ファイル:Carlo Dolci Mater dolorosa.jpg


先週、上野の西洋美術館に初めて行ってきました。

常設展に『悲しみの聖母』という表題の絵が展示してあります。

17世紀にフィレンツェで活躍したイタリアのカルロ・ドルチというカトリックの宗教画家の作品で、妻テレーザ・ブケレッリをモデルとして描かれたものだそうです。

妻の中に聖母の面影を見出す美意識に彼の優しさを感じます。

深い慈愛に満ちたその表情は神々しささえ感じさせ、見る人を惹きつけて離しません。

中世ヨーロッパに描かれた時の刻みと絵の持つ圧倒的な神秘性にずっと絵の前に引き寄せられていました。

この1枚を観るだけでも行く価値ありです。


ちなみに西洋美術館から徒歩2分の国立博物館には同じカルロ・ドルチの『親指のマリア』があります。

江戸時代、キリシタン迫害の最中日本に潜入した宣教師シドッチが持ち込んだものだそうです。

彼は捕縛され、獄死してしまったそうですが、絵は押収されても奇跡的に残りました。

きっと絵のもつ神々しさに幕府の役人も処分をためらったのでしょうね。

絵の痛みが激しいのは当時のキリシタン迫害の過酷な時代を想像させられます。

しかし、残念なことにこの絵は常設展ではないのでめったにみることはできません。

願わくは西洋美術館の絵と同じ場所で並べて観たいものです。

同じ上野の国立施設なので叶わないものでしょうかねぇ・・・


親指のマリア 東京国立博物館


この2枚の神秘的な宗教画を観ているとエンヤのカリビアンブルーという曲を初めて聞いたときの感動を思い出します。

カトリックの荘厳な世界が広がる曲で、中世の敬虔なクリスチャン達が絵に祈りを捧げる姿とかさなります。

絶対オススメなので是非聞いてみて下さい音符