前回のブログではドン・キホーテの持つオリジナルなイメージであるジャングルという言葉について、なぜそのようなイメージを持つのかについて話を進めてきました。実際には、コンビニエンス・ディスカウント・アミューズメントという3つの店舗コンセプトを持っているのにも関わらず、それとは程遠い「ジャングル」のようなお店であるというイメージを一般消費者は持ちます。では、なぜこのようなイメージをお客様が持つようになるのでしょうか。今回のブログではこの点について話をしたいと思います。
 
『それは、ドン・キホーテの売り場が有機的だからなのだ。同じように商品がうず高く積まれていてもアメリカの巨大なディスカウント・ストアは、ジャングルのようではない。狭い通路を大勢の人が歩き回っていても、地下街はジャングルのようではない。それらはどちらかといえば、無機的な眺めだ。』
 
この有機的という言葉を聞いて少し難しいなと思う人もいるのではないでしょうか。この違いが即座にわかるようであれば、ドン・キホーテと同じような店舗を作ることができる人材なのかもしれません。それくらいこの有機的に売り場を構築することには難易度があると私は思っています。では実際にその有機的という言葉がどのような意味を持っているのかご紹介したいと思います。
 
『人がいて商品があっても無機的な感じの店はいくらでもある。深夜のコンビニがそうだろう。あそこにジャングルを感じる人はいない。しかし、ドン・キホーテにはジャングルを感じる。便利さと安さが、面白さによって有機的に結びつけられるというのは、つまり、そういうことなのだ。』
 
少しこの説明でも難解かもしれません。ただ、この要素自体が有機的に結びついているというところをとにかく深く掘り下げていくことによって、ドンキの面白さを紐解くことにつながるのではないでしょうか。
 
『有機的とは言葉を換えれば濃密な関係性のことだ。便利さと安さと面白さがそれぞれに複合的に関連しながら、いわば非日常の空間をつくっている。異次元の世界といってもいいかもしれない。お客さまは、その有機的なところを敏感に感じとっている。だから、潜在意識のフィルターに引っかかったその感覚を「ジャングル」と表現するのだ。』
 
この濃密な関係性をきちんと築くことが何より難しいのだと思います。ドン・キホーテにはマニュアルがありません。自分たちでその有機的な結びつきがどのようにすれば実現できるのか考えているから、マニュアルによる店舗運営ができないのだと思います。しかし、その裏側ではきちんとその有機的な結びつきを意図的に作り出せる人材の育成ができているということになります。この人材への投資、それこそが権限委譲になるのではないでしょうか。
 
※下記著書より一部抜粋
著書:流通革命への破天荒な挑戦!―ビジネスの原点は「常識」を疑うことだ