「来週はずっとそっちなんだ」
「あら、久しぶりね。でも逢えないなぁ」
「疲れるから一日ぐらいホテルに泊まろうかと思って」
「え、ホント?いいの?」
「うん、たまにはいいでしょ」
「じゃ時間作る」
たかしが仕事でこちらのほうに来るという。だけどウィークデイは無理ね、と思っていた。
「食事も一緒にとれないし、遅くなるよ」
「分かってるー」
私は楽しみにしていた。
「生理になっちゃったよ」
「具合はどうだ?」
「まだそんなに酷くないけど」
「体調が悪くなかったら、外で飲むか?」
「そっちに行くからぎゅっとだけしてくれる?」
体調は良くなかった。この季節は一番苦手。浮腫んでいる。飲んだら翌朝が危ない。
夜遅くホテルのドアをノックをすると浴衣姿のたかしがいた。
「えへ、来ちゃった」
「door」
「逢いたかったよぉ」
抱き合ってキスして。
「あ~、朝までここでたかしと一緒に居たいなぁ」
「doorは帰るんだよ」
「うん、シンデレラみたいね」
ベッドの上に移動して横になって抱きしめてもらった。
ホンのひと時だけの休息。
「なんか馬鹿みたい、たかしが近くにいるのに逢えないなんて」
「昨日doorの家の前通ったよ」
「え~っ!そっか、その手があったか!
何時頃?」
「8時少し前かな?トマトが赤くなってた」
「一番バタバタしている時間じゃない」
「だろうと思ってさ」
「金曜日早起きするから駅でちょっとだけ会えるね」
「大丈夫かな~」
そう言ってたかしは笑った。
「ダメだったらトマト持ってっていいから」
「じゃ昼はトマト付きだな」
話している間じゅう頭をなでてくれた。
金曜日は早起きできなかった。子供の弁当を作っているうちに時間は過ぎていってしまう。疲れすぎて眠れないから処方してもらってる睡眠薬のせいだってたかしは知らない。
赤いトマトは無くなっていなかった。