久方ぶりのほろ酔い加減に気を良くしたタマキは次の各駅停車の六両編成の中程の車両に早めに乗り込んで窓際に陣取った。ゆっくりと走り出す。初めて目にする風景に見惚れていた。
一つ、また一つと駅をクリアするたびに車両内の賑わいが静まっていく。
スンジョウ駅を出てから無人駅の多さに圧倒された。
無人駅に停車しても降りて行く人も乗車して来る人も無く、シーンとした感じからゆっくりと動き出す。といった場面が何度もあり、たまにコロコロと転がしながら一人降りて行く!といった具合で山形駅で観た賑わいから時が経つにつれて静まって行く感じが心地良かった。
「次は終点の余目、余目でございます!皆さまお忘れ物のございませんように今一度ご確認のほどどうぞよろしくお願い致しますッウ!」
「やっと来たガァー!」タマキは呟いた。
終点のせいか?完全に止まるまでとても長く感じた。
右側のドアが開く前から乗客は並んだ。
ドアが空いた瞬間まだ椅子に居たタマキが「アッ!」と小声で呟きながら「スッ!」と立ち上がりながら先に降りた乗客の真っ赤なダウンジャケットの女を探した。10数メートル先にいたのを見つけると間を縫うように追いかけて「すいません!」と雑踏を跳ね返すほどの大声を掛けながら右手で赤いダウンジャケットの右肩を叩いた!
「エッ!」と振り向いた女にタマキは、呼吸を荒げながら「忘れ物?!」
女は「アッ!」と発するや、なり振り構わずコロコロを「ガーーーッ」と引きながら人混みの流れに逆走していった!
タマキは歩みを止める事なく顔だけ赤いダウンジャケットの背中を確認するとゆっくりと呼吸を整えた。ずっとベッドの上の生活が長かったためか肩は大きく揺れていた。
次の連絡列車の車両に乗り込んで腰を掛けてからもまだ「ハァーハァー」は止まらなかった。
#ほろ酔い
#無人駅
#真っ赤なダウンジャケットの女
#食の都庄内