前回のブログでは、ドン・キホーテが他店と違うオリジナリティを発揮できているのは「権限委譲」があるからということについて話を進めてきました。その権限委譲がある上で、売り場にきちんと有機的な結びつきをもたらせているから、お客様は売り場の楽しさを見つけることができ、そしてその売り場によってジャングルであるかのようなイメージを持つというところまで説明してきました。では、安田氏が言うドン・キホーテは生態系であるという点については一体どのような意味が含まれているのでしょうか。その点について今回のブログでは紹介をしたいと思います。
 
『ジャングルは、植物とそこに住む数限りない生物と土壌とが一体となって巨大な生態系を形成している。それと同じようにドン・キホーテの店内は、商品とお客さまと社員とが一体となってつくり上げた巨大な生命体なのだ。お客さまの体温と社員の体温とが混じり合い、共通の空気を生み出す。商品は商品という無機的な殻を抜け出して、生命体のように熱を持つ。お客さまの面白さと社員の面白さがぶつかり合って、また違う面白さが生まれる。どんどん変化し、進化し続けて行く生命体なのだ。』
 
「ドン・キホーテの店内は、商品とお客さまと社員とが一体となってつくり上げた巨大な生命体なのだ。お客さまの体温と社員の体温とが混じり合い、共通の空気を生み出す。」このような言葉を聞くと、ものすごいことを売り場に対して行なっているかのような印象を受けます。実際に私はものすごいことを売り場に対して持っているのだと思います。それは社員が持つお客様への熱量だと感じています。きちんと熱量を持つことによって、売り場が生き生きとしてくるのではないでしょうか。熱を持たない無機質な売り場より、熱を持っている面白い生きた売り場に面白みを感じるのは言うまでもありません。このようなことがきちんとできているからこそ、ドン・キホーテは強い店舗なのだと思います。
 
『しかし、熱帯雨林は限りない多様性がある一方で、その一部が破壊されるだけで全体が失われてしまう危険性をもはらんでいる。「買い場」というお客さま本位の考え方ひとつが崩れても、また、「圧縮陳列」という発見へのアプローチが閉ざされても、たちまちドン・キホーテというジャングルは崩壊してしまうだろう。』
 
この点は少し難解なのではないでしょうか。ただ、言っていること、伝えようとしていることはなんとなくですが、理解できると思います。絶妙なバランスによって成り立っている売り場であるので、何か一つ、些細な部分に手を抜くことで、ドン・キホーテの売り場概念が崩れ去ってしまうのではないでしょうか。
 
※下記著書より一部抜粋
著書:流通革命への破天荒な挑戦!―ビジネスの原点は「常識」を疑うことだ