犬の感染症を知っておかナイト
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狂犬病

【原因】
狂犬病ウイルスが原因の,人間を含む温血動物の多くに感染する恐ろしい伝 染病.現在わが国では,厳重な検疫体制および予防注射の実施により発生の報 告はないが,東南アジアやアメリカなどでは,野生動物などにいまだに発生が あるので要注意.ウイルスは動物の体外では簡単に死滅してしまうが,感染動 物から咬まれると,神経の中に入り込み狂犬病が発症する.

【症状】
初期には典型的な狂犬病の症状は出ずに,むしろ野生動物が昼間に出現して 人間に近寄ってくるといった行動の変化を起こしたり,不活発になったり,あ るいは飼育のペットが性格が変わり,物音に驚いたり,隠れたりする.次に周 囲の音や刺激に過敏となり,なんでも咬むようになると,はっきりした狂犬病 の症状と考えられる.また一部は意識が鈍くなるものもある.そのうちに神経症状と呼ばれる麻痺などがみられるようになる.そして呼吸の麻痺のために死 亡する.通常は症状がみられてから2-7日で死亡する.ごくまれに回復もみら れるが死亡率はきわめて高い.

【予防】
毎年の狂犬病予防接種,海外からの動物の検疫

【治療】
発症した動物の治療は人間への危険性から勧められない.狂犬病が疑われた 場合には,関係当局へ連絡の後,獣医師により安楽死が行われ,脳の検査で狂 犬病であるかどうかの確定診断が行われる.

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犬ジステンパー

【原因】
人間のはしかウイルスに似た犬のウイルスがあり,とくに3歳未満の若いイ ヌ科動物を中心にジステンパーという致死的な病気を起こす.犬のウイルス病 としては最も多く,発病率は25-75%と高く,また感染した動物での死亡率も 50-90%と高い.ウイルスは通常のアルコールや石鹸といった消毒法で死滅す るような弱いものであるが,寒い環境では動物の体外でも少しの間生存する. ウイルスは感染した犬のくしゃみその他の分泌物により広がり,母親のミルク 由来の移行抗体が消失したての(大体離乳期近く)若い動物に感染しやすい.

【症状】
ジステンパーには若い動物を中心にみられる急性症と,それがいったん直っ たかにみえたあとにみられる亜急性の発症,さらに成犬になってからみられる 慢性疾患がある.急性症は,感染後約2週間でみられる.これに先だって感染後1週間で第1回目 の発熱がみられるが,その後平熱に戻るので気づかれないこともある.2回目 の発熱が感染後2週間位の時点でみられ,この時には鼻水や咳,結膜炎,下 痢,嘔吐,脱水,衰弱がみられるようになる.鼻や眼からの分泌物は次第に粘 稠な膿様になってくる.この段階で皮膚炎の症状を示すものもあるが,これは 免疫が働きだした証拠で,そのような犬は一部回復することもある.しかしな がら神経症状を示すものは死亡することが多い. 急性症から回復した後,あるいはあまりはっきりした症状を出さずに急性期 を過ぎた犬で,数週間から何カ月も経ってから神経症状を出すものがあり,こ れが亜急性の発症と呼ばれる.これは脳の中にウイルスが潜んでいたためであ る.6カ月齢より若い犬で,突然原因不明の痙攣などの神経症状がみられた場 合には,ジステンパーの亜急性発症が疑われる.この時点で死亡するものも回 復するものもあるが,回復しても神経に障害が残ることがある. さらにジステンパーには慢性の発症も知られている.これは4-8歳の中年の 犬にみられるもので,徐々に進行して,ときに痙攣や麻痺を示す. また慢性発症の別の形は「老犬脳炎」と呼ばれるもので,6歳以上でみら れ,精神的に沈うつ状態になり,眼がみえなくなり,頭を壁に押し当てたり, 飼い主を認識できないようになったり,性格が変化したりする.

【予防】
7種混合ワクチンの中に組み込まれているジステンパーウイルスワクチンで 予防可能.しかしながら,ワクチン接種前に感染が起こってしまうと予防は不 可能.とくに,先に感染し,その後ワクチンをうったが感染はすでに成立して おり,しかも急性期はほとんど無症状で経過した場合,遅れて亜急性または慢 性の症状が出るため,あたかもワクチンを接種してあるのにジステンパーに感 染したようにみえるので要注意.一見無駄に思えても,早くから何回もワクチ ンを接種することによってのみ,この状態は予防できることを覚えておく必要 がある.

【治療】
ウイルス自体を攻撃する治療法はないため,発症した場合も,抗生物質で細 菌の二次感染を抑える程度しか治療法はない.しかしこのような対症療法で も,行った方が回復の助けになるといわれている.その他神経症状に対しても 対症療法が行われ,さらに栄養や水分の補給を行って,回復のチャンスを高め る努力が行われる.

犬パルボウイルス感染症

【原因】
病原ウイルスは1978年に最初に発見された比較的新しい犬パルボウイルスで,それまでには動物では他種のパルボウイルスとして猫汎白血球減少症ウイ ルスとミンク腸炎ウイルスなどが知られていたので,このような他種のウイルスが野生動物の中で突然変異を起こし,犬に激しい病気を起こすものになった と考えられている.このウイルスは強力なウイルスで,60℃に熱しても1時間 は死滅しない.また,アルコール,クレゾール,逆性石鹸なども無効で,次亜 塩素酸ナトリウム(ブリーチ),ホルマリンなどでようやく死滅する.このため,環境中では数カ月以上生存できるとされており,人間の靴についてどこに でも運ばれる可能性がある.感染源は犬の糞便の中に排泄されるウイルスで,これが口や鼻から次の犬に感染する.ただし現在では最初に流行したときのような,犬が次から次へと感染する激しい発症はあまりみられない.これは,全 世界にこのウイルスが広がったため,多くの犬が免疫を持つようになって,多くの犬が依然として感染するけれどもほとんどの場合は症状を示さない感染に終わり,まれに無防備な子犬が感染して発病するといった状況である.感染した犬全体のうち発病するのは20%以下,死亡率は1-5%以下とされている.しかしながら,病院に来る犬は症状が激しいため来院するのであって,そのような犬では死亡率がかなり高いのも事実である.また,一部の集団飼育施設で集 団発生が依然としてみられている.

【症状】
通常は感染後2日で,元気消失,衰弱,嘔吐,下痢がみられるようになり, それから食欲が廃絶する.発熱はあったりなかったりする.通常この時期に病 院を訪れ,検査により白血球の減少がわかることが多い.感染後約5-7日で免疫ができるため,回復 するものはその時期から快方に向かう.すなわち,軽度発症の犬は発症後1-2 日で自然回復し,中等度発症の犬は病院で補助療法を行って3-5日で回復する.しかしながら,下痢や嘔吐が持続するものは死亡することが多い.また幼 犬に多い過急性感染では,発症後1日程度で死亡するものもある.8週齢未満で 感染したものは心臓にウイルスが感染し,心筋炎という心臓の病気を示すこともある.

【予防】
7種混合ワクチンの中に組み込まれているパルボウイルスワクチンで予防可 能.しかしながら,ワクチン接種前に感染が起こってしまうと予防は不可能で あるし,また母親が高度の免疫を持っていると,子犬の体内に母乳由来の抗体がかなり遅くまで残る.このためワクチンが妨害され,打ってあるのに効いて いないという状態が作られる.このため接種したからといって安心していると,その後母親からの抗体は自然に消滅し,ワクチンも効いていない,無防備 状態となってしまう.したがって,パルボウイルスワクチンは,遅くまで何回 も接種する必要があることを覚えておきたい.

【治療】
ウイルスを殺す治療法はないため,対症療法・補助療法が行われる.これに は,嘔吐,下痢によって失われた水分や電解質を補給する輸液療法と,腸内細 菌の異常繁殖を防止する抗生物質療法がある.その他の治療としては,ショックに対する治療,嘔吐,下痢をコントロールする対症療法がある.また,血清 療法といって他の犬の血清を注射する治療法もあり,これは失われた栄養分の補給に十分効果があり,また免疫増強という効果も期待できるのかもしれない.

犬伝染性肝炎

【原因】
アデノウイルスの仲間の犬伝染性肝炎ウイルスが病原体.このウイルスは世界中に分布して,しかも環境中では比較的強く,数日から数カ月生存することができる.消毒にも比較的抵抗性で,アルコールや石鹸は無効だが,アンモニウム塩以上の強さのものでは死滅し,さらに56Cでも死滅する.感染犬からは 便と尿の中にウイルスは排泄され,それが口や鼻から次の犬に感染する.

【症状】
この病気は現在多くはないが,まれに激しい発症もみられる.感染後4-7日 で発熱が始まり,元気がなくなる.この段階で熱が下がり,回復に向かう犬も多い.しかしながら,熱が少し下がってもそのまま元気消失が続き,肝臓や肺 が冒されてくる.激しいものでは肝臓全体が冒され,血液が便に出たり,皮膚 のいろいろな部位で点状出血や溢血斑(斑状出血)が起こったりする.肝臓が 冒されても軽度のものは3-5日で回復する.

【予防】
ウイルスを殺す治療法はないため,対症療法・補助療法が行われる.

【治療】
7種混合ワクチンの中に組み込まれているアデノウイルス2型ワクチンで予 防可能.アデノウイルス2型は後述のケンネルコッフの原因ウイルスである が,犬伝染性肝炎ウイルスも同じアデノウイルスなので,共通して予防可能. とくに犬伝染性肝炎に対する免疫は効果的に働くので,このように他のウイルスを使っても良好な免疫ができる.

ケンネルコッフ

【原因】
伝染性気管気管支炎と呼ばれるこの病気は,単一の病原体によるものではなく,いくつものウイルス,細菌などが複合して病気を起こしている.中でも重要なのがボルデテラと呼ばれる細菌で,それにジステンパーウイルス,アデノ1型,2型,イヌパラインフルエンザウイルスも関係している.イヌパラインフルエンザウイルスは非常に弱いウイルスで,アデノ1型は犬伝染性肝炎ウイルスと同様である.しかしながら,これらのウイルスは飛沫中に含まれて空気中を飛ぶために感染力は強く,犬の呼吸器系に感染する.しかしながら致死的な感染になることは少ない.

【症状】
発作性の咳が特徴であるが,その程度や発熱の有無は様々である.上記のウイルスは気管支のかなり奥の方に感染するが,細菌感染などが複合して,呼吸器系の広範囲が冒される.症状発現から通常は1週以内に免疫ができて回復する.しかしその後も,気管の部分を圧迫したりするとせき込むことがよくある.

【予防】
ウイルスを殺す治療法はないため,対症療法・補助療法が行われるが,細菌の関与も十分考えられているので広い範囲に効果のある抗生物質が通常使われる.

【治療】
7種混合ワクチンの中に組み込まれているアデノウイルス2型ワクチンおよびパラインフルエンザウイルスワクチンでかなりのものが予防可能.同時に7種混合を使用すれば,ケンネルコッフの原因としても考えられている犬伝染性肝炎ウイルスとジステンパーウイルスに対する予防も可能.