私の話を聞いたゴリラはみるみる血相を変えた。。
「契約したんかーーーーー!」
「した。浄水器付けたかったし、私が払うから」
「点検と偽ってカートリッジを売りに来たんやな、それは詐欺や。なんでそんな奴を家に入れたんや」
怒鳴られるぐらいは覚悟していたが、ゴリラは案外あっさり冷静さを取り戻した。
「全戸を点検に回ってるって。うちはいつも居ないから終わってなくて困ってるって・・・鍵開けようとしたら、急に後ろから来て。ゴリラ君に電話してんけど、出なかったから、もう今日で終わってもらった方がいいのかなと思って・・・・そしたら、なぜか浄水器の話になってん」
まあ私が悪いよな、うん
「マンションはな、公的な点検は掲示板に張り出すか、ポストに告知の紙が入ってから来るんや。でも、りんごはそういう事は知らんもんな、盲点やったわ」
ゴリラは大げさにため息をついた
「ごめんなさい。でも私が払うから」
「そういう問題じゃないやろ」
ゴリラはテーブルに置いてある業者の名刺を掴んだ。
「解約するわ」
「いや、やめて。騙されたかもしれんけど、浄水器を付けたかったのは私だし」
「やり方がおかしいやろ、これは解約や!」
ゴリラは、私の腕を掴んで、段ボールだらけの洋室に押し込んだ。
「カギ閉めろ!絶対出て来るなよ!」
私は言いつけ通りに内カギを閉め、ドアに耳を付けて張り付いた
「さっき、カートリッジの契約をしたゴリラですが。家内から話を聞きましてね、私としては契約の意思はないので、契約を破棄したいんですが」
相手も商売なのだ。はいそうですかと快諾するとは思えない。
もう取り付けたとか何とか言って、契約の破棄には応じないに決まっている。
「・・・・・・ガチャガチャ言わんでいいから、今すぐ外しに来いや!!!!!」
聞いた事もないような怒鳴り声。
私は恐怖で固まった
「絶対出て来たらあかんぞ!」
ゴリラは部屋の前まで来て、再度念押しして来た。
「お願い、穏便にして・・・・((´;ω;`))」
あ、聞こえてないし
男が戻って来た。
「僕は、奥さんにお願いされて契約したんですよ!」
えっ・・・?
そうなん?
最終的にはそういうことになるんか?
「嫁から言うたんか?ガス周りの点検業者に嫁から浄水器の相談したんか?」
ゴリラ、怒り心頭である
「いや、そうじゃないですけど、浄水器を付けたいとは言ってたので・・・」
「どっちが先に浄水器の話したんや」
「・・・・・・・・・・」
「お前やろうが!」
「ご主人が反対なさってると言ってましたよ、奥さんがかわいそうじゃないですか!」
うわ言いやがった
「何がかわいそうなんや💢新築マンションに住まわせてるのに、どこがかわいそうなんや!💢」
論点ずれてない?
「・・・・・・そういう所ですよ!キッチンを使うのは奥さんですよね?浄水器ぐらい奥さんが決めてもいいいじゃないですか!(震え声)」
状況はともかく、こいつ臨機応変に対応出来ててすげーな。
「とにかく、これ外してくれ、契約もナシや。応じんのやったら警察を呼ぶぞ」
「僕は奥さんと契約したんです、奥さんでなければ・・・・」
「うるさいわ!!この家の主人は俺や!俺が外せと言ったら外せ!!」
どうしよう・・・・!
窓、開けっぱなしなんやけど
男は結局、契約破棄に応じた。
玄関で、奥さんを大事にしてあげてくださいとか何とか言っていた。
「お前に言われたくないわ、もっとまともな仕事せーや!」
勝ち誇ったようにゴリラは言い放ち、男を追い返した。
「契約ナシにしたから。今度から勝手に契約なんかしたらあかんぞ」
部屋から項垂れて出てきた私に、ゴリラは優しく言った。
「ごめんなさい・・・・」
「泣かんでもええやろ。りんごのことは僕が守るから」
疲れて帰って来たところに、面倒ごとを処理して貰った。
私がアホなばかりに、迷惑をかけてしまった。
私がいけないのだ、もっとしっかりしなくては。
この人は「男らしく、頼りになる夫」なのだから。
妻の初期設定から降りられなくなった夫を演じ続けた男の末路は・・・・・
毒りんごのmy Pick