○はじめに
人名用漢字には、使っていい漢字と、そうでない漢字があるのは、多くの人に知られている。そこで、なぜ人名用漢字は制限されているのか、また、人名用漢字はどのように変化していったのかということが、この本には書かれている。
○序章
1947年、戸籍法が改正され、第50条に「子の名には、常用平易な文字を用いらなければならない」という内容が加わった。その背景には、「あまり常用されないようなむずかしい漢字を整理、制限したい」という各方面からの要望がある。
では「常用平易な文字」とは具体的にどのようなものを指すのか、それは、「当用漢字・片仮名・平仮名」である。「当用漢字」とは、明治以降、日本語をやさしくわかりやすいものに変えていこうという考え方のもと制定された、「当用漢字表」に載っている漢字のことを主に表す。しかし、当用漢字表に載っている漢字には、例えば「彦」や「弘」「浩」「也」「昌」など、人名に多く使われそうな漢字が含まれていなかった。そのため、子供に名付けをする際多くの苦情が殺到したのである。
○第一章
せっかく名付けた子供の名前を「漢字が不適当」という理由で受理されないなど、市民の不満や怒りは増大し、そのことが世の中で多く注目されるようになる。そしてついに1951年、戸籍法の一部を更に改正し、「当用漢字表」の他に「人名用漢字別表」に載る92文字の漢字が、「常用平易な文字」として加わった。
○第二章
更に、1976年、法務省が「人名用漢字追加表」を発表し、28字を常用平易な文字に加えた。
そして、時代は徐々に「西欧化」や「個性化」を進め、人名の傾向も変わっていった。そこで1981年には、新たに141字が追加され、これまでの「当用漢字表」は、「常用漢字表」となった。このように、市民の声や要望によって人名の漢字制限は徐々に緩和していったのである。
しかし一方で、漢字を制限したいと考える人々もいる。それは、主に新聞社だ。なぜなら新聞を印刷する上での能率を考えると、漢字がある程度制限されていたほうが、都合がいいからだ。漢字には似ても似つかぬ「唯一無二」的な面もあるが、その一方で印刷や戸籍実務をする上での実務的な面も持ち合わせているのである。
○第三章
能率化を求める人々を差し置いて、今や「人名用漢字別表」は、戸籍法施行規定の一部であって、法務省が自由に改定できる。現に2004年には第五次改定が行われている。人名用漢字は、常用平易な文字である必要はないという傾向が広がり、今ではだいぶ自由になってきたのではないかと思われる。
○終章
しかしいくら自由になったとはいえ、「呪」や「癌」など、人名にふさわしくない漢字は表から削除しなくてはならない、という意見が多く見られ、「人名用漢字の見直し」が行われた。そして、2004年に「ふさわしくない」とされる88字が削除されている。また、別の488字が人名用漢字に加わった。
このように人名用漢字は時代に合わせ、変化し続けている。
