コロワク副反応(死亡事例)の因果関係-課題と考察- | ドンキーのちょっと気になった、そこらへんのこと、つれづれに

■はじめに

副反応疑い症例の報告は医師・医療機関開設者の義務です。

・予防接種法第12条 

病院若しくは診療所の開設者又は医師は、定期の予防接種等を受けた者が、当該定期の予防接種等を受けたことによるものと疑われる症状として厚生労働省令で定めるものを呈していることを知ったときは、その旨を厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に報告しなければならない。

 

■副反応疑い報告制度における報告と評価の流れ

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou20/hukuhannou_houkoku/dl/221125-02.pdf

報告医の評価:報告書には、報告医による因果関係の所見が記載されています。

評価は3種類、1 関連あり関連なし評価不能

 

■専門家による因果関係の評価

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000838222.pdf

死亡事例や指定の症状については、PMDA(医薬品医療機器総合機構)から委嘱された専門家による因果関係の評価が別途行われます。

添付pdfによれば、専門家の評価は各事例につき2名があたり、評価が一致で結果が確定(不一致の場合は追加1名を加えた多数決)となっています。

専門家の評価

α(因果関係が否定できない)β(因果関係が認められない)γ(評価できない)の3種類。

特にαについては二重否定表現が使われています(意図的?)が、論理的かつ常識的には、α(因果関係あり)、β(因果関係なし)、γ(評価不能)と理解していいと思います。

PMDAは、この専門家評価をとりまとめ厚労科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)にあげています。審議会の議事録は公表されています。議事録を見る限り、厚生科学審議会委員は、個別の判定結果の是非を議論しているわけではなく、評価結果のリストを確認しているだけのようにみえます。

 

■因果関係の評価結果の実際

2023年末までのコロワク接種後の死亡報告における2107事例における報告医の評価と専門家の評価結果を集計したのが次の表です。

画像

報告医:関連あり=13%、関連無し=6%、評価不能=81%

専門家:α=0.1%、β=0.5%、γ=99.4%

 

殆んどの因果関係はわからないという結果です。特に専門家による評価は99%以上がわからない(評価不能)ということに注意が必要です。因果関係を評価することの難しさを物語っています。α(関係あり)だけでなく、β(関係なし)も殆どないのですから。

専門家といえど実際に立ち会ってもいない人ですから、評価が困難なことくらい素人が考えてもわかります。また2人の評価が一致する必要があるので、αやβになる割合は更に低くなることくらい容易に想像できます。

その一方で報告医の評価は厚労省やPMDAから軽視されすぎているのではないでしょうか?

 

■因果関係についての厚労省見解(ワクチンQA)

Q:新型コロナワクチンの接種が原因で多くの方が亡くなっているというのは本当ですか。

https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0081.html

A:「ワクチンを接種した後に亡くなった」ということは、必ずしも「ワクチンが原因で亡くなった」ということではありません。接種後の死亡事例は報告されていますが、現時点で、引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないとされています。

日本においても、副反応疑い報告制度により、ワクチン接種後の死亡事例が報告されていますが、現時点で、ワクチン接種との因果関係が否定できないとされた事例が2例あり、その他の事例についてはワクチン接種との因果関係があると判断されていません。

 

報告医の評価をまったく考慮せずに、また99.5%もが評価不能であることに一切触れずに、2例しか因果関係があると評価されていません、などという回答になっているのです。

 

2023年末時点のQAです。副反応の状況が変わるたびに、予告も訂正告知もなく変更されることが有名になってしまいました。

 

■専門家の利益相反

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000928719.pdf

新型コロナワクチンの副反応症例評価に係る外部専門家の利益相反があったことが報告されています。

当該専門家が評価したコロワク副反応疑いは、469例(期間2020/10/1から2022/1/31)。

2022/3/3付で専門委員の委嘱を取りやめたとなっています。

ここで、PMDAで公表されている専門委員の数の推移を調べると下記のようになりました。webアーカイブで残っているデータには限りがありますが可能な範囲で集めました。

 

 

委嘱専門家の数が2022/7と2023/4に150名以上ずつ減少しています。報告書には、利益相反事例の発覚を受けて、既存専門家への再確認や機会を捉えての継続的なルールの周知を行ったとあるので、その影響、つまりグレーゾーンの専門家が大勢いて辞めた可能性も考えられます。また専門家リストの推移から個人が特定されないように、数をまとめた可能性もあるかもしれません(木を隠すなら森の中)?

利益相反があった専門家は2022/3/3付で委嘱を取りやめたとなっていますので、2022/1/4の専門家委員リストに掲載され、2022/07/1の同リストからは抹消されている可能性が高いです。

また同様に、担当が2020/10/1からとなっていますので、2020/4/1のリストに掲載がなく2020/10/1の同リストに新たに掲載された委員と考えられます。ただし10/1以前からリストに載っていた可能性も否定できませんので、こちらのほうの確度はやや下がります。

A:2022/1/4の専門委員で、2022/7/1には抹消された委員

B:Aの委員のうち、2020/4/1にいなくて2020/10/1に新たに委員となった人

を末尾の付属資料に添付します。

確定ではなく、あくまでこの中にいる可能性があるという程度の情報にすぎませんので、ご注意ください。

 

当該専門家が469人の評価を担当していた時期とほぼ同時期の副反応報告(2022/2/18開催、期間'21/2/17~'22/1/23)における 専門家評価数は、合計(α/β/γ)の順に

・死亡:1450(0/10/1440)

・アナフィラキシ:3662(649/4/3009)

・TTS:55(2/0/53)

・心筋心膜:111(0/0/111)

→ 全評価数=5278 と報告されています。

2021年当初は死亡とアナフィラキシーが専門家評価の対象であったこと、アナフィラキシーは評価結果が分かれるため別の専門家では469件が同じ評価結果になりにくいことから、当該専門家は死亡事例を担当していた可能性が高いです。その場合、死亡事例1450件のうちの469件、約1/3の事例を担当していたことになります。1事例あたり2人が評価するとして、n人の専門家に無作為に2人に依頼する場合、総数の1/3割くらいを担当するようになる専門家母数 n は6~7人です。 総数6~7人のうちのひとりだった可能性。 いずれにせよ相当の役割を担っていたと思います。

それでも、評価結果は殆ど γ ですが...

 

以上です。

 

===付属資料===

 

A

青木 省三、齋藤 滋、西﨑 和則
麻野井 英次、齋藤 康、西村 和修
新家 眞、朔 啓二郎、西村 正治
荒川 哲男、佐久間 肇、能美 健彦
安藤 潔、櫻井 恒太郎、野口 瑛美
安藤 正志、佐田 竜一、野崎 智義
飯島 正文、佐藤 恭子、蓜島 由二
飯田 順一郎、佐藤 弘之、花岡 一雄
飯田 真介、佐野 栄紀、花田 賢太郎
池田 弘人、塩田 真、林 紀夫
池田 正行、塩山 善之、林﨑 規託
石井 健、品川 香、樋口 徹也
和泉 徹、柴原 浩章、姫路 大輔
伊関 洋、島田 和幸、平澤 博之
板倉 敦夫、嶋田 昌彦、平田 康隆
伊藤 章、島田 安博、深谷 親
伊藤 公一、庄司 茂、福水 道郎
稲瀨 直彦、生水 真紀夫、藤井 康男
岩崎 一弘、白石 公、藤本 圭作
岩﨑 祐子、白神 史雄、古川 壽亮
植田 初江、白幡 聡、別府 諸兄
植田 富貴子、菅谷 啓之、朴 成和
宇佐見 誠、杉原 直樹、細谷 龍男
宇都宮 一典、杉本 哲朗、堀 誠治
宇野 耕吉、鈴木 秀典、堀 由美子
江馬 眞、關根 広、本間 之夫
大浦 紀彦、関谷 剛、松本 万夫
大須賀 穣、征矢野 進一、水上 愛弓
太田 博明、平 孝臣、水野 杏一
岡田 信彦、田上 順次、溝口 到
岡田 義昭、竹内 洋文、南 昌平
岡本 真一郎、武田 純三、三宅 良彦
小川 幸男、夛田 浩、村垣 善浩
奥仲 哲弥、只木 晋一、村勢 敏郎
奥村 敏之、辰巳 順一、望月 學
小椋 美知則、伊達 佑生、森下 剛久
小此木 範之、種瀬 啓士、森田 茂樹
小野 哲章、多屋 馨子、山内 広平
笠貫 宏、塚本 泰司、山口 洋
金井 淳、蔦 幸治、山口 徹
金子 周一、津田 聡、山田 正三
川上 正舒、寺田 勝英、山中 康弘
神庭 重信、戸川 大輔、山本 崇
木内 文之、徳重 克年、山本 匠
北川 雄光、戸田 剛太郎、横田 理
木股 敬裕、栃木 祐樹、横山 修
木村 剛、豊岡 伸一、吉岡 弘鎮
許 俊鋭、中井 秀郎、淀野 啓
釘宮 豊城、中島 直樹、六角 智之
久米 晃啓、中田 研、脇田 隆字
河野 健、中田 真木、鷲尾 利克
河野 太郎、中村 俊康、和田 恵美
小島 寛、中村 秀文、和田 隆志
小西 敏郎、中村 元昭、和田 佑一
小林 眞理子、中山 雅晴、安原 富美子
近藤 昌夫、南須原 康行、
西條 政幸、鍋島 俊隆、

B
青木 省三
伊藤 章
植田 富貴子
大浦 紀彦
津田 聡
戸川 大輔
野口 瑛美
堀 由美子
森田 茂樹
山本 匠
和田 恵美
安原 富美子

過去の専門員委員リスト
2020/4/1
https://warp.ndl.go.jp/collections/content/info:ndljp/pid/11486200/www.pmda.go.jp/files/000234719.xlsx
2020/10/1
https://warp.ndl.go.jp/collections/content/info:ndljp/pid/11555419/www.pmda.go.jp/files/000236945.xlsx
2021/7/1
https://warp.da.ndl.go.jp/collections/content/info:ndljp/pid/11704132/www.pmda.go.jp/files/000241506.xlsx
2021/10/1
https://warp.da.ndl.go.jp/collections/content/info:ndljp/pid/11805529/www.pmda.go.jp/files/000243152.xlsx
2022/1/4
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11994964/www.pmda.go.jp/files/000244335.xlsx
2022/7/1
https://web.archive.org/web/20220622044851/https://www.pmda.go.jp/files/000246717.xlsx
2023/4/1
https://web.archive.org/web/20230410044741/https://www.pmda.go.jp/files/000249213.xlsx