ドン・キホーテは今でこそ情熱価格というPB商品を展開するようになりましたが、かつてはPB商品について否定的でした。実際、ドン・キホーテがPB商品を開発するまでに長い年月をかけてPBは実践しないという時代を過ごしてきました。ではなぜ自社ブランドPB商品を否定してきたのでしょうか。その点について今回のブログでは説明をしたいと思います。

『幸い私が気に入られて発注に応じてもらえたところで、このタワシメーカーは単品では世界を相手にしている巨人だから、世界中どのPBの発注にも応じているために、ダイエーブランドであろうが、イトーヨーカ堂ブランドであろうが品質も価格も同じ、という事態も起こり得るのである。PBで全体として亀の子タワシの価格を下げることにはなっても、他社よりも高品質のタワシや、安いタワシの開発はできないということになる。』

PB=低価格高品質にならない理屈については上記の通りとなります。だからドン・キホーテがPBの開発に着手しなかったのでしょうか。

『さらに、現状出回っているタワシは、デフレ傾向にあったときに商談をしたものであるため、現実には安くはない。今後、価格が下げるかどうかも、原価ギリギリに近い製造価格だからむずかしい問題だろう。このPBメカニズムはひとつ、タワシに限らずPBには共通している。』

これは当然のことではないでしょうか。実際に何万ものアイテムを扱う小売業と、ある分野に特化したメーカーとでは、技術、情熱ともに集約度が全然違うものだと思います。つまり、ドン・キホーテにしても、亀の子タワシに注ぐ力は全アイテム分の1、つまり3万分の1でしかなり得ないのです。

『小売業は、徒労といってもいい商品開発に力を割くよりも、既存のいいものをいかに安くタイミングよく仕入れるかに、持てる力のすべてを注ぐのが本来の姿ではないだろうか。』

メーカーと小売業の立場、つまりこういったポジショニングによって、本来自分たちは何をするべきなのか。そういったところまで考えており、PB商品に対して安易に着手しなかったのではないでしょうか。これが店舗のこだわりであり、強みであるとも私は言えるのではないかと思います。そしてこのこだわりがあったからこそ、今のドン・キホーテが築けたのではないでしょうか。

※下記著書より一部抜粋
著書:流通革命への破天荒な挑戦!―ビジネスの原点は「常識」を疑うことだ