困るなぁ・・・
さて、その子、シッドと言うんです。
ハイキングには来てなかったけど、綾取りで仲良くなったんです。
身長は私の鼻くらいですから150センチちょっと?
多分ヨーロッパ系(スカンジナビア?)で、肌は真っ白、金髪碧眼、歯列矯正のワイヤーをしているけど、目茶目茶 cute。
プールの縁につかまって、しばらく私との距離を考えているようでしたが、私の位置を確かめると、猛然と泳ぎ出しました。
盛大に水しぶきが上がっていますが、あまり前進しません。
どちらかというと、泳いでいると言うよりは暴れているといった方が近いみたい。
全く息継ぎをしないんです。
一息で泳ぎ切れると思っているのか、息継ぎ出来ないのか?
見ているとだんだん心配になってきました。
水しぶきが少なくなってきたので、これは溺れているぞ!と慌てて近寄りましたが、手で思いっきり脳天を叩かれてしまいました。
痛てっ!と思ったら、シッドが手探りでしがみ付いてきました。
大きく息を弾ませながら「ホラ、泳げたでしょ!」と得意そうに言います。
泳いだというよりは、スタートの蹴りの惰性で漂いついたと言う方が正確だと思いますね。
何もしないで手足を伸ばしていた方が、もっと遠くまで進んだと思うんですが。
こう確信をもって言われると、そう言えば泳いでいたかな、と思ってしまいそうになります。
「じゃあ、帰るわ!見ていてね。あれ?こんなに近かったけ?」と本人はいい気なものです。
今度は目的地は近寄ってきてくれませんから、上手く漂着するように、エィッ!と推してやりました。
私、水泳はあまり詳しくありませんが、最初は平泳ぎから覚える方が良いのと違うかなぁ。
私は小学校低学年で親父に伝馬舟から海に放り込まれて、半死半生になりながら、半日で浮き身と頭を上げっぱなしの平泳ぎ(カエル泳ぎ?)を覚えたんです。
今にして思えば、親父は余程泳ぎに自信があったんでしょうね。
おかげで、スピードには全く自信が有りませんが、ともかく海で浮かんでいる事にはチョット自信が有ります。
真水は身体が浮きにくいし波が無いのでしんどいですね。
何時でも助けられるように横について歩いて、やっとプールの縁に到着。
プルプルッと顔の水を拭って、私に気付くと、
「ダメじゃない、あそこに居ててくれなきゃ、又行くんだから!」
全く、自分の泳ぎの能力が判って無いねぇ。
この子終いには溺れ死にますよ!
しょうが無いから縁から離れて立つと、生意気にも、近すぎると言うんですね。
あんまり離れると助けに行くのに間に合わないんですけど、まぁ、いう通りの位置に立ってスタンバイ。
今度は無造作にスタートしました。
イカン、イカン本当に溺れてるみたい。
焦りまくって助けに行くと、間一髪間に合いました。
腕を首に廻しただけでは不安なのか、脚を私の腰に絡めてギュッとしがみ付いてきます。
ゲホゲホと咳き込んでいるので、背中を撫でながら「大丈夫?」と訊くと「何が?」ってそれは無いでしょ。
さすがに疲れたのかしがみ付きっぱなし。
プールの縁に連れて帰ろうとすると、「ダメ!休憩したら泳いで帰るんだから」と全く懲りてない。
それはそうと、いくら9才でも女の子、その上大柄でかなり女っぽいスタイルになっています。
こうまともに抱きつかれると・・・。
それも真正面から完全密着。
冷たい水の中で、弾力のあるシッドの身体がくっついているところが暖かくて気持いい。
決して厭ではないものの、私も20才の健康な男、ちょっと困るなぁ。
一寸どころではない、かなり困って来ました。
いくら子供、子供と言い聞かせても、ドキドキしてくるのは無理ないと思いますけどね。
時々腕と脚にギュッと力を入れて、抱き付きなおしながら何か言っていますが、頭がクラッとして全くそちらへは神経が行きません。
こちらの窮状を知ってか知らずか、やわらかな微妙な凸凹をグイグイ押し付けてきます。
まさか私を誘惑しているんではないでしょうねぇ。
いくら早熟でも、そんな筈は無いと思っても、現実に抱きつかれていると・・。
意識しだすと、何気なく背中に廻していた腕が、何か悪い事をしているような気になって、一度離したらもう二度と抱けません。
今度は、手の持って行き場がなくなってしまった。
腕を外すと、シッドが余計に力を入れて抱きついて来ました。
ワ~ッ、ますます困った事になってきたぞ、ど~しよう!
この状態を人が見たらどう思うでしょうね。
けど、このままにしていたいような気もしないでも有りません。
オイ!何んという事を考えている、恥を知れ!けど・・・。
などと思っいると、突然足元をすくわれて、キャ!ブクブクブク・・・・。
1人勝手に喜んで困っている間に、泳げる子供たちが潜って、ふざけて私の足を引っ張ったんですね。
当然シッドもブクブクブク。
必死にしがみ付いてくるから、泳ぐ事も、体勢を立て直す事も出来ません。
もがいていると、誰かが脇を支えてくれたので、やっと立つ事が出来ました。
コラリアが飛び込んで助けてくれたんですね。
プールの縁から4、5mのところで溺れそうになるとは・・。
ホンの一瞬だったのでしょうが、死ぬかと思いました。
ある意味助かったと言うか、何と言うか・・。
ゲーゲー言っているシッドに抱きつかれたままプールから上がって、へたばってしまいました。
コラリアと子供たちは大笑い。
シッドまでが一緒に笑っています。
人が死にかけたというのに、全く深刻に考えてないんですね。
「笑い事では無いぞ!」と怒ろうにも、適当な言葉が思い付きません。
こういう時には、どう言えば良いのか考えていると、何だかどうでも良くなってしまったので、エ~イ、いっしょに笑ってしまえ。
一番ヒドイ目に遭ったシッドも笑っているのですから、私1人が怒ってみても始りません。
入場してから1時間近く冷たい水に入りっぱなし。
コラリアは「水を温めているのよ、そうでなきゃもっと冷たいんだから」と言いますが、とても温めているようには思えません
さすがに子供たちも唇は紫色で寒そう。
コラリアの命令でしばらくは日向ぼっこ。
離れていると寒いので、皆並んで押しくらまんじゅう状態です。
シッドはいかに長い距離を泳げるようになったかを、一生懸命皆んなに自慢しています。
こういうところを見ると、やっぱり9才ですね。
ここの子供たちは、日向ぼっこしていても背中に乗っかってきたり、手足を引っ張ったり、慣れると本当に仔犬みたいに纏わりついてくるんですよ。
コラリアにはしないところを見ると、単に舐められて玩具にされているだけかな?
念入りに髪を拭いていたコラリアが、でかいストロー・バックをかき回しています。
ワ~イ、クッキーとレモネードが出てきました。
コラリア偉い!命の恩人。
一しきり食べて、身体もあったまったし、さぁ、帰ろうか?
2時間ソコソコしか居てないんですよ。
厭にアッサリしてますね。
入場料無料なので、ねばって料金の元を取ろうなどというケチな考えは全くなし。
ロッカールームで熱いシャワーを浴びて生き返った気持です。
子供たちは、そのまんまのも居れば、濡れた水着の上からショートパンツを履いたりしています。
寒くないんでしょうか?
さすがにコラリアはちゃんと着替えてきました。
多分あのブクブク事件が無ければ、一回も水に入らなかったと思いますね。
2003/04/18:初出
2022/05/01:再録