012「ハロウィーンオータム」パート1
「マジカンツフォレスト」


怪しげな森へ手招きされる…
それが誰もが望んではいないものだ。
しかし、突然とその森に気づいたらいるのだ。
ここはどこだろうか。ここは知らない森の中だ。
誰もがきっとそう思う。

しかし、そんなの誰にもわかんない。
だからこそ招かれたこの森の奥には秘密があるのかも。


命知らずの少女たちは知らずしてその森へいざなわれたのだ…



やみっち:
ああ~~!!
ま、迷った!ガチで迷った!
がちがちのがちで迷っちゃったぁぁ!!

ウインディ:
闇市さん、落ち着いてください。



やみっち:
落ち着けるわけないでしょう。
ああ、興味津々に深くまで足を
運ぶべきじゃなかったわ。


ウインディ:
だから言ったじゃないですか。
なんか意味ありげだし、もしも
帰ってこれなくなったらどうするのです。

やみっち:
そりゃウインディちゃんと
共にどこまでも着いていくわ。
死ぬときだって一緒だもんね。

ウインディ:
し、死ぬって…
そんな不安が的中しそうな
浅はかな考えではあっさりと
やられてしまうではありませんか。

やみっち:
大丈夫。これまでも数多の事件に
遭遇してきたのよ。
私らにかかれはけちょんけちょんにできるわよ!


ウインディ:
一体、どこから沸いてくるんですか?
その勇気というか意思は…


やみっち:
あはは…ウインディちゃん、
そうやって怖がっていても意味ないわよ。
ほらあそこにあるキノコ、おいしそうにみえない?

ウインディ:
キノコ?
あ、あれは食べちゃだめですよ…
毒キノコかもしれませんし、
この辺に病院とかサナトリウムなんて
ありませんので!


やみっち:
じゃあ、あのおっきなお花はダメかしら?


ウインディ:
ありゃ、ラフレシア!
ふつー密林に自生するものが
なぜ森の中にあるのかわかりませんが…
食べちゃダメですよ!!

やみっち:
そうなのか。
ていうかウインディちゃん詳しいのね…


ウインディ:
案外植物とかを調べたりするのが好きなんです。
こういうのは毒があったりするのでうかつに触れたり、
食べたりなんてしちゃだめですよ。


やみっち:
でもキノコって料理するじゃない。
それもすべてが毒キノコってわけ?

ウインディ:
全てとは言いませんが、中にはひどい
食中毒を起こすものもあります。
場合によっては命を落とすかもしれません。


やみっち:
じゃああのへびいちごは?


ウインディ:
おいしそうな色をしていますが…やめた方がいいです。


やみっち:
とってもグルメなのに…

ウインディ:
どこがですか。
ダメといったらダメです。
毒を舐めちゃいけませんよ。



やみっち:
そんなことよりウインディちゃん。
こんな不気味なところであっても
ところどころで光っているキノコ?
幻想的にみえるわよ。

ウインディ:
そうですね。怪しげな雰囲気は
出しつつもちょっとは綺麗…
ですが食べたり触れたりはしないでくださいね。

やみっち:
そう言われると…むぅぅ…



ウインディ:
おや?なんだか立札が立ってません?

やみっち:
本当だ!


やみっち:
なんて書かれているのかしら…

「怪しげな雰囲気につられるあなたへ
この先に一軒家があります。そこへ迷われた方への
おもてなしをご提供させていただきます。
もう迷いで希望の光を失ったあなたへ、あきらめないように
あなたに魔法をかけてあげます」

って書いているわ。

ウインディ:
随分と長文なんですね。


やみっち:
そうだね…。
でもここは暗い森の中だわ。
他に道なんてものもなさそうよ…

ウインディ:
そうですね。


やみっち:
それに私たちはまだ希望の光なんてものは
失っていないけれど、魔法をかけてくれるなんて
ことを書いているじゃない。これって、なにか
いいことがあるものかもしれないわ!



ウインディ:
そうですかね。
怪しくないでしょうかね。
私、そういうのに敏感でして。


やみっち:
もぉ、ウインディちゃんったら。
大丈夫だって。私のことを
信じられないのかしら。
それに今まで危険なところを冒険
しているわけよ。
今更こんなことで怯えている暇はないわよ


やみっち:
それに困っている人を助けてくれるかもしれないのよ。
希望の光は失っていないけど、迷いはあるわ。
ウインディちゃん、いってみようよ。


ウインディ:
はあ。


やみっち:
ほら、見えてきたわよ。
あれが一軒家。う~ん、なんだろう。
魔女の家にもみえるわね。魔女ってきくと
いろいろな人を連想するわ…。

でも見方さえ変えてみれば、ヘンゼルとグレーテルにも
出てくるようなメルヘンチックなお菓子の家にも
みえなくないわ。お菓子といえば以前もあったわね


ウインディ:
やめてくださいよ。そんな話をされたら
余計によだれが垂れてくるじゃないですか~~~!!



やみっち:
えへへ、お菓子だけじゃなく、なにか
お呼ばれがあるかもしれないわ。
魔女だから余程のものは期待できないかもだけど…。


ウインディ:
それでいいんですよ。旨ければ。


やみっち:
えっーーー、闇鍋なんかも食べちゃう勢いじゃん!




ウインディ:
そんなことを言っていたら、近づいてきましたね。
うわ…おどろおどろしい感じがぷんぷんですよ。
闇市さん、どうします?勇気を振り絞ってはいってみます?


やみっち:
そりゃあ、当然よ。
ここまできたら、引き返すわけがないもの。
ウインディちゃんだって、そのくらいの
覚悟はできているんでしょうね。


ウインディ:
は、はい。
でも後先のことを考えると、
なんだかよくないようなことが…。
べ、別にフラグを立ててるわけではありません。



やみっち:
わかっているわよ。
私も同じかな。歓迎されている…これは
完全な建前そのものよ。
本当は喰らおうと考える存在なのかもしれないわ。
ああ、そう考えると、実に恐ろしいことやら……

やみっち:
でも恐れに恐れてはならないわ。
さっきも言った。今まで幾多の問題を
通り抜けてきたのよ。今更怖さに
恐れるなんて赤子のような感覚よ



ウインディ:
そ、それじゃあ、ドアをあけましょう。
と、その前にノックぐらいしましょう。
いきなり開けるだなんて乱暴ですからね。



やみっち:
そうよね。こういうのは
いきなり開けるとトラップにかかって
ひどい目に遭うことがあるじゃんか。
それを考慮すれば、回避できるかも!
ノックするわよ。ウインディちゃんが。



ウインディ:
うぐっ…。
お、お化け屋敷ではないにしろ、
恐怖を思い出せば、こうも震え上がるものですぅ…ぶるぶる。


やみっち:
あらら、ウインディちゃん。
可哀相に。まるで寒い寒い冬よね。
今の季節は秋かもしれないわ。
まわりを見れば落ち葉なんかも落ちてるしで


やみっち:
そうだ。ウインディちゃん。
こういうものがあるわよ。
これを巻いてあげるわね。これは
マフラーみたいなものなのよ


ウインディ:
わわ、あったかいです~~。
闇市さん、助かりました。
悪寒がすごいとは言え、真冬のようですよ。
これでちょっとは怖さも和らいだかな…



やみっち:
きっと和らぐはずだよ。
なにせ私のマフラーだもんね。



ウインディ:
それじゃあ、開けますよ。



(扉をあけた)



…すると…目の前にギンギラと光る
するどくとがったような鋭利なものが
目の前に飛び出そうとしているではないか…




二人:
ひっ!!!



やみっち:
ちょ、ちょ、ちょっとぉぉぉおーーーー!!!
や、やっぱりだ。コンコンすればよかったんじゃないかな…


ウインディ:
…いいえ、コンコンするにしろ、ああいうものが
突然、扉を突き抜けて、私たちの目の前に
飛び出してきますよ。もうちょい、前に出ていたら、
貫通していたもの。



やみっち:
ウインディちゃん、大丈夫?


ウインディ:
私は大丈夫ですよ。
闇市さんも大丈夫そうですし。

…しかし、これをみてここは、生きて帰られないような
雰囲気がしています。確実に…

やみっち:
さっきので確実に訪問者を斬ろうとしているじゃないの。
あんなのでお出迎えなんて心臓に悪いわ。
悪趣味だし、私がもしもそんなトラップを
考えたとしても、そこまでしないわよ。
どろぼう、空き巣対策にしても、やりすぎているわ…



ウインディ:
むしろここまでするなら、
ここに住んでいる住民も常軌を逸しているのでは
ないでしょうか。とても人間らしい人物が
いるように感じられない…


やみっち:
そうよね。魔女でも魔女よ。
私たちの命を奪おうとしているやつなのかもしれないわ…


ウインディ:
そうです…きっとそうに違いありません。
闇市さん、どうします。やっぱり引き返すのも
一つの手だということがここで分かったと思います。
自らに危険に遭うだなんていくら冒険だとしても
その範疇を超えてしまうのではないでしょうか…

やみっち:
そ、そうだね。
そうしましょう。私もこんなところで
いや~な想像をしてしまえば、変な汗をかいてしまうわ。
ウインディちゃんのいう通りだよ


???:

あらら、おまちになって。
なかなかにかわいいかわいい声が聞こえると
思えば、邸宅にやってきてくださったのね

やみっち:
わああ、びっくりした…。



???:
おどろかせてごめんね。
アタシったら悪い趣味をしていたでしょうに。
でもこれはこれでアタシの趣味なんだい。
だから許しておくれよ。そこのお嬢ちゃんたち。
どうやらここへ来たからには、なにか理由が
あるんだろう。マジカンツフォレストは
昼間も陽の光が届かないほど暗い森なのさ。
キノコのかすかな光を頼りにここへくるだろうね。
おつかれさまだよ。

だけどこれ以上、奥へ進んではいけないよ。
恐ろしい生き物がいるかもしれないからね。


ウインディ:
そうなんですね。



???:
まあまあ、ここで立ち話もなんでしょう。
中へどうぞお入り。茶菓子も用意しているさ。


やみっち:
貴女はだれでしょうか?


???:
アタシ?アタシはマドローナというんさ。
こうみえても魔女よ。まあ、魔女といっても
あなた達が想像している魔女のイメージじゃないわ。
このマジカンツフォレストの魅力に惹かれて
住んでいるのよ。なあに、アタシはこういう
場所も好んでいるのよ。変な趣味だと思われるけど
アタシなりのインテリアみたいなものなのよ。



ウインディ:
マドローナさんなんですね。
変な趣味というかこういうワイルドな
インテリアにこだわりを持つ人もいますよね。
私もイグアナのインテリアに一時期気になった
ことがありますが…

やみっち:
えっ~?
ウインディちゃん、やめてよ…。
そんな変な趣味にいつの間にか目覚めていたなんて。




マドローナ:
あらら、見た目に反して意外なものに
興味があるなんて。女の子はね、ただかわいいだけでは
ものすごく勿体ないのよ。男の人には考えられないような
意外なる趣味や個性に目覚めることよ。
そうすれば趣味としてそれが受け入れられるの。
アタシも魔女でありながらも、奇妙なものに目覚めているわ。


ウインディ:
奇妙なもの?



マドローナ:
あら、気になるかしら。
いいわよ。こちらにきてごらんな。
ほら、そこに飾ってあるのよ


やみっち:
ちょ、ちょっとウインディちゃん!


ウインディ:
わあああ、すごいです。
どれもこれもお目にかかれていない
よくわからないものです…。
こんなものをマニアとして集めていたなんて。


マドローナ:
あらら、これをみて興奮を覚えるなんて
あなたもやはりアタシと趣味があうのかもね。
なんだったら、このまま語りあたいくらいよ


やみっち:
ウインディちゃん、そんな変なものに目覚めないで!!
も、もうこれ以上あなたに付き合っていたら
ウインディちゃんがおかしくなっちゃう~~。
悪いけど、失礼しちゃうわ


マドローナ:
あらら、それは残念ね…

ウインディ:
はなしてください。闇市さん。
私は催眠術で操られているわけではありません。
たしかにああいうものに見とれていると
おかしいと思いますが、私もあることに気づいたのです。


やみっち:
もう、なにをワケの分からないことを言っているのよ。
あんな悪趣味に振り回されていたら、おかしくなるわよ。
ウインディちゃんにあんなの似合わないもん

とにかくここを出るわよ。



ウインディ:
闇市さん~~~~

やみっち:
こんなところに来ること自体、なにかの間違いだったんだわ…!


マドローナ:
お待ちになって。
まだ茶菓子も食べてないじゃない。
いきなり帰るなんて、物足りないよ。
さっきのはよくないものをみせちゃったわ。
でもこの邸宅にはもっとすごいものがあるわ。
そこへ案内してあげる


ウインディ:
ほら、マドローナさんもそういっているじゃないですか。
さっきの一種の趣味の一つですよ。
私も惹かれてしまいましたが、それ以上近づくことは
できませんでした。


やみっち:
そんなものに近づかなくていいんだよ。
ウインディちゃんがおかしくなっちゃうのは嫌だから


マドローナ:
次に紹介するのは
お菓子を作る工房よ。
こうみえてもアタシ、お菓子作りが好きなのよ

まあ、その茶菓子もアタシの手作りさ。
こんなところに住んでいるなら、わざわざ町に
繰り出す必要もないからね。

まあまあ、お菓子は毎日作っていないと
アタシとしても生き甲斐を感じられないのよ




ウインディ:
へえ、いいじゃないですか。
私もお菓子作りは好きでしたよ。
美味しいお菓子をたくさん作る。
でも、パティシエさんのように
上手くは作れないのですけど

やみっち:
ウインディちゃんの作るやつは
美味しいも当然よ。
私が証明しているんだから

マドローナ:
あら、ウインディはお菓子が作れるのね。
じゃあ、あたしもウインディのお菓子を味わいたわ。
今からつくってみなさい


やみっち:
えっーーー???



ウインディ:
わかりました。
えへへ、闇市さん、私作ってみます~~~

012「ハロウィーンオータム」パート2
「マジカンツフォレスト」


ウインディ:
じゃじゃーん、パティシエウインディです。
今からとってもおいしいお菓子をつくります~~!

まずはホットケーキを作りましょう~~。
生地を厳選して、形をつくります。
そしてそこからかき混ぜていきますよ。
え~い、真心こめてしっかりとかき混ぜる!
まだまだです。こんくらいあまい感じでは
美味いものには仕上がりませんからねっ!




やみっち:
ウインディちゃん、本気だ…


ウインディ:
さあ、焼きあがりました。
フライ返しで丁寧に返しましょう。
ええ、いい感じに返せました。
久しぶりに作りますが、手はそれを
覚えているかのごときテキパキと動きます。
ああ、これなら、次から軽い食べ物も
自分で作っちゃえそうですね~~~



マドローナ:
うふふ、ウインディ、やるじゃない。
そんな才能を隠し持っていたなんてね。
そのホットケーキ、味わいたいものよ


ウインディ:
えへへ、できあがりました。
マドローナさん、闇市さん。
どうぞ、召し上がってください。



やみっち:
ものの数秒で作るなんて。
しかも久しぶりのウインディちゃんの
お菓子を食べられるなんて…!

それじゃあ、いただきま~~~す。

はむはむはむ…うっ、美味しい~~~~~!!!



ウインディ:
えへへ、嬉しいですよ~!


マドローナ:
すごいわ。ウインディ。
こんなに美味しいお菓子を…。
感動のあまり言葉に詰まってしまいそうだわ。
それに下手をすればあたしのお菓子を凌駕する
勢いだったかもね。


まあ、見ての通りここはお菓子の工房で。
普段からいろいろなものを作っているのよ。
それも魔法でね。まあ、インチキだけど。
それが美味しい小悪魔に変わりないからね

やみっち:
はあ、ここにきてウインディちゃんの
お菓子を食べられるなんて。感動しちゃったわ。
うふふ、ウインディちゃん。また今度でいいからさ、
私だけのお菓子をつくってちょうだいよ~~~



ウインディ:
そんなに気に入ったのですか。
それはそれは嬉しいことですよ。
リクエスト、ありがとうございます~~



マドローナ:
…………。

美して幻想的な庭と屋敷
「マドロミキャッスル」


マドローナ:
さあ、次はすごいところよ。
ここからは別館が広がっているの。
「マドロミキャッスル」はあたしが自慢する
素晴らしい屋敷なの。
さっきのところは入口みたいなところで、
ここからが本番なのよ。


ウインディ:
めちゃくちゃ広いですね…!
さっきのところとは比較にならないほどです。


やみっち:
こんだけ広ければ迷子にもなるわよ…。


マドローナ:
うふふ、脱帽されているようね。
それもそのはず。あたしが自慢するくらいだからさ。
まあまあ、次はなにをしようかね。
おもてなしをしたのはしたよ。
だけど、あなたたちもまだまだもてなしに
不足を感じているのではないかい?


やみっち:
えっ、いや…そんなことないですよ。
こんなに広い庭をみて、目がうっとりしているくらいですし


マドローナ:
あら、そうなのね。
それはよかったわ。
なら、ウインディは…?


ウインディ:
まあ、これから何があるか、わからないですもの。
こんだけ広ければ、どんなものがあるのか。
マドローナさん的には魔女ということもあり、
魔法や魔術を操れるんでしょうね?
私、本物の魔法がみてみたいです




マドローナ:
本物の魔法?


やみっち:
ちょっと、ウインディちゃん。
私たち魔法そのものでしょう。
もうすでに魔法なんて扱えるわよ。


ウインディ:
でも私は自分のものよりも
誰かの魔法を見たいんです~~。
今までみてきたとしても、真新しさを
追求したいという意味もかねて。


やみっち:
そ、そうなんだ…

マドローナ:
あらら、ウインディ。
あたしの魔法に興味津々なのね…。
それはそれは嬉しいことだわ。
ふふふ、そんなに見たいというのなら
みせてあげるわよ


ウインディ:
おおっ…!


マドローナ:
ハッ…!!せいやっ!せいやっ!
はあああああ!!!!


どうかしら。みなさい。これが魔法というものよ。
ウインディ、これでわかったかしら。
これがあたしの最大限を出し切った魔法なのよ。
昔はもっとグラデーションが輝いていたけど、
老いればそんなものが廃るものだわ…。でも
あたしはこれが穢れるものだと感じてないのよ。
まあ、自らの魔法だもの。

ウインディ:
まるで見えた世界が変わったような気がします。
闇市さん、私たちの知っている魔法じゃないですよね…

やみっち:
言われてみればたしかに。
でもでもこんなものにうっとりしていちゃだめだよ。
ウインディちゃん、この人、あなたを
誘い込もうとしているんじゃないかしら。
さっきからそんな感じがしているのよ…



ウインディ:
えっ~~、そんなことないですよ。
たしかに誘われそうになっていましたが。

でも大丈夫ですよ。たぶん、マドローナさん的に
私たちに向けたアプローチそのものなんだと思います。

やみっち:
そんな感じしないんだけどなぁ…。
でもお菓子はおいしかった…。
でも穏やかそうな感じがしても
裏の顔がどんなものなのかわからないのよ?

そこが怖いんだってば。


ウインディ:
私はそう思いませんね。
こんな広い広いお屋敷を
一人で持っていることに、なにか理由は
あるんだと思います。

マドローナ:
あらら、そこでなにを話しているんだい。
もしかしてお茶会の二次会かい?
あたしはそういうことにも歓迎だよ。

さあ、まだまだ時間はある。
今度は焼き菓子を召し上がってもらいましょう。
この焼き菓子はとても美味しくて、いつも
特別なときにしか作らないんだ。
今回はたまたま、あなた達がここへ
来てくれたんだ。これが廃棄処分に
ならずにすんだことだよ…


ウインディ:
わぁ~、焼き菓子なんておいしそうですね~~^


マドローナ:
そうでしょう?あたしが作る焼き菓子は
とっても美味しいの。ウインディ、
よかったら食べてちょうだい。
こ~んなにたくさん作っちゃったからさ。

ウインディ:
うんうん、たーくさん食べちゃいますよ~~~

やみっち:
ちょっとウインディちゃん!!


ウインディ:
闇市さんも一緒に食べましょう。
ほら、これなんか可愛らしいキャラクターのお菓子ですよ。
まるでウェポンブレスさんやテルミンさんみたいに
見えますね!


やみっち:
見た目はおいしそうだけど、きっと
なにか変なものが入っていそう。
こういうので騙してくるパターンもよくあるのよ。
私は闇市場のことならよく知っているの。
こういうアンダーグラウンドと思うことには
用心しなくてはならないのよ?



ウインディ:
そういわれても美味しくみえちゃうんです…。


マドローナ:
ウインディ、どうしたの。
さあ、たーんとお食べ。
焼き菓子は旨いものよ。
ここで食べないと、もしかしたら
次は食べられないかもしれないわよ


ウインディ:
ひぃ、そんなこと言われたらレアものですよ。
闇市さんも、騙されたと思って食べてみてください!


やみっち:
だから…!!!
…しょうがないわね。ウインディちゃんがいうのなら…。
食べてみるわね…



はむはむ…もぐもぐ…。
う~ん、なにかしら。
普通の焼き菓子だわ。
私ったら、ほのかに味わうこの焼き菓子を
まさか毒の入ったお菓子だと勘違いしていたみたいね。
普通に美味しくて草なんですけど…



ウインディ:
でしょでしょ。
そんな毒なんて入ってませんよ~~。
美味しいものは美味しいのです。
マドローナさん、この焼き菓子、
とっても美味しかったです!

マドローナ:
そういってくれるとうれしいわ。
ウインディに気に入ってもらえるなんて。

うふふ、もっともっとあるわよ。
このあたしがたーんと召し上がらせてあげるからね。
心行くまで味わってちょうだい


ウインディ:
それじゃあ、遠慮なく~~


やみっち:
あっ、ウインディちゃん!
そんないっぺんに口に放り込んで…!!


マドローナ:
うふふ、たくさんと食べるのよ。
この焼き菓子は一度食べだしたら
ずっと食べていたくなるほどのお菓子だからね



そして数時間が経過して…




ウインディ・やみっち:
はぁ…はぁ…はぁ…



やみっち:
もうダメだわ…。
そんなに食べれないわ。
お菓子ごときでお腹が膨れる…。
そもそも大食いじゃないもの。
ウインディちゃんなら、まだまだいけそうじゃない。


ウインディ:
ふぅ、たくさんは食べましたが、
さすがの私でももう限界といえば限界です。
美味しそうにみえますが、もう無理です…。



やみっち:
そうだよね…。
ウインディちゃん。さすがに食べられないわよね。




マドローナ:
あらら、まだまだあるわよ?
こんな美味しい焼き菓子を中途半端で
食べる終わるだなんて、勿体ないわね。
まだまだ美味しいし、どんどん入っていくわよ


ほら、ほら、このお菓子なんて
こんなに美味しそうじゃない。
廃棄処分にするのは嫌だから、ちゃんと
食べてほしいのよね


ウインディ:
たしかに廃棄処分になりますけど…。
もう食べられないんですよ…。
というか、これを一人で全部食べる
つもりでつくったのでしょうか。
私のウインディクッキングでさえ、
こんなにたくさん作りませんよ~~~!!



やみっち:
そうだね。廃棄処分は嫌だけ、
流石に作りすぎだと思っちゃうわ。
悪いけど、たくさん堪能できたわ。
ありがとうね。


ウインディ:
これ以上食べると、おなかが大きくなっちゃいますからね。
これ以上にしておきましょう。
では、マドローナさん、ありがとうございました。
また機会があればまたご馳走になりたいですね




(ウインディの手を強く握る)



ウインディ:
えっ?


マドローナ:
ウインディ。どこへいくのかしら。
あたしたちのパーティはまだまだ終わってないのよ。
ほら、焼き菓子もお菓子もまだまだあるじゃない。
ここから出るなんて、楽しい時間を台無しにするんだよ。
マドロミキャッスルは楽しいところなんさ。

ウインディ、ここにいるのなら楽しいことはいっぱいさ。
帰るなんてことせず、ここで楽しく過ごしなさい。
あたしがたくさん、楽しいことをしてあげるよ。
楽しいおしゃべりに美味しいお菓子。
ウインディ、どうだい?



やみっち:
ちょっとやめなさいよ!!!
やばいわ、このままじゃ、ウインディちゃんが
洗脳されちゃうわ。
ウインディちゃん、とっとと出ましょう。






マドローナ:
待ちなさいよ。
ウインディはここを気に入ったわ。
ここから出るなんて、とてもありえない。
あたしが証明してあげるんだから。
とりあえず、ウインディを連れて行こうとする
あなたを始末してあげるわ


やみっち:
わあああ、なにをする気なのよ~~~!!





ウインディ:
きゃっ!



マドローナ:
ウインディ!あなたは今日から
この屋敷の住民よ。そしてあなたを
この屋敷の主に迎えてあげるわ

やみっち:
ちょっと!!!ウインディちゃんを
離しなさいよ!!

くそう、ウインディちゃんを気に入るだなんて。
とんだ魔女に捕まってしまったわ…。
こうなったらウインディちゃんを助けよう。
そしてこの屋敷で起きていることを暴くのよ。


ウインディちゃんの真似じゃないけど…



やみっち:
「名探偵やみっち」が謎という謎を暴いて見せるわ!!
あはは、ウインディちゃんが以前ロンドンでやっていたことを
思い出したわ。探偵さんの気持ちよね…。
私にもそれを味わってみたかったわ



やみっち:
さあ、まずは…このあたりを調べてみよう。



012「ハロウィーンオータム」パート3
「マドロミキャッスル」




やみっち:
う~ん、すごいことを考えてしまったわ。
まるで「ヘンゼルとグレーテル」の世界のようだね…。
だって魔女の家と言いつつ、お菓子チックな内装だもの。
それに魔女はお菓子を作っているものね


書斎やリビング、温室にサロンも調べたわ。
どれもお菓子で出来ていたわ。


じゃあ、あとは例の工房よ。
ここでお菓子を作っているのよね。
どういう感じで作っているのかしら…



やみっち:
!?



やみっち:
えっ…ちょ…ちょ…ちょっと待って。
なんなのよ。一体なんなのよ。
待ってよ。この中にさ、子供が入れるような
スペースがあるんだけど…

これで子供を…入れて、それで……



やみっち:
切り刻む……

残酷よ。残酷。
まさかあのマドローナっていう魔女は
子供をお菓子とかでおびき寄せて、隙を
うかがって、この中に入れるつもりだったのかしら。
こんなことをして、お菓子をつくるなんて。
カニバリズムなことを考えるわね…。


やみっち:
このままじゃ、ウインディちゃんも餌食だわ…。



ウインディ:
ここは一体…。
というかなんだか狭い部屋ですね…。
狭いところが苦手ではないのですけど、
突然このように薄暗く、狭い場所にいると
心が落ち込んでしまいます。
私としては過去のこともありますけど、
なるべく明るい雰囲気があるような場所にいたいものです。


ウインディ:
とりあえず闇市さんとはぐれてしまいました。
なんとかしてここから出ないと…。

マドローナ:
あら、ウインディ。
目が覚めたみたいねえ。
ふふ、もうあなたはここの住民よ。
ここから出る必要は、もうなくなったの。
よかったわねえ。


ウインディ:
マドローナさん!!



マドローナ:
うふふ、あなたの付き添いだったお友達は帰ったみたいだわ。
まあ、あたしはあの子よりもあなたが気になっていたからね。
だから、ウインディ、ここで暮していきましょう。
ここなら美味しい焼き菓子も食べ放題よ?

ウインディ:
でも、もう入りませんよ。
それに闇市さんが心配です。
おもてなしはしてもらいましたよ。


マドローナ:
いいえ、まだまだなのよ。
ウインディ、あなたはまだまだ満足してないわ。
あたしにはそれがわかるのよ。
まだまだ不足していそうな顔つき。
そこから観測すれば、まだお菓子を食べたそうなのよ。


ウインディ:
いえ、もう入りませんよ…。
そんなに食べたら私の胃袋が
破裂しちゃいます…

マドローナ:
あら、なに?あたしが作った
お菓子が食べられないとでも言いたいのかしら。
まさかウインディがそんな傷づくようなことを
言ったりしないわよね?ちゃんとあたしの
お菓子をこれからも食べてくれるわよね?

ウインディ:
…………。


マドローナ:
まあ、それはいいとして。
これを廃棄処分なんかにしちゃ、ダメなのよ。
だからウインディ。今から口をあけなさい。
食べないというのなら、あたしが食べさせてあげるわ!

ウインディ:
や、やめてくださいよ~~~!!!




マドローナ:
無駄な抵抗をするんじゃないよ。
ほら、口を大きくあけるんだよ。
そうじゃないとあたしの作ったおかしがわからないだろう!!



ウインディ:
やめてください~~~!!!!



マドローナ:
じたばたするんじゃないよっ!全く…



~そのころ~


やみっち:
なんだろう。
今は屋敷のどのあたりにいるのかしら。
大きなお屋敷だし、迷路のように入り組んでいる。
こんな広い屋敷を一人で住んでいるのも
変なのよね…外見はこじんまりしているわりに、
中は想像を絶するほどの広さなのよ…


やみっち:
さすがの私もこんなに広い屋敷に
住んでみたいと思わないわ。
毎日、移動に忙しいかもしれないし。
それにここで主人に従う執事やメイドの
気持ちを恐ろしく受け止めることができるかもしれないし

やみっち:
でもここまで衛生管理の行き届いてない場所はどうなのかしら。
たしかに広い屋敷だけど、あの魔女一人じゃあ、
家事のやりくりなんて、ろくにできていない可能性もあるわ

でもこの辺の部屋までは案内されていないわね…。
というかそもそも紹介する気なんてなかったかもしれない。
この見事に散らかっている有様だと…

片づけられない症候群様様だわ……。




やみっち:
私だったらもっときれいに片づけるわね。
シェイドちゃんとだくねすさんと協力してね


やみっち:
でも、なんだか気になるわね。
無造作に置かれているものの、
なにかが隠されているような感じがしている…

調べてみよう…。


やみっち:
うぐっ、なにかしら。
なんだか得体のしれないものが
出てきたわよ。苔がついてるし、カビくさい…。
どんだけ放置していたのかしら…。


本当は触りたくないのだけど、触るしかない。
しかもこれがお菓子って言うんなら
なおさら想像したくないわね…。

…お菓子だったらここまで腐らせないわよ!


やみっち:
あれ?なんか紙切れ?みたいなのが
出てきたわ。これってなんだろう…。

……これ、子供が描いた文章だね…。
なになに、おばあちゃんに手招きされて…

手招き…?



「くらいくらい森の中にいたの。
でもここがどこなのかわからないの…。どうしたらいいんだろう。
それすらもわからなかった。ただただ前を進み続けた…。
でもこわかったんだ。遠くからけものの鳴き声だって聴こえる。
それがだんだんと近づいてくるような気配もしたんだ。
でも他に逃げ道なんてないし、このまま進むしかなかった。
そしたら、見えてきたんだ。お菓子の家が…」


やみっち:
ここで終わっている…。
一体、これを書いた子の身になにがあったのか。
それも想像しやすいものだわ。なにせ工房にあるあからさまに
子供が入れてしまうスペース…。
もしかしたら、魔女の誘惑によって、子供は…


やみっち:
このままではウインディちゃんも
そうなってしまうわ。
なんとかして助け出さなくちゃ…!!!



って、うわっ!なにかしら。
これは…ただの壁じゃない?じゃあなんだって言うのかしら…


やみっち:
でも先へ進めるんじゃないかしら?
この先へ進んでいいかわからないけど。
きっとなにかあると思うのよ

…おんっ?



(くぐるような音があたりに響き渡る)




やみっち:
うわっ!なになに?
なによ、壁の先にみえた道を進んだら
変なところにきちゃったわ。
ここはマドロミキャッスルなのかしら。
でもなんだか薄暗いわよ…。一体なにが…


やみっち:
まっ、こんなことあろうかとジッポライターぐらいは
持参しておいたわ。ホラーゲームなら懐中電灯がマストなんだけど、
今回は生憎、置いてきてしまったのよね。
探偵さんとしては準備不足だわ…



ナイトメアラジエート:
突然で驚かれたことでしょう。
マドロミキャッスルとは別の世界に
迷い込むなんて。
でも助かりましたよ。どうやら
この先に見たこともないような
人影を目撃しました。
それもどんなものかもわからない。
闇市様が来てくれたおかげでたすかりましたね

やみっち:
へえ、そんなものがいるのね。
じゃあ、元の場所に戻るには
まずはこれをクリアしろと?



ナイトメアラジエート:
そういうことになりますわね。



やみっち:
おーし、やったるわよ。
探偵さんはよくわかんない存在を
退治するのも一つのお仕事なのよ!
やってやらぁ~~~~!!!


やみっち:
さあ、出てきなさい…。
この私が相手になってやるわよ…


というか、なにか変なツボが置かれているわね。
このツボはなんなのかしら。
こんなにたくさん置かれている意味は…



やみっち:
んっ?なにかしら。
ツボが一瞬、動いたような…

気のせいかしら~?



???:
のんのんノン…気のせいではありません。
残念なノープライズ、ノープリーズ。
それも残念なオリンポスしかひけませんでら…




やみっち:
は?

???:
やあやあ、孤独のセレナーデ。
どうして微笑むんだい?もっと響かせてくれても
いいだろう?僕には必要なんだ。
この体が腐りきってもさ…子供たちの夢なんだ…


???:
でも今の僕にはそれが足りない…。なぜか足りない。
なぜかわからないけれど、それが僕に不足しているんだ。
音だって不協和音しか出せない状況にある…


あー、どうしろっていうんだ…



やみっち:
なんだかよくわからないけれど、思っていたものよりも
違うような…。でもゾンビのような見た目をしているわ。
普通に喋っているあたり、意識はしっかりしているのかしら…。


???:
あ、もうダメだ。どうにもならないんだ。
僕の音楽もハーモニーも、なにもかもが認められないんだ…。
終わりだ…世界が終わってしまうんだーーーーー!!!



やみっち:
あのぅ、どうかしたかしら。
すごい嘆いているようだけど。
なにかあれば手伝うけど…



???:
手伝う?


ヨルザン・ディコード:
そんなのは不要だぁぁぁ!!!!!



やみっち:
わぁぁあ!!!!





蘇るメロディーの屍
VS「ヨルザン・ディコード」





ヨルザン・ディコード:
なぜ人間がいるんだ。
ここにはいちゃいけないんだ。
人間はとっくに滅んだはずだ。
憎きメロディーを残してな!!

これでも食らうがいい!!!



やみっち:
ちょっと、落ち着きなさいよ。
たしかに突然かもしれないけどさ。
私は心配してあなたに声をかけただけなのよ?!



ヨルザン・ディコード:
それがなんだい。
そんなのただの残響にしか聞こえないね。
どうせ、僕のブレイブハートは時代遅れなのさ。
こんなメロディー、もう死んだものとして扱われる!




ヨルザン・ディコード:
キミにはそんなものがわからないんだぁぁぁああああ!!!!
ここでくだけちってしまええええええ!!!


やみっち:
わあ…とんでもない地響きだわ…。
どのタイミングを定めればいいのかわからないわ。
でもこのままじゃ一方的に地響きでやられてしまうわ!!


やみっち:
なんとかして彼を止める…方法を…方法を…

あ、あったわ。あのツボよ。
こんなに置いているのならなにか意味があるんだわ。
そうね、このツボをゆらゆらと…揺らして



ヨルザン・ディコード:
ちょっと待って。それは僕の大切なツボだ…
割ったら大変だ…。やめろ、やめておくれ…。
割っちゃだめだよ…割っちゃ…




やみっち:
だったら大人しくしなさいよ。



ヨルザン・ディコード:
うぐぐ、それはできない。
そんな卑怯な手で僕を脅かすだなんて…!!!


やみっち:
全然卑怯ではないけど…




ヨルザン・ディコード:
そのツボは僕の命そのものなんだーーーーーーっ!!!!!





ヨルザン・ディコード:
はぁ…はぁ…。聞いておくれ。
僕はこうして、この世界にいる。
でも本当は僕のみていた世界で暮していたのだ。
でも僕の過程を脅かし、ダメにしてきたんだ。
自分は音楽の道に憧れていたのに、まわりは
一切、それを認めてくれなかった…


ヨルザン・ディコード:
でもそれではただのちっぽけな夢さ。
だから僕は隠れて音楽を続けていたのさ。
でもいつしか、僕は朽ちていなくなった。
でも大好きな音楽を諦めきれず、今に入るんだ。
そのツボはね、この屋敷にいた婦人から
プレゼントされたものなんだよ。



やみっち:
夫人?




ヨルザン・ディコード:
…なんていう名前の婦人かは忘れたけど、いい人だったよ。


やみっち:
そうなんだ。あなたにそんな過去があったなんて。



ヨルザン・ディコード:
…それで、キミにお願いがある。
僕の演奏を…聴いてくれないかい?一度だけでいいから…


やみっち:
……わかったわ…


こうして屋敷内には
ヨルザン・ディコードが奏でるメロディーが静かに鳴り響いた。
それはどこか懐かしくもレトロな音色であった…





012「ハロウィーンオータム」パート4
「マドロミキャッスル」

やみっち:
戻って来たわ。まさか屋敷内にはもう一つ、
不思議なことがあったみたいね。彼は大丈夫なのかしら。
もはやゾンビとしても、いつまでも消すことのできない
過去を背負ったままだし…

やみっち:
もしも、時代が違受ければ、彼の現役時代の姿を
みていられたのかもしれないわね…。
とまあ、無駄ではないものの、寄り道をしてしまったわ。
こうしている場合じゃないの。ウインディちゃんを助けないと…



やみっち:
あれっ?
ちょっと待って。なんだか違和感を覚えないかしら…。
さっきまでここにはものというか、いろいろ散乱していたわよね。
それをみて、ちょっと不衛生だなと思っていたのに。
一体、なにが起きたのかしら…この屋敷に…





マドローナ:
さあ、ウインディ。
こっちのドレスを着なさい。
そんなみすぼらしい服装では目立たないわよ。


ウインディ:
赤いドレス……ドレス…。
うぅ、私はあまりそんな服装は
着たことがないのであまり似合うものかと
思いませんが…。


マドローナ:
あら、マドローナが選んだ服が似合わないと?
そんなことないわよ。似合うはずに決まっているわ。
ほら、これなんかどうかしら。西洋の豪華な服よ。
こんなものを着れるなんてお嬢様だね。
あなたもシンデレラのようにみすぼらしいままは
嫌なはずよ。だからあたしが衣装で綺麗にしてあげるのよ。

ウインディ:
いえ…それは別に…。



マドローナ:
別に、じゃないでしょう。
あたしがしてやるんだから遠慮なんていらないわよ。
ウインディはきっと喜んでくれるに違いないわ!





ウインディ:
いや私は…その…そんな衣装に
着飾るなんてことはできないですよ…。
それにあまりそんなものに興味がないというか…
そこまで…


マドローナ:
そんなことないわよ。
ほらほら、ウインディ。
まだまだ試しに着てみたいもの、あるでしょう。
あたしがこの中からさらに選んであげましょう




ウインディ:
そんなことよりこの部屋から出してください。
いつまでこの部屋にいるんでしょうか。
私はそろそろ外の空気が吸いたいです。


マドローナ:
ダメよ。ここはウインディの部屋なのよ。
下手にここから出したら、逃げちゃうでしょう


ウインディ:
に、逃げたりなんてしませんよ。



マドローナ。
それだったらあたしと行動しなさい。
単独行動なんて、こっちで監視できないから大変なのよ

それじゃあ次は工房にいきましょうか。



ウインディ:
工房?

ああ、焼き菓子を作っていたところですね。
ですが、正直お腹は空いてませんよ。
作るだけならいいですが。


マドローナ:
ふふ、ただ作るだけじゃつまらないわ。
ウインディにはとっておきなものを作ってもらいましょう。
あたしの作った焼き菓子は美味いのはもちろんのこと、
今度はウインディが作る焼き菓子の味わいたいの



ウインディ:
私のは…上手く作れるか…微妙なところですが……。
まあ、マドローナさんが食べたいというのなら
作ってみたいです。
ですが、それには条件をつけてもらわないと
なりませんかね。タダで動かさせてもらうわけには
いきませんので

マドローナ:
なるほどねぇ。
そういうことならなんでも聞いてあげるわよ

ウインディ:
じゃあ、条件は…「外に出してください」…です。
私はこのままずっとここにいられないのです。
分かってください。お願いします。



マドローナ:
…なるほどねえ。そんなに外に出たいわけね。
わかったわ。ウインディ、逃がしたくはなかったけれど、
ウインディがそこまで頑張るというのならちょっと
ぐらい、許してあげようかしら。
その代わり、あたしが満足できるほどのお菓子を作るのよ

ウインディ:
分かりました。


ウインディ:
私にできるでしょうか。
人に作れって頼まれても、そこまで自信というものは
からっきしないとしか言えないのですよね…。
私は確かに調理などはできます。
料理を作ること自体、好きでしたからね。


ウインディ:
それじゃあ、エプロンに着替えましょうか。
私が普段使っているものは置いてきちゃいました。
でもしっかりここにあるエプロンが
ご用意されているんですね。そういうところは
しっかりしているのに、食べきれないほどの
量を用意するなんて。それも廃棄処分と
なっていく…。私も廃棄処分なんかに
なるまで作りすぎないです。というか一人で
作るのだったら、そんなに作りませんからね…。


マドローナ:
あら、ウインディ。
準備が整ったみたいね。
じゃあ、さっそくウインディ特製の
焼き菓子を作ってもらおうかしら。
あたしは味わってみたいんだよ…。


ウインディ:
それで、調理器具はどこでしょうか?
見当たらないのですが…


マドローナ:
調理器具?そんなものは必要ないわよ。
ウインディには調理してもらうからね…。



ウインディ:
ちょ、調理器具がなければ作れませんけど。
オープンもないしで…手作りでは作れません!

マドローナ:
なにを言っているのよ。そんなものは必要ないわ。
不要よ、不要!さあ、ウインディ。
今すぐ作るのよ!今すぐ…



ウインディ:
ですから…


ウインディ:




マドローナ:
調理器具なんかいらないのよ。
さあ、ウインディ。
ここで作ってもらおうかしら。

ウインディ:
えっ?


マドローナ:
さあ、この中に入ってちょうだい。
そしたら、美味しい焼き菓子の仕上がりよ。


ウインディ:
えっ?えっ?えっ?

マドローナ:
さあ、入るのよ、ほら、早くしな。
なにぐずぐずしてるんだね。
今から美味しい焼き菓子を作るんだよ。
ほら、さっさと。お年寄りは待つことが
苦手なのよ!


ウインディ:
で、でもぉ…この中にはさすがに……。


マドローナ:
だからさっさとしなさいって言っているでしょう!!!
もうこうなったら、あたしが協力してあげるわよ。



(ウインディの背中を押す)



ウインディ:
わ~~~~!!!!



マドローナ:
さあ、大人しく焼き菓子となりなさい。ぺろり……


ウインディ:
出してください!出してください!!


マドローナ:
出すわけないわよね。
さあ、熱くなれ~、熱くなれ~~


ウインディ:
出してください~~~~!!!!!




???:
もう、うるさい子だね。
さあ、さあ、今からじっくりと
楽しもうかあ…



ウインディ:
!?


マドローズ・ヴァニア:
くくく、久しぶりだね。
生身の子供を頂けるだなんて…。
嬉しくて、まるで若いころを思い出したよ。
あてくしに必要な栄養分がね…




マドローズ・ヴァニア:
ウインディはあてくしの大切な愛娘同然さ。
でもこんなにおいしそうなら、残しておいては
とっても勿体ない…




マドローズ・ヴァニア:
だぁからぁ!このあてくしが
心行くまで味わってあげるんだよ~~~~!!
さあ、ウインディ。
そこで大人しく焼かれな。そして
あてくしがげっぷんりしてあげるわよ~~~



ウインディ:
いやぁぁ~~~~~!!!!!


老いる魔法の化身
VS「マドローズ・ヴァニア」


やみっち:
!?

マドローズ・ヴァニア:
泣き叫んでも無駄よ。
あなたはあてくしが食べてあげるんだから。
今までは美味しい子供たちを平らげてきたけど、
あなたのようなものは格別に違いないわ。



マドローズ・ヴァニア:
だから、ここで食べないといけないんだわ。
さあ、ウインディ。
泣き叫ぶのは終わりよ!


ウインディ:
出してください。熱い…!あちゅい…!



マドローズ・ヴァニア:
いい感じにやけているわね…。
さあ、その調子で焼き菓子になるのよ。
ウインディ焼き菓子だなんて楽しみだわ…。



やみっち:
ウインディちゃんの悲鳴がしたわ…。
あのマドローナって女になにかされているんだわ…。
助けなくちゃ…


マドローズ・ヴァニア:
さあ、どんどんバーニングよ。
ウインディ、あなたは灰になっても
食べつくしてやるわよ。



ウインディ:
あちゅいです…あちゅい~~~!!!



マドローズ・ヴァニア:
いいわよ!もっと燃えなさい。
そしてあてくしが味わうわ。


やみっち:
ウインディちゃんになにをしているのかしら。
マドローナ。やっぱりあんたは子供たちを誘拐しては
お菓子なんかに変えて、食べているんでしょう。
そしてこのマジカンツフォレストでは人知れず
行方が絶える事件が起きていることがあったそうね。
その元凶はやはりあんたなのね。
許さないわ、私のウインディちゃんを喰らおうとするなんて…





マドローズ・ヴァニア:
ふんっ、それがどうした。
小賢しい小娘のくせに生意気ね。
あてくしはあんたみたいな生意気は嫌いね。
お友達はこの通り焼かれているのさ。
だから助けようもないわ。
悪いけど、あんたは出禁よ!出ていきな!


やみっち:
出ていくわけなんかないじゃない…。
あんたを倒して見せるわよ。
くらえ、ゾンビブラスター!!!



マドローズ・ヴァニア:
そんなへなちょこ攻撃、あたらないよ!!
このへたくそが!!!あてくしは
倒すことができないんだよ!!!!


やみっち:
くっ…。


マドローズ・ヴァニア:
あんたの邪魔さえなければ大人しくウインディ焼き菓子を
頂いていたところなのに。邪魔ねぇ。
このまま焼き尽くしてやろうか~~~~!!!!


やみっち:
やばいわ。あそこにウインディちゃんがいる。
でもすごい炎よ…。一体どうしたら…

いや待てよ。
たしか、あそこに蛇口みたいなものが…見えているわ。

…あれを使えば…




マドローズ・ヴァニア:
なにをごちゃごちゃ考えているんだね。
あんたに勝ち目などない。死ねぇ~~~~!!!!




やみっち:
ふん。そんなの怖くないわよ。
ウインディちゃんを助けるためなら
お化けが相手でも容赦などあらずだわっ!!



やみっち:
えいっ!

この蛇口を捻れば…おそらくだけど、水が出るっ!!





マドローズ・ヴァニア:
えっ…なにをしているの?




やみっち:
炎を消すわよっ!!!!




マドローズ・ヴァニア:
うぎゃああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!



(大爆発する音)


012「ハロウィーンオータム」パート5
「マドロミキャッスル」

ウインディ:
はぁ…。どうなるかと思いましたよ…。
それにしてもマドローナさんが…。
魔女というか妖絶な魔女でしたよ。
そして私に調理させるというか、
食べさせる方ではなく、食べられる方だったんです…。


やみっち:
いい人そうに見えたのがダメだったのよね。
だって、扉をあけたときに、あんなものが
目の前に飛んできたのよ。明らかに脱走者の
逃亡を阻止するようなものじゃんか…。

ウインディ:
それで捕まえた子供をあのような中に
入れて、焼き菓子にしていたんですね。
カニバリズムっていう次元じゃあないような
感じですよ。全く……。



やみっち:
子供を誘拐して、最終的に食べるなんて
一体どんな理由があったのかしらね。
こんだけ大きなお屋敷に住んでいるわりには…。


ウインディ:
マドローナさんの過去を知れないのは残念ですけど、
きっと想像にもできないような過去を
歩んできたのかもしれませんね。
それを私らで空想上から想像しても
イメージにたどり着けませんけど…。


やみっち:
う~~~ん。なぞを解きたいのに解けないじゃないの。
謎は謎を残していいのかしら。


ウインディ:
ていうか今更気づいたんですが、なぜ探偵さんなのですか?


やみっち:
えへへ。ロンドンでウインディちゃんが
名探偵ごっこしてたじゃないの。私もそれに
乗っかってやっているわけだよ。似合うでしょう…


ウインディ:
似合うと思いますよ。
むしろ私よりも闇市さんのほうがしっくり
来るんじゃないでしょうか?


やみっち:
えっ~?
そんなことないわよ。むしろ
私だったら名探偵ウインディちゃんの
助手をするわよ。ウインディちゃんが目立たなくちゃ、
意味がないじゃないの。


ウインディ:
そんな、私はあれはただその場のノリで
やっていただけで…本気にしているわけでは…。


やみっち:
その場のノリは大切だよ。
だから、いろいろなことをしようね。
ウインディちゃん。



ウインディ:
そういえば…闇市さん。
今の季節は秋…ということは
ハロウィンの時期ではありませんか?



やみっち:
あっ!言われてみれば…そうだわ!!!
って、今いるこの場所がぴったりじゃんか。
ねえ、ウインディちゃん。
このあたりを改造して、ハロウィンパーティーを
開きましょうよ!


ウインディ:
えぇぇ~~~!ていうか二人だけですか?
それって…

やみっち:
当ったり前じゃんか!
さあ、さあ、楽しいハロウィンパーティーにするわよ~~~!!!!




こうして私と闇市さんで
ハロウィンの装飾をそこらじゅうに飾り、
ハロウィンパーティーをしたのでした。

…いろいろ、ありましたが…甘い誘惑というものに
導かれてはいけないと、腹に思いました…。





【次回予告!】

ラジエート:
マジカルな魔法がみえてきそうな森の奥で
不思議な邸宅で起きた不思議な現象。

それでも翻す力を持つウインディ様と闇市様は
如何に勇敢であるかがうかがえましたわね。
そして最後には楽しくハロウィンパーティーだなんて。
ああ、わたくしもそこに混ざりたい気分です!

ですが、ウインディ様が焼き菓子にならなくて済みましたね~。


さてさて、次回の舞台は…
空高く地にあるという、空の世界?!
そこには天空の世界さながらの景色が広がっていた。
ここにはある言い伝えがあるというらしいですわ。

果たしてウインディ様はこの地でなにを見ていくのでしょうか?



次回「空の旅、目撃せよ巨人編」です!
乞うご期待くださいませ。

ラジエートでした

 

 

 


【おまけ】

No.019 マドローズ・ヴァニア
マジカンツフォレストの奥に佇む人知れず
薄暗い屋敷に住まう魔女。それはそれは
悲しい過去を背負い、子供に恵まれなかった
人生の失敗から、数多のカウンセリングを受けた。
その結果、お菓子に囲まれた生活には
見えてはいけない子供たちの夢をみるようになった。

夢の中でこの森の中へいざなわれたら、悪夢のはじまりの合図。


No.032 ヨルザン・ディコード
ゾンビラインズ社で確認されていた正体不明の存在。
それはいつしかのメロディーの世界に囚われていた
残留思念の成れの果て。
朽ちた体に記憶を取り戻しつつ、いつまでも
諦めない夢に向かっていた。
ゾンビとなっても、彼の夢は続いていくものだろう…