「春眠暁を覚えず」という言葉が頭をよぎる今日この頃。春の陽気は心地よいはずなのに、なぜか毎朝、眠気との戦いが続いている。いつもなら在宅勤務で、自宅の慣れた環境でコーヒーを淹れながらゆるゆると一日を始めている私だけど、今日はちょっと事情が違う。なんといっても、今日が現部署での最終日だからだ。普段は同僚たちと直接顔を合わせることがない生活に慣れきっているけれど、最終日くらいは誰かが出社してくるんじゃないかという、淡い期待を胸に抱いていた。朝、目覚ましが鳴った瞬間、「もう少し寝ていたい」という気持ちをぐっと抑えてベッドから這い出し、身支度を整えた。いつもより少しだけ丁寧に髪を整え、「もしかしたら誰かに会えるかも」と自分に言い聞かせながら家を出た。

会社に着いてオフィスに足を踏み入れると、やっぱり静寂が広がっていた。誰もいない。普段なら在宅勤務だから気にならないこの静けさが、今日は妙に寂しく感じられた。デスクに座って周りを見渡すと、いつもならオンラインでチャットが飛び交う同僚たちの姿が脳裏に浮かぶ。でも、今日はその気配すらない。「まあ、そうだよね、在宅が基本だもん」と自分を納得させつつも、心のどこかで「最終日くらい顔を見せてくれる人がいてもいいじゃないか」と、少しだけ拗ねた気持ちが湧いてきた。とはいえ、そんな感傷に浸っている暇もないまま、今日はすることがほとんどない最終日ならではの状況に直面した。結局、自分の身の回りの片付けだけが仕事になった。デスクの引き出しを開けて、溜まったメモや使わなくなったペンを整理し、埃をかぶったマグカップを洗って袋に詰めた。片付けながら、「こんなに物が溜まってたんだ」と苦笑いしつつ、これまでこの部署で過ごした時間が少しずつ思い出されてきた。

片付けを進めていると、ふと時計を見たらお昼過ぎ。誰か来るかなとチラチラ入り口に目をやっていたけれど、やっぱり誰も現れなかった。期待していた分だけ、肩透かしを食らったような気持ちが残った。でも、まあ仕方ない。在宅勤務が当たり前の環境なんだから、最終日だって特別扱いされるわけじゃない。それに、私だって普段は家から出ないんだから、同僚たちを責める資格もないよね、と自分を慰めた。お昼は近くのコンビニで買ったおにぎりをデスクでかじりながら、スマホでニュースを眺めた。すると、株価が大暴落しているという見出しが目に飛び込んできた。「うわ、最終日にまでこんなテンションの下がるニュースかよ」と呟きつつ、投資なんてしてない私には直接関係ないとはいえ、なんだか気分が沈んだ。

午後は、片付けも一段落したので、新しい部署の歓送迎会の時間まで少しだけぼんやり過ごした。明日からは新しい部署での仕事が始まる。その歓送迎会には参加する予定で、夕方、オフィスを出て会場に向かった。会場に着くと、意外と知った顔が多かった。オンラインで何度か顔を合わせたことのある人たちが笑顔で迎えてくれて、新しい環境への不安が少し和らいだ。「なんとかやっていけそうだな」と思えたのは、みんなが気さくに話しかけてくれたおかげだ。料理をつまみながら、新しい部署の仕事の話や雑談に花が咲いた。特に印象に残ったのは、ある先輩が「ここはチームワークが大事だから、困ったらすぐ相談してね」と言ってくれたこと。その言葉に、これから始まる新しい挑戦への期待が膨らんだ一方で、やっぱり不安もつきまとった。

というのも、新しい部署では朝9時からしっかり仕事に取り掛からないといけないらしい。寝坊がちな私にとって、これはかなりの試練だ。今日だって、目覚ましを止めて二度寝しそうになるのを必死で堪えたくらいなのに、明日からは毎朝ちゃんと起きられるのか。歓送迎会の賑わいの中で、隣に座った同僚にその不安を冗談っぽく打ち明けてみた。「私、朝弱いんですけど、9時スタートって大丈夫ですかね?」と笑いながら言うと、「最初はきついけど、慣れるよ。カフェインが友達だよ」と笑顔で返してくれた。その軽いノリに少し救われたけど、心の中では「本当に大丈夫かな」と自問自答が止まらない。春の眠気と戦いながら、新しい環境でちゃんとやっていけるのか、正直自信がない。

家に帰ってソファに座り、今日一日を振り返った。最終日だからって特別なことが起こるわけでもなく、淡々と過ぎていったオフィスでの時間。でも、誰かに会えるかもという期待を抱いていた自分を思うと、少し笑えてきた。在宅勤務が当たり前の今、わざわざ出社する人なんているわけないよね、と今更ながら納得した。片付けを終えたデスクの写真をスマホで見返しながら、「これで一区切りだな」と小さく呟いた。そして、新しい部署での歓送迎会での温かい雰囲気を思い出すと、少しだけ気持ちが前向きになった。新しい仲間たちとどんな仕事をするのか、どんな関係を築けるのか、考えるとワクワクする。でも、その前に立ちはだかる「朝9時問題」が頭から離れない。寝坊癖のある私が、明日からちゃんと起きられるのか。新しい部署での第一歩を踏み出すためには、まずその壁を越えなきゃいけない。

今夜は早めに寝て、明日に備えよう。目覚ましをいつもより大きめの音に設定して、枕元に置いた。春の眠気に負けず、朝イチから仕事に取り掛かれる自分になるために、気合いを入れ直した。最終日を終えた今、これからが新しいスタートだ。頑張るぞ、と自分に言い聞かせて、今日の日記を締めくくった。明日からの新しい挑戦、なんとか乗り切ってみせる!