みなさん、こんにちは。
東京の十条で「誠真堂鍼灸院」という鍼灸院を経営している
東洋史(あずまひろふみ)です。
これから、このブログで
鍼灸師としての社会貢献のあり方について
現役鍼灸師の視点から発信していきたいと思います。
幸いにも、
私の鍼灸院にご来院くださる患者様が多く、
なかなか思うように時間が取れないのですが
何とかがんばって更新していくつもりです。
どうぞよろしくお願いします。
さて、
今年の2月に行われた鍼灸師国家試験ですが、
かなり合格率が低かった件、
同じ業界の方はご存じでしょう。
はり師が57.7%、きゅう師が62.5%。
鍼灸師の合格率は、
第1回目から長年80%前後で推移していました。
つまり、鍼灸学校で普通に勉強していれば、
誰でも合格できる試験だったということです。
しかし、平成28年度試験で初めて60%台に下がり、
今年(平成30年)では驚愕の50%台に突入しました。
出題された問題を見ても、
「おいおい、これを出題しちゃ可哀想だよ…」
と思ってしまう難問が散見されます。
つまり、鍼灸師の国家試験は、
鍼灸師としての最低限の知識を備えているかを確認する試験ではな
振り落とす試験に様変わりしたということです。
我々鍼灸師は、この背景にある「鍼灸業界の現実」を
真剣に考えなければなりません。
今回は、現在の鍼灸業界の「現実」について
私見を述べたいと思います。
他の鍼灸師の先輩のブログで
同様のテーマで記述されている方も
いらっしゃると思います。
若干の内容の重複は、どうぞご容赦ください。
◆外部環境:時代が「東洋医学」を求めている
①高齢化社会に求められる「QOL」
さて、現在の日本は「超高齢化社会」に入っています。
平成28年10月1日時点での高齢化率(65歳以上の人口/
27.3%にまで上昇しています。
つまり、日本人の四分の一以上が65歳を超えている
ということですね。
そして、それは「長生きの時代」に入っていることの証です。
さらに、これからは単に「長く生きること」ではなく、
QOL(Quality Of Life:「生活の質」…
すなわち「健康に長生きする」ことが
大切になってきていると言えます。
この事実は、自然治癒力(免疫力)を高め
「未病(みびょう)」を癒す東洋医学が
活躍するべき時代であると言えるでしょう。
②ストレスにより増える「不定愁訴」
さらに、現代は「ストレス社会」と言われ、
日常生活の至るところで強いストレスにさらされます。
会社での人間関係や、育児などです。
そのため、自律神経のバランスが乱れ、
「不定愁訴(ふていしゅうそ)」を訴える方が
とても多くなっています。
この不定愁訴とは、
「何となく体調が悪いという自覚症状はあるが、
検査しても病気が見つからない症状」
のことを言います。
例えば、慢性的な倦怠感や頭痛、食欲不振、
不眠などがこれに当たります。
そして、この不定愁訴で悩んでいる方が病院に行っても、
大抵「異常なし」と診断されるか、
症状を抑える薬を処方されて終わりです。
それは、西洋医学は
「器質的(きしつてき)疾患」といって
「胃に穴があいた」とか「腸がねじれている」
「骨が折れている」など、レントゲンや内視鏡検査で
視覚的に異常を確認できる疾患の治療を
得意としているからです。
しかし、不定愁訴のような
どこを検査しても身体に視覚的な異常が見つからない症状は、
薬物での対症療法しかできず、
症状の根本的な解決は難しいのが実情です。
一方、その不定愁訴の治療を得意としているのが、
鍼灸や漢方といった「東洋医学」です。
だからこそ、
今の日本に求められているのは、
鍼灸や漢方といった東洋医学である
と言えるのです。
「時代が東洋医学を求めている」
と言っても過言ではないでしょう。
◆内部環境:鍼灸業界の現実
①変わらない鍼灸受療率
しかし、鍼灸業界の現実は、それほど甘いものではありません。
「鍼灸業界の危機」と感じていらっしゃる鍼灸師の先輩方、
少なくないと思います。
なぜか・・・。
まず、第一に外部環境がこれだけ変わってきていても、
日本の鍼灸の受療率は数十年前とほぼ変わりがないのです。
中国で生まれた東洋医学が初めて日本に伝わったのは、
古墳時代中期(5世紀:西暦400~500年頃)のことです。
日本最古の史書である「古事記(西暦712年編纂)」と
「日本書紀(西暦720年編纂)」には、
朝鮮から「良医」や「医博士」が渡来し、
日本に医療を伝えたと記載されています。
このように、1500年以上の長きにわたり
日本人の身体を癒してきたはずの鍼灸…。
しかし、現在の日本人の鍼灸受療率は
毎年6~7%前後で推移しています。
これが、鍼灸学校が全国に27校しかなかった
20年前であれば、『鍼灸院が少ないから仕方ない』と
言い訳することもできました。
しかし、2000年以降、鍼灸学校が激増し、
2013年には101校まで増えています。
そして、当然のことながら鍼灸師と鍼灸院の数も増え、
全国の鍼灸院の数は2016年時点で28299か所(
となっています。
さらに、鍼灸指圧院の数は37780か所ですから、
合わせると66079か所にもなります。
ちなみに、2017年2月時点の全国のコンビニの数は、
約55000店舗ですから、
コンビニよりも鍼灸を受けられる治療院の方が
圧倒的に多いことになります。
このように、日本で鍼灸を受ける環境が
整っているにもかかわらず、
未だに90%以上の日本人にとって
鍼灸は治療の選択肢にさえ
入っていないということです。
②1回の受療で鍼灸自体が否定される
そして、もっとショッキングなデータがあります。
2013年発刊の『明治国際医療大学誌』によると、
2009年に鍼灸治療を受けた日本人のうち、
治療をやめた人の35%は1回しか受療していない
というのです。
http://www.meiji-u.ac.jp/
さらに、鍼灸治療をやめた人が
「鍼灸治療を再受療するつもりがない」と答えた主な理由は、
「効果がないから」(42.4%)、「治療費が高いから」(20.9%)
だそうです。
つまり、身体がツラくて
意を決して鍼灸院の扉を叩いたにもかかわらず、
担当した鍼灸師が期待以下であり、
再度受療する価値がないと判断されたということです。
この事実は、患者さんが鍼灸治療を受ける機会を
鍼灸師自らが奪ってしまっているという
「現実」を表しています。
このような経験をされた方は、
必ず「鍼灸って効果ないよ」と
知人に「負の口コミ」をしているでしょう。
そして、「この鍼灸院はダメだ!」ではなく、
鍼灸自体が否定されてしまうという「現実」を
私たちに突き付けているのです。
国が鍼灸師国家試験の合格率を下げている理由、
こんなところにあるのではないでしょうか。
◆鍼灸師一人ひとりの意識改革が必要
しかし、鍼灸は本来、祖先が英知を結集して
数千年をかけて磨き上げた珠玉の医学です。
鍼一本で、患者さんのツラい症状が
劇的に変わる体験を何度もしている私としては、
いたたまれない思いです。
私たち鍼灸師一人ひとりが
日本の医療の一端を担っているという自覚、
そして鍼灸界を背負っているという自覚を持ち、
鍼灸を以って社会に貢献していくという
意識を持つことが
大切なのではないでしょうか。
このブログでは、
鍼灸師としての社会貢献のあり方をテーマに
私見を交えながら鍼灸業界の課題を
論じていきたいと思います。
様々なご意見をお持ちの方がいらっしゃるでしょう。
日本の制度自体の問題点もあると思います。
しかし、それらはすぐに変えることはできません。
「先ず隗より始めよ」
鍼灸界を変えていきたいと感じている私たちから
まずは意識改革を始めていきましょう。



