014「西部劇の世界!ウェスタンガール編」
「ウェスタンビッグタウン」


……ここには何もない荒野。
果てしなくどこまでも続いている。
そこに一人して、勇敢に立ち向かおうとする一人がいた。
一人でどんな困難も乗り越えてきたというのだ。
荒野に佇む一人は、決して、諦めることを知らない。
闇夜に照らされ、果てしなくつづく荒野を一人して彷徨う。


その一人は一体、どこを目指して歩いているのだろうか。
それを知る人は誰もいない。ただただ、広大な荒野を
目的もなく歩み続けるだけだそうだ……

しかし、街の人たちは一人を英雄としてみているのだ。
ただただ彷徨い続けるだけだと思われがちだが、そうでもない。
目的もない彼には使命が…与えられているというのだ。


そこで…この荒野にはまだ見ぬ冒険と不思議があるのではないのだろうか。



シンシア:
……土煙がすごい。
今日も一段と砂埃が待っているね。
砂嵐が荒れる日は、下手して外は出てはいけないね。
それにたまりにたまったゴミだってすごいもの。
どうしたらいいんだろう。廃棄するにしても
増え続けるんだわ。


街の人:
おや、シンシアちゃん。
今日は砂嵐がすごい日だよ。今朝だって
あまり外に出るなと言われていたよね。
シンシアちゃんはなにもみてないの?

シンシア:
外をみたら分かるよ。でもたまりに
たまったゴミをなんとかしたいんだよね。
ほら、最近話題になったよね。ラクダが飢えているのかして
やたらゴミを食い漁るような異常な行動。


街の人:
ラクダが?そんなの見たことないよ。
ラクダが市街地のゴミを食い漁るだなんて。
誰かのウソ話じゃないんか?


シンシア:
うそじゃないよ。それで病気になったんだよ。
だからゴミを廃棄することに注力を入れているんだ。
私のところはかなりの量のゴミがたまるんだよね。
だから捨てきれる量じゃないほどなんだよ!

街の人:
そんなにゴミがたまるの?シンシアちゃんの
お店は小さな商店だよね。物珍しいものが
いっぱい置いてあるから、ゴミなんて貯めこむ
ことなんてないんじゃないのかな。


シンシア:
たしかに小さな商店だけど、思いもよらないほどの
ゴミがたまっちゃうんだよね。それで困っているの。
それに今日は砂埃がえぐいし、下手に歩けないよね。


街の人:
そうそれ。これ以上先はマジで近づかないほうがいいよ。
砂嵐の中に入ったら、帰ってこれなくなる。
だから街の子供たちは外に出ないようにしてある。
今日の天候はいつもより、異常なんだ。



シンシア:
確かに異常だね。遠くの景色さえ見えなくなるほどだよ。
でもこんな荒れている中で逞しく生きるラクダがいるよね。
ちょっとだけ関心しちゃうよ。

街の人:
そうだね。ラクダは案外、砂煙とかに強いのかも。
でもラクダがゴミを食べるくらいだ。だから
なにかあるんだろうね。私達は怖い目に
遭いたくないから、好奇心があっても調べようとしないよ。


シンシア:
そうだね。変なことに巻き込まれるかもしれないし。
それに私も……そういうのはちょっと怖いかな。
でもラクダさんがゴミを食べるなんて……。
今までゴミを食べるなんてことはなかった。
これはラクダが食べる餌となるものが不足しているのが
原因なのでは?


街の人:
そうなんだよね。ラクダさんは苦しい思いをしているだろう。
街の人たちも病気にかかって、ラクダさんが危ないって感じに
なっちゃってる。それに砂嵐も不穏のものだ。
この土地は天候が荒れやすいと言われていたが、その域は
異常を介しただろう。


シンシア:
そうだね。荒れやすい土地であるね…。
それにしてもなんだか今日は外も暗くないかな?
こんなに暗かったっけ?それに何かが起きそうな雰囲気もありそう…

シンシア:
あ、そうだ…。そろそろ店を閉めないと。
今日は遅くまで開けっ放しにはできない……。


街の人:
あらら、シンシアちゃんも忙しいね。
でも賢明な判断だと思う。天候も天候だし、
このまま作業とかしていたら、危なっかしいかも
しれない。嫌な胸騒ぎがしなければいいけれど。


シンシア:
そうだね……。


シンシア:
……今日はムリしないほうがいいかも。
無理をしちゃ、何か変なことに巻き込まれてしまうかもしれないし。
それに……街の人たちは…この異常な天候に首をかしげている。
普段からすごい砂煙は立つけど、今日みたいなもんじゃないよね。

街の人:
そうだね。むしろ町全体に砂煙が侵入してきたら、避難も考えた方がいい。
堤防もあるし、もし逃げきれないと思ったらそこへ避難しよう。
こういうのは油断してはならないからね。


シンシア:
そうだね…。私も危なくなったらすぐさま避難するよ!
わざわざ心配してくれてありがとう。
それに…すっかり常連さんだよね。よくみる顔なんだし~



街の人:
ふふっ、バレちゃいましたか。
でもシンシアちゃんのお店はけっこういいし、デザインも俊逸。
だから廃れずにやっていけるわけだよ。
もしもこの街からシンシアちゃんのお店がなくなったら
みんな悲しむと思うし。


シンシア:
ありがとう。そういわれたらますます頑張らなくちゃ…。
それじゃあ、気を付けてね。


街の人:
うん。シンシアちゃんもね!



シンシア:
……さてと、今日はもうゆっくりしようかな。
うん?あんなところに落とし物?さっきの人のものかな?
落とし物だったら、保安協会にも届けなくちゃ


シンシア:
でも念のため、確認しておいたほうがいいかな。
そうだよね。私、不思議なものを見つけたら、
確認したくなっちゃうんだもん。


えっ……待ってちょうだい……





シンシア:
これ…ただの落とし物なんかじゃない……




やみっち:
あははは……楽しいわね~。
まるでジェットコースターに乗っているかのようだわ。
それに荒野を眺めながら、蒸気機関車に乗れるなんてね!
私、昔から蒸気機関車に乗ってみたかったんだよね!


ウインディ:
そうだったんですか。闇市さんは乗り物酔いとかあります?
私はそこまで乗り物酔いとかしませんけど……

やみっち:
乗り物酔いかあ…。う~ん、しないなあ。
あんまり乗り物とか乗らないからね。
でもウインディちゃんとデートできるなら
してみたいかもなあ。


ウインディ:
えっ~?デートですか。
今もこうしているではありませんか。
それに闇市さんと一緒にいつもいるような。

やみっち:
えへへ、それが当たり前なんだよ~。ウインディちゃん!
今だってデートしているのは当然だし。
こうして心洗われる時間を過ごしているじゃない。


ウインディ:
…街で、ラジエートさんと落ち合いましょうという話でしたね。
それに駅弁おいしかったですね。あのてんぷら!
口にしただけで、とろ~りと油が入ってきましたよ~。
もうあれには抗えないくらい…うっう~~~!



やみっち:
う、ウインディちゃん……。
たしかに駅弁おいしかったわね。
私もお腹いっぱい食べれたわ。

ウインディ:
闇市さんって、ナスがあんまりだと言っていましたよね?
ナスが入っていましたけど、食べたんでしょうか?

やみっち:
うん。食べたよ。
最近は好き嫌いなんかしてないわ。
なんでも食べれるようにしたいんだから。
それに美味しそうに食べるウインディちゃんを見てたら
私も食欲がわいてきちゃったから……


ウインディ:
ええっ~~?私の食べっぷりですか?
そんなんで食欲が沸くだなんて、ちょっとおかしいような……。
でも闇市さんも美味しそうに食べるじゃないですか。
私、知っているんですよ。



やみっち:
えっ?ウインディちゃんもみていたの?
……なんだか恥ずかしいわよ~~

やみっち:
あっ、そうだ…ねえ、ウインディちゃん。
次行く場所である「ウェスタンビッグタウン」は
かの有名な映画のロケ地の撮影場所になった場所なの。
マニアなら憧れて当然らしいわ。それにねアニメ好きなら
ニヤニヤできちゃうようなイースターエッグなんかも
隠されているらしいわね。私、それを知って
驚いちゃったわ。



ウインディ:
へえっ~。そうなんですね。
それは期待したいですね。映画のロケ地とも
なっているのなら…さぞすごいものが見れるでしょう!


やみっち:
でも以前はレースなんかしたっけな?
今回もなにかしらの事件に巻き込まれそうな予感がするわ。
私の変なレーダーがそれを感知しない限りは……

ウインディ:
闇市さんのレーダー?嫌なものを感知しているのですか?
それだったらこの段階ですでに嫌なものを
キャッチしてしまうんじゃないでしょうか……

やみっち:
そんな幸先を不穏に的中させちゃうわけ?!
そんなのは嫌よ。ウインディちゃん。
とにかくそんなことは頭から消して、楽しみましょう。
観光を!

ウインディ:
そうですね。
じゃあ、映画のロケともなった場所に
いきましょう。どんな映画なのか詳細がわかりませんが、
きっとすごい映画だったんでしょう。
闇市さん、こういうのは聖地巡礼というのですよ!


やみっち:
聖地巡礼?



ウインディ:
はい。その場所がモデルになったところに
いくことをそう言うみたいですよ。
私もグルメっとで有名となる場所には
一度でもいいから行ってみたいと思っているんです。
そういうところにいけばすごい素敵な思い出を残せそうですから!



やみっち:
そうなんだ。というかウインディちゃん。めっちゃ嬉しそうじゃん。
さっきの駅弁食べているときもそうだけど、なんだかいつに増して
元気そうで、私、嬉しいかも


ウインディ:
闇市さんったら……そんなこと言われちゃあ照れるじゃないですか。


やみっち:
えへへ、照れているウインディちゃん。かわいいね!


ウインディ:
あ、あそこにキャラクターの?ポップがありますね?
西部劇らしいデザインがなんとも本場というか。
まんまこの荒野がロケ地に適しているのが分かりやすいほどですよ


やみっち:
確かに。私達が乗った蒸気機関車もそうだけど、
まるで映画の中にいるかのようにどれもすごいものだわ。
こんなところに映画の撮影が行われて、それがすごいものと
なるんだわ。映画に出たことがないからわかんない
感覚なのかもしれないけど、実物を見るのって、なんか感激するわね

ウインディ:
ですね。
私のようなマニアックなものに興味を惹いていくのであれば
それはそれはたまらないものだったりしますよ。
闇市さんもこの際ですし、気に入ってもらえたらと思います!


やみっち:
…ウインディちゃんがそこまで言うのなら…。
検討してみるわね。


ウインディ:
闇市さん、みてください。
この先でガンマンを体験できるコーナーがあるようです。
ガンマンになりきってピストルを撃つ!あの
ガンマン対決ができるようですよ!

やみっち:
えっ?ガンマン対決?…それは体験してみたいわね。


ウインディ:
じゃあ、やってみましょうか



ミニゲーム:
「荒野のガンマンバトル!」


ルールは簡単!お互い銃を打ち合うのだ!
多くのダメージを与えた人が勝利となる!
やってみよう!


ウインディちゃん:
わあ、まるで本物ですう!
それに私、人生で初めてピストルを構えたかも!
これは今後なさそうな貴重な体験になります。
闇市さん、このバトル、私が勝たせてもらいますね。


やみっち:
ウインディちゃんが相手だなんて。
でも勝負事にはうるさいわよ。
ウインディちゃんを倒して、認めてもらうんだから。
この荒野で強いのはこの私よ!!


ウインディ:
それじゃあ、遠慮なく連射しますよ!!
そりゃああ!!!!!!



(連射する音が鳴る)



やみっち:
あわわ、弾が飛んできたわ。
こっちの書割に隠れよう。
ふう、あんなの喰らったら大ダメージじゃない。
……どこからウインディちゃんを狙おうかしら。


ウインディ:
闇市さんーーー!!どこに隠れたんですか。
これは勝負ですよ~~~。
隠れるなんていう戦術じゃあ、意味がありませんよおお~~~


やみっち:
へへへ、甘いわね。
隠れて攻撃の隙を伺うという戦術だわ。
ウインディちゃん、このバトルで勝つのは
私なんだから。


ウインディ:
こうなったら、連射しまくりますよーーー!!!
どれか一つ当たることでしょう。狙撃だああーーー!!!!



やみっち:
だから、ウインディちゃんったら。
ゴリ押しても意味がないんだってば…
この書割はめちゃくちゃ固いんだから。


(連射する音)


ウインディ:
ぅぅ~~~!!!闇市さんの戦法が強すぎます~~~!!!
どうしたら、闇市さんに当てられるんでしょうか。
なにかいい方法を探さなくちゃ。



やみっち:
探してる探してる。無駄だよ、ウインディちゃん。
ウインディちゃんはそのまま無駄に銃を撃ち続ければいいのだから!


ウインディ:
こうなったら、連射ですよーーーーー!!!
うりゃああああああああああぁぁぁーーーーー!!!!


やみっち:
!?!?!?
ちょ、ちょっとそんなのは聞いてないわよ~~~~!!!!


ウインディ:
当たれ当たれ当たれぇぇぇーーーーーー!!!!!



やみっち:
ぐやああああああああああぁぁーーーーーー!!!!!!!




(ファンファーレが鳴る)



やみっち:
うそ……負けちゃった。
あの戦法、最強だと思ってたのにぃぃぃい



ウインディ:
わーい!勝ちましたよ~~~~!!!!


やみっち:
ウインディちゃんに負けたぁぁぁ!!!
あああ!!くやしい!!!


ウインディ:
闇市さん、またがんばってください。
あのような戦法であっても、隙さえ伺えば
狙えるんですよ~!

やみっち:
そうだったのね…。
あーん、それでもウインディちゃんは強いんだもん!!
罰として私とデートしなさい!


ウインディ:
ええっ!?





???:
すごい!すごい!
キミたち!すごい!感動しちゃったぁ!


ウインディ:
えっ?



???:
まさかあそこまで白熱するガンマンバトルをやるなんて!
思わず見とれていたよ!あ~~、私もうずうずしたんだ。
ガンマンバトルは熱血的に暑いってことを!
今や社会はガンマンのジョブなんだよ!!

これえは、これえは、ビジネスチャンス待ったなし!!


やみっち:
いうほど白熱なんかしたかしら。
ただただゲームセンター感覚で遊んだだけだと思うな。


ウインディ:
いえいえ、十分に白熱していましたよ。
私たちは観光というか…遠くから来たものなのですが、
なにかご興味がありますでしょうか。



???:
興味がないってわけじゃないよ。
ありまくりだよ!ねえ、ここが映画のロケ地って
知って来たんでしょ。たしかに「ウェスタンビッグタウン」は
有名な街だけど、そこに広がる荒野もこれまたロマンある場所なんだ。
私もこの街に昔から住んでいるけど、ガンマンブームが絶えない絶えない!


ウインディ:
そんなにガンマンブームがあったんですか。
まあ、西部劇って感じがしますもんね。
じゃあ、さっきのガンマンバトルは
やって損がなかったですね。私も人生で
初めてピストルやらをこの手で握りしめたし。

やみっち:
もーちょい作戦さえ計画的に練れば
ウインディちゃんを倒せたのに。
でもウインディちゃんは可愛いから許すわ


ピアリー:
私はピアリーというんだけど、この街に住んでいるこれと
言った特徴なんてないんだけど、こうして
「ウェスタンビッグタウン」にやってきた人たちを歓迎しているの。
この街の人たちは穏やかな人が多いよ。
まあ、イメージしているような物騒な街じゃないからね。


やみっち:
そうね、そんなアンダーグラウンドな場所は求めてないわ。
常にピストルで狙われるかをハラハラしなくちゃいけないんて
たまったもんじゃないわよ。


ウインディ:
蜂の巣なんかにされたらたまらないですよね…。
それでピアリーさんはいわばこの街で案内するのが
好きなんですね。
まさか私たちのガンマンバトルを拝見されていたとは。


やみっち:
私の無残な敗北をその眼でみていたのね。
笑えば笑いなさい!!


ピアリー:
うう。ごめんなさい。
でも私の性格的に天然で、どうしても
誰かさんが楽しいことをしていると
つい見入っちゃうんだ。だから
キミたちのガンマンバトルは手に汗を握るバトルだったよ。


ピアリー:
そうだ。よかったらウチにこないかな。
うちは喫茶店をやっているんだ。
それにこの街を案内する前に一休みしたらいいと思うよ。

やみっち:
あら、喫茶店やっているのね。ちょうど喉が渇いていたわ。
あんだけ白熱したんだもん。私も休憩したいわ。



ピアリー:
じゃあ、ついてきてよ。
それに面白いものを見せてくれたお礼に
あとでポニーに乗せてあげるよ!


やみっち:
ポニー?


ウインディ:
ポニーっていうのは馬さんのことですよね。
もしかして馬さんに乗せてもらえるんですか?
馬さんに騎乗して、カウボーイをするなんて
これまた叶わぬ夢だと思いましたが。


やみっち:
そうなの?



ウインディ:
ええ、いつか乗ってみたいなと
思いに馳せていたことはあるんですが、なかなか乗る機会は得ず。
なので騎乗できるだなんてとても夢みたいですよ。


やみっち:
そうなんだ。私も馬に騎乗するなんて初めてだわ。
だいたいどんな感じなのかしら。
そもそも動物に騎乗するなんてことはあんまりないし



ピアリー:
そうなんだ。じゃあ、二人とも馬に乗ってみようよ。
馬に乗って、荒野をかけることができるんだ。
あっ……でも待って。馬に乗るのはいいんだけど、
ポニーの機嫌をとらなくちゃならないよ。
ポニーは不機嫌だったりするから、下手に
騎乗すれば吹き飛ばされる恐れもある。
だからここは入念に準備もしなくちゃ。



ウインディ:
へぇ~、そうなんですね。

ピアリー:
とまあ、それはお店で話をしようか。




ウインディ:
ここが…ピアリーさんのお店ですか?
ずいぶんとおしゃれじゃないですか。凝ったデザイン。
それにまるでキャラクターのようなサボテン。
これはピアリーさんの趣味なんですか?


ピアリー:
いえ、私の趣味というか叔母の趣味なんです。
昔から植物が好きで、いろいろな観葉植物を
集めているんですけど、サボテンがお気に入りで。
それでサボテンにアレンジを加えたのがこれなんです


やみっち:
あら、まるで女の子みたいでリボンが
ついているじゃない。かわいい。
叔母さんはとてもいい趣味をしているのね。



ピアリー:
いい趣味?そんなとてもいい趣味なんて見えません。
たしかにかわいいですが、これが叔母の趣味なんですが。
それにお客さんの中にもあんまりこういうのを
飾っていると嫌がられてしまうこともあるんです。


やみっち:
えっ?そうなの?
全然、いい装飾だと私は思うわよ。
むしろ私もお店にこういうの置いたりするし。
それにサボテンは見栄えがいいものだと思うわよ。
この荒野な街にとってもマッチしているし



ピアリー:
えっ…その、ありがとうございます。
まさかそんなにプラスな評価をもらうのって
久しぶりです…



やみっち:
えっ?そうなの?
私はお花も好きだし、そういうのをみると
かわいいなと思えるのよ。普通に評価している
感じだけど、私以外になにかあったの?

ピアリー:
この喫茶店は評判はいいのはいいのだけど、
こういう観葉植物を見て、不快に思われて
しまうことがあるんです。叔母も昔から
こういうのが好きだし、私もこれに否定しているわけじゃないの。
でもお客さんからすれば心を落ち着かせる空間に
それがあると、どうしてもゆったりできないというか


ピアリー:
でもそれが完全に悩みの種ってわけじゃないんですよね。
お客さん次第だし。それに叔母の趣味だから
私もそれを受け入れているんです。
あっ、この話は私のことなので、あんまりお気になさらず。


やみっち:
そうなのね。でもかわいいわ。
見ていて癒される。なんて素敵なカフェなの

ウインディ:
闇市さんってこういうのメロメロなんですね。
私も植物好きです。入院生活をしていたときは
中庭でよく花壇を眺めていたものです。


やみっち:
そうなんだ。
おしゃれなカフェにおしゃれなお花はとても似合いわよ。
ピアリーの叔母さんの趣味、やっぱりいいと思うのだけど
そんなに理解されにくいものなのかしら?


ピアリー:
理解してくれないんですよね。
コーヒーとかは美味しいって全然言ってくれるんですけど。
この店の装飾に関しては私がいじれば叔母も気にするので
変な手は加えれません。残念ながら

やみっち:
そうなのね…。
それにしても美味しいわね。
毎朝こんな感じのコーヒーが飲めたら
さぞ美味しいだろうと思うな。
私は案外優雅な朝を迎えたことすらないわ。
羨ましいことやら


ウインディ:
でも闇市さんは最近朝食にも
こだわりを持つようになりましたね。
今まではお肉をメインにしていたのに、
最近は野菜まで摂るようになって


ピアリー:
へえ、おいしそうな朝食ですね。
むしろそれでも優雅だと思いますよ。
私のところは見た目はおしゃれですけど、
賛否両論なところが色々とありますし

やみっち:
いやいやそんな。
それはそうとポニーに乗せてもらえるのよね?
馬に乗るなんてもうこの先の人生、ないかと
思っていたわ



ウインディ:
そうですね。お馬さんにまたがることが
できるなんて今とないチャンスという体験ですよ。
おいしい珈琲をいただいたことですし、さっそく
ポニーの乗馬を体験してみたいです~



ピアリー:
アハハ、二人ともそんなに乗りたいんですね。
わかりました。ただし、乗る前にあることを
しなくちゃならないです。


やみっち:
あること?それはなにかしら。

ピアリー:
馬が食べている"ほし草"を与えないといけないんですけど
そのほし草がなくなっているんです。
それを用意するためにはいちいち、取りに行かないと
ならないんですよ


ウインディ:
ほし草…ですか。
馬さんの餌が枯渇しているんですね。
それでその干し草はどこで手に入るんですか?
よかったら私達も協力したいなあと思います。


ピアリー:
干し草は荒野にあったりするんです。
でも広大な荒野から探し当てるのはむずかしいです。
荒野には……いや今は……



ウインディ:
へっ?ピアリーさん……?



やみっち:
すぐには乗れないのね。
じゃあそのほし草を探しましょう。
たしかに荒野は広いと思うけれど、
くまなく探せばきっと見つかることでしょう!


ウインディ:
そうですね。
それでその荒野というのは「ウェスタンビッグタウン」の
どこかにあるんですかね?


ピアリー:
この街の北西に荒野が広がっているんです。
ポニーで走っていけば、遠くまでいけますが、
それは延々と続く荒野地帯。
足が棒になっちゃうくらい長距離を移動しなくては
なりません。



やみっち:
それは大変ね……


ウインディ:
がんばって歩いていくしかありません……。
ポニーさんに乗れれば快適かもしれませんが、
まずはほし草を探すしかありませんよ~。


ピアリー:
あ、でもただ歩いていくのはあれだから。
車で移動しましょう。私、運転できるので


やみっち:
あ、それなら長距離移動も短縮するわね!
それじゃあ、ピアリー。車移動お願い!




014「西部劇の世界!ウェスタンガール編」パート2


ウインディ:
わあ、すごい荒野ですね。
サボテンがあっちこち。まるで
西部劇のワンシーン、私たちで体験しているみたいです!

やみっち:
そうね。こんな荒野をポニーで
駆けまわれるのもなんだかロマンがあるわね。
それでピアリー、この荒野のどこかに
ほし草があるんでしょ?
ここからしらみつぶしに探すと見つかるのかしら。


ピアリー:
ここから先にある大きな岩があるところに行くんですが
そこは、ほし草がよく見つかるスポットとなっているんです。
街の人たちは馬の餌を求めて、そこへ採りに行くんですよ



やみっち:
なるほどね……。
でも殺風景な感じなのに、夕日が見えて
すごくロマンあるわ。
今もこうして横でウインディちゃんに……えっ…


やみっち:
(???
なにかしら。遠くですごい砂煙が立ち込めている?
荒野に生息している動物が、砂を掘ってるかしら……。
でもでも、動物には見えないような……。なにあれ……)

ウインディ:
闇市さん?どうしました?
なにか…見えたんですか?


やみっち:
えっ、いや、その遠くの景色を見ていたわ。
こういう荒野のような地平線がみえないような
ところにいると不思議と遠くをみつめているかもしれないわ

ウインディ:
そうですか。いいですよね~~。
私なんか西部劇さながらの雰囲気で過ごしていますよ~。
ほら、あの大きな大きな岩肌。ああいうのが荒野らしいていうか。
あの岩肌だって、映画の撮影に使われそうですよね



やみっち:
そうね。ていうかこの荒野一帯が映画の撮影セットに
セッティングしていそうな感じだわ。
でもサバンナや砂漠ってほどじゃないけど、荒野も
これまた変わったものがあるわね~


やみっち:
(さっきみたのは本当に動物だったのかしら。
まあ、荒野って言っても私たちが世間的にイメージ
しているようなものでもない気がするわ。
でもあの砂煙、大きな動物が掘っていたのは間違いない。
見間違えでも幻覚でもなんでもないわ)


ウインディ:
……闇市さん?


ピアリー:
さあ、ほし草を回収しましょう。
ここではたくさんのほし草が採れるんです。
それに今日は砂嵐があまりないので、ほし草も
たくさんみられますね。流石に全部は採れないで
ある程度搔き集めて採るといいでしょう


ウインディ:
わあ、たくさんありますね。
それじゃあ闇市さん、どちらかが
早くたくさん集められるか競い合いましょうよ。


やみっち:
えっ?ここでも競うの?


ウインディ:
もたもたしていると私が全部回収しちゃいますよ~~!!


やみっち:
あ、待ってよ~~ウインディちゃん。
さっきのガンマンバトルは負けてしまったけど、
次は私が勝つわよ!



ウインディ:
それそれそれ、いっぱい採っちゃいますよ~~~!!!


ピアリー:
楽しそうですね。これはあのとき
話しかけて正解でした。


~数分後~


ウインディ:
はあはあ、まるでいちご狩りをしているかのようでした。
これだけのほし草が採れました。収穫した感じが
これまたたまらないですね~

やみっち:
これだけあれば困らないわね。
それにしてもあんだけあったのにまだほし草があるのね。
一年分のほし草がありそうだわ。



ピアリー:
二人ともすごい!
これだけあれば一か月はポニーの餌に
困らないです!今日は普段よりも
ほし草を収穫できたね。

それじゃあ戻りましょうか。


ピアリー:
(よかったー。今日は何も起きなかった。
でもこの荒野には……恐れられている"何か"が
潜んでいるんだよね。叔母は昔、あの生物に
追い掛け回されたと言ってたし。)


やみっち:
(…………。なんだろう。
さっき見たのをまだ気にしているのかしら。
あれがただの野生動物なのか、どうかすら
確認すらできていないのに)


やみっち:
(なんだろう。やっぱりさ、この胸騒ぎ。
うそじゃないのかもしれないわ。)




ウインディ:
すっかり暗くなってきましたね。
夕日なんてあっという間な感じがしました。
そろそろ街へ戻りましょうか。



ピアリー:
そうだね。これだけほし草が採れるなんて
思ってなかったですよ。普段はあんまり
採れなかったんだけど、今日は
恐ろしいくらい採れましたね。


ウインディ:
運がよかったのかもしれません!


ピアリー:
よかったら私のおうちで泊っていきませんか?
宿はあるんですけどどこも高くて。
それに私のところは泊まるスペースも
たくさんあるので!


ウインディ:
それなら…!泊まらせてもらいます!
それに私お腹がぺこぺこです~。
お馬さんがほし草を食べると
考えると、私たちも食べるものを
探さなくちゃってなりますよ~~。


やみっち:
ウインディちゃんったら……


やみっち:
(このまま気にしないでおこうかしら。
本当だったら気になりすぎて、夜眠れるかどうか…)





ウインディ:
ふはあ…昨日は眠れない夜になってしまいましたね。
まさか荒野を翔けるポニーの激しい展開。
あれをみて、益々ポニーに乗ってみたいと思いました。
今日、ポニーに乗馬できるのですね!



やみっち:
ウインディちゃんの深夜テンション、あんななのね。
私びっくりしちゃったわ。それにまたカードゲームで
ウインディちゃんに負けちゃった。どうあがいても
ウインディちゃんに負けるのかな~~


ウインディ:
えへへ、私はゲームに強いですからね!
それにしても闇市さん、もしかして遅くまで
起きていたんじゃないですか?ものすごく
眠たそうな顔してますよ。


やみっち:
ぎくっ……
全然眠れなかったのよ。
疲れているはずなのに。
こういうのでなかなか眠れないことも
あるみたいなんだわ。


ウインディ:
闇市さん、夜更かしはだめですよ。
体に悪いんですから!


やみっち:
そうね。ウインディちゃん、
気にしてくれてありがとう。

ピアリー:
あ、二人とも。おはようございます。
朝から元気だね。それもそうか。
今日はポニーに乗るっていってましたもんね。


ウインディ:
はい。それでお馬さんには
ほし草を食べさせたんですか?


ピアリー:
もちろん、食べさせましたよ。
ほし草を食べればポニーも元気に
大地を走り回れます。
それに誰かを乗せたそうにしてました。


ウインディ:
えっ。それってもしかして私たちのことでしょうか?
それだったら…さっそく乗ってみなくちゃなりません。
……けど、私は人生で初めてですよ。乗馬なんて

やみっち:
同じく私も



ピアリー:
とてもいい経験になるんじゃないでしょうか。
ポニーに乗ってみるととっても気持ちいですよ。
干し草を貪り食べていたからめちゃくちゃ元気があるみたい。
今日は昨日いったあの荒野をポニーに乗って
移動してみましょうか

ウインディ:
いいですね!馬に乗って荒野を
駆けるなどまさにロデオ気分ですよ!!
闇市さん、ぜひとも馬さんに乗りましょう!


やみっち:
あはは、ウインディちゃん。テンション高いわね。
それで荒野にいってなにをするのかしら?
干し草は昨日潤沢に採ったわよね。
それ以外になにか必要だったりするのかしら。


ピアリー:
そう。その話をしようと思ってたんです。
この街よりもっと遠くに市場があるんです。
ですがその市場にいくためにあの広大な荒野を
通らなくてはなりません。昨日乗せた車でもいける
距離ですし、ポニーに乗っていくこともできます。

ウインディ:
徒歩でいくとなるとかなりの長距離ってわけですか。
それだったら尚更お馬さんに乗ってみるのが良さげですね。


やみっち:
あー!早く乗りたいわ。お馬さんはどこにいるのかしら。

ピアリー:
ここにいますよ。
この子たちは普段大人しいけど、人懐っこい子で、
元気なときは乗馬させたがるんです。
ですからお二人には大変歓迎していると思います!


やみっち:
わー、かわいい!早く乗せてあげたいわ。
今から乗るわね!一緒に荒野を駆け抜けましょう!



ピアリー:
それじゃあウインディさん。
私たちも続きましょうか。



やみっち:
わあ、とっても広いわ。
ポニーに乗っていて心地がいいわ。
にひひ、ウインディちゃんが私よりも後ろ。
今だったらウインディちゃんに勝てそうだわ!



ウインディ:
闇市さんったら……。別に競い合っているわけでもないのに
なんだかまた勝負しているみたいです。
それにしても風が心地よいものです。お馬さんも
ちゃんと私たちのペースに合わせて走っていますね。
乱暴に走るというよりか、速度が穏やかな感じです


やみっち:
あら、なんだか町が見えてきたわ。あのまま
いけば街まですぐだわ!
ウインディちゃん、残念だけど一位は私が勝ち取るわね!


やみっち:
(…こんだけ広いと普通にレース場に出来てしまいそうね。
でも馬さんに乗っていると本当に西部劇のワンシーンを
みている…というか体験しているみたいだわ。
気分がいいわね~~~。)

ピアリー:
ウインディさん、闇市さん。
ちょっと待ってください。二人にお知らせしなくては
ならないことがありました。


ウインディ:
えっ?お知らせ?何のでしょうか?


ピアリー:
「砂嵐警報」が出たみたいなんです。
この一帯は不定期に砂嵐が起きることがあり、
晴天が晴れ渡った今日のような天気の日によく発生するんです。


やみっち:
砂嵐?全然砂嵐が起きるような感じがしないけど。
でもポニーではさすがに突っ込むことはできないわよね。
そんな砂嵐の中なんて……


ウインディ:
じゃあ、どうするんでしょうか?
さすがの私の魔法でもそんな砂嵐に太刀打ちすることなんて
容易にできませんよ。



ピアリー:
だから…なるべく早く移動しようと思います。
なので私が行く、ルートについてきてください。
私が通るルートでしたら、とても安全ですから。


やみっち:
そうね。私達も砂嵐に巻き込まれたら、大変なことになるわ。
ウインディちゃん、ピアリーについていきましょう!




ウインディ:
はい!




やみっち:
もう少しで隣町だわ……でも言っていた通り
すごい砂煙が待っているわね。
さっきまでは普通の高野道かと思っていたけど
案外場所が変わると荒れていく感じなのね。
この状態でポニーは大丈夫なのかしら?ちょっと不安だわ


ウインディ:
すごい砂煙が待ってます。これって、大丈夫なのでしょうか?
竜巻みたいなのになったら吹き飛ばされてしまうような…。
それもお馬さん事。


ピアリー:
目と鼻の先に隣町が見えてます。
ここは運を願うしかないです……。
この辺の天候はどうしても予測できないですからね。



ウインディ:
そうなんですね。
お馬さん、がんばって突っ切りましょうか!!


やみっち:
わわっ、めちゃくちゃ砂煙が強くなってきた。
それにこんなにすごい砂煙じゃあ前が見えないじゃない!!!
きゃあ!砂が目に入っちゃう!痛いっ!


ウインディ:
闇市さん大丈夫ですか?!


やみっち:
ウインディちゃん、大丈夫じゃないわ!!



ピアリー:
あっちの方へ移動しよう。
このままだと危ないです。
それにポニーたちも砂煙をみて、とたんにおびえている。
ただの砂煙じゃないんですよこれ!!


やみっち:
ただの砂煙じゃない?どういうこと?
そんなただの砂煙じゃないってものがあるの?
聞いたことないわよ



ピアリー:
この一帯で起きる砂嵐は時に人を
苦しめるほどの大きな煙を巻くんです。
生物はこの砂嵐を長い時間受け続けていると
身体に影響を及ぼす恐れがあるんです。


ウインディ:
身体に影響を及ぼす?そんなことあるんですか…。
じゃあ、早く隣町へ行かないと…。


やみっち:
ポニーの移動がだんだん下がってきているわ。
まあ、こんだけ荒れた砂煙が吹き荒れるなら当然だわね。
私たちは無事に…隣町へたどり着けるのかしら。
って、きゃあっ!ああっ!うわっ!!!ううん~~~!!!


ウインディ:
闇市さん!?大丈夫ですか?!


やみっち:
目が…目がぁ!!開けないよ~~!!
それになんだかつまずいているみたいなの?!
このままふんばろうとしてもふんともすんともしないみたい…。
ねえ、これって絶望的?!



ピアリー:
最悪な状態に陥ってしまいました。
あれは荒野にできるというアリジゴクのような
大きな穴です。あの穴に吸いつけられると、
出ようにも出れない状態になってしまうんです。
それに砂煙のせいで視界がより悪くなってしまい…。

ウインディ:
なんとかして…闇市さんを助け出さなくちゃ…。
…うう…なんてすごい砂煙なんですか。こんなに激しい
砂煙、今まで味わったこともないですよ。うう、体が
どんどんと後退していきます……



やみっち:
ウインディちゃん……ダメだよ。
ウインディちゃんまで…巻き込まれるだなんて……。
ううっ……。


ウインディ:
闇市さんは助けます!!


ピアリー:
ウインディさん……。




ウインディ:
行きますよーーー!!!!!





ウインディ:
!?
な、な、なんですか?!砂煙の中になにか
大きな大きなシルエットをした……動物?
あれがこの砂嵐を起こした犯人なのでしょうか……?
…でも凝視できません。目を開くと砂が目に入ります!
ううっ!!!



~数分後~




ウインディ:
うう……。

ピアリー:
ウインディさん、ウインディさん。
大丈夫ですか?意識はありますか?


ウインディ:
ピアリーさん。
私は一体。なんだか長いこと
意識が飛んでいたかもしれません。
病院のベッドかと思いましたが、
砂の上なのですね。

…そういえばひどい砂嵐に遭って、
私達は諸々それを喰らってしまったんですよね…。
それから意識が諸共飛んでしまって、記憶が…。


ピアリー:
ポニーたちは無事です。でもちょっと
怪我を負っちゃったみたいですね。
楽しく乗馬して、移動していたのに。
予測できない天候事情でまさかこんなことになるとは。


ウインディ:
あれ?待ってください……。闇市さんは?


ピアリー:
えっ?いなくなってる?
私たちと同じ場所にいましたよね。
まさかあの砂嵐に飛ばされたのでしょうか。
でも闇市さんを乗せていたポニーは無事ですし…。


ウインディ:
ええっ?!じゃあ、闇市さんは行方をくらました?
それとも砂嵐ごと吹き飛ばされちゃったんでしょうか。
これじゃあ、隣町どころじゃないですよ。
闇市さんを探しましょう。ピアリーさん。

ピアリー:
そうですね。ウインディさんの大事な友人さん。
それにこの一帯で彷徨うのはとても危険です。


ウインディ:
とても危険?なにか危険なものでもあるんでしょうか?
砂嵐以外に……。

ピアリー:
実は……



ウインディ:
えっ?きょ、巨大なワームに似たような生物?がこの一帯に生息?
それを聞くとあの「モンゴリアン・デス・ワーム」を
彷彿とさせますよ!そんな巨大な化け物が
潜んでいるんですか?!


ピアリー:
はい。この荒野一帯で目撃されている巨大な生物なんです。
でも動物学者も悩まされているんですよ。そんなよくわからない生物の
正体を探ろうにも難しい。モンゴリアン・デス・ワームのような生物なのは
確かなんですよ!
その生物は現地では「オウルゴイコインズ」と呼ぶようです。


ウインディ:
オウル?
オウルってフクロウさんのことじゃありませんか?
そんなワームなのか巨大なミミズなのかわからない
生物にフクロウの名前がついているのですか?

ピアリー:
「オウルゴイコインズ」はフクロウのような鳴き声をするんです。
ホーホー、って鳴くんです。ワームやミミズなんていう生き物は
鳴き声を発さない生き物なんですが、そのコインズは他とは
毛色の違い動物なんですよ。狂暴なのはたしかで人を食べるというのです。


ウインディ:
えっ?人食いするんですか?
人食いするなんていう巨大なミミズさん…。
想像するだけでも恐怖を煽ってきます……



ピアリー:
そんなものに出くわしたが最後、蛇に睨まれた蛙のように
ゆっくりと食べられるのを待つしかないみたいです。
私の叔母は過去にこの辺で見たといいます。
それは荒野を覆いつくすほど大きな大きな
ミミズだったという。


ウインディ:
そんな巨大なミミズがいるんですね。
でもそう考えると砂嵐もそのミミズさんが
引き起こしたものなんじゃないでしょうか。
想像を絶するような巨体を持つってことは


ピアリー:
そんなことより闇市さんを探さなくちゃなりませんよ。
人食いと呼ばれていますし、万が一食べられてしまったら…。
ポニーたちが狙われなかったのが幸いですが、まだ
闇市さんがどうなっているのかわかりませんよ。


ウインディ:
ううっ、そうでしたね……。
隣町へいくためって考えていましたが、
まずは闇市さんを捜索しなくては


014「西部劇の世界!ウェスタンガール編」パート3

ウインディ:
う~ん、いろいろ探しましたが。いませんね。
さすがに地中に埋もれてしまったなんて
考えられません。それにもし本当に
そのミミズさんに食べられていたら……。


ピアリー:
ウインディさん大丈夫ですか?
そんな食べられるなんてありえませんよ。
オウルゴイコインズは人食いなのかは定かではないんです。
噂に尾ひれがついてしまっただけであって。
生体が不明瞭なうえ、情報もそれしかないくらいです。
叔母は遠くで見ただけであって、襲われもしなかったそうですが



ウインディ:
そうなんですか。
でも噂や尾ひれがついたとしても
地中に潜む巨大なミミズとしても
十分にありえそうなんですよ。
闇市さんをパクリと食べちゃった……なんて考えちゃいますよ…



ピアリー:
隣町へいくつもりが、まさかこんなことになっちゃうなんて……。
オウルゴイコインズは噂程度で私も信憑性もないから
そんなの存在しないって思ったんですけど、街の人たちは
本当に見たかのように話すので、納得せざるを得ないんですよ。


ウインディ:
でもその怪物さんの情報を知れてまだよかったです。
もしも知っていなかったら、今頃……なんて恐怖しちゃいますよ。
今でさえ、闇市さんの行方が不明瞭なのが…あわわ…。

ピアリー:
ウインディさん、落ち着いてください。
ほら、ぎゅっとしてあげますよ。
今は不安になっちゃだめですよ……


ウインディ:
ピアリーさん……。そうですね。
私、不安になりすぎてしまいました。
闇市さんの無事をどうしても…思ってしまいます。


ピアリー:
気持ちはわかります。




???:
……ホーホー♪


ウインディ:
えっ?




ピアリー:
この鳴き声……。
オウルゴイコインズだね……。


ウインディ:
ええっー!?
ど、どどど、どうするんですか…。
このままじゃあ、食べられちゃいますよっ!!

ピアリー:
やばい……。このままでは……


???:
ホーホー、ホーホー!
ホホホホゥーーー!!!!

(地面から衝撃音を出す音)


ウインディ:
で、出たーーーっ!!!!!!!


VS荒野を這う伝説のデスワーム
「オウルゴイコインズ」


ウインディ:
うう……。こんなタイミングで私達の前に現れるなんて…。
でもこの巨大ミミズさんを倒せば……。



ピアリー:
ウインディさん。


ウインディ:
怖いけど、闇市さんを助けるためです…。
私が、このミミズさんを…やっつけます!!!



ピアリー:
ええっ?!む、無理なことはしちゃだめだよ。
とてもウインディさん一人で相手にできるようなものじゃないですし


ウインディ:
ピアリーさん。
私を見ていてください。…いきましょっ!!!



オウルゴイコインズ:
ホーホー!!ホーホー!!




ウインディ:
えいっ!えいっ!
私の風魔法であれば効きます。
相手がどの属性に属するのかわかりませんが。


ウインディ:
そのような巨体であっても私は立ち向かいますよっ!!!
うおおりゃっ!!!!!!!



ウインディ:
!?





……逃げた?消えた?




ピアリー:
えっ……。



ウインディ:
さっきまで普通に戦っていたのですが……。




ピアリー:
これはもしかして……



ウインディ:
なにかあるんでしょうか?



ピアリー:
とりあえずウインディさん。
隣町へ行きましょうか。闇市さんのこともありますが。
お伝えしなくてはならないことがあるので。



ウインディ:
????



「ウェスタンビッグタウン ~隣町~」




ウインディ:
……ここが隣町ですか。
本当なら驚きたいことですが、今は状況が違いません。
オウルゴイコインズを逃がしてしまいました。
逃がしたというよりもまるで幽霊かのように消えた…んですよね。



ピアリー:
ウインディさん大丈夫ですか。
怪我とかしてません?
それにしても急に果敢に立ち挑みましたね。
私、びっくりしちゃいましたよ。


ウインディ:
闇市さんを救いたいという気持ちが勇気を
押してくれたんだと思います。おそらく……。


ピアリー:
ウインディさん。


ウインディ:
ピアリーさん。私、なんとしても
あの怪物を退治してみます。
もう怖がっている余裕なんてありません。
見失った友達を探すためにもあのような
怪物を無視するわけにはいきません。

ピアリー:
ウインディさん。
そうですね。大切な友人さんが
万が一オウルゴイコインズに襲われていたと
考えたら。…ですが、ウインディさん。
あの怪物を倒すには作戦を練るしかないですよ。

ウインディ:
作戦?なんのですか?

ピアリー:
そりゃあもちろん、オウルゴイコインズを倒すための作戦ですよ!


ウインディ:
作戦ですか。ですが戦いの途中で姿を消したんですよ。
あれじゃあ退治どころじゃないですよ。
それもどこに消えたのかさっぱりです。
透明人間のようにすうって消えちゃいましたもん。


ピアリー:
ちょうどこの隣町にはある武装した戦車…があるんです。
とはいえとても危険なので緊急時にしか出さないんですけど。


ウインディ:
戦車?!なんだか西部劇の舞台ではズレていたかと思いますが。
そのような戦車があるなら心強いですね!
これで巨大ミミズさんをやっつけましょう!!!


???:
戦車?そんな武装したものを扱うのは
大変じゃありませんか。



ウインディ:
えっ?


ライチ:
だいたいシンシアさんの許可が下りないと
そう簡単には利用できませんよ。
戦車を手安く利用できるだなんて。
ピアリー女史、またもやおつかいですか?



ウインディ:
ら、ライチさん???
女史?!


ライチ:
あらら、見慣れないお客人ですね。
それに患者服を着て。ここは病院じゃないんですよ。
それにここへ何の用ですか?

ピアリー:
ええっと。私達は……。



ウインディ:
…………。


ライチ:
なるほど。そんなことがあったんですね。
オウルゴイコインズはフクロウの声を真似る怪物ですよね。
しかしこの辺にフクロウは生息していない。
それにミミズやワームのような生物は鳴き声を発さない。
ですが、その怪物は人をおびき寄せるかのように
そのような声を発するんです。

ピアリー:
はい。

ライチ:
そのミミズの声帯そのものがフクロウを真似たのでしょう。
理由はわかりませんが、昔からこの付近で目撃が相次ぎ、
人々が恐れ、中には犠牲にあった人間もいました。


ウインディ:
そうなんですね。


ライチ:
でもなぜ戦車を?
だいたい戦車であの怪物を食い止めるのは至難の業ですよ。
成功した事例なんぞ存在しないのに。


ピアリー:
でもウインディさんはあの怪物と太刀打ちしていたんです。
本当です!私も見ていました!


ライチ:
あの怪物と太刀打ち?そんなまさか……
そんなまさかです。…患者服を着た軽装な装備で
怪物と太刀打ちだなんて…。


ウインディ:
本当ですよ!それにあの巨大ミミズさんと
闘った際の泥もしっかりついています!
とにかく私はあの怪物を仕留めるしかないんです。
たとえ効かなくても、戦車を使いたいです!


ライチ:
…………。


ウインディ:
お願いします!お願いします!



ライチ:
あなたがそこまでいうのなら…やれやれ、戦車を出してあげましょう。
ただしあの怪物を討伐すること!しくじるんじゃないですよ!



ピアリー:
ウインディさん……!




ウインディ:
オウルゴイコインズはどこに消えたのでしょう?
勝ち逃げされては困ります、まだ勝負は決まってないんです。
今日こそ決着をつけます…!!




???:
ホーホー、ホーホー!
ホーホー!ホーホー!!


ウインディ:
出ましたね。ですがオウルゴイコインズさん。
あなたの暴君も飯も宴会も、今日で最後ですからね。
この一撃を喰らいなさいっ!!!


(発砲する音)





ピアリー:
不発ですね…。




ウインディ:
まだまだ!もう一度食らいなさいっ!!!!


(発砲する音)





………




ウインディ:
倒れています……オウルゴイコインズさん。




ライチ:
…倒した?戦車ごときで………。



ウインディ:
倒しました…。荒野の怪物であったオウルゴイコインズさん。
なんだかあっさりだったような。
しかしこの怪物を退治したところで、闇市さんが…見当たりませんね。
結局どこへ飛ばされてしまったんでしょうか。


ピアリー:
ウインディさん…。倒しましたね。
あの狂暴で暴れ車のように暴れる巨大なミミズを討伐するなんて!
でも闇市さんが……見つかっていませんね。

ウインディ:
……はい。一体どこに行っちゃったんでしょう。


(もぞもぞとなにかが蠢く音)



ウインディ:


やみっち:
ぷはああ!!!!く、苦しかったわ。なんなのよ。変な液がねばねばと。
ああもう、お気に入りの洋服が台無しじゃないの。
これで変えたの五着目よ!いい加減にしてよね…全くぅ。
あれ?

ウインディ:
闇市さん!!!
ぶ、無事だったんですね!



やみっち:
え?ウインディちゃん?
ていうかここはどこなのよ?荒野のど真ん中?
それよりか私はめっちゃ狭いところにいたし、息がもたなくて
死にかけていたわよ。砂嵐で吹き飛ばされたあと、どうなったかと思えば。


ピアリー:
巨大なミミズの体の中にいたってことは、やっぱり食べられたんですね。


やみっち:
食べられた!?
巨大な生物?ミミズぅ?


ウインディ:
そんなことより闇市さんが
無事で何よりです。うわ~ん!!



やみっち:
わあっ!!ウインディちゃん。抱き着いてきたァ!!


ライチ:
やれやれ。巨大なミミズを討伐し、友人を救出するなんて
そんなドラマな展開があるとは。これは面白いものが見られましたよ。



ピアリー:
そうですね。それよりもウインディさんの果敢な姿に…打たれてしまいました。



014「西部劇の世界!ウェスタンガール編」パート4


ウインディ:
みなさん、ありがとうございます。
そんな……英雄だなんて大袈裟です。
私はするべきことを、ただしただけなんですから。

やみっち:
いやいや、ウインディちゃんは間違いなく英雄だよ。
間違ってなどないよ。


ピアリー:
……ウインディさん。
ウインディさんがオウルゴイコインズを倒したおかげで
この街に平和がおとずれました。
依然に砂嵐に悩まされていた隣町でしたが、
あの巨大ミミズを倒して以来、砂嵐が
吹き荒れることがなくなりましたよ。


ウインディ:
本当ですか?!よかったです。平和になって……。



ライチ:
まさかあの巨大なミミズを倒しちゃうだなんて。
でも一因となっていた元凶も消え去ったことで
砂嵐に恐れることがなくなりましたね。
あのとき、折れて戦車を貸したのが正解でしたね。

やみっち:
戦車て……西部劇の舞台では間違いなく場違いなものね。
でもウインディちゃんが倒したおかげで私がなんとか
助かったのよね。ウインディちゃん、ありがとう。

ウインディ:
闇市さんが無事でよかったです。
どこへいったんだろうとすごく心配でしたからね。


やみっち:
本当にありがとう!



ピアリー:
ふふふ、お二人に今日は楽しんでもらいたいところが
あるんです。もう今日でここから離れるんですよ。
時間になるまで最後の最後に楽しんでほしくて。


ウインディ:
ピアリーさん……


ピアリー:
短い間でしたが、面白い人でしたよ~。
だから最後は最後まで楽しんでいただきたいです。
それに美味しい食べ物はたくさんです。

ウインディ:
お、おいしい食べ物もあるんです?!


やみっち:
あれ?




シンシア:
キミたちが街の平和のために貢献してくれた人ですか…!
すばらしい。すばらしい以外の言葉が出てきませんよ。全く


やみっち:
シンシアさん…!まさかこんなところに出会うなんて…。
ああ、同じ商業仲間としては名が高い、あのシンシアさん!!
シンシアさん、いつぞやのcontestではお世話になりました!


シンシア:
あら、よくみたら闇市さんじゃないですか。
かなりいつぶりの再会ですね。
それにしてもあの巨大ミミズに襲われたんでしょ?
大丈夫?


やみっち:
大丈夫ですよ…。
そんなことよりもシンシアさんのお店もどんな感じでしょうか?
もしかして業績がうなぎ上りだったり?


シンシア:
うっ……それは……。
そうだ、ウインディさん、闇市さん。
よかったらうちの商店どうです?
離れる前に、最後みていきません?
いいものがありますよ~~


やみっち:
えっ?いいもの?なにか掘り出し物があるんでしょうか?
プレミア商品とかとか?!

ウインディ:
闇市さんったら……。



シンシア:
そういえばオウルゴイコインズを模した
ものを作りました。今は退治されていないけれど、
この地を這う巨大な怪物伝説の記念物として……。


やみっち:
ぎょええーー!!!こんなやつに食べられていたの…。
き、気持ち悪いわ……。

ライチ:
ほう。これはなかなかの出来ですね。
シンシアさんは器用ですね。前から思っていたけど。


シンシア:
器用?そうでしょうか……。


ピアリー:
なんだか楽しそう……。
ああ、結果はオーライってところかな?ふふふ。


ウインディ:
さあ、このあとはお楽しみの乗馬!…改めるんですけどね。



【次回予告】

ラジエート:
結局次回予告だけの登場になってしまいました!ラジエートです。
さて、ふたたび荒野を舞台にしたウインディ様たちの
活躍はいかがなさいましたでしょうか?とってもかっこよかったですね!

さて、次回の舞台は道場?アチョー?カンフー?
アジアンテイストな世界が舞台となり、ウインディ様たちに
立ち向かってきます!果たしてどうなるのでしょうか……

次回、「チャイチャイ!ドージョー(中国)編」をお楽しみに!

 

 

【おまけ】

 

No.034 オウルゴイコインズ
荒野を這う大きな大きなミミズやワームのような生物。
モンゴリアン・デスワームとは異なる種であり、現地では
フクロウのような鳴き声を真似する。
それにつられた人間は足を竦み、
ゆっくりとゆっくりと食べられる最後を待つのみだ……