Mさんからまた連絡があったのは、前回から4日後。
「今週、空いてる日ある?」ってだけ。
句読点はなかったけど、なんとなく機嫌はよさそうだった。
会う前日、久しぶりにネイルをした。
色はベージュ。
ピンクとか赤は気分じゃなかった。
子どもが寝たあと、冷蔵庫にあった夫の発泡酒を1本だけもらって、
ちょっとだけ酔ったふりをしてみた。
誰に見せるでもないのに、鏡の前で口紅を塗り直した。
今回は違うホテルだった。
ロビーは広くて明るかったけど、部屋は暗め。
窓の外は曇ってて、景色もぼんやりしてた。
「また会ってくれて嬉しいよ」って言われて、
「いえ、こちらこそ」って言ったけど、
たぶんそれもテンプレだったと思う。
Mさんは、前より少し優しくなってた。
髪を撫でる手つきとか、
「疲れてない?」って聞くタイミングとか。
でも、封筒は同じだった。無地で、重さもだいたい同じ。
帰り道、マスクの内側が少し湿ってる気がした。
たぶん、部屋の加湿が効いてたせい。
それ以外の理由は考えないことにした。
家に着いたら、夫が洗濯物を畳んでいた。
テレビはついてたけど、誰も見ていない。
子どもは寝てた。布団を蹴っていて、足が冷たかった。
夫に「ありがとう」とか「おつかれ」とかは言わなかったし、
彼も特にこっちを見なかった。
夜中、Mさんから
「楽しかった、また会いたいな」ってLINEが来ていた。
私は既読だけつけて、返信はしなかった。
ちょっとだけ、何かを待っているような気分だったけど、
何を待ってるのか、自分でもわからなかった。