いい酒、いい人、いい肴。

呑兵衛の教祖、大田和彦さんのふらり居酒屋百選でも、相当早い段階で紹介された山形県酒田市の名店「久村の酒場」です。

 

外はまさに、氷雨降る東北の夜。

昼の鮭懐石でまだ満腹感があるものの、せっかく酒田まで来たのだからと、ダメ元で訪れたところ、運良く奥のテーブルに空き席が。

 

どうやらこのテーブルは「松の廊下」と呼ばれる「しろうとさん」向けの席。

本当の常連は手前のU字型のカウンターテーブルを囲み、田舎の法事さながらに、酒田のおじいちゃんやらおばちゃんやらとトーク満開で、酒を酌み交わすそうです。

そんなディープな席にはとてもじゃないが怖くて近寄れない。

 

気さくなお母さんにおでこで体温計測をしてもらった後、熱燗2合と軽めの肴を頼みます。赤いかぶらの漬物、キスのすり身の汁、厚揚げ&イカゲソ揚げ。

隣の席には、地元訛りが好ましい若いお兄さん2人。「うちの工場長が・・・」という会話から、工場勤務なのかな?と思います。

廊下に置いてある石油ストーブが換気を督促する音楽が流れているのを、お兄さんが自然な事のように止めに行きました。

普段から石油ストーブの扱いに慣れているのでしょう。

熱燗は、酒田の銘酒、初孫。

 

私達の席からは見えませんが、お燗は一升瓶ごとストーブの上の大鍋に入れてあって、瓶ごとひわひわとゆっくり熱を入れるので、いつまでも冷めず、芯まであったまる熱燗になるそうです。(太田和彦師匠の受け売り)

しばれた体に最高の熱燗でした。