010「高い山の絶景!編」パート1
「ウインディングロード」

ウインディ:
闇市さん、前回のことはお疲れ様です。
私もそれなりの努力を尽くしましたし。
ああいう気になりそうな異変そのものを
完全に解決出来て、満足です。

やみっち:
フフフ、あの執事も納得してくれたわ。
それでウインディちゃんはどうだったの?
なんかそっちも忙しいとか聞いたんだけど?

ウインディ:
はい、いろいろありましたが…。
ともあれ、前回の件はこれで済んだことですし、
たまには浮世の疲れを取りましょう。

やみっち:
エヘへ…ウインディちゃんなら
そういうと思ったよ。
そーそー。疲れきったあとは
二人きりで…じっくりゆっくり過ごすのよ…


ウインディ:
そうそう。
丁度以前から気になっていたのですが…
この近くに空気の澄んだところがあり、
絶景がすばらしいと…それも見栄えもいいし、
登山にももってこいなスポットなんですよ。

やみっち:
空気の澄んだところ…?
それって自然が多いところよね。
う~~ん、疲れを取る為の
癒しともいえないけど…


ウインディ:
ですが、一度はいってみたかった場所なんです。
闇市さんの意見も聞きますし。
いやなら別のアプローチもあるので…

やみっち:
いやいや!別にいやとか思ってないし、
ウインディちゃんの口からそう出るのなら
全然大丈夫だよ。私も登山に興味あるし。




ウインディ:
なるほど。それでしたら話も早いですね。
私が行きたい場所は…バックパーカーの聖地とも
呼ばれている過酷な山岳地帯「アルプスサミット」です!!


やみっち:
アルプスサミット…なんだか聞いたことがあるわね。
たしか標高4,810.9mある山でしょ?
あんな高い高い山に登るつもり?
ウインディちゃんもなかなかワイルドだね。

ウインディ:
そこまで登る…予定はまだ組んでいませんが
なんでも近くに民宿やロッジがあるようです。
私達が今いるところでもこういった
雪国周辺…寒いのは当然ですが、こういう
時期だからこそいってみたいんですよね。


やみっち:
へぇ、泊まるところもちゃんとあるんだ。
でもたまには登山もいいかもしれないわね。
わかったわ。そこへいきましょうか。
それにしてもアルプスサミット選ぶなんて。
登山する山なんていろいろあると思うけど。


ウインディ:
フフフ、その数あるなかから
有名なスポットといえばなんですよ。
なんでもそのアルプスサミットの
頂きにはある言い伝えがあったりするようです。

やみっち:
言い伝え?

ウインディ:
はい。
その言い伝えとは長くて険しい
道のりを突破したものだけが
頂きの先で報われるというもの。
これは所謂…試練というやつですよ。

然し、それを成し遂げたものは
未だにいませんし、記録も存在しない。
だから、各国から挑戦するツワモノが
いるんですよ。

やみっち:
私たちもそれに挑戦するってこと?
別に長距離移動が苦手じゃないし。

ウインディ:
いえ。別に世界記録更新とかの
話ではなく、その言い伝えが気になりまして。
ぜひともこの目で確かめたくて。

やみっち:
なるほど。だったら私も気になるわ!
ウインディちゃん、いこうよ!



自然あふれた高山
「ウインディングロード」


やみっち:
ここがアルプスサミットへ続く
険しい山道なのね。でも思ったより、
空気がいいわね。それに…景色がいい。
もーちょい絶頂でみたいけどこの辺でも
いい写真とか撮れそうだわ。

ウインディ:
そうですね。
間違いなく標高が高いのがわかってきます。
しかしまだまだ山の麓ではないところ。
それにこの山脈こそ各国からみえる…
昔はこの山に伝説があったといわれるほど。
言い伝えもそれらの類なのか…

やみっち:
それも考えられるわね。
でも険しいけど、道は舗装されるじゃん?
観光客や遠くからきた登山家を
考慮している部分もあるわよね。

ウインディ:
有名な穴場らしいですし。
ですが、高度が高くなるほど
道も道無き道になり果てることでしょう。

やみっち:
あれ?ウインディちゃん。
あそこに木の実がなっているよ。
あれって、食べられるのかな?

ウインディ:
ちょっと待って下さい。
そういう自然に実ってるものには
たまに毒だったり、食中毒になりかねない
ものだったりします。その場で食べるよりも
あとで検査した方がいいですね。

やみっち:
なるほど。美味しそうだし、
あとの楽しみにしておくよ。
で、ウインディちゃん。
今日は登山家らしい格好にしたわ。
似合ってる?

ウインディ:
はい。闇市さんは
いつもオシャレなところを
気にしているイメージですが
今回はそういったところがない
田舎ですし…その服装も
はりきっているんですね。

やみっち:
もちろんだよ。
こういう冒険的な服装もたまには
ありかな。でもウインディちゃんと
ペアルックみたいだし、良いカモ~~!!


ウインディ:
アハハ…でも自給自足としては
自然に自生するものも食べれるものか
毒があるかをきちんと調べないと。
以前、図書館で図鑑を借りたのが正解でした。


やみっち:
へぇ~、いろいろと詳しく
書かれているのね。それでこの辺に
自生するのはどれも検査が必要か…

ウインディ:
さっきの木の実も
空気が澄んだところだから
見た目は美味しそうにみえるんです。
何も知らないまま食べてたら
お腹を壊しているところでしょう。


やみっち:
そ、そうだったのね。
ウインディちゃん、ありがとう。
あのまま丸呑みするところだったわ。


ウインディ:
みてください。綺麗な清流。
そして滝つぼ。小さいですけど
この滝の音が自然の尊さを
教えてくれます。こういった自然
溢れる場所はどうして安らぎという
ものを与えてくれるんでしょうか。


やみっち:
うわぁ、めっちゃ映えるスポットじゃない。
ここでピクニックとかしたら楽しそう。
結構、アルプスへ辿るまで見所ありそうね。

ウインディ:
しかし標高が高くなるにつれ、
寒さもコールドアップ。
ここで滝に打たれる修行をしたら
たまらないでしょうね。

やみっち:
ウインディちゃん!
あんなところにみたことがない
動物がいるわ。この山に
住んでいる動物かしら。

ウインディ:
あれはマーモットですね。
この辺に生息しているんですけど
警戒心が強くて、近くだけでも
怯えてすぐに逃げてしまうんです。


やみっち:
そうなのね。
野生動物たちもこんな高い
山で生活するなんて大変かも。
でも生きるための獲物はいっぱいかも。


ウインディ:
おや、開けた道に出ました。
ですがこの地点でも中間地点みたいです。
少し休憩していきませんか?
ロッジまでまだまだかかりそうですし。

やみっち:
そうだね。
しかし先の滝つぼといい…
自然と触れ合うことができる…
きてよかったわ…

ウインディ:
闇市さんは自然的なものに
興味を示しているんでしょうか?
わりと市場で職に全うしている身では
こういった自然を見る機械も少ないかと。

やみっち:
ええ。そうなのよ。
私はこういった自然が好きだったりするわ。
嫌なこととか…すぐに忘れられるんだから。

そうだ。開けたところに出たのはいいけど
大きなため池?湖があるわ。
こんな凸凹した山岳地帯に
湖があるなんてね。

ウインディ:
バランスよくできたのでしょうか。
それにしても湖も綺麗で濁っていたりは
しませんね。ここで一泳ぎしても
悪くはなさそうです。


やみっち:
あっ、ウインディちゃん。
みてみて、あれ白鳥じゃない?
かわいい~~
魚を探しているのかな?


ウインディ:
番いみたいですね。
子供をつれていますね。
白鳥さんたちも、この湖で
泳げるのが気持ちいいくらいでしょう。


やみっち:
そうだね。今、わたしたちみたいに
自然とにらめっこして、自然の尊さを知る…
益々自然のことが好きになりそう…

んっ?

ウインディ:
どうされましたか?


やみっち:
ねぇ…ウインディちゃん。
気のせいかしら。なんだか
一瞬だけ、湖から波をうったように
見えたんだけど?


ウインディ:
波をうった?
それは魚さんが泳いでいるんじゃないでしょうか。
さすがに海にいるような感じのではなく…


やみっち:
でもこんなに綺麗な湖だし。
大きな波にしては魚が起せるものなのかな…
ちょっとまどろんでいたのかしら…

って、また波をうったぁ!?


ウインディ:
私もはっきりみました。
あ、あれは流石に魚さんが
うった波じゃないでしょう。
あんな感じに打つならもっと
大きいのがいるはず。

やみっち:
もしかして湖のヌシなんじゃ…
ヌシだったら大きくて当然じゃない。
もしかして私達がここにいるを気付いて?

ウインディ:
どうなんでしょうか?

???:
ウインディちゃん…ウインディちゃん…

やみっち:
ひっ!ちょ、ちょっと待て。
ウインディちゃん、どこからか
「ウインディちゃん…」って呼ぶ声がするよ。
ウインディちゃん、この湖に知り合いでもいたのぉ?!


ウインディ:
そ、そんなわけないですよ。
ですがなぜ私の名前を?空耳??


???:
ウインディちゃん…ウインディちゃん…

ウインディ:
た、確かに聴こえる。
そして私の名前を呼んでいますね。
なぜ私の名前を知っているかわかりませんが、
誰か溺れているのかも…助けなくては!



やみっち:
あ、危ないよ。声の主が怪物だったら
どうするの。命を奪おうとしているかもだよ。

ウインディ:
わかっています。
溺死するところだったら大変ですからね!!
今、行きますよ。



???:
ばぁ!!!驚いた?!

ふたり:
うわぁぁあ!?

やみっち:
わ、わ、わてりちゃん…?
というかどうしてここに?

わてり:
フフフ…ウインディちゃんを
探していたの。でも見つからなかったら
いろいろ探し回って、ようやくここで
見つけたんだ。
闇市ちゃんも一緒なんだね。

ウインディ:
わ、わてりちゃん…驚かせないでくださいよ。
てっきり誰か溺れそうになっていたと
思いました。

わてり:
えへへ、ごめんね。
思った以上に泳ぎ易い湖だったからつい…


やみっち:
でもどうしてわてりちゃんが
こんなところにいるの?

わてり:
えへへ、わたしは水さえあれば
どんなところに行くことができるの。
だから水から水を伝えば
移動できちゃうんだよ。

やみっち:
そ、そうなんだね…
それでわてりちゃんも
この山が気になっていたの?


わてり:
それもあるかな。
というか…あるものを
渡してきなさいと
ゴメスのおじさんにいわれたんだ。

ウインディ:
あるものですか。
この先に丁度ロッジがあるんです。
そこにいる人に渡すんですね。

わてり:
うん。
ウインディちゃんも見つかったことだし。
だったらわたしも同行したいなぁー。


やみっち:
もちろんいいよ。
それにしても…わてりちゃん。
さっきからなに持ってるの?

わてり:
あ、これ?
さっきの湖で泳いでたお魚。
焼いて食べるとおいしいよ。


やみっち:
丁度、おなかが空いていたわ。


010「高い山の絶景!編」パート2
「ウインディングロード」


ウインディ:
ふぅ、それにしてもおいしかったですね。
海で採れた新鮮な魚もおいしいですが、
こちらはしょっぱいというか海のと
比べると味が淡白…でもそれが塩が効いていると。


わてり:
えへへ…山登りには飢えを凌ぐのも大事だよ。
それにしても…ウインディちゃん達は
登山家さんみたいな格好しているね。

やみっち:
ええ、登山するには
これくらいの格好もかかせないよ。
よかったらわてりちゃんもどう?

わてり:
わたしに似合うかな?

やみっち:
大丈夫だよ。
ほら着させてあげるわ。

(わてり服装チェンジ中…)


わてり:
わーい。わてりも登山家さんみたいー!!


やみっち:
すごいぴったりじゃない。
ウインディちゃん、そろそろ山郭に
出そうよ?

ウインディ:
道中もそこまで険しくありませんでしたね。
しかしアルプスサミットはそれを凌ぐと
言いますから。そのためにも拠点の
確保は重要です。山をなめてはいけませんよ。

やみっち:
そうだね。
この辺は起伏がまだ穏やか…
山の頂上に近くなれば寒いかも…

わてり:
???


ウインディ:
つきましたよ!
ここがウインディングロードの中間地点
と言われている山郭です。
ログハウスのような民宿がありますね。
多くの登山家の休憩地点でもありそうですね。

やみっち:
あらら、湖のすぐ近くだったのね。
でも陽が暮れてきているわ。
今夜はここで泊まりましょうか。

ウインディ:
そうですね…

???:
…………。


やみっち:
ウインディちゃん…
今日はホクホクのカレーライスだよ。
この山郭で育った作物を
買ってつかってみたの。


ウインディ:
わぁ、カレーライスですか!美味しそう!
丁度寒くなってきましたので。

わてり:
それにしても冷え込んできたね。
流石に夜の時間帯に登山なんてしたら
凍えてしまうよね。

ウインディ:
それに夜だとなにが出るか
わからないし、いろいろと危ないですよ。
なので登山途中にこういった
ロッジがあると大変ありがたいのです。


わてり:
うん。
この辺に結構、動物さんがいたし。


やみっち:
さあ、カレーライスだよ。
召し上がれ♪


ウインディ・わてり:
いただきます!!!


(コンコンとノックする音)


やみっち:
ん?誰かしら…
はーい、どなたかしら?

!!!!


???:
夜分遅くに失礼します…
な、なにか食べさせてもらえないでしょうか?



やみっち:
ど、どうしたの?
他の民宿は?もしかして一人だけ?
それだったらすぐ用意するわ。

???:
ありがとうございます。
他も訪ねてみたのですが、断れてしまい。
もう何か食べないと飢え死にしそうです。

やみっち:
さあ、カレーよ。
これで食べて元気出しなさい。

???:
ありがとうございます…
こんな私を匿ってくるなんて。

ウインディ:
すごいやつれていますね。
一体なにがあったんでしょうか。
詳しく聞かせてもらえないでしょうか。


バーストⅡ:
私の名前はバーストⅡと言うんです。
ここスイスの領土に元からいたわけではないのですが、
今はフランクフルトに住んでいました。
ですがこの先の頂上に親戚が住んでおりました。
そこへ向かおうとしていたのです…


ウインディ:
それで…お腹が空いてしまったので
誰かにごちそうしてもらおうと
していたわけなんですね。
夜も遅いですし、食べさせないわけにも
いかない。よかったら泊まってくださいよ。

バーストⅡ:
ここに泊まるんですか…。
それはやめた方がいいかと思います。

やみっち:
どうして?

バーストⅡ:
実は…この山に…出るんですよ。
恐ろしいのが…私はそれを知っていて。
それにここに泊まったが最後、その恐ろしいのに
狙われてしまったという事例があるようです。
あくまでも私が聞いた話なんですけど。

やみっち:
出るって…動物のことかしら。
そんな動物じゃない恐ろしい怪物が
実はこの近くに潜んでいました的なだったら。

わてり:
でも山郭ではそういった
噂話、出回ってないよ?
住民も普通にここで寝てるんだし…


バーストⅡ:
みなさんはまだ若いでしょう。
この山郭にいるのは大体が大人です。
私がいったそのおそろしい存在というのは
…要するに幼い子供を狙うんですよ。


ウインディ:
えっ?
た、確か私たちはれっきとした
子供ですが…それの対象に?



バーストⅡ:
はい…。
それでせっかくごちそう
してもらったというのに
空気の読めないことを言ってしまいましたね。
ですが、本当に気をつけてください。

それじゃあ…

ウインディ:
ちょっと待って下さい。
その恐ろしい怪物…でしたよね?
調べませんか?

バーストⅡ:
調べる…?

ウインディ:
こんなところでビクビクしているよりかは
その怪物を調べ上げるということです。
その正体さえわかれば、もう怖くなんてないはず。
それにそんなのがいると余計にここで
泊まるのが億劫になりますし。


やみっち:
そうだね。一泊するだけであっても
その存在を知ったからには気になるし。



バーストⅡ:
あわわわ…すみません。
本当に余計なことを言ってしまいました。
せっかくのお泊りムードが…



ウインディ:
余計なことじゃないと思いますよ。
そんな危険が考えられることを
知ったのはいいことですし。
それを知らずして泊まって
襲われたらそれこそ先にいってと
言うくらいのものです。



バーストⅡ:
そ、そうなんですね。
それじゃあ…一緒に
調べてくれませんか。

ウインディ:
でもあなたは…その恐ろしい存在に恐れているのでは?



バーストⅡ:
はい、恐れているのは恐れている。
ただくやしいんです。私には親戚がいますが、
血の繋がりはなかった。けれど家族として
両親として育ててくれた人がいました。
その人たちが私の言う恐ろしい存在に
殺されてしまったんです。

それからここへ訪れるときは
身の安全をしっかりしてから来ています。
ましてや被害者を増やしたくなんてないですし。

ウインディ:
なるほど。それは悲しいですね。
ですがこの山郭のこともありますし、
それ以上恐ろしい怪物がいるんですよって
辺りに知られたら、この場所の存在意義だって
危ういかもしれません。せっかくの穴場であるんですし。

バーストⅡ:
そうですね。
それでその怪物のことなんですが
この先のアルプスサミットに生息
していると思われるんです。
動物なのか何なのか、影のシルエットで
しか見た事がないので。

やみっち:
へぇ…ていうかあなたは
毎回というかこんな険しい道を
登山したり下山しているわけ?


バーストⅡ:
そうなんです。
ですが私の親戚はとてもいい人だから
苦に思うことはありません。

そしてその怪物をどうにかして
こらしめてやりたいものです。

やみっち:
でも待って。さっきはいこうかと
話したんだけど…
さすがに夜も遅いし寒いわ。
一旦、寝ましょう。
きっと今夜は何事もおきないから…

バーストⅡ:
わかりました…


010「高い山の絶景!編」パート3
「アルプスサミット」


天まで高い頂
「アルプスサミット」


※翌日の朝

やみっち:
うわぁ…ここから先が
本番となる山道…もはや
斜面がえぐいことになってるから
登るの大変じゃないの?

わてり:
断崖絶壁もすごそう。
あんなの落ちたら一たまりもないよ。


バーストⅡ:
気をつけてください。
命綱となるものもありませんから。
ここで命を落としてしまった
人もいると思うんです。
しかし親戚はこの辺の気候を
とても気に入ってます。

ウインディ:
麓の方は景色がいいし、空気も澄んでますし。
よほど田舎で暮らしたいという想いが
なければ険しい道をいったりきたりなんて
長い道のりですよね。

やみっち:
それで例の怪物とやらは
この麓に生息しているわけ?

バーストⅡ:
はい。
ですが…私が一度みたときは
まるで怪物だったのかどうなったのか
正直はっきりしていないんですよね。
怪物だったら怪物だと断言できるんですけど。

やみっち:
実際にこの目で確かめてみないと…
ていうかそもそもあなたの親戚は
なぜ頂上にあるわけ?
立地条件も良いとは思えないんだけど…


バーストⅡ:
親戚はこの山から昔から住んでいるんです。
住み慣れているわけです。外部から来る
私達にしては長い長い山登りなんですけどね…


ウインディ:
そうなんですか。
まあ、昔から住んでいるんだったら
険しいというよりも
知っているから淡々と登れるかと。
田舎育ちですとそういうのが
ずいぶんと慣れている印象ですもんね。

そういえばバーストⅡさんは
都会育ちなのですか?



バーストⅡ:
以前は親戚のところで暮していたのですが…
フランクフルトに住んでいる叔母が
引き取りにきて、長い間そこで暮してきたんです。
私的には山での生活がよかったんです。

ウインディ:
なるほど、じゃあバーストⅡさんも
山登り云々にこういうのは慣れていると。
そこで問題となっているのが例の怪物ですよね?


バーストⅡ:
はい。親戚には恐ろしい怪物が
存在しているから夜遅くまで
遊ぶなといわれてきました。

ですが昨日も言ったとおり、
私の両親を殺したのがその
怪物なのかもしれない…


やみっち:
それであなたは
親が殺されたために
仇をとろうとしているわけ?


バーストⅡ:
ですが本当にその怪物が
両親を殺めたのかはっきりはしません。
まさかあなた達を巻き込んで
その怪物と対峙するなんて…

ウインディ:
いえいえ、そのような
恐ろしいのが存在している以上、
山郭に住んでいる住民さんにも
被害が及ぶかもしれません。
駆除するのが手っ取り早いでしょ?


わてり:
そんなことして大丈夫?
どこかの団体に何か苦情とか入れられない?


ウインディ:
その可能性も無きにしも非ず…
ですが手を尽くせる以上、
懸念すべき判断材料ですよ。
安全面を考慮したうえでね。


やみっち:
まぁ、いざ襲われたとしても
こっちから返り討ちにしてやるわよ。
怪物ごときでヒーヒー言うくらいの
弱者じゃあるまいし。


ウインディ:
おっと、道が急に斜面に
切り替わりましたよ。
気をつけてください。
このあたりは舗装もされてません。


わてり:
闇市ちゃん、手をつないでもいい?

やみっち:
うん、いいよ。
私もちょっと下を見るのが怖くなってきた…

バーストⅡ:
山上まであと少しです。
がんばって登っていきましょう…


…こうして順調よく登っていく
ウインディ達であったが……


やみっち:
はぁ…はぁ…ねぇ…もうそろそろかしら?
ずいぶんと登ってきた気がするわ。
なんなら道のないところを無理して
突き進んでいるみたい。
ロッククライマーじゃないんだからさ…

わてり:
そうだね。
それにしてもさっきから
野生生物がみあたらないよ?
標高が高くなってもいると
聞いたけど…


バーストⅡ:
このあたりは険しいですし、よほど
断崖絶壁を駆け回れるほどの動物さんじゃないと
厳しいですね。ですが一説にはこの地には…


やみっち:
ウインディちゃん?どうしたの。
止まっちゃってさ。
もうそろそろで頂上だよ。
もしかしてしんどくなったかしら?

ウインディ:
みなさん、耳を澄ましてください。
なにか落下してくるような音が聞こえませんか?


わてり:
落下するような音?



やみっち:
た、確かに聴こえるわ。
でも待って。落石?
そ、それだったやばいくない?


ウインディ:
…しかし急な斜面ですよ。
こんなところに大きな岩とか
落ちてきたら一たまりもないです。
ですが登山しているとそういった
予想だにしないことが起こるんですよ。

やみっち:
ていうかひゅ~~んって音しない?

ウインディ:
えっ?

(大きな岩が落ちてきようとしている…)


ウインディ:
うわぁぁ…!!お、大きな
岩が落ちてきました!み、みなさん避けてぇ!!


わてり:
あんなのどうやって避けるの~~~!!



バーストⅡ:
み、みなさん落ち着いてください。
そんなところで暴れると
頭から落下してしまいます…

やみっち:
ここは一旦冷静になろう。
冷静になって考えるのよ。
あの落石をどうしたらいいか。

ウインディ:
流石に怪力じゃありませんし、
ぺちゃんこにされちゃいますよ。

やみっち:
それにあちらに移動すれば
落石の心配がないかも。
みんな、急いで…あそこに移りましょう。

わてり:
あぶないっ!!目の上に落ちてきているよっ!!!



???:
…じゅるり…
存分に楽しませてもらうわ…


やみっち:
ふぅ…ここなら問題ないと思うわ。
にしちゃびっくりしたわね。
登山中にあんなことになるなんて。
ウインディちゃんの言ったとおり
なにが起こるかわからない。


わてり:
はぁ…こんなんで頂上にたどり着けるか心配だよ…

やみっち:
大丈夫だよ。
落石さえ降ってこなければ
すぐにたどり着けるわ。
まぁ…さっきので体力が消耗したけどね。


バーストⅡ:
すみませんね。
怪物を退治するためとは
言え大変な目に遭わしているなんて…

ウインディ:
なに言っているんですか。
むしろあなた一人で行かしていたら
さらに大変な目に遭っていたはずです。
それに一人よりも複数で行動したほうが
心強いです。

やみっち:
そのとおりよ。
協力しあえる仲間がいるってことは
とてもいいことなの。
特にウインディちゃんとはね!



バーストⅡ:
そうなんですね。
まだ幼いというのに決断力というか
判断もずば抜けている…

やみっち:
さあ、落石もおさまったみたいだし、
そろそろいくと…す?
って、ウインディちゃん、危ないっ!!!


わてり:
ウインディちゃん避けて避けてーーーー!!!

ウインディ:
へっ?
って、きゃあああああ!!!!

(岩がXの字に綺麗に砕かれる…)



バーストⅡ:
!?
い、一体なにが起きたんですか。

やみっち:
ウインディちゃん!大丈夫!?
血とか出ていないかしら。
こういうときの緊急治療のための
道具も完備しているわ。


ライチ:
その必要はありませんよ。
ウインディさんはご無事です。


やみっち:
あなたは…?
ていうか…なんだかこの場に
ふさわしくないような格好しているわね。

ライチ:
これは愛の女神だからですよ。
それよりウインディさんは
このとおりご無事です。
あと少し遅ければぺちゃんこでしたよ。

やみっち:
というかあなたは…どこから来たの?!
なんで落石に潰されそうになったって
わかるの?未来人?宇宙人?何人!?

ライチ:
まぁ…まぁ…落ち着いてくださいよ。
愛の女神はピンチのときに助け舟を出すんです。
しかもこんな高い山で落石事故にあうなんて
下手したら命を落としていますよ。

ウインディ:
ライチさんでしたか。
パスタ王国のときはお世話になりました。
私達、このバーストⅡさんと
一緒にこのアルプスサミットの麓に
あるバーストⅡさんの親戚の家を目指しているんです。

ライチ:
なるほど。
そうだったんですね。
でもウインディさん、無事で
よかったですね!怪我とかありません。

ウインディ:
わぁ!ライチさん、近いですよ…

やみっち:
ちょっと!どさくさ紛れて
なにウインディちゃんとイチャついているのよ!!!
そこから剥がれなさいよ!!!

ライチ:
アハハ。冗談ですよ。
それよりこの先はもっと険しいです。
私の愛の女神の力をつかって
すぐに頂上に案内します。

やみっち:
そんな力があるなんて。
登山家としてはなかなかに野暮な
ことをしているけど、こればかりは仕方ないわね。
ライチちゃん、お願い。


バーストⅡ:
す、すごいです。
遠く離れたところにも
共通のお友達がいるんですね。

わてり:
こうみえても幼馴染なのかもしれないんです。
とくにウインディちゃんは思いやりが
すごく激しくて。


やみっち:
うんうん。善意の塊しかないもんね。

ウインディ:
みなさん、煽てすぎですよ!
そんなに煽てたってなにも出ませんよ!


やみっち:
もぅ~~、ウインディちゃんの
武勇伝、何度聞いても感動するもの。


???:
ぐぅ…あともう少しだったのに…。
まあいいわ。次の作戦でくたばるはず。
あれはおいしい。しかも四人もそろった。
…これはごちそうになるねぇ…



010「高い山の絶景!編」パート4
「アルプスサミット」

やみっち:
よいっしょっと…はぁ…
みて、山小屋みたいな家が見えてきたわ。
あれがあなたの親戚のお家?

バーストⅡ:
はい…立派な山小屋でしょう。
幼いとき、よくここで過ごして育ったものです。
このような険しい道が続く頂上に
ある点にはなれないものかもしれませんが、
故郷って感じがしていたたまれる気持になるんです。


わてり:
こんな高いところに小屋があるなんて。
にしても空気がおいしいよ。それに
向こうの山よりもはるかにでっかい!


ウインディ:
無事にたどり着けてよかったです。
私達もアルプスサミットの頂上を
目指していたのですから。
バーストⅡさんの親戚の方は
一体どんな方なんでしょう?

バーストⅡ:
私のことをよーく知っている人です。
生まれてまだ何もわからないときから
優しく寄り添って、育ててくれたんです。
今でもその恩を忘れず、恩返しを
続けているんです。

ウインディ:
そうなんですね。
険しい山道であろうと
ここへやってくる意味も
なんとなくわかった気がします。

バーストⅡ:
フフフ、あなた達にも
きっと歓迎してくれるでしょう。
それにわざわざついてきてもらったこと。
お礼をさせていただきます。

やみっち:
お礼なんて。そんなの悪いわよ。

バーストⅡ:
いえいえ。
登りつかれているでしょうし。
先の落石は本当に恐ろしいものでした。
親戚の方ももてなしてくれますよ。

ウインディ:
じゃあ、遠慮なく
楽しませてもらいます!


バーストⅡ:
お祖父さん!ただいま戻りました。
お客さんを…


???:
あら~~お祖父さんならいませんが…
かわりにお留守番しているものなんですけどぉ。

バーストⅡ:
…貴女は…?

ウインディ:
知り合いですか?


バーストⅡ:
いえ…。
一応知っていますが…
あまり関係とは…

???:
あらら、お友達までつれて来ているのね。
丁度いいところだったわ。
お祖父さんのかわりに
手料理を作っておいたわ。

ウインディ:
手料理…?

わてり:
テーブルにおかれているよ。
なんだか温かくて、おいしそう!

バーストⅡ:
あのぅ、お祖父さんは?

???:
なんだか…急用ができたみたいなの…
だから私がかわりに留守番しているの。

ウインディ:
親戚の方の知り合いですか?

???:
ええ、もちろん。
それだったら不審者じゃない。
それにおいしい料理をつくったのよ。
みんな山登りで疲れているでしょう。
さあ、召し上がれ。

バーストⅡ:
お、お祖父さんの知り合いならいいですよ。
知っているけどそんなに関わったことは。

ウインディ:
こうやって料理まで作ってくださっていますね。
お祖父さんも外せない用事があったんでしょうね。
バーストⅡさん、召し上がりましょうよ。


バーストⅡ:
はい……




???:
さあ…どうかしら?
おいしいかしら…。
丹精を込めてつくったのよ。
それにしてもあなたのお友達は
にぎやかでいいこと。

おかわりもあるからたくさん召し上がれ♪

わてり:
わぁ…すごくおいしいよ。
闇市ちゃんも…おいしい…

やみっち:
あ、うん…

わてり:
どしたの?ぼっとした顔なんてして。


やみっち:
ああ、な、なんでもないよ。
美味しいからちょっとつい…

(確かに美味しいわ。
でも…なんだか変…
普通なら美味しいくてもなにも
思わないのに…どうしてなのかしら。)


ウインディ:
さあ、バーストⅡさんの分はこれですよ。
考えるのはあとから。今はいただきましょう!


バーストⅡ:
そうですね。
では、いただきます!


???:
じゅるり…


それから…ウインディ達は
完食後、急激な眠気に襲われ、
全員、そのまま眠りについた…



???:
クックック…作戦通りだわ。
全く、なにを期待しているんだか。
私の作った料理はおいしいわ。
しかしそれだけでは物足りない。
だったら、秘密の材料も加えなきゃ。

そして心行くまでじっくり堪能するのよ。

???:
私は…子供が大の好物さ。
昔から子供を食べてきたのさ。
それなのにこんな家で待っていた甲斐があったよ。

じゅるり…


やみっち:
う~~ん、なんだか急に眠くなったわね。
疲れていたのかしら。
それにしても眼が覚めてきたみたい。
ちょっと温かいコーヒーでも飲もうかしら?

んっ?なんだか奥の部屋から声がきこえるわ。
さっきの人が起きているのかしら。
ウインディちゃん達は寝ているみたいだけど。
気になる…気になるわ!



やみっち:
ひとりでぶつぶつ言っているの?
それとも誰かとの電話かしら??


???:
ええ。ついにみつけたわよ。
しかもあの子も飽き足らずに
こんな山頂の小屋に通っているみたい。
どんだけ脚力が発達しているのか
気になるところだけど、まあ、
そんだけ会いたがっているみたいよ。
それにしてもここの人間は旅好きでね。
たびたび家を開けているみたい。

???:
大丈夫よ。知り合いじゃないし。
でも代わりに食ったことにできるからね。
それよりあの子を捕まえることに成功したわ。
せっかくフランクフルトで正しい生活を
してもらえると期待していたのに。
こそこそ逃げ出してこんなとこにいるなんてね。


それにおまけとしてかわいいらしい
子供が四人もいるのよ?
あれはご馳走三昧よ。
人間の子供は格別に旨いらしいの。
この前読んだ「パフェラインの料理名鑑」に
だってそう書いてあるのよ。
だから、逃がすわけにはいかないわよ。
かと言って私が子供を誘拐して
喰らう山姥と思われたいかないし…


???:
あら、流石にそれは別の神話の山姥じゃないの。
私なら月夜に吠える狼よ。
それにしてもあの子もまだ幼いし、
美味しそうだわ。フランクフルトで更生したときに
いっぱい召し上がる予定よ…

その前に、どう調理してやるか…

やみっち:
……あわわわわ……


やみっち:
ウインディちゃん。起きて!
ねぇ、起きて。今すぐこの小屋から出よう!


ウインディ:
や、闇市さん?どうしたんですか?
すごく緊迫したような表情して…

やみっち:
わ、私…聞いちゃったのよ。
お祖父さんの代わりに留守を
していると言ってたじゃない。
でも違う。なんかバーストⅡさんと
知り合いでもなく何か関わりがありそう…

ウインディ:
そうなんですか。
それでなにがあったんです?


やみっち:
じ、実はね…



ウインディ:
…は、はい。
やはり…恐ろしい怪物というのは
その留守番を代わりにしている方だったんですね。
たしかにバーストⅡさんがあまり親しく
しようとしていなかったのも頷けます。
不審者以前に人間を殺めようとしている
キラーっていう可能性も浮上しますし。

やみっち:
それで私達、作ってもらった料理を
食べたじゃない。その後、急激に眠くなって
眠ったよね?私はすぐに起きちゃったけど。


ウインディ:
はい、いつもとは違って
すぐに夢の中の景色をみていましたよ。
疲れていてもすぐに眠るものなんですかね。
それで誰かと電話している感じでした?

やみっち:
流石に他の人が小屋の中に
いるのは考えられないだろうし、
アクセス面が過酷な土地でもあるし。
それとバーストⅡさんがフランクフルトという
街から離れてこの山に登ってきたと言っていたわ。

ウインディ:
そういえばフランクフルトに
いるある人から避けたいとか
そんなことを言っていたような。
ですが、私達を子供を喰らう怪物で
あることには代わりません。

こらしめましょう。

やみっち:
ええ~~。
相手はサバイバルナイフを
持っていそうよ。下手に相手に
して刺されたら元も子もないじゃん。
それだったら逃げるのが優先的だし。

ウインディ:
なに言っているんですか。
あのような殺人鬼がこの山にいる以上、
山郭の方でも危ないといわれていました。
それを知っているのにどうにかしないまま
逃げるなんて恥と同じです。
バーストⅡさんも私達も食べられる前に
こらしめる必要があります。

やみっち:
そ、それはそうかも。
私達で逃げたら責任だって重大…。
誰かがなんとかしてくれるなんて。
でもわてりちゃんにライチちゃん、
バーストⅡさんもぐっすりだし。

ウインディ:
念のために逃げ道はつくっておきましょうか。
あとは私達で懲らしめましょう。
サバイバルナイフで刺されてしまう!
…なんて先入観は捨ててしまえばいいんですよ。

やみっち:
ねぇ…足音がするわよ…



???:
あら…なんだか騒がしいわね。
もしかして起きちゃったのかな?
こらこら、ダメじゃない。
もう一度フトンを被って眠りなさい。


ウインディ:
申し訳ありませんが
あなたの素性を知ってしまいました。
あなたはまさかこの山に潜む
悪しき怪物だったのですね。

???:
へぇ?一体なんのこと?
怪物?私のどこが怪物かしら。
手料理だって持て成したし、寝床も
ちゃんとあるし、留守番の義務も
果たせているわ。


ウインディ:
しらばっくれても無駄ですよ。
それに親戚さんとの知り合いなのかも
あやしいです。私達を食べようと
考えても無駄ですからね!!


???:
はぁ…子供を食べるね。
まさか聞かれちゃうとは…
でも私の料理を食べて…眠くなるのは
本当よ。かわった材料をしようしているからね。
それより…私の芝居を聞かれるとは…


やみっち:
芝居??

ウインディ:
そ、そんな根拠もないこと言いまして。
まぎれもなく私達を食べるんでしょ?
そしてバーストⅡさんをフランクフルトという
街に連れ戻そうと!!


???:
あ~~ら、ずいぶんと誤解させてしまったかしら?
芝居も何も誰かと電話をしているわけじゃないの。
ただ、私のお気に入りのパペットちゃんと
会話していただけよ!


ウインディ:
えっ?えっ?えっ?えっ?えええぇ…

???:
ほら、これ。かわいいでしょ?
私の手作りでパペットなの。
これをみたらあの子も気に入るのにね。
なのにこんなところに避難場所なんか作ってさ。

やみっち:
じゃ、じゃあ…あの悪意のある
会話はなんだったの?

???:
ああ!あれは私の描いているオリジナルストーリーの
文章を引用しただけよ。
本気にしてたらいろいろと問題が起きるさ。
たまにパペットちゃんとああいう悪いう
ことを言いたくなるときあるんさ!


ウインディ:
じゃあ、私達を食べることは?
人間の子供は格別とか?


???:
それもさっきの文章の中での台詞よ。
子供を食べたい狼のストーリーなの。
自分も狼なのになんてことを考えるのかしらね。



ウインディ:
闇市さん……


やみっち:
とんだ勘違いだったみたい。
まるで本当にそれらを
計画通りにしようとしているように聴こえたわ。
というか演技力高すぎ!



???:
えへへ、パペットちゃんとの
コンビ力はこうか抜群なのよね。
フランクフルトでもたびたび公演する
ことがあるんだけどリクエストが多くてさ。

というか…なんだか誤解を招いちゃったかしら?
私はただあなた達とあの子に料理を振舞っただけよ。
でもみんなが眠ったあと、ちょっとだけ独りよがりに
なってみたくてね。アハハ…


???:
勘違いさせてよかったわね。
そうだ、喉がかわいているでしょ?
淹れたてのココアがあるわ。
飲んでいきな。

ウインディ:
闇市さん、誤解でよかったですね。
たしかに狼さんは童話の中だと
小屋を壊したり、人を食べたりと
恐ろしい存在として出てきますね。


やみっち:
そうよね。
そんな童話みたいな展開…
ありえるのかしら…

???:
は~~い…ココア淹れてきたわよ。
飲んでらっしゃいな♪

ウインディ:
ありがとうございます!


010「高い山の絶景!編」パート4.5
「アルプスサミット」

???:
はぁ…まさか誤解されちゃうなんてね。
私の名前はキキーモラというの。
こうみえても演技力は発揮できちゃうのよ。
それにしてもあの子、どうしてこんなに
山登りが好きになっちゃったんだろうね。

ウインディ:
バーストⅡさん、親戚さんと
昔でここで暮して育ったことで、
この環境を気に入ったそうですね。
それでフランクフルトにいたときは
どんな感じだったんですか?

キキーモラ:
最初はなかなかなれなかったみたいなの。
何度か教えたんだけど山で育ったせいで
全然適応しようとしなかったわ。
田舎から都会に住もうとすると
にっちもさっちもつかないものかしらねぇ…

ウインディ:
まぁ、育った土地勘が違うと
必然的というかそうなりますよね。

それであなたは親戚さんのかわり
にここで留守番をしているわけなんですね。

キキーモラ:
そうなの。実は昔から関係がよくてさ。
あの人にも言ってやりたいさ。
あの子もまだまだ都会の魅力についてなんかは
未知数だと思う。突然放り出したら
すぐに覚えるものも覚えられないからね。

まぁ、あの子もひょっとしたら
都会に憧れをもつかもしれないし。


やみっち:
都市部で暮すのと
開放的な自然が溢れたところで暮すのって
あらゆる感覚が違うわ。すごい同感できる。
どちらに適応できるかも人それぞれ。


ウインディ:
バーストⅡさんならできそうですよ。


キキーモラ:
あら、どうしてかしら?


ウインディ:
山登りをしているくらいです。
なら、都会の喧騒に揉まれたとしても
慣れればきっと楽しいを見つけられるはずです。
私も慣れない頃は大変でしたが、今だと
それが当り前だなとつくづく思うのです。


キキーモラ:
まあ、そうね。あの子なら…きっと。


バーストⅡ:
みなさん、おはようございます。
あれ?なにしているんですか。


ウインディ:
あ、バーストⅡさんおはようございます。
というかまだ朝の四時ですが…


バーストⅡ:
いえ、このくらいの時間帯によく起きますが。
それよりお腹がすいちゃいました。

キキーモラ:
フフフ、じゃあ作るわね。
あなた達にもとんだ誤解をさせちゃったし、
ココアだけじゃあ詫びれないわ。
朝食を作るわね。

ウインディ:
そんな。こちらこそ
誤解をしてしまい…ありがとうございます。

バーストⅡ:
????



わてり:
はぁ…おなかいっぱい。
やっぱりおばさんの作る
料理、おいしいよ~~。

キキーモラ:
あらあら、そういってもらうと
うれしいわ。
フランクフルトでは主に
パン食なのよ。

ライチ:
フランスパンほどじゃないですけど
サクサクした食感がありますね。
ムムム…愛の女神の歯では噛み切れない…


キキーモラ:
そんなガツガツ食べなくていいよ。
喉につまったら大変だし、
ほら、コーンポタージュも出来ているわ。


わてり:
わーい!!


やみっち:
ねぇ…ウインディちゃん。
もう怪物の件はこれで済んだみたいよね。
ただの誤解だったけど。

ウインディ:
そうですね。
最初は皮を被っていたのかもしれないと
いう予想が頭にありましたが、本人から
あれが演技と口実された以上、もう不審に
なる必要はありません。それにもてなしもすごいですし。

やみっち:
でも親戚の代わりに留守番を
しているなんて。私も老後は
こんな穏やかなところで余生を過ごしたいかも。


ウインディ:
あれ?闇市さん的には…
もーちょっとオシャレとかそっち系のに
夢があるのかと思ってましたけど。

やみっち:
たしかにそれもあるけれど。
こういう生活も憧れてみるのも悪くないの。
ウインディちゃんもそう思うでしょ?

ウインディ:
はい。のどかなところが大好きなもので。


やみっち:
じゃあ、もしその時がきたら一緒に
過ごしたいよ。

ウインディ:
もしかしたらその時にはもう…


やみっち:
そんなこと言わないの!!もぅ!!!


バーストⅡ:
それじゃあ、みなさん、
そろそろ山郭の方に戻りましょうか。
私もそろそろ降りようかなと。
今日はたまたま親戚の方が用事でいなかったので。

キキーモラ:
ちょいと待ちな。
バーストⅡ。聞きたいことがあるわ。


バーストⅡ:
なんですか?

キキーモラ:
あなたはどうしてフランクフルトより
山の方が気に入っているのかしら?
たしかにここで育ったことは知っている。
けれど都会の魅力というものをあなたは
まだ知り尽くしてない。知識だって浅はかでしょ


バーストⅡ:
キキーモラさん…
たしかに都会の暮らしに
慣れてないというか不慣れというか
私のいるべき場所だと感じにくいんです。
しかしこのアルプスサミットは
すごく居心地がよくて。

キキーモラ:
この山もたしかに空気が澄んでいて、
居心地のよさが伝わってくるわ。
でもフランクフルトにだって楽しいところや、
時間がいっぱい存在するわ。でもあなたは
ごく一部をみただけ。すぐに山登りに夢中になるの。

キキーモラ:
私は小さい頃からあなたをよく知っているわ。
でもフランクフルトのよさ、そして
都会に出て、逞しくなってほしい想いがあったの。
でもまさか、都会に出てもなお、この地に
縁があり、なかなか慣れようとしないなんて。
それが…あなたらしいというか…


バーストⅡ:
キキーモラさん…

キキーモラ:
いつもならここで怒るんだけど、
今回は考え直すわ。何度説得しても
あなたの受けいられる場所があるというのなら
その場所から無理に引き剥がすなんてことはしない。
あなたのいたいという場所にいなさい。

そしてたまにでもいいから
フランクフルトに戻って来るんだよ。
長生きしていれば、こんなことがあったんだなと
つくづく思うさ。

バーストⅡ:
ご、ごめんなさい。
私はこの場所が大好きだったんですか。
昔も今も…フランクフルトも
いい町です。ですがアルプスサミットは
私の居場所を作ってくれる場所…。
だから、ずっとそれを分かってもらいたかった。


キキーモラ:
フフフ、親戚の方も
両親を失い、やさぐれていたあなたを
すごく心配していたわ。
でもね、本当の話をすると
あなたの両親は殺されたわけじゃないの。


バーストⅡ:
え?


キキーモラ:
あなたには殺されてしまった
ことでそうなっていたんだけど、
あなたには隠していたの。
私は知っているわ。父親も母親も
大病を患っていて、余命もそんなに
長くなんてなかったさ。

まだ幼いあなたにそんなことを教えても
きっと伝わらない。だから曖昧になって
しまったんだよ。

キキーモラ:
だから元気に山登りまでして、
山での生活を謳歌するあなたが微笑ましいわ。
そんなあなたをアルプスだって見守っている。

キキーモラ:
それに立派な四人の旅人さんもいるじゃない。
アルプスサミットの名はこれほど広く知られているわ。
あなたの愛する場所は他の人もきっと愛している。

バーストⅡ:
みなさん……


こうしてバーストⅡとキキーモラの間に
できた溝はなくなった。
お互いを尊重し合い、その場所での
ゆとりを大切にしてきた。
これまでもこれからも、思い出を
いっぱい、未来に羽ばたかせるだろう…



やみっち:
まさか山登りであんな感動的な
展開になるとは思ってなかったし、
怪物だと思っていたのに、めちゃいい人だったよ。


ライチ:
人は見かけによらずってやつですね。
それにしてもあんな危険があろうとも
大切な場所だから、登る…
すごく情熱的です!


わてり:
山登り、なんだかんだいってよかったよ。
ウインディちゃん、次は雪山のぼり?


ウインディ:
そ、それは検討中です…。
ですがお二人の関係がよくなってよかったです。



【次回予告!】


ラジエート:

皆様、お久しぶりです。
浮世の疲れを取る為に山登りを
提案したウインディ様。
空気の澄んだその山は
自然が溢れた豊かな場所でした。
その先には怖い怪物の噂話もありましたが、
すべては誤解そのものでした…


さて!
次なる舞台は…オリエンタルな街並み…
由緒のある京の都…その地に
根付く文化をいろいろ体感…
ウインディ様の前に現れるものとは?

次回「おいでませ!日本編」です!
乞うご期待くださいませ。

ラジエートでした!