Favori(ファボリ)」は、ラスターブロッサム株式会社が運営する、鞄、バッグなどのオーダーメイドブランドです。

twitterでお気に入り発言にマーキングすることや、銀座のベルギービール専門店や、コサージュや生活雑貨を扱う個人デザイナーのウェブショップや、欧州セレクトショップの「Favori」とは全く関係がありません。念のため。ネーミングの重複はウェブの宿命とは言え、こうしたストレートな名称は、ネットプロモーションでは思わぬ弊害を起こす場合もあるので気をつけましょう。また、トップページには「鞄、バッグ、オーダーメイドであなたのお気に入りを!」というキャッチコピーがありますが、「鞄」と「バッグ」ってどう違うんだろう、という疑問を持って、wikipediaで「鞄」を検索し「バッグともいう」という一文を見つけて衝撃を受けたりしないようにしましょう。

ここから勝手な想像をします。「普通の鞄メーカーではつまらん、何か新機軸を考えないとならんなあ」と、社長が悶々としていたところ、若い社員が「ボス!マーケットニーズがマックスまでセパレートされたナウ、メーカーにマストなのはエッジの効いたウォンツをエクスプレッションできるフラッグシップマテリアルですよ!」と言ったかどうかは定かではありませんが、「Favori」は若い社員の企画提案で立ち上がったようです。あくまでも想像ですので、念のため。

ということで、「Favori」と一緒に変態画期的なバッグを共同開発したジニアスアキバメンバーのakio0911氏について書こうと思います。

akio0911氏は、知る人ぞ知るHacker's Cafe」という秘密結社(チームラボ猪子社長談)のメンバーでもあり、ジニアスアキバのメンバーでもあります。別にジニアスアキバメンバーになりたいとか、なってくれ、という話は一切無しで、勝手にメンバーだと僕が言っています。本当に迷惑だと思っていたらこのページをハッキングして改竄するはずなので、この記述が残っているうちは大丈夫でしょう。ちなみに念のためにパスワードも教えてあります。

「Hacker's Cafe」は、プログラミングやデジタルガジェットが大好きな人たちがアドホックに集まって情報交換をしたり、思い思いに好きなハッキングをして一緒に楽んでいるグループです。去年「TechCrunch」の本体の方の記者が取材で東京に来た時、面白そうだから見に行こうとパーティーに乱入し、誰に話しかけるということもなく、部屋の片隅でノートブックを開いてコードが書きまくっていたところ、記者が「彼らは何をやっているんだ」と興味を示し、翌日には「TechCrunch」に「Cool Japanese geek group」として紹介されました。パーティーには、自分の会社のことを書いて欲しいベンチャー社長連中がわんさか居たというのに、全く空気を読めていません。

「Hacker's Cafe」にはまだ、固定した活動場所がありません。電源とネット環境を求めて、基本的には秋葉原のリナックスカフェ、ルノアール、アイカフェという漫画喫茶、モンハンカフェ、マクドナルドなどを放浪しながら活動を行っています。そんな不遇な状況を見た某氏が、良かったらここ使いなよ、と提供してくれたのが、何を間違えたのかオシャレなリア充が集う表参道の、さらにブルガリとかプラダが集まるハイソビルGYREの4階にある「SMOKE」というお店でした。「Hacker's Cafe」のために、わざわざ光回線まで引き、全ての席に電源まで完備するサポート振りでしたが、オシャレピーポーや芸能人が集うお店でのハッキング活動は、ちょっと窮屈そうです。その中でもakio0911氏は、その違和感バリバリの状況を結構喜んでいて、「ここにサーバーを置いてディオールサーバーと名付けよう」とか、「オープンテラスで青空ハッカソンをやろう」と提案し続けています。

さておき、その「SMOKE」を提供してくれた某氏のラインから浮上してきたのが「Favori」のオリジナルバッグ開発のお話でした。

「ということで、プライスレスなハイクオリティバッグをシンクするのがマストなので、誰かエクセレントなパーソンきぼんぬ」と「Favori」の人が言ったかどうかは知りませんが、そこに紹介されたのはakio0911氏でした。ハイセンスかつエレガントな人物である、という紹介だったようです。これは間違いではないでしょう。RCカーの車体にノートブックを載せた「自走式ウェブサーバー」はある種のセンスが無ければ作れなかったでしょうし、位置情報とARを駆使した「電脳スターラリー」はある種のエレガントさがなければ成立しなかったでしょう。

でも次元が違いすぎます。

「Favori」スタッフがakio0911氏と初めて「SMOKE」で会ったとき、一番最初にakio0911氏から発せられた提案は以下のようなものでした。

「iPhoneと連動してバッグの表面が様々な色に変わるやつ、作れないでしょうか」

何を言っているんだこの人は、という「Favori」スタッフの表情は今でも忘れることができません。akio0911氏、この人はバッグ屋さんや、ディスプレイ屋やないで、という周囲の声にならない叫びが、僕には聞こえてきました。

理解の範疇を超えた提案に苦しみの表情を浮かべて、それはちょっと難しいかも…という「Favori」スタッフに、akio0911氏は、

「じゃあ、私はいつもmac bookを持ち歩いているので、これが入る鞄で…」

ああ、それなら普通に作れそうです。「Favori」スタッフはほっとしています。何を隠そう約10年前、エレファントデザインというクールな会社が「本当に欲しいと思える鞄」を開発するインターネットプロジェクトを立ち上げ、とても素晴らしい鞄が出来上がった時も、ノートPCが入ることが前提でした。今のニーズに応えた、シンプルかつファッショナブルな鞄、しかもアーティストやクリエイター必携のmac book専用、ということであれば、とてもオシャレな香りがします。

「で、僕の持っているiPhone三台がディスプレイできるようにしてください。」

普通の人はiPhoneを三台も持っていませんし、iPhoneはディスプレイではありません。そんなもの作っても、一般消費者には中々売れないでしょう。「Favori」スタッフは泣きそうです。でも、さすがプロです。また勝手に想像して書きますが「これはメーカーに対する宣戦布告である。我々は負けるわけにいかない。」と「Favori」スタッフが思ったかどうか分かりませんが、それから数週間後、鞄が出来上がってきました。

これです。

GENIUS AKIBA-デジタルサイネージバッグ


とても変態素敵ですね。

true-タッチパネル操作対応


相変わらず「Favori」スタッフは泣きそうな顔をしていましたが、それが「ようやくできた」という安堵の涙なのか「こんなもの作ってしまった」という悔悟の涙なのかは把握できません。

そして、作ってしまったからには、メーカーとしては売らなければなりません。誤解の無いよう何度も書きますが、あくまで想像ですが、「めちゃくちゃニッチなこの商品、どうやって売るんだYO!」という喧々囂々の社内論議が繰り返される中、akio0911氏は、出来上がった鞄を持って、サンフランシスコで開催された「Worldwide Developers Conference 2009」に参加します。

「WWDC」は、Appleのプラットフォームでイノベーションを行うデベロッパーにとって非常に重要な技術イベントです。1000人を超えるアップルのエンジニアがモスコーンウェストに集結し、アップルの最新テクノロジーを解説し、コードレベルのアドバイスを参加者に提供するなど、数十万人が全世界から参加するイベントでは当然のように新しい情報が目白押しです。

そんな情報イベントの中、akio0911氏の鞄が、また「TechCrunch」の記者の目に止まり、今度はギーク御用達の最先端グッズが紹介される「CrunchGear」に「Geek designs iPhone-powered digital signage bag」というタイトルで掲載されました。

これは以前、「Hacker's Cafe」が「TechCrunch」に掲載された以上に異常なことなのですが、akio0911氏は、さほど意に介している様子はなく、「Favori」スタッフに報告もしないばかりか、

「コード書いてる」

というのんびりしたコメントを「WWDC」会場からtwittしています。しょうがないので僕が密告しておきました。

「Favori」はこの報告を受け、もしかしたら我々はとんでもないものを作ってしまったのではないか、と、ようやく気付きだします。あ、書き忘れてましたが、あくまでこれも想像ですよ、想像。で、「WWDC」から帰国したakio0911氏は速攻で「SMOKE」に呼び出され、商品撮影が行われました。数日後、「Favori」サイトで変態素敵な鞄の商品紹介と販売が開始されます。

Link: 鞄・バッグのオーダーメイドであなたのお気に入りを

この鞄、「Product No.3」として紹介されていますが、No.1と2は、増田成美さんという女性の方のオーダー鞄が紹介されています。その女性用鞄と、サイトの全体的な雰囲気を見ても、明らかに「Favori」のオシャレピーポー向けに商品開発を行おうとしていた意図が見え隠れするのですが、「Product No.3」が異様な雰囲気を醸し出していて、正直方向性が狂ったとしか思えないのがまた変態素敵ですね。

そして、トップページからのリンクに使われているakio0911氏の写真がこれです。

true-akio0911


ECサイトによるネットテロ活動と判断されて当局から調査が入ってもおかしくないですね。

このページが出来上がる前日、「iPhone 3GS」の日本発売イベントが表参道で開催されましたが、「WWDC」に続き、akio0911氏は、そのイベントにもこの鞄を持って参加するという暴挙に出ます。

表参道では、巷では結構有名な株式会社ソラノートの美人広報スタッフである「そらの」さんがUstreamでリアルタイム配信を行っていました。この「そらの」さんという方は、フリーハグとpokenとインターネット放送を武器に、様々な著名人にインタビューをしたり、イベントに参加するなど、幅広い活動を行っている人気者です。

akio0911氏は彼女を見つけるやいなや、すたすたと近づいて行って、iPhone三連鞄で戦いを挑みました。

一応関心は持ってもらったようですが、いきなりの変態素敵鞄攻撃に、「そらの」さんは大量のHPを失ったようです。彼女に話かけた人は大抵ハグをしてもらえるのですが「ちょっと疲れているのでハグできないんですが」と、こちらから聞いてもいないのに言い訳をしてくれました。

この配信は相当多くの方々が見ていたようで、中にはiPhoneアプリ「PocketGuitar」で世界的に有名な笠谷真也氏もいて、

「たまたま ust 見たら @akio0911 が出てて吹いた」

という素敵twittが出ていました。

akio0911氏は、この出会いの直後、「そらの」さんに対して、

「@ksorano I am バッグの人」

という意味不明なtwittをしていたことも付け加えておきます。

最後に変態素敵鞄にもう少し触れておきます。

true-デジタルサイネージバッグ


銀色の素材は一見塩ビに見えますが、本物の牛革で、特殊な染め方で絶妙な風合いを醸し出しています。透明ポケットは、もちろんタッチパネル入力対応で、ポケットに入れたままiPhoneの操作が可能。手持ちと斜めがけの2WAY使用になっているのでオタクの人の様々なコーディネートに対応できます。

この鞄が24,000円(税込)というのは、破格です。普通のオーダーメイド鞄は最低でも30,000~50,000円以上はします。ありきたりな鞄に飽きた方、常に時代の崖っぷち最先端を走りたい方、iPhoneを何台も所有していて扱いに困っている方は、この機会にお求めになってはいかがでしょうか。

ここまで書いて、そうだ、アフェリエイトで僕も便乗しよう、と思ったのですが、超低価格過ぎて卸販売は無理だそうですよ。残念。

「Favori」さんには、今後もこんな変態素敵鞄をどんどん世の中に投下していって、人々の価値観に混乱を生じさせ、所謂オシャレピーポーをどんどん駆逐していって欲しいものです。そうすれば、世界は平和になって、人々がもっと豊かで楽しい人生を送れるようになるはずです。