今日はパートナーの誕生日だ。朝から何となくそわそわしていたけれど、仕事が忙しくて頭の中は半分仕事モードのまま。それでも、特別な日だからと気合を入れて、いつもより少し早く仕事を切り上げた。パートナーへのプレゼントはまだ何も決まっていなくて、帰り道に慌てて買い物に行くことに。普段なら近所のイトーヨーカドーやイオンで済ませてしまう買い物も、今日はちょっと気取ってデパートへ足を運んだ。誕生日くらい、少し特別感を出したいと思ったのだ。


パートナーの性格を考えると、プレゼント選びはいつも悩ましい。相手は記念品みたいなものを贈るのは好きなのに、自分がもらうとなると困ってしまうタイプだ。「形に残るものより、消えてしまうくらいがちょうどいい」とよく言う。確かに、物欲があまりない人だから、アクセサリーや小物は却下。パートナーは今夜、家でご飯を作ってくれると言っていたから、最初はワインとケーキと花だけを用意するつもりでいた。酒好きで花が好きな性格を頼りにプランを立てることにした。

まずお酒。デパートの酒売り場をうろうろしながら、春らしいロゼに目が留まった。ヴーヴ・クリコのロゼがあれば迷わずそれにしたかったけれど、残念ながら見当たらず。モエ・エ・シャンドンのロゼはあったけど、2人とも何度も飲んだことがあって味を知り尽くしているし、正直「一番のお気に入り」とまではいかない。この間の友達の結婚式では、ヴーヴとモエで迷った末に結局箱でモエのブリュットを選んだのに、なんて思いながら却下。結局、フラデッリ・コスモのロゼ・プロセッコを手に取った。ラベルが華やかで春っぽく、ハウスワインより少し特別感のある価格帯。ちょうどいいバランスだと思った。



次に花。パートナーは花が好きだけど、家には大きな花瓶がないから、気持ち程度の小さなサイズにしようと決めた。色は迷ったけれど、春の清々しさをイメージして真っ白に統一。シンプルだけど上品で、誕生日らしい雰囲気が出せそうだと満足した。



そしてケーキ。誕生日といえばやっぱりホールケーキでしょ、と意気込んでいたものの、デパートのケーキコーナーで散々悩んだ挙句、結局安定のシャトレーゼへ。フルーツタルトが目に飛び込んできた瞬間、これだ!と思った。色とりどりのフルーツが春らしくて華やかで、小さめのサイズ感もちょうどいい。パートナーと2人でつつくのにぴったりだ。



ここまではワインとケーキと花だけを買うつもりだったけれど、買い物を終えて荷物を抱え、さて帰ろうかというタイミングでパートナーからメールが来た。「仕事が遅くなってて、まだ家に着いてない」とのこと。うーん、困った。パートナーがご飯を作ってくれる予定だったけど、この時間だと帰ってから準備を始めるとかなり遅くなってしまう。スーパーで惣菜や寿司でも買って帰ろうかと思ったけれど、それじゃ特別感が薄れる気がして躊躇。せっかくの誕生日なんだから、もう少し頑張りたい。

結局、デパートに戻って何かいいものはないかと大きな荷物を抱えて彷徨うことに。すると目に飛び込んできたのが「なだ万」。普段ならコスパ重視で真っ先に選択肢から外してしまう高級和食の巨匠だけど、今日は特別な日だ。パートナーが料理を作れなくなった分、家での食事でも雰囲気を大事にしたいと思い、春の限定幕内弁当に決定。少し値は張るけれど、季節感たっぷりの彩りと上品な味わいは誕生日らしい贅沢感を演出してくれるはずだ。



駅でパートナーと落ち合い、一緒に家に帰った。帰宅して荷物を広げると、フラデッリ・コスモのロゼ・プロセッコ、なだ万の春らしい弁当、真っ白な花束がテーブルに並ぶ。なんだか自分までウキウキしてくる。パートナーは一つ一つを見て「わあ、すごいね」と喜んでくれた。お酒をグラスに注いで乾杯し、弁当を味わいながら他愛もない話をした。外食で済ませた方がトータルでは安くついたかもしれないけれど、家でゆっくり過ごすこの時間が何より贅沢に感じられた。

最後はフルーツタルトをホールごとテーブルに置き、2人でフォークを持ってつつき合う。気の利いたプレゼントを渡せればもっと良かったのかもしれないけれど、手の内も財布の中身もこれが限界。毎年、誕生日には「モノ」を渡せていない気がする。でも、パートナーの素敵な笑顔を見ていると、こちらこそ「ご馳走様」と言いたくなるような気持ちになる。こんな風に、特別だけど気取らない時間を一緒に過ごせるのが、何よりの贈り物なのかもしれないな。