ドン・キホーテの代名詞として様々な言葉がありますが、その中でも有名なのが「権限委譲」「圧縮陳列」ではないでしょうか。この2つはドン・キホーテという店舗を形作るためには絶対的に必要な手法であり、この手法があるからドン・キホーテはドン・キホーテでいられるのだと思います。今回のブログでは、この手法について話を進めていきたいと思います。

『もともと「圧縮陳列」や「サムシング・ニュー」というのは、前述のように私の「泥棒市場」時代の体験から生み出された手法である。いわば私の血と汗と涙の結晶といってもいい。だから、今、ここでそれをやってみろ、といわれれば即座にできる。』

泥棒市場は安田氏が一人で始めた、最初の小売業です。そこで様々な現場からのヒントを元に今のドン・キホーテが形作られているのですが、全てのヒントは現場にあると思っている安田氏だから、そのお店から得たヒントを今の手法として取り入れ続けているのではないでしょうか。

『しかし、必要なのは私ができることではなく、店のスタッフがそれをできることである。スタッフがこのドン・キホーテのエッセンスともいうべき「動画の売り場」をつくり上げられないとしたら、せっかく築いた新業態は崩壊し、店の存続そのものまで危うくなってしまう。だから当然、スタッフはこの「動画の売り場」のエキスパートになっている。』

確かに安田氏一人がその販売手法をできたところで何の意味もありません。たったひとつの店舗の一人の売り場担当者が良質な販売手法を確立していたとしても、他店でそれを実現できないのでは何の意味もありません。

『しかし、最初からそれが簡単にできたわけではない。できるどころかまったくできなかった、というほうが正しいだろう。確かに他店では店長を務めるような流通のプロである見学者でさえ、いくら説明してもわからず、真似でもいいから、といってもできないのだから、それをやれ、といってもむずかしかったかもしれないが、私には当初、私にできたことがどうして社員にできないのか、わからなかった。』

この自分にはできるのに、他の人にはできないという状況が安田氏にとっては歯がゆい状況だったのではないでしょうか。いくら教えてもできないということが、いつまでたってもできるようにならない。そして店舗が良くなっていかないということになり、多くのストレスを感じていたことと思います。

※下記著書より一部抜粋
著書:流通革命への破天荒な挑戦!―ビジネスの原点は「常識」を疑うことだ