オーバーラップ 1から読む
「あ、僕も一緒じゃダメですか」
「あ、いえ、どうぞ」
中央寄りを探すと手前に空いている席が3席あり、そこに座る。
「お連れの人、来られなくて残念でしたね、彼氏ですか」
「ええ、そうなの。このところあまり外に遊びに行かなかったからちょうどいいと思ったんだけど」
「しょうがないですよ、僕の方も、つき合っている女の子なんだけど、同僚のミスかなんかでトラブっているらしい」
「あは、でも見られるんだから許して上げてね」
「いやいや、ほんとに感謝していますよ、どうもありがとう」
「映画よくご覧になるんですか」
男は旨そうにビールを飲んでいた。
「っん、えぇ、僕は映画フリークですね、今でも月に6本ぐらいは見るかな」
「じゃぁ、デートはいつも映画?」
「うん、だからいつも文句言われている。ははは…」
それから映画の話でひとしきり盛り上がっているうちに、上映が始まった。
映画はそこそこ面白かったが、新鮮味に書けていた。良くあるハリウッドの恋愛モノ。ところが物語のキーになるシリアスなシーンで突然私のおなかがぐーっと鳴った。
まずい!慌てて腹筋に力を込める。映画のクライマックスの大きな音の所まで持ちこたえられるだろうか。隣の相手が全く知らない人だったり、逆に親しい人であればこんなに恥ずかしくはないのだ。
やっと効果音が大きくなって安心しておなかの力を緩める。これなら大丈夫だろう。そっと横目で隣を見ると男は映画に見入っている。再びおなかが鳴らないように気を付けなければ。映画の後恋人と一緒にたまには外で飲もうかと思って、結局空腹のまま観ることになってしまった。
今ひとつ集中できないまま映画が終わり、エンドロールが終わるまできちんと私たちは黙ってスクリーンを見ていた。いよいよ幕が下りて、私が立ち上がると男が声を掛けてきた。
「あの、お礼にラーメンでもいかがですか」
オーバーラップ3へ