ドン・キホーテは店舗で働く人を育て上げる優秀な企業であると私は思っています。そういう話をするのも、実際に商売というのは非常に難易度が高く、誰かに教えられてもらったことをマニュアル的に、こなしていれば良いというわけではないと思います。仕事にはある一定水準以上の、創造性が必要となり、その創造性がお客様に認められることによって、売上を向上していくことができるものだと私は思っています。しかしながら、実際に多くの流通小売業者はその点を理解しているようで理解していないのではないでしょうか。例えば、どこのスーパーマーケットに行っても、同じ商品の構成になっていることがよくわかります。もちろん、そんなに大きな価格差があるわけではありません。そうした時に、あの店舗は面白いよね。そう思ってもらえることが自分の店に足を運んでもらえる、つまりご贔屓にしてもらえる要素になるだろうという点までは誰もが考えつくのではないでしょうか。はっきり言ってしまうと、この点に到達するのにはそんなに時間はかからないと思います。しかし、では一体どのようにして差別化を測ることができるのか。こう考えた時に多くの人は差別化の方法論の構築に頭を悩ませてしまうのではないでしょうか。今までの商習慣や他の店舗との違いをどうやって実現するのか、それは誰も教えてくれない部分です。もっと言えば多くの人がやろうと思っても出来なかった部分でもあります。ただ、このような部分で頭を働かせることができる社員をどのようにして育成していくのか。それがドン・キホーテには実現できているのではないでしょうか。

『いうまでもなくマニュアルは誰がやっても同じことができる、そのための作業手順書である。そこには意外性や突発性、流動性という予測不可能な要素は入り込めない。それを排除して確実性を高めたものがマニュアルだから、その部分は最初からないのである。しかし、スポット商品ではその仕入れから店頭販売まで不確実の連続である。マニュアル化は不可能だし、マニュアル化しては流動性に対応できないのだ。』

ドン・キホーテにはマニュアルが存在しないと言います。それは思考を働かせることにマニュアルなど存在していないからではないでしょうか。そしてそのことにいち早く気がつき、企業としてそれを構築するのに動いてきたのがドン・キホーテなのだと思います。

※下記著書より一部抜粋
著書:流通革命への破天荒な挑戦!―ビジネスの原点は「常識」を疑うことだ