「ほう、どんな話が聞けるのやら」僕はチャンネルを変えずしばらく番組を見続けました。猫ひろし、本名瀧埼邦明さん、言わずと知れたリオ五輪男子マラソンにおけるカンボジア代表のアスリート、雨けむる決戦の場でヨルダン代表メスカル・アブ・ドライス陸軍軍曹(32歳)と繰り広げられた壮絶な最下位争いは本大会における屈指の名場面としてあなたの目にも焼き付いているのではないでしょうか。

猫さんがカンボジアに帰化してまで五輪への挑戦を明らかにしたのは5年前、世間はこの無謀な挑戦にあきれ批判の目を向けました、しかし彼の熱意は本物でした。どんな生活を送っていたのか知りませんが日本とカンボジアを行ったり来たりしながら修行に励んだのです、「カンボジアでは朝8時を回ると、もう暑くてトレーニングどころではない」「カンボジアでは走っていると、野良犬が追いかけてくる」氏はこんな厳しい現実もすがすがしく語っておりました。

そんな猫選手の裏話とはいったいどんな内容だったのでしょうか、興味ありますか。テニスの錦織さんは腰が低かった、ボルトと一緒に自撮りをしたが緊張してピントがブレてしまった、宿舎は快適ではあったが便所のドアが固定さていなかった、だから入るときには「よいしょ」と脇に立てかけられたドアを入り口に移動して用を足していた、ランドリーサービスを利用したが受け取ってみると生乾き、しかも誰かのものだった、こんなことを言っていました。

録画したわけではないので適当な記憶で今こうしてお話ししていますが氏はそれなりにリオでの戦い、そして25日間にもおよぶ生活を「満喫」されたようです、見ていた僕も悪い気はしません。「シャワーを浴びてくるよ、2020年の東京五輪では10位以内で終えるよ」、陸軍軍曹メスカル・アブ・ドライスさんはそう言って会場を去りましたが猫氏はどうでしょう、やはり「東京五輪」に対する思いが滲んでいるようでした。