面白いくらいに革命的なドン・キホーテという企業は年功序列という旧世代の主義を廃止しています。もちろん、企業成長を導くためには、この制度ではなく成果主義を取り入れていくことが当たり前なのですが、ドン・キホーテが台頭してきた時代にこの成果主義をしっかりと強く打ち出した流通小売業は他にはいなかったのではないでしょうか。事実として、日本に根付いている年功序列主義をいち早く撤廃し、本当の意味で強い企業体質を目指した企業だと私は思っています。そして、その結果今となってはこれほどまでにしっかりとした大企業になることができたのではないでしょうか。

『ドン・キホーテにマニュアルはない。あるのは「仕入れの掟5つのセオリー」とか「優秀仕入れ担当者の鉄則10ヶ条」といったものだけで、これはマニュアルではなく指針にすぎない。受け取り方ひとつ、解釈の仕方ひとつで、どうにでもバリエーションが生まれてくる。』

このマニュアルがないというのは本当に驚くことだと思います。それまでの小売店舗はマニュアルによって接客を決めていました。どんな人が接客しても均一したサービスレベルになるというメリットもあります。しかしながら、ドン・キホーテにはこのようなマニュアルが存在しないというのですから驚きます。

『なぜ、仕入れなら仕入れのマニュアルをつくり、それに沿ってやらないのか?その理由はドン・キホーテの仕入れの特徴であるスポット商品への対処が、マニュアルでは無理なことにある。仕入れ価格、量、販売価格、売れる売れない・・・といった不確定要素を瞬時に判断して、即決しなければならないスポット商品の仕入れは、現場担当者のカンピュータにしかできないことで、マニュアル化できないし、してはいけないことなのだ。』

ドン・キホーテにマニュアルがないのは以前からも話をしていたことですが、このマニュアルのない企業体質、企業風土こそが本当に強い商売人を育てることにつながったのではないでしょうか。

『スポット商品は生きものだ。パッケージは同じでも時期や取引条件、時流によって、その姿は一変する。昨日までA問屋で500円だったものが、今日はB問屋から10円で出てきたりする。売れない死筋商品、過剰在庫の処分品、資金繰りからの換金商品、パッケージの汚れなどのキズモノ商品・・・と価格ひとつでもさまざまな理由によって激変する。』

このように話を聞くと、本当なのだろうか?と思うこともあるかもしれないのですが、実際の話流通業界においてのスポット商品は上記のようなことが起こっているのが現場なのだと思います。
このような商品が出てきた時に担当者がどのように対処できるか、その権限の有無が成功と失敗を分けるのではないでしょうか。

『仕入れは安けりゃ仕入れるというものではない。それは安けりゃ売れる、というものではないからだ。定価1000円の商品に100円の値札をつけても売れないこともあるし、800円で売れることもある。陳列方法、POP1枚でそれまで売れなかったものが売れたりする。』

※下記著書より一部抜粋
著書:流通革命への破天荒な挑戦!―ビジネスの原点は「常識」を疑うことだ