vol 3 | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして

2004-10-08
いろけ
テーマ あいしてる

額にかかる一筋の髪
喉仏の脇に4本あるひげの剃り残し
ころんと丸い寝姿
物憂げにひらく瞳
爪の先までいとおしい



2004-10-09
結婚について3
テーマ 和也

思いついてもう私から誘わないことにした。既にその時点で、2ヶ月間隔が開いていた。この人が言い出すまで誘わない。それから2ヶ月が経過し何もなかった。生理が来るたびに憂鬱になった。私はだんだんいらだち始めた。
この人には性欲が無いんだろうか。どこかへ出かけるときに腕を組んだりすることも避けるようになってしまった。彼の体に触れるものか。それでも相変わらず毎日の生活は楽しく過ぎていく。それが哀しかった。
今から考えると生理の直前、気が立っていたのだろう。夜寝る前に彼に聞いてみた。
「最近セックス誘ってくれないね」
「あぁ、したいの?ちょっと今日は疲れて居るんだよなぁ、またにしない?」
「今するとかしないとかじゃなくて、このごろいつも私から誘ってばかり居るし、誘ってもいつも断られるし、最後にしたのいつだったか覚えている?」
「……」
「4ヶ月以上も前よ」
「したいんならしたいって言えばいいじゃないか」
「いつも私から誘ってばかり居るのがイヤなの」
「あなたは自分からしたいと思わないの」
「……」
「私のこと好きじゃなくなったの?」
「好きだよ」
「好きならしたいと思わないの」
「……」
「あんまり色気を感じないようになった?」
「そんなことないよ」
「じゃぁどうしてじぶんから言い出さないの」
「……なんでかな」
「どこかからだの具合がおかしいんじゃないの」
「そんなことはない、人のことを病気扱いするな」
「だっておかしいじゃないの。もう好きでなくなったのならハッキリそういってくれた方が良いから」
「君のことは好きだよ、大切に思っている」
こんなやりとりが何回あっただろうか。
こう言ったやりとりのあとにセックスするのは苦痛だった。でもそうでもなければ何もなかった。
こんなんじゃ子供なんか作れない。それとも、子どもが出来る前に彼と別れて新しい恋でもした方が良かったのだろう。ただ、そのときの私には彼の子ども以外考えられなかった。
外野もうるさかった。私が30を過ぎて彼の両親や、私の親から子供を作れと言われる。私に言われたって、どうしようもない。幾度声を殺してないたか分からない。昼間の生活が楽しかった分だけよけいに辛かった。
彼もそれを感じるらしく、次第に1人で夜遅くまで起きて、私と一緒に寝ることを避けるようになってきた。
辛かった、本当に辛かった。だって和也のことを愛していたから。彼の子どもが欲しかったから。3ヶ月に一度でも良かった。彼の方からたまに声をかけてくれればそれで満足できただろう。いつの間にかただの同居人、仲間としての存在としか見てもらえない。それはとても苦しかった。
誰にも相談できなかった。
出口は見えなかった。



2004-10-09
へんないちにち
テーマ あいしてる

ちょっとだけ借りるつもりのシャツ
あなたの匂いがしてあなたに包まれている感じ

今日は台風のせいかとても眠いね
それに少し寒い
ぬくぬくしていたいけどお腹が空いた
変な一日

明日は晴れるからどこかへ行こう
うふふ
ずーっとお休みだと良いのに

ダメだ、まだ眠いもう少しだけ…



2004-10-10
結婚について4
テーマ 和也

思い切って離婚しようと言い出したこともあった。別れるつもりはなかったけれど、書類上だけでも他人になれば緊張感が出てきて、新しい関係が見えてくるような気がしたのだ。絶対離婚しない。いつも答えは同じだった。あとはひたすらの沈黙。こういうときにいつもどうしても感情を押さえることが出来なかった。相手に訴えながら泣きながら、殴りかかったこともある。ヒステリックに泣きわめく自分が溜まらなく惨めだった。
何度目かの無限ループの中で彼がとてもイヤそうに
「またその話?君の頭の中にはそれしかないの?」
冗談じゃない、そんなんだったら、とっくの昔に家を出ている。そうでないから話がややこしいのだ。そこまで言われてたまらなくなって、タクシーを拾って一晩を1人ビジネスホテルで過ごした。そのあとでご機嫌を取るようになされるセックスに応じてしまう自分が惨めだったから。

出口は見えなかったがある時勝手に子供を作ると決意した。どうしても彼の子どもが欲しかったからそう決めた。子どもが出来ればもうセックスしなくても良いのだ。
毎月一度排卵期に誘う。何度も断られながらも毎月誘い続けた。もはや、喜びも何もなく相手が適当に燃えるように私の中では事務的になされた。あぁ、なんて彼を愛することは惨めだったのだろう。
今考えるとなぜそんな辛い思いをしながら子供を作ろうとしたのか、自分でも分からない。
和也の傍にいたかった。彼と一緒に子供を育てるのはとても楽しそうだった。私は全身全霊で彼を乞うていたのだ。、だって小さい頃の彼がどうだったかは分からないから。小さな彼の分身を育てることで何かを共有したかったのだろうか。それは2年以上続いた。けれど絶望の果てに誘うこともできなくなってしまった。

ある日他の用件で母に電話をしたときにまた子供を早く作りなさいと言われて思わず、子どもが出来るようなことをしなければ出来ないよと言ってしまった。もう別れるから。ちょうど暮れだった。年末でバタバタしているときに騒ぐのもなんだから、年が明けて落ち着いたらいったんそちらへ帰るから。ごめんね。
母は絶句していた。

松が取れて私は離婚の件を申し出た。
「もう親にも言ったから」
「絶対別れたくない」
「何言ってるの?セックスレスは立派な離婚事由になるよ。あなたがいくら別れたくなくても裁判所に願い出れば離婚できるのよ。もうあなたの意志なんて聞いてないから」
半ば強引に和也に押し倒されながらこれで最後かと思ったら不意にこみ上げてくるものがあった。私にそこまで言われながら役に立つ彼に不思議な気持ちがした。



2004-10-10
タイムリミット
テーマ たかし

今日は外でデートのはずだったのに何だか気が乗らなくて早々に引き上げる。
たかしはちょっと不満そう。3日ほど前に、とうとう隠しきれなくなって秘密の扉を開けて見せた。
「お願いだから全部吐き出させて、そうでないと前へ進めない」たかしは自分のことが書かれているのはイヤそう。
「いったいどこまで書くつもり」
「良いじゃない、私だって知らない誰かにしかのろけられないもの」
「友達にのろければいいじゃないか」
「友達に言えないことも書いてみたい♪」
「おまえなぁ」
「だって、たかしの記事を入れなかったら悲惨すぎてどうしようもなくなっちゃう。結婚のことだけ書いていくのは私も辛い。絶対誰にも分からないようになっているから」
結婚の記事を私にプリントアウトさせてたかしは何度も読みながら泣いた。ここにまだ載せていない下書きも読んだ。詳しいことはまだ彼にも話していなかった。今私たちは書きながら泣き読みながら泣きを繰り返している。

2週間前にあった生理がまたさっき来た。更年期という言葉が頭をよぎる。もうそうなっても不思議じゃないらしい。本当に時間は残されて居ないみたいだ。もっと早く出会いたかった。



2004-10-11
行方3
テーマ たかし
この間私がどんな想いでいたか想像がつくだろう。ばかみたいにはしゃいでいた自分がひたすら惨めだった。やっぱりと言う思いと、もしかしたらまだと期待する気持ちと、未練たらしくそんな期待をする自分が哀れで情けなかった。買ってきた浴衣も恨めしかった。当日までそのままにしておけば返品も出来たのに、一人で盛り上がって何回も着る練習をしていたからもはや返せる状態ではなかった。こんなものもう着る機会もないのに。
考えてみればハッキリ自分の年令を言っておけば良かったのだ。たかしの笑い声が耳に蘇る。あの声をもう一度聞きたい。彼が好き。

だから改めて電話があった時は妙な言い方だが、助かったと思った。でももう一度たかしの気持ちを確認したい。花火大会の夜、華やかな場所でごめんとかそんな悲しいことを言われるのは真っ平だった。
「Fさん、これからちょっと会えないかしら」電話でできる話ではなかった。
「えっ、これから逢ってくれるの?嬉しいな~」
「 わたし車で出かけるからFさんの家の近くのファミレスかなんかで良いかしら」
S通りにあるファミレスに着くとたかしは壁際の席にもたれて私を見つけると手を挙げて合図した。
夜11時を回ったファミレスはもうそんなに混んではいないと思ったのだけれど、ティーンエイジャーがバカ話で盛り上がっていてうるさかった。ヘビースモーカーのたかしと一緒だと喫煙席のど真ん中で騒いでいる彼らから逃れることは出来なかった。
「ここうるさいから他行こう」
2人で車に乗り込みあてもなく発進させた。
「俺さ~doorさんって、俺より3つか4つくらい上なだけだと思っていたんだ」たかしは自分から口火を切った。彼は、私が言いたかったことを完全に理解して、しかも切り出しづらいことを自分から言ってくれる。そういうところに、彼の優しさを感じるのだ。
「うん」
「だからこの間は正直ショックだった」
「うん、別に隠していたわけじゃないんだけどね」
「ところでどこへ行くの、この車」
「どこか…ちょっとドライブってことで」郊外に向かって走らせていた。運転しながらだと目を合わさずにすむし、2人の間の距離感がちょうど良かった。
「俺も30過ぎだからいい加減な付き合いはしたくないんだよね、もう」
「うん」
「あれからdoorさんとのことずっと考えていたんだ」
「うん」
「3つか4つ上が、6つや7つ上でもあんまり変わらないような気がしてきた」
「それは違うよ」
「違ってもなんでもdoorさんが好きなんだ」
なんと応えて良いのか分からなかった。
「……普通に考えてあなたみたいによりどりみどり女の子が放っておかなそうな人が、どうしてわたしなんかとつき合いたいと思っているのか理解できないわ」
「でもなんていうかあなた自身が好きなんだ。なんて言うんだろ、う~ん……生き方って言うか、魂の色って言うか…」
「魂の色…」そんな日本語は初めて聞いた。それは私の中でとても美しく新鮮に響いた。私の魂の色は何色なのだろう。



2004-10-11
行方4
テーマ たかし


「何歳だとか、結婚していたとかもうどうでも良いんだ。確かに俺もいろんな女の子とつき合ったよ。年上の人、年下、うんと綺麗なモデルのこもいた。性格の良い子もたくさんいた。だけど何か違うんだ。なんていうんだろ、変な意味じゃ無くて、変な意味でも良いんだけど君の中に入ってみたいんだ。そんな風に思うのは、初めてなんだ。……上手く言えないけど」
とても上手い言い方だと思った。そんな風に口説かれるのは、私も初めてだった。車の方向を変えて帰路につく。しばらく黙って運転していた。
「私、もう電話はかかってこないと思っていたわ」
「えへ~そう?」
「花火大会楽しみにしていたから嬉しかった」
「そうだねぇ~楽しみだねぇ。もう帰るの?」
「明日の朝早いから、Fさんも明日仕事でしょ」
「うん、ねぇ今かかっている曲なんて曲?」
「曲名は知らない、Kind of Biue ってアルバム。マイルス・デイビス」
「ふーん」なぜか青い夜だった。


たかしのアパートの前に車を止めキスの予感があったのでサイドミラーで後ろを見る振りをしながらやり過ごす。まだ気恥ずかしかった。車を降りたたかしは運転席の脇までくると私に話しかけた。仕方なくウインドウを下げると私の頬に手をやりニヤリと笑った。目をつぶって待っていると唇はかすりもせずおでこにキスをして帰っていった。お主、やるな(笑)駆け引きもまた楽しい。

アーティスト: Miles Davis
タイトル  : Kind of Blue



2004-10-11
うどんvs 蕎麦
テーマ ブログ

う~んどうも気分がくさくさする。
天気は毎日こんなだし、延期になっていた仕事は今日、一日外にいてくったくた。
それでも帰ってくるとついPCに向かってしまう立派なブロ中です。
みなさん、お元気ですか、何だか気分がブルーなdoorです。
今日は和也の番だったんだけど、(謎笑) ブログ上でも暗いとどこまでも沈んでいきそうなのでウフッな話にしておきました。

さて、前置きはともかく昨日たかしと昼、蕎麦でも食べようとお蕎麦やさんに入ったのね。ところがたかしはうどんを注文するのよ。
イヤ、うどんでも全然構わないんだけど、聞くとどうやら彼はうどん派。関西に3年ぐらいいたときに転向?したらしい。関西のうどんはそりゃ美味しいのは認めるけれど、江戸っ子の私は断固蕎麦派。今でこそ讃岐風のそこそこなうどんが増えてきたけど東京で食べるならやっぱり蕎麦でしょ。東京のお蕎麦が美味しいとは思わないんだけどね、中には美味しい店もあるし。やっぱり蕎麦の方が美味しいでしょう。

というわけで、質問!あなたはうどん派?蕎麦派?



2004-10-12
無題
テーマ ブログ

今日朝のお散歩中に見つけたしおちゃんのツッコミ日記?! からのトラックバックです。

以前交通事故に遭ったことがある。息子を自転車の前かごに乗せ保育園までの道を行く途中だ。トラックが止まっていたのでそれを右手に避けてトラックを通り過ぎる、その刹那トラックのドアが開いた。そんなにスピードは出していなかったけれど、目の前で開いたのだ。
当然開いた扉に突っ込んだ。2トン車くらいの大きさで、ちょうど息子や私の位置でぶつかるはずだ。自転車の前輪は通ってしまう。あとで両手親指の関節を痛めていたからきっと力の限りにブレーキを掛けたのだと思う。ドアが開いてから1秒と経たないうちにぶつかったはずだ。ぶつかって倒れた瞬間、私は息子を抱えるようにして倒れた。息子の泣き声が響いた。あわてて確認する。外傷は一つもなかった。どこかぶつかったのであれば擦り傷が出来ているはずだ。1歳半の息子にどこか痛いところはないか聞いてみた。息子は次第に落ち着きを取り戻し、どうやら大事はなかったようだ。ホッとして気が遠くなったみたい。
幸い私も息子も大事には至らず、入院の必要もないとのことだった。私は頭と顔を強く打っていた。あとでトラックのドアの高さと自転車の位置を確認してみると、ぶつかった瞬間に何が起こったか私には判った。
自らの頭で息子を守っていたのである。
それはほんのコンマ何秒の時間で、いちいち考えている暇はないはずだ。息子を守るために、反射神経で自分の頭を突き出したのだ。イキモノとして一番守るべき場所を、考えることなく差し出せるのだ。母親って凄い!心の底から思った。私ではなく、きっとどの母親もそうするし、そうできるのだろうと思う。今現在息子とは一緒に暮らしていないし、先週息子の元気な顔を運動会で離れたところで観たけれど、世界中で一番愛している。彼を生んだことは私の誇りだ。

今日は沢山の若者が自ら命を絶ったようだ。母親として一番耐えられない死だ。もっとも親のことなんて頭には無いに違いないのだけれど。情けない



2004-10-13
ある日の会話
テーマ たかし

「どしたの、じっと見つめて」
「ようやくたかしの顔になれてきたなぁと思って」
「えっ?」(笑)
「まえはただ綺麗だなぁとしか思わなかった」
「そう?」
「最近は表情で何考えているのかなって、普通に思う」
「あぁ、そう。変なこと言うね」
「こうやって日常になっていくのかな」
「なって行くんだろうね」
「ちょっとつまんない」

「最近doorも変わってきたよね」
「そう?」
「前はなんて言うか危うい感じがしてた」
「ふふっ、今は?」
「自信が出てきたって言うか、安定してきた」
「それって図々しくなってきたってこと?」
「はは…そうとも言えるなぁ。でもその方が良いよ」
「なんか褒められている気がしない」



2004-10-13
結婚について5
テーマ 和也



泣きながら、これから気を付けるからという和也の言葉を虚しい気持ちで聞いていた。毎回毎回そうだった。
「そんなことで離婚するなんて言うな」和也にとってはそんなことでも、その積み重ねは私の限界まで来ていた。私を欲しいと思わなくてもいい。でも仮に大切に思ってくれているのならば、たまに誘ってくれる位なんだというのだろうか。結局それは、私という1人の人間を踏みにじっていることに他ならない。泣きながら何度も訴えたことすら気を付けてもらえないのであれば、詰まるところ私のことなど何とも思っていないことになる。
それでも翌朝起きると普通に朝ご飯を2人分作って一緒に食べるのは妙だけれども習慣の悲しさだった。事務所に向かいながらこれからの仕事も考えなければならなかった。当時独立したばかりで利益は出ず、私はほとんど和也に食べさせてもらっていた。仕方がない、どこかへもう一度勤めに行こう。そうなると事務所も畳まなくてはならないだろう。小さな雑居ビルの4階にあってここで夜を過ごしたら凍えてしまいそうだった。自分自身の貯金はほとんど無くなっていたが、大口の仕事をやっている最中だったし、事務所の保証金を考えると、小さなワンルームくらいなら借りられそうだった。少しずついらないものを処分し今後の計画を立て始めた。

そんなある日乳首が妙に敏感になって生理が来る前のような下腹部痛とは少し違う痛みも感じた。仕事が立て込んできて構っていられないうちにどんどん生理予定日を過ぎ妊娠したことを知った。



2004-10-14
行方5
テーマ たかし

さて待ちに待った花火大会の日、外は雨空だった。シトシトと降ったり止んだりを繰り返し、おまけにとんでもなく蒸していた。中止の発表はなかったので、とりあえず出かけることにした。傘を持って花火大会に行くなんて。
この間と同じようにホームで待ち合わせる。私の気合いの入った浴衣姿にたかしの目が輝くのが嬉しい。
「お姉さん粋だねぇ」
「お兄さんも浴衣にすればいいのに」
「俺着れないよ」
「花火やるのかなぁ、やらないのかなぁ」
「もしかしたら乗り換えの巣鴨で分かるかもしれない」
「そう、ずいぶん前に巣鴨でとっても美味しいたこ焼きやさんがあったんだよ,しょうゆ味の」
「それ喰いて~旨そう」
「屋台だからどうなっているかなぁ」
巣鴨で乗り換えると地下鉄は浴衣姿の人が多かった。たかしは相変わらずのタンクトップ。人の波に揺られながら離ればなれにならないようにたかしの腕が私の肩を抱く。そんなんじゃ心臓のドキドキが伝わっちゃうよ。久しぶりに誰かに抱き寄せられる感じがとても安心できた。
地下鉄を降りてからの道はよく分からなかったが人波に任せてブラブラとそぞろ歩く。時折ドーンドーンという花火の音がおなかに響いていい感じだ。これは花火をしますという合図だろう。あんまり暑かったので、たかしはビール、私はペットボトルのお茶を買った。
まだ雨もぱらついたりして、傘も差しながら最後はぬかるんだ土手を上っていく。慣れない下駄で滑りそうになる私をたかしはしっかり支えてくれた。
花火は久しぶりだった。最後に見たのは何年前だったか忘れるくらい。あれは綱島の方で友達の家の物置の上で見たのではなかったか。なぜ和也と一緒ではなかったんだろう。



2004-10-12
延々と続く長いあとがき1
テーマ ブログ
一月ほど前ある恋愛ブログを読んだ。ある女の子と片思いの相手とそれを取り巻く友人の悲しい物語だった。それまで恋愛ブログは読んだことがない。他人の恋愛なんて興味がなかったが、そのブログを読んで、自分も書いてみたいと思った。
趣味のブログでコンスタントに100人以上の読者を抱えていた自分の場所で出来る話題ではなかったから、誰も知らないここでささやかに始めた。誰か共感してくれる人が、2.3人で良い。欲しかった。ブログを始めて交流が深まると足抜け出来なくなる。自分の書きたいことをすべて書いたらさっさとやめるつもりだった。だからあまりフレンドリーな態度ではなかったと思う。許して欲しい。
想いは、まず現在盛り上がっているたかしに向けられた。たかしは彼の本名だ。初めの頃を読んでいると、何とも私がびくびくとしていてかわいらしい。本題の和也を書き始めようと思った頃、読者が急増し、書けなくなった。その辺のブレがブログにそのまま出ている。一過性のものだろうと高をくくっていたがその後も200人前後のカウントは続いた。ランキングが急上昇したために、妙な負けず嫌い意識も出てきた。
それから200人も読者(登録とは関係なく)がいると読者の声も聞いてみたくなる。いったいどんな人が、どういうつもりで読んでくれているのか興味があった。



2004-10-14
結婚について6
テーマ 和也

それは皮肉なことだった。もし、神様が居て私の運命を決めているのなら、それは和也の所にとどまるようにというお告げに似ていた。結局離婚を撤回して元の暮らしが始まった。和也は、欲しくないと言っていたのに、いざ子どもが出来たとなると、ものすごい喜び方だった。医者からもらった超音波写真の胎児の格好がおかしいと言って笑いあった。これで私の望んだ通りになったのだ。これからはお父さんとお母さんとして暮らしていくことになる。それはそれで一つの形だ。1人生まれれば彼ももう1人欲しくなるかもしれない、もしかしたら。

妊娠期間中はこの上もなく幸福だった。セックスは医者から禁じられていたから、する気もなかった。ひろが生まれた日、この世界でこの瞬間一番幸せなのは自分たち夫婦だと思った。育児は慣れないことで大変だったけれども充実していた。なんと幸せだったのだろう。夢のような一年半だった。

出産後8ヶ月ほど経って、私の体に変調があった。排卵日近辺になると体の中心が自己主張を始めるようになったのだ。朝から晩までそれは主張していた。そんな状態になったのは初めてだった。
以前であれば、セックスは体の問題と言うより、精神的な求めの方が強かった。もう求めるつもりもなかったから、それは問題がないはずだった。けれど、1週間近くそれが続くのは私には苦痛だった。再び泥沼の中に戻っていく。傍に赤ん坊がいれば、ムード作りなんて言ってはいられない。
ある日和也の寝顔を見ていたら、首を絞めて殺してしまいたい衝動に駆られた。いつの間にか憎んでいた。それは愛の一つの変形だった。けれど、憎んでいるうちはまだ良かった。毎月毎月苦しい1週間を過ごすうちようやく憎しみすら感じなくなった。子宮も卵巣もすべて取り去ってしまいたかった。そしてある日このままだと自分がもう2度とセックスできないのであろうことに気が付いた。絶望だった。ネットでもあちこち覗いてみた。一つの提案として日にちを決めてするというのがあった。どう考えても無理があったが、他に方法はなかった。





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