりだったなんて言っても良いのかしら。
「ちょっと考えさせてー」


なんて返事をしたらいいのだろう。