朝早く、たたき起こされる。



毎日のことだ。


「後五分・・・・」


そういうと呆れて俺の部屋を出て行く。


それで遅刻ぎりぎり。ってのが俺の毎日。


でも、一つだけちがうことがあった。


「いいからおきて!!早く出発しなきゃ!」


いつもより若い声。


ん?




「!!!」


「やぁっと起きた!早く!行くよ!?」


「へ!?え!?」



理解不能のままバイクの後ろに無理やり乗せられる。






「ちょ、ちょっと待てよ!!」


「何?」


「どこ行く気だよ!」


「どこって・・・・王宮。」


「はぁぁあ!?」



「あのね、哀に、あえるかもしれないから」


「ッ・・・・・」



心臓が高鳴る。


会いたいのか 会いたくないのか 自分でもよくわからない。



そんな陸を見てルゥは微笑んだ。


「いいんだよ。今は、何も分からなくたって。」


「あ・・・あぁ・・・」



「それに・・・いつかわかる・・・いやというほど・・・」


最後の一言は陸に届かず、風に消えていった。




「んじゃ、いくよう!」


「おう!」





風が冷たい。


まだ朝早いらしい。道はがらんとしている。




「さ、っぶ~」


「大丈夫?」


ルゥが声をかける。


「平気だけど・・・今、冬なのか?」


「うん。て、言うかずっと」



なんでもないように答える。


「ずっと!!?」




「うん。 哀の心が晴れたことはないよ。一瞬だってない。」



「あ、そういうことか・・・・」




「でもね、陸  私達は別に晴れを望んでるわけじゃない。」


「え?」


「一番辛いのは 晴れの後の 雨なんだよ。」



「・・・・」


ルゥの言葉はたまにわからない。



深すぎるのか、俺の頭が足りてないのか。




でも、コレだけはわかった。










やっぱり俺は  哀、お前を救いたい。








Forget. 八 完

「キリ様!何をなさったのですか!?」




大きな宮殿に家臣の焦った声が響き渡る。



「そろそろ、歩かないと、いけないかもしれないと思ってね」


「ですが・・・ッ」



「キリュウ。お前がしでかした事は重いぞ」


王様のような身なりをした男が目の前に座る。



「いつまでも、ここで突っ立ってるわけにも行かないだろう?」


「何を言うか。私達は幸せを求めん。変わりに傷つかない。そうして生きてきたではないか」


「哀は、本当はそんなこと望んでいない」


「貴様ごときになにがわかろうて。」


「俺は、哀の最後の 想いだ」



静かに呟く。


そして顔を上げた。


「楽しくなりそうだね」



「「・・・・」」


二人は驚いたように顔を見合わせた。


キリが笑うなど


数年ぶりだったのだから。











時計の針が進みだす。


光と闇に入り混じり


彼は言った。


「賭け事は、嫌いじゃない」




Forget. 七 完

勝手過ぎる。


そう思い一つため息をする。


こっちの世界ではもう少しで冬なのだろうか。

呼吸を重ねるたび息が白く変わる。



「どうしよう・・・」


口からこぼれる。

確かに自分からこの世界にくるのは望んだのだが・・・

こんなことは想定外だった。


「ちょっと。」



「?」


背後から声がする。


高いのか低いのかよく分からない声だがこれだけはわかる。


明らかに不機嫌だ。


「何。」


「邪魔」


このくらいの年頃というものは、なんでも喧嘩腰になってしまう。


「・・・・・・・」


顔を見た瞬間、彼女は青くなる。


「おま・・・なん・・・どこからきて・・・」


「なんだよ。」


きょろきょろと辺りを見回し、店の中に入れさせられる。




チリンとベルが鳴る。



中は温かかった。


雑貨屋はいろとりどりのものが並び、いかにも女の子が好きそうな物ばかりだ。


「はぁ~・・・あんた、検査にひっかかるつもり?」

「?なんのこと・・・」


「ふぅ~ん・・・まじで知らないんだ。よそ者なんて初めてみたよ」


「だからッ!!」


質問に答えるわけでもなく、淡々と喋るこいつに腹が立ってきた。


「おっと、ごめんね。アタシはルゥ。雑貨屋の娘」

「そういうこと聞いてるんじゃ・・・」


「うんうん、わかってるよ。でもそれは奥の部屋に行ってからにしたほうが良いかもね」


じっと窓を見据えるルゥ。

同じ方向を見るとおかしな機会がうろちょろしていた。



カーテンを閉め、店を閉めると、ルゥは奥の部屋に案内してくれた。























「さぁ、話そうか」



「・・・・・・」







「俺の、名前は陸。ここは、どういう世界なんだ?」


「陸ね。うん。ここは、心ノ世界。この国の主人、つまり哀が生み出した世界なの」


「あぁ」


ここまではなんとなくわかる。


「んでもって、ここの住民はそれぞれ欠けた心を持って住んでいる」


「え?心?かけ?」


「哀がそうだったように、私達には何かが足りない。そして、記憶の穴が城の上空に浮いている。」


「うん」


「だから、私達は完全な心を持った君のことは見ればすぐに分かる」

「うん・・・」


「どう?これで説明は全部!納得した?」


「多分・・・。」


理解はできた。けれどやはり、心が足りないというのはまだよく分からない。



「んじゃ、今度は私が質問する番ね」


「へ?」


いきなりのことに戸惑うが笑いながらルゥはこう言った。


「どうしてここにいるの?」


「・・・・・ッ」


別に、悪意があるわけではないんだろうが・・・

その言い方は、学校の「なんでお前がいんの?」と冷たく突き放されるのと同じ感覚だった。



動揺を隠せない。











「プハッ・・・」


「え・・・?」


「大丈夫だよ!そんな顔しなくて!ちょっと聞いただけ、ごめんね」


「・・・・・」


「一応ね、話は聞いてたの、誰かをこちらによこすかもって」


「話って・・・・誰に・・・・?」


「ん~・・・キリ」


「キリ?」


想像してたのとはちがう名前だった。


「皆それぞれ呼び方がちがうの。あいつは哀って呼んで欲しいらしいけど。私はキリって呼んでる。紛らわしいからね」



「!!」


やはり、同一人物。






キリ・・・・いや、「哀」お前は、誰なんだ。



Forget. 六 完

一つ、触れようと手を伸ばす



「やめろ!!!」


「!?」


叫ばれた時にはもう遅く、その指先は触れていた。





パチンッ



かわいらしく、はじける音。



音、は。



「っつ・・・!!?」



頭が割れるような痛みに襲われる。



「だから、言ったのに」


唇をかみ締めて言うそいつ。



「こうなると・・・俺が頭痛くなるのがわかってたのかよ?」


「お前の痛みなんてどうでもいい」

「なっ!!」


「さっきの、なんの記憶だと思う?」


考える。



思い出せない。













思い出せない?





さっきまで見ていた記憶が?




「まさか・・・・」



ため息をつく。


「そう・・・これが壊れるたびに、哀の記憶は消えていく。」


「けど・・・ちょっと、先っちょが触れただけだぞ!?」


言い訳する。


どうしても、自分のせいだとは言いたくなかった。


コドモのように だだをこねるように


むきになる。




「・・・・・」


冷たく、見つめられる。



「ッ・・・・」





「いい。どうせいつかは壊れる。」

「それ、どういう・・・・」



「こんなところで、話している場合じゃない。行くぞ」



「は?」



哀が扉を押し開けると、そこは町だった。



「・・・・・・」


「アホ面だな。」

「!!」


口が開きっぱなしだったらしい。


振り返ると、なんの変哲も無い雑貨屋。



「どうして・・・・」



振り向いた時には


誰も居なかった。





Forget. 伍 完

周りは、真っ暗だった。



普段感じることのめったに無い   『闇』


ただ、闇。



目が、開いているのかすらも分からなくなる。


そんな感覚。


「おいおい、んな顔してんじゃネェよ」


「?」


そいつは言葉を続けた。


「後、俺の名前は好きに呼んでいい」


「それじゃ俺が困る」


目の前に居るんだろうけど

視力が働かないので闇と話している気分だった。


「そーだなー。じゃあ・・・・哀」

「お前、ふざけてんのかよ!」


「ふざけてなんかいない。俺を作ったのは哀だ。だから、俺も哀」


「・・・・・」


多分、眉間にしわがよっていたのだろう。

そんなに怖い顔すんなよ。と言って『哀』は笑った。



「んで、ここどこだよ」


なんとなく、分かってはいた。


「心の穴」


なんでもなさ気に答える。


「ここで、なにすんだよ」



「お前は覚悟をきめなければならない」


空気が変わりピリピリとした口調になる。


「なんの?」


「茨道を通る覚悟だ」


「俺は、茨道なんて怖くない」


不適に笑う。


「わかってない」

「は?」


「お前は、哀のほんの一部を知っているだけ」

「・・・・」


「茨道ってのはな、こーゆうことだよ。上、観てみろ」


言われるがままに上を向くと無数の粒がゆっくりと堕ちてくる。



「なん・・・・・」


「記憶」

質問されるのを予想していたらしい。


その粒はゆっくり堕ちて陸の前を通っていく。


その人かけらひとかけら、


哀は


笑ってなどいなかった。


いや、笑いながら


心が、泣いていた。










Forget. 四 完






悲しげな表情をした少年が いた。


哀が?書いたのか?




本当に?





涙が自然とあふれる。





どうして、



あんなに、明るい、悩みのなさそうな哀が



こんなに悲しげな表情をかけるのだろうか。



強い意志を持ちながらも 悲しげにかげった瞳が 目をそらすなといっているようで。




「哀・・・・。」



たった一枚の



絵に込めた 君の気持ちを



今さら確かめられはしないだろう?


これが、君の



遺言書・・・?










ピクッ



「!?」



少年が、動いた気がした。



「俺、疲れてんのかな・・・」




『おいおい、見間違いのふりしてんじゃねぇよ』



スケッチブックの中の少年が言う。



「!!お、おま・・・・」


『おっと、質問は受け付けない。唯一つ答えてもらう』


「・・・・・なにを・・・」



ひょいと出てきて(しかも絵)いきなり答えろだなんてあまりに強引過ぎないか?



「お前は、俺の主人の心を知りたいんだろ?」


主人というのはどうやら哀らしい。


小さくうなずく。



「なら、着いてきな」



「は!?」






どうやって?そんなことを考えてる暇も無かった。





なぜなら、



スケッチブックの中に引きずり込まれたのだから。





Forget. 参 完

「陸君~こっち手伝って~」


「あ、はーい!!」



成宮 陸 18歳。


今、哀んちの手伝いに来てる。


哀は俺の幼馴染。


大切な存在だった。

お互い恋愛感情とかじゃなく、なんでも相談できたし、なんでも言い合えた。



いや、言い合えてたと思っていた。





























去年の冬、君が死ぬまでは。


















「・・・・・・・。」


「どうしたの?陸君」


「あ、なんでもないッス!」


嫌なことを思い出してしまった。



今日は、哀の部屋の片付け。

一年間、誰も触らなかった部屋は汚い。


もともとキレイなわけではなかったのでその汚れはすさまじいものだった。









「あ、あっちのクローゼットお願いしていい?」


「はい」


哀のお母さんは優しく微笑むとお菓子とお茶を持ってくるわ。といって下に下りていった。





ガチャッ



中にはいろんなものがごった返していた。




掘り出していくと、一冊のスケッチブック。





「・・・・・これ・・・」




哀が自殺する一日前、何かをこれに書いていた。


何度も何を書いているのか聞いたけれど


笑いながら流されていた記憶がある。





ペら・・・



ひょうしをめくる。






そこには・・・・









Forget.弐 完

一体  誰が気付いただろうか。


明るい、ごく普通の


どこにでも居るような女子高生が


誰も、考えはしなかった 


心の闇を持っているなんて。



心の闇なんて 人それぞれ 少しはある。


けれど、その闇と悲しみが混ざった心を


抱えたことが ありますか?


彼女は


隠した。 誰にもばれない。



巧妙に 勘付かれないように


気付いて欲しいと 心のどこかで願いながら 救って欲しいと 願いながら



Forget.





初、アメブロです。

憧れのアメブロです。


おそろし!!がんばってきます。


あ、ちなみに


『のっけから小説』


なんでよろしくです!