現在から未来へのプロセス | 団野村オフィシャルブログ「ブログメント」Powered by Ameba

現在から未来へのプロセス

私が代理人の仕事を始めて20年。
プロ選手と同時にアマチュア選手の代理も積極的に試みてきましたが、
残念ながら日本ではまだアマチュア選手の代理にはあまり成功していません。

アマチュア選手、特に高校生に接触をする際、
高校の野球部の監督、コーチ、そして両親にまず挨拶に行きます。
そしてそこでは、親御さんに会いに行くと「高校の監督に全てを任せている」と言われ、
監督には「両親と話をしてください」と言われるのがほとんどです。

しかし、散々悔しい思いはさせられてきましたが、
それでも家族にとっては契約のお世話をする人間が必要だと思い、
アマチュア選手への接触を続けています。
それは、良い契約を結び高額の契約金や年俸を手に入れる事だけが目的ではなく、
他にも考慮されるべき問題が多々あるからです。


プロ入りする選手の親御さんは一様に「息子がお世話になります」という表現をしますが、
球団はお世話をする為に選手をドラフトして契約するのではありません。
ドラフトした選手が活躍し、球団が勝ち、
球団の収益や親会社の名前が売れ利益が生まれる事が最終的な目的なのです。
言葉は悪いですが、選手は球団の親会社が利益を得るための「駒」にすぎません。

しかし、多くの選手は、実際にプロになるまで自分たちが置かれる立場に気づきません。
例えば、選手が9年の長きに渡って一軍でプレーしFA権を取得するまで、
球団は選手の権利を保留し続けます。
更に言えば、日本のルールではFA権の取得が必ずしも自由の身を意味するわけではなく、
Aランク、Bランクに属する選手が移籍をする場合には、移籍元の球団に大きな補償がされなければなりません。

ひとたびプロになった選手の多くは自らの年俸を交渉する術を持たず、
自分自身の評価や扱いなどに対する不満を蓄積して行きます。
プロ球団と契約をするという事は、全ての権利を球団に預け、
球団の完全なる管理下に置かれるという事を意味するのですが、
多くの選手はそれを理解していません。
プロ球団にドラフトされ、契約を結んでプロ野球選手となり、
選手は喜び親御さんも誇りに思うでしょう。
しかし、野球のビジネスの側面を全く理解できていません。

私自身の言い分をわかってくれる人はあまりいませんが、プロ野球はビジネスなのです。
代理人を我が子につける事によって球団を変に刺激し、
我が子が冷遇されるのではないか心配する親御さんが多いですが、
反対に球団の言いなりになる事によって失うものの大きさも理解しなければなりません。


プロ野球選手は誰しもプロになった瞬間というものを覚えているはずです。
全ての野球選手が一軍で活躍し、スターになる事を夢見てプロになります。
しかし、ある程度の成功を収めても、
多くの選手は同じ球団に留まり、球団の言い値で契約をするしかありません。
選手が自身の権利を主張し「球団vs選手」の構図が生まれると、
待ってましたとばかりにメディアがその選手を叩きます。
更に、球団もメディアの扱いを心得ており、
メディアを味方につけて選手を悪者にすると同時に自らのイメージを保ちます。


代理人というのは、一過性で金儲けをするブローカーではありません。
契約をまとめた後も常に選手の立場に立ち、
選手の利益の為に動き、選手を守り、
選手が最良の意思決定をできる為にアドバイスをして行くのが代理人です。


これからプロになろうという高校や大学の選手を代理するのは、
球団の誤った扱いや、ルールから選手を守るためです。
日本プロ野球協約には選手にとって不利な条項が多々存在します。
その下で球団と対峙しなければならない選手には、背後で守ってくれる誰かが必要なのです。
その為に選手会が存在しますが、全ての選手に目が行き届くわけではありません。


残念ながら、日本ではまだ代理人を金に飢えた強欲なハゲワシのように見る風潮があります。
しかし、いつの日か選手の親御さんがプロ野球は高校や大学の延長ではなく、
ビジネスの世界だという事を理解し、私たち代理人を受け入れてくれる事を願っています。