外では風が唸り声を上げ、時にすすり泣いて窓ガラスを殴りつけていく。


だからなんとなく思い出したタイトル。


村上春樹のデビュー作。


実家に戻れば本棚の奥に押しやられて、何時も指で抑えていた場所を黄色く変えて湿気っているかもしれない。

そう、初めて読んでからもう23年経つ。


固有名詞と数量の引用と細かな描写がひしめきながら、個人の名前は出てこない、何処か記号化され、輪郭ばかりがくっきりとした、けれど中身は何処か不定形で不安定な、

優しいようで強い体温を持たない、無陰灯でものを見るようなどこか遠近感が欠落したような感触。


一時の無風地帯の中の、僕と鼠と小指の無い彼女。


長く読み返していない。だからそんな「印象」だけが思い返される。

風の歌を聴け (講談社文庫)/村上 春樹
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