初めての朝 | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

初めて二人で旅行に出かけた。いつも時間が限られてしまうから
たかしと二人で朝を迎えられるなんて夢みたいだった。
2月はたかしの試験もあったし、私もキツイ毎日が続いていた。
3月になったらね。


睡眠不足ぎみでもたかしの寝顔を見ようと眼を瞑ったまましばらく静かにしていた。
たかしは分かりやすい。寝入るといびきが聞こえてくる。ハズだった。
ところがいつまで経ってもいびきが聞こえてこないので目を開けるとたかしの瞳が私を見つめていた。
再び目を瞑り寝たふりをしてしばらく。
もう良いだろうと目を開けるとたかしもすぐに目を開けた。もう諦めようと思った瞬間から記憶は途切れている。


旅先では目ざとい私はたかしが起きる気配で目を覚ますはずだったのに、すっかり寝こけていた。
頭を撫でられる感触に目が覚める。
「door、朝だよ、起きなさい」


顔を洗ってたかしを探すと外のお風呂に入っていた。その隣に身体を滑り込ませて。
「たかしは何時に起きたの?」
「ん、いつもの時間」
5時15分。絶対に勝てない。


「でも夜中ずうっとdoorの寝顔見てたよ」
「ホントかなぁ、寝言言ってなかった?」
「うん」
「いびきかいた?」
「朝方、ちょっとね」
そう言ってたかしは笑った。私はその肩に頭を預ける。


静かな朝。優しい時間。朝の光の中で4羽のトビが岬の上を飛んでいた。