ナガボナツハゼ

Vaccinium sieboldii Miq.
Vaccinium longeracemosum Franch. et Sav.

2023.5.3 静岡県浜松市

 

ツツジ科スノキ属

分布:愛知県新城市、豊橋市、田原市、静岡県湖西市、浜松市

国:絶滅危惧ⅠA類

 

純系の個体数

愛知県 たったの3本(残りはナツハゼとの交雑だが、交雑深度は様々)

静岡県 100本程度か(詳細不明)

静岡県で観察した地点のものの形態は、愛知県の個体群よりも純系の可能性が高い【後述】

 

ナツハゼとの交雑個体を含んでも、(自生)個体数は数百本とみられる。

 

形態

落葉性の低木。よく分枝し、高さ 30~150cm になる。葉は互生し、短い柄があり、葉身は楕円形 ~卵状楕円形で、長さ 3~7cm、幅 2~4cm、先端は鋭頭、辺縁は全縁で鋸歯はなく、表面の主脈上 に毛が散生するほかは無毛である。花期は 5 月、若枝の先に長さ 5~10cm の総状花序を伸ばし、多 数の下向きの花をつける。花冠は鐘形で先は浅く 5 裂し、長さ約 5mm、白色で 5 本の赤色の縦条が ある。果実は球形で黒熟し、直径 5~6mm である。

引用元:愛知県 レッドデータブックあいち2020

 

ナガボナツハゼは世界規模で見ても、静岡県浜松市の三方原台地から愛知県東三河南部にしか生息していない、たいへん貴重な植物です。まずは自生地を保護し、自然の摂理の中で維持されるような環境を作ることが大切です。

 

★自生地訪問
GWの5月3日(水)に、Npo法人縄文未来・縄文楽校のみらくる園にお邪魔しました。


・みらくる園の概要 
このみらくる園は、防風林となっていたところに位置しており、多様な植物が生息しています。ちょうど訪問したときは、ヤマツツジが咲き誇っていました。地面をみると、ハルリンドウ、オオバノトンボソウの花が咲いていたほか、オカトラノオの芽生えを多数確認することができました。

他にも、自生のキキョウやウンヌケ、ウンヌケモドキなど、絶滅危惧種に指定されている貴重な植物の最後のフロンティアとなっています。

 

ハルリンドウ (新分類だとトウカイ~なのですかね?)

 

オオバノトンボソウ


・みらくる園のナガボナツハゼについて

きわめて純系らしい美しい個体


ここのナガボナツハゼは、白花・桃花系統など様々な多様性があります。また、葉の表面に毛が見られない個体も多いです。愛知県で観察される表面に毛が目立つようなナツハゼと比べても、交雑度合いが低いことは明らかです。
また、アカマツとの共生関係を指摘する論文も、こちらのみらくる園をフィールドに採用した上で執筆されています。


・みらくる園の危機

本来、希少種の自生地公開は盗掘等の危険性をかんがみ、慎重であるべきです。しかしながら、このブログ投稿で、ナガボナツハゼおよびみらくる園の認知度を上げたいと考えています。

それは、今年いっぱいでみらくる園が消滅の危機にあるためです。


現在、署名活動の準備など、この様々な生き物が息づく自生地を守る活動がおこなわれています。また、こちらのブログでも発信させていただこうと考えています。


あれだけリニアの環境問題に対して熱心に取り組む静岡県として、対応が不十分であるという気持ちを禁じ得ません。
挿し木やクローンで増やして、絶滅をなくそうという手法は理解できるものの、「自然保護」の概念上、自生地というのは他に代えることのできない価値があります。ただでさえ2030年そして2050年に向けた生物多様性の「ネイチャー・ポジティブ」に向け、積極的に動いている自治体・団体が多くあります。ぜひ、みらくる園の生き物たち、そしてナガボナツハゼも次世代に引き継がれるべきだと思います。

 

・みらくる園の活動

現在、みらくる園では第2土曜日に観察会が行われているようです。また、フリーマーケットも開催されるなど盛り上がりを見せています。ぜひみなさん、年が変わる前にみらくる園に足をお運びください!

 

みらくる園の情報はこちらから (NPO法人 縄文未来 縄文楽校)

 

引用文献

 

 

愛知県 レッドデータブック2020 ナガボナツハゼ.pdf

https://kankyojoho.pref.aichi.jp/rdb/pdf/plants/species/ikansoku/%E3%83%8A%E3%82%AC%E3%83%9C%E3%83%8A%E3%83%84%E3%83%8F%E3%82%BC.pdf

 

参考文献

(1)新城 五葉の森で開花始まる 

県絶滅危惧ⅠA類「ナガボナツハゼ」 東日新聞 2018.5.18

 

(2)新城市のナガボナツハゼ自生地 とみおかの森 まちづくり通信 2018  vol.02

http://www.tomioka-aichi.jp/TOK-machizukuri/%E3%81%BE%E3%81%A1%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A%E9%80%9A%E4%BF%A1vol-02.pdf

 

(3)静岡県農林技術研究所森林・林業研究センターより

浜松市におけるナガボナツハゼの分布・DNA 解析・組織培養

https://joumon.main.jp/data/nagabo-DNA.pdf

 

(4)三河の植物観察 ナガボナツハゼ

 

執筆協力・情報提供 Twitter かしは さん

https://twitter.com/kashiha_63

 

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