「door~」
「ハイハイお待たせ、うわっ凄いね~」
「だろ」
「うん、なかなか、じゃいただきます」
トーストもコーヒーも冷えていたけれど人の作ってくれたものは美味しく感じる。ゆで卵の殻がむきづらかった。
「これ、茹でたあと、ちゃんと冷やしていないでしょう」
「え、冷やすの?」
「うん、冷やさないと殻が剥けないの」
「あぁ、ほんとだ、あはははは」
ずっとこのままでいられたらいい。この時間が永遠に止まればいいのに。
「ねぇ、昨日どこまでドライブしたの」

「海まで行っちゃった」
「お台場辺り?」
「ううん、秦野中井」
「はぁ?」
「何となく、気が付いたら」
その後は二人で黙って食事を終えた。沈黙が背筋をざわつかせる。言わなきゃ。
「じゃぁこないんだね」
たかしがぽつりと言った。思わずたかしの顔を見上げる。
「あのね、半年とか一年とか待ってもらえないかしら、こんな風に急かされるようにして結婚を決めたくないの」
たかしは首を振って窓の外を見た。ふぅと大きくため息を付く。
「静岡なんて車で2、3時間の距離よ。週末私がそっちへ行くから」
「毎週なんか無理だろ」
「それは…約束できないけど…」
「離れたらダメになるとか思わないわけ?」
「ダメって?二人の関係が?」たかしが頷く。
「半年や一年でダメになるんだったらそれまででしょう」
「じゃぁ俺がそれを一年かけて証明すれば仕事辞めて静岡に来るのかよ」
「それは…そのときに考えたい」
「なぁ、それじゃぁ今だって一緒じゃないのか?」
「ねぇ、あと一年だけ考えさせてよ」
「問題を先送りしているだけだよ、doorは」
「子ども…もう無理みたい」
「無理って…」
私は答えられずにうつむいたまま両手で顔を覆った。
「…だから静岡に来いって言っているんじゃないか」
「私と別れて新しい人を見つけた方が…あなたは幸せになれるかもしれない」
何だか自分がしゃべっているような感じがしなかった。自分で言っているのに妙に細い声に聞こえる。たかしはテーブルの上に両肘を突いて頭を抱えた。
「何で分かってもらえないかなぁ」
「……」
「じゃぁ俺と別れて、ここでどうやってdoorは幸せになるんだよ。新しい男でも見つけるのかよ」
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