ラジオから歌が流れてきた。初めて聞く曲。
「周りがみんな大人に見えて、僕一人が子供のままみたいな気がする」
そんな内容。
隣に座っているたかしに聞いてみた。
「ねぇ、たかしは自分のこと大人だと思う?」
「思わない」
「たかしでもそうか
私も自分のこと大人だと思わない」
よくわからないが歌を作った人は若いんだろう。その人から見れば私たちは十分大人に見えるのだと思う。
「大人の年齢だから大人として行動してるけど、根っこのところではすごい子供のときのまま。たかしは自分のこといくつぐらいだと思う?」
「中学生?」
「こんなー、下の毛にまで白髪が生えてる中学生居ないよ」
車の中で二人で笑った。
「doorは?」
「小学校入る前の幼稚園生かな…」
自分の自意識というのか、核になるものはずっと変わらないと、人生の半分まできてようやく悟った。結婚して子供が生まれて親になって、ついでに離婚までして。性懲りもなくまた男と付き合って。
親である、社会人である、○才の人間である。
自分の付属物を一つ一つ外していくと、表面上を取り繕っているだけで自分の本質的なものは、まるきり変わっていないような気がする。いろんな経験をしている。いろんなものを見ている。それだって付属物だ。
時々冒頭の歌のような気持ちになる時もある。
「たかしは大人なんだと思ってたよ。安心した」
だけど幼稚園生から見れば、中学生は立派な大人だ。
ひょっとしたら頭の中がエッチなことでいっぱいと言う意味かも。
そうだ、そうに違いない。全くオトコってやつは。
15年前、当時のボスが捨てたゴミを分別しようとしたら、かなりわいせつな雑誌が入っていた。
ショックを受けると共に、見てはいけない物を見てしまったことに気が付いて、慌てて分別を戻した。今のたかしより10歳は年長だったなぁ。
窓の外を老夫婦が歩いている。今でも尊敬しているあのボスは今あのおじいちゃんぐらいの年令。
「あの人たち、自分のことを何歳くらいだと思っているのかなぁ」
と、呟いた。
「そんなこと考えてもいないよ」
考えたとしたら何歳だと思うんだろう。